4596.放射性廃棄物処理の必要性



NHKの番組でも「使用済核燃料」の問題が取り上げられたが、解決方
法がないと問題が放置されている現状を紹介していた。また、現在
の原発を稼働させても2年以内に使用済核燃料が施設内で満杯になり
、運転できない事態を起こすという。

この使用済核燃料の解決は、トリウム熔融塩炉しかないと見ている。
このトリウム熔融塩炉技術に詳しい木下幹康、東大人工物工学セン
ター客員研究員の講演会があるので、お台場にある東京都産業技術
センターに行ってきた。

木下さんの講演会
原子力の問題には2つある。1つが放射能、もう1つには爆弾の製
造であり、この2つをどうするかが問われるが、原子力は原発、空
母・潜水艦の動力、核兵器の3つで利用されている。

1957年のスプートニク・ショックまでは原子力研究が軍用と民
間用を並列して進めていた。しかし1957年以降は軍用研究に米
国はシフトする。米海軍のリコーバー提督がこの軍用研究を推進す
る。

潜水艦用の動力として開発し、それを民間用に転用して原子力発電
の軽水炉を生み出した。
燃料のウラン棒は、U235が4.5%とU238が95.5%にしてジルコジウムで
カバーしている。融点は2300度であり、これ以上の熱になると溶け
出す。このため、水で冷やさないといけない。現在、最新鋭の原発
であるウエスティング・ハウスのAP1000も原子炉の上に水を大量に
貯蔵して、事故時、その水を原子炉に注入するようになっている。

ウラン235は、自然界に0.018%しかないが、トリウムは1%もあるた
めに資源としての枯渇を心配しないで済む。このため、ウランを増
殖させようとして高速増殖炉「もんじゅ」を作ったが、失敗した。

トリウムの核反応は、中性子が当たるとウラン233になり核物質
になるが、どんどん分裂してプルトニウムやストロンチュームなど
のような質量が重い物質にならない。軽い方に向かう。ウランより
大きな質量の物質は、マイナー・アクチノイドと言って、2万年以
上の半減期の物質であり自然界にはない。これが問題なのである。

このトリウム炉は、1957年まで民間用として研究されていた。
2万KWの実験炉が1965年から1969年までの4年間、米オーク
リッジ研究所で運転していた。

しかし、スプートニク・ショックで、トリウム原発は、プルトニウ
ムができず核兵器ができないために、軍用としての核開発を優先し
たときに研究を中止させられた。オークリッジ研究所でも研究が中
止になった。

再度、現在使用済燃料の問題で、このトリウム熔融塩炉が見直され
ている。トチウム熔融塩炉では使用済燃料問題が起きない。質量が
軽くなったセシウムなどの核反応生成物を取り除き、運転が可能で
あり、また燃料のトリウムを足していくことで運転を長期に継続で
きる。
また、今後の原子力利用では、水素製造が重要になるが、オークリ
ッジ研究所では、トリウム炉での700度程度で水素を製造できる
水熱分解の手法を開発している。

トリウム熔融塩炉の欠点としては、フッ素を使うために化学制御が
必要なことと、水という遮蔽剤がないために炉内全体の放射線量が
高くて遠隔メンテが必要になること、プルトニウムなどが起動時に
必要になることの3つである。

世界はこのトリウム熔融塩炉を開発しだした。特に中国では2017年
までに実験炉を作るところまで行く。

早く、日本の原子力政策を見直して、安全で使用済核燃料問題がな
いトリウム原発を作り、今までの核ゴミを消滅させながら電力も得
るような政策に変更することが重要であろう。

さあ、どうなりますか?

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