オーストラリアのギラード政権は4日までに、国防の指針である初 の「国家安全保障戦略」を策定した。 しかし、豪中の相互貿易が1200億豪ドル(約11兆6千億円) にのぼる中、「中国を敵に回したくないし、現時点で中国は敵でも ない。米国か中国かの選択ではない。中国を刺激しないよう細心の 注意を払っている」(国防省幹部)という。 もちろん、日本との同盟強化もしないし、味方もしないと、産経は 不満そうであるが、これが現実である。いかに「河野談話見直し」 が日本の国益を損なっているのか明白である。 また、米MIT教授のバリー・ポーゼンも中国は、すでに恐るべき競争 者になりつつあるが、現在、同盟国のフリー・ライドを許している。 米国がGDPの4.6%を使っているのに、日本は1%であり、日本のよう な金持ちに社会保障を与えているようなものであるという。 現在の取り決めでは、米国は日本防衛を負担し、日本はそれを補助 しているが、この取り決めは再交渉され、逆転されねばならないと。 米国の国防費は大幅削減される可能性が高く、日本は防衛費の大幅 な増強が必要になる。現在安倍政権は400億円の防衛費増をした が、日米関係維持に不足となるかもしれない。今後、厳しい状況に なることが確実である。 12兆円の公共事業に予算を振り向けずに、防衛費に予算を振り向 けるべきではないでしょうか。米国は日本を助けてくれない。自分 で中国に対応しろと首脳会談で言われることになりそうである。 この状況を見て、中国は余裕を取り戻し、今後の軍拡で日本を戦争 前に屈すことになるまで待とうとなっている。 沖縄も中国のものという論調も出てきている。領土拡大は無限に続 くことになる。ナチス・ドイツの領土割譲要求と同じである。 さあ、どうなりますか? ============================== 軍高官「戦争は最後の選択」=戦略的好機を優先−中国 【北京時事】4日付の中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報 は、人民解放軍の劉源・総後勤部政治委員(上将)が行った報告を 掲載した。劉氏はこの中で「戦争は軍人からすれば唯一の選択だが 、国家から言えば最後の選択だ」と述べ、国家や国民の富強に向け た「戦略的好機」の確保を優先する重要性を訴えた。 劉氏は、故・劉少奇元国家主席の息子で、高級幹部子弟「太子党 」に属する習近平総書記とは幼なじみで関係が深い。軍機関紙・解 放軍報は1月14日、党中央軍事委員会主席を兼ねる習氏の指示に 基づき、総参謀部が「戦争の準備をしっかりと行え」と全軍に指示 を出したと伝えたが、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐ り日中関係が悪化する中で強硬論を打ち消した劉氏の発言掲載は波 紋を広げそうだ。(2013/02/04-17:22) ============================== 豪安保戦略、抱えるジレンマ 日米との同盟深化も …最大貿易国・中国に配慮 2013.2.4 20:12 sankei 【シンガポール=青木伸行】オーストラリアのギラード政権は4 日までに、国防の指針である初の「国家安全保障戦略」を策定した。 主に中国の脅威を念頭にした米国や日本との軍事協力、サイバー攻 撃への対応強化などが柱だ。ただ、対中脅威認識に関する記述は極 めて抑制的で、最大の貿易相手国である中国が、「二律背反の存在 」(国防省幹部)であることも印象づけている。豪州国内には対中 政策との絡みで、日本との協力強化に水を差す論調も一部にみられ る。 国家安全保障戦略は戦略環境の基本認識として、オバマ米政権と 同様、安保の中心軸はアジアに移行したと指摘している。 米国との同盟関係強化では、合同訓練や「防衛貿易協力条約」、 新型電子戦機の取得などを通じ相互運用性を高め、米海兵隊のロー テーション展開などを支援することなどを掲げている。日本とは「 日米豪3カ国の協力を通じ、包括的な戦略を構築する」など、主に “日米豪トライアングル”の観点から、協力を深化させる方針を示 している。 一方、中国に関する記述は、(1)軍事的な発展は経済成長の結 果であり、自然なことだ(2)急速な軍備の近代化はある程度、地 域の不確実性を高め、海洋の領有権争いを悪化させている(3)影 響力を地域の平和と安定に活用するよう、中国に促す(4)豪州は 中国との経済、政治、戦略対話の構築を追求する−などである。 こうした「穏便」ともいえる表現は、豪中の相互貿易が1200 億豪ドル(約11兆6千億円)にのぼる中、「中国を敵に回したく ないし、現時点で中国は敵でもない。米国か中国かの選択ではない。 中国を刺激しないよう細心の注意を払っている」(国防省幹部)と いう、実情と本音の反映だといえるだろう。 しかし、野党・自由党のトニー・アボット党首は「中国に強い安 保上の懸念を表明し、圧力をかけるべきだ」と批判する。 日本との協力強化については、元国防副次官のヒュー・ホワイト 氏が「東京(日本)が豪州との緊密な関係に大きな関心をもってい るのは、中国ゆえだ。豪州の戦略的利益は日本とはまったく異なる。 尖閣諸島(沖縄県)をめぐり日本を支援するために、豪州は中国と 戦争をするのか」と、異論を差し挟んでいる。 これに対し、豪戦略政策研究所のピーター・ジェニングス所長は 、「より『普通の日本』を促すべきだ。(地域の)リスクは(日本 の)再軍備にあるのではなく、(日本が)地域の安全保障に強い影 響力をもてないことにある」と反論。