4568.和食が世界遺産



NHKで1月2日に放送された「和食が世界遺産」は面白かった。2013年
秋、日本に新たな“世界遺産”が誕生する可能性がある。
それが「和食」で、フランス、地中海、メキシコの食文化がユネス
コの無形文化遺産に認定され、食文化として初めて“世界遺産”に
なったのは2010年。以来、トルコ料理が後に続いている。次の和食
が来るか?秋に審査がある。

気鋭の若手フランス人シェフのダヴィッド・ブランさん(東京六本
木 ホテル副総料理長)が和食の魅力を探る構成になっている。

和食は、昆布と鰹節の出汁が基本である。極上のカツオ節が作られ
るまでには、多くの工程があり、カツオを燻、その後カビで水分を
取り、またタンパク質を分解してアミノ酸に変化させる。職人たち
の地道な努力が1年もかかるのである。

昆布は、フランスでは畑の肥料にすぎないが、日本では重要な食材
になっている。昆布は取って乾燥させるが、すぐに昆布出汁を取る
と雑味が多く、香りも磯の匂いが強いのでいい味ではない。これを
20年近く筵の中で置いておくと、雑味や磯の匂いが消え、昆布本
来の麦と同じタンパク質の香りになる。非常にいい味になるのだ。
このように時間をかけて、ダシにしている。

この昆布を出汁に使えることを発見したのは、昆布から塩を作って
いたことに始まる。昆布から作った塩が美味しかったので、昆布自
体を使ってみたことから出ている。

出汁としては、干し魚を使うが、この和食の起源が縄文に遡り、そ
の土器の発明が人類の食の歴史に革命をもたらした。出汁を使い、
煮物を作ることが縄文時代から始まったのである。

和食の基本は縄文時代にできている。

フランス料理の出汁は、魚や動物の骨、頭と野菜を8時間煮出した
スープがベースになる。というように日本のラーメンのスープと同
じ感じで出汁にしている。

フランス人シェフのダヴィッド・ブランさんは、和食の清汁を作る
が、その具にフォアグラを使い、新しい感覚の和食を作り、和食の
可能性を広げた。ブランさんは、フランス料理に和食の感性を入れ
ることも考えているという。昆布と鰹節の出汁なのであろう。

和食の魅力を私も知った。良い番組である。
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1月28日テレビ東京の未来世紀ジパングで、和食の世界遺産での
取り組みをしていた。

和食の定義は、菊乃井の村田社長が言うには、「うま味」であると
いう。それ以外は、その土地の好みで変えればよいのである。
その「うま味」とは何かというと、昆布だしのグルタミン酸とカツ
オだしのイノシン酸であるという。これが和食の基本という。

その「うま味」をベースにした料理が和食であるという定義になり
、ロンドンの店では巻き寿司は、ノリではなくライスヘーパーで巻
く寿司を出している。その土地に合わせた材料をだしが聞いた味付
けにすれば、それが和食となると。

この和食文化を伝えるには、外食、中食、内食の3つの分野で環境
を整備することが必要。機械、調味料などの食材、食文化を育てる
教室などである。そして、2015年が和食のグローバル化元年と
した。この年にミラノ万博があり、そのテーマが食ということで、
ここに向けて準備が必要だとした。
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2013年、和食がユネスコ世界無形文化遺産に!〜「なぜ和食は世界
一なのか」 永山久夫著(朝日新書)
書評・レビュー2013年1月23日 14:45  IBNEWS
 現在、日本政府は「和食 日本人の伝統的な食文化」をパリのユ
ネスコ本部に世界無形文化遺産として登録申請中である。そして、
今年、和食が世界無形文化遺産に認定される日が近づいている。

 和食ブームを反映して、世界各国で和食ファンが増加している。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、アメリカにある和
食の店は、現在1万4129軒で、10年前の倍以上になっている。ヨー
ロッパでは、フランスに約1,000軒、イギリスには500件以上もある。
香港にも多く、鮨屋や居酒屋などが900軒もある。