オーストラリア国立大学のジ ョン・ブラックスランド教授も「日本は中国に対する均衡戦略にお いて、不可欠な存在だ」と強調する。 ============================== 米国は世界を改革することを諦めよ 対外関与消極論 2013年02月05日(Tue) 岡崎研究所 WEDGE MIT教授のバリー・ポーゼン(Barry Posen)が、フォーリン・アフ ェアーズ1-2月号掲載の論文で、米国は今まで通りに世界の安全保障 に責任を持ち続けられるかどうか分らず、続けられるのならばそれ でも良いが、そうでない場合、突然に責任を放棄するよりも、今か ら時間をかけて、同盟国がしかるべき負担を負う形を作っておくべ きである、と論じています。 すなわち、大統領選における民主、共和両党の政策を聞いていて も、米国が国際的責任を持ち続けるという点では、両党とも同じで ある。冷戦以来の米軍事力の世界的展開を継続する上、中国をウォ ッチ・リストに加えている。 こんなことをしていると、次から次に、限りなく問題に対処しな ければならず、同盟国はそれに甘えて防衛努力をしない。もう、そ ろそろ、世界を改革するということは諦めて、アメリカの国益に集 中すべきである。 中国は、すでに恐るべき競争者になりつつある。ソ連の脅威が激 しかった70年代半ば、ソ連のGDPは、購買力では米国の57%に達して いたが、中国の場合は、もちろん一人当たりはまだまだ低いが、 2011年には75%、2017年には米国と並ぶと予想されている。 このような状況の中で、現在のようなことをしていると、同盟国 のフリー・ライドを許すことになる。日本の場合、計算の仕方にも よるが、過去十年間、防衛費は削減あるいは停滞している。米国が GDPの4.6%を使っているのに、NATO諸国は1.6%、日本は1%であり 、これはドイツ、日本のような金持ちに社会保障を与えているよう なものである。 また米国の保証は危険でもある。台湾の民進党政権時代、台湾が 独立を仄めかして中国を挑発したのはアメリカの保護を恃んでのこ とであった。フィリピンやべトナムも米国の庇護を恃んで挑発的な 行動をしている。イスラエルについてもそう言える。 米国の伝統的戦略は、ユーラシア大陸における一国の覇権は許さ ないということであり、そのためにドイツ、日本と戦い、ソ連を封 じ込めてきた。しかし、中国が覇権を握るかどうか、まだ、差し迫 ってもいないし、不可避的でもない。また、インド、ロシアなどに よってチェックできる。特に日本は、今は軽い負担しかしていない が、裕福で科学技術も優れている。現在の取り決めでは、米国は日 本防衛を負担し、日本はそれを補助しているが、この取り決めは再 交渉され、逆転されねばならない。 中国の興隆を前にして、米国はこの地域から去ることはできない が、当面の必要以外は削減できる。基地問題などのある海兵隊は引 き揚げ、海空軍は削減すべきである。 世界的に、経費節減のため、そして、同盟国に対して自助努力を すべき時が来たことを告げるために、駐留米軍を削減すべきである。 それは、同盟国が自国の防衛力を強化し、政治外交的にも自分で自 分の世話をできるようにさせるために、10年ぐらいかけてゆっくり 行われるべきである。 あるいは、経済的地政学的状況が変わって、米国は今のままを続 けることが出来るかも知れない。それならば今のままで良いが、も し、変化が急激に来ると、味方にとっても敵にとっても危険な状況 となる、と論じています。 ◆ ◆ ◆ この論文は、米国の海外コミットメント引き揚げ論ですが、リバ ータリアンのような原理主義的な孤立主義ではなく、よく論理を尽 くしたものになっています。 台湾問題や海兵隊引き揚げなど、危うい主張もしてはいますが、 現時点において、この論文が空理空論でないかもしれないのは、オ バマ周辺が「ハト派の忠臣」(dovish loyalists:オバマの言うこ とを聞くハト派)で固められていて、財政の崖が解決されず、国防 費が大幅削減される可能性が未だ排除されていない状況においては 、そのための理論武装ともなり得るからです。 その場合、この論文も提起している唯一の解決法は、同盟国の負 担増です。この点、日本は、あるいは、最早逃れられなくなる可能 性もあると覚悟すべきです。 冷戦時代を思い起こせば、1970年代、西側がデタントの夢を貪っ ている間に、二度の石油ショックで膨大な収入を得たソ連が軍拡に 乗り出し、ソ連の脅威時代が現出しました。70年代末のソ連のアフ ガン侵攻で眼が醒めた米国は、同盟国に対して、毎年実質5%の防衛 費増額を要求し、英独仏はこれに応じ、たちまち西欧の軍事力が改 善され、石油逆ショックの影響を受けたソ連は、到底これと太刀打 ちできず、86年にはペレストロイカに追い込まれ、それがそのまま ソ連邦の解体を導きました。 当時、NATO諸国がネット5%増を三年だけ続けたのに対して、日本 は、ロン・ヤス時代を中心に、90年代初頭まで十年以上増額を続け 、F-15が200機、P3Cが100機、イージス艦が6隻の大海空軍を建設し て、極東の軍事バランスを一変させています。それが、その後20年 間更新されず中国に追い付き追い越されつつあるのは大問題です。 当時、日本はまだ高度成長期であったから大軍拡が出来ましたが、 今回は、当時の英独仏のように、経済成長の有無にかかわらず防衛 力増強をしなければならないような客観的情勢になりつつあると思 われます。 今回の安倍内閣の防衛費増額は誠に時宜を得たものですが、ある いは、今後の成り行きによっては、それだけでは日米関係維持に不 足となるかもしれないことを覚悟すべきでしょう。