 著者永山久夫氏は1932年生まれの81歳。長寿食研究所所長で西武
文理大学客員教授(和食文化史)である。古代から明治時代までの
食事復元の第一人者でもある。豊富なウンチクを織り交ぜながらの
解説が実に面白い。

 本書は、第1章の和食は現代人を元気にするから始まり、和食に
は「八つのサプライズ」がある、情報化時代にも対応している和食
、和食は老いない体を作る、ご飯グルメ民族の奥義、和食を支える
発酵ワールド、肉よりも大豆たんぱく質を選んだ和食、日本人の微
笑も育てた「ダシの味」、定番和食のセレクト・テンの全9章で構
成されている。

 日本人は、その食べ物が持つ健康効果を子供たちに分かりやすく
伝える手段として比喩を多く使ってきた。一種の食育である。「畑
の肉」は大豆(肉に劣らないほどタンパク質を含む)、「海の玄米
」はイワシ(イワシは頭から丸ごと食べられ、しかも栄養豊富な点
が玄米にそっくり)である。「畑の腹薬」は大根(消化を助け、胃
のもたれを解消する)である。大根は「生でよし、すってよし、煮
てもよし、干して、漬けても、これまたよしよし」と言われ、昔か
ら台所の千両役者だった。【4章】

 日本人ほど器用に、自然界から微生物を取り込んで発酵食品(味
噌、みりん、酢、日本酒等)を作って食文化を豊かにし、健康管理
(製造過程で用いる"麹"には酵素が100種類以上含まれている)に役
立ててきた民族も少ない。特に味噌は「十徳」があると言われ、嫁
に行く娘にしっかり味噌汁作りのコツを教えるのは母親の重要な役
目だった。【6章】

 六世紀に、伝来した仏教の信仰を持った日本人は、慈悲の心から
肉食を止め、その肉の代替フードとして大豆のタンパク質を選ぶ。
魚介類は食べるが、肉食はしない、この肉食回避は明治時代まで続
くが、栄養的にも、味覚的にも全く困らなかった。大豆には、35%
ものタンパク質が含まれており(牛肉で18%、豚肉で20%、マグロ
の赤身で26%)、さらにタンパク質の優劣を決めるプロティン・ス
コアが100であり完璧なのである。この大豆の加工品は、煮豆、黄粉
から始まり、味噌、納豆、豆腐、油揚げ、凍り豆腐(高野豆腐)な
ど多岐に亘る。【7章】

 世界で認識されている味は塩味、甘味、酸味、苦味の4つが基本
であった。しかし、味の研究が進んで、最近、和食独特の「うま味
」(UMAMI)も人間共通味であることが判明、5番目の味となった。
【8章】

 我々は、「医食同源」というと、その言葉の由来から「中国料理
」を連想することが多い。しかし、「和食」は「中国料理」に優る
とも劣らないほど「医食同源」である。

 今こそ、日本人自身が、老若男女を問わず、「おいしい!美しい
!健康にいい!」と3拍子揃った理想食である和食に回帰すべき時
である。世界無形文化遺産に登録され、逆輸入され、その偉大さに
気づくのではいかにも情けないではないか。
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縄文人がサケ煮炊き? 料理に使った最古の土器
 北海道や福井県の遺跡から出土した1万1千〜1万5千年前の縄
文式土器の焦げ跡に、サケなどの魚を煮炊きしたとみられる脂質が
含まれていることを日英などの研究チームが見つけ、11日付の英
科学誌ネイチャー電子版に発表した。チームは、料理に使われた世
界最古の土器としている。

 農耕が始まる前に発明された土器は、氷河期を乗り越えるため食
料の貯蔵などに使っていたとみられていたが、栄養価の高い魚類を
料理していたことも示すという。縄文人の暮らしぶりの一端を明ら
かにする成果。

 チームは北海道や新潟、福井、長野、鹿児島の13遺跡から縄文
式土器計101個を集め、焦げ跡を分析した。
2013/04/11 02:00   【共同通信】


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