4581.米中関係の未来



ー協力と競合のバランスー
親中派と思われるデービッド・シャンボー ジョージワシントン大
学教授の講演会を1月23日に聞きに行った。この10年間以上は
ジャパンパッシングされて、中国に行っていると慶大の添谷教授か
ら紹介があった。添谷教授とはミシガン大学で同期とのこと。しか
し、今回は日本だけ1週間も居て、そのまま米国に帰ると。

1966年両親と訪日したのが初めてで、ホテル・オオクラに泊ま
ったが、今回そのホテル・オオクラに泊まっているが、昔と同じ建
物であるのに、感激した。(いまどき、世界的には少ないというニ
アンスのようだ。)

米中関係は、国際関係でも最重要な関係で、特に東アジアの地域で
は特に重要で、この講演会でも30ケ国以上の大使館関係者が参加
している。それほど、関心が高いようだ。

このように米中関係の変動は、大きな波紋や影響を多くの諸国に与
えることになる。しかし米中関係の温度を測ることは学者が行うこ
とではなくジャナリズムが行い、学者は一歩引いて米中関係を冷静
に分析的に見ることになる。そして構図を描く。時事的な問題を論
じない。例えば、元の為替動向を述べない。

米中関係を胡錦涛主席もオバマ大統領も重要な2国関係と言うが、
しかし、外交関係は複雑である。2つの国は巨人であり、絡まって
いる。経済・外交・知・教育・技術などあらゆる分野で共同的な運
営を行なっている。絡み合っている。複雑で分析不能な関係にある
。定義できない関係である。

2つの国は、大きな力を持っている。経済・軍事(宇宙を含む)・
エネルギーで世界のトップ2である。貿易相手国として両方ともに
1位である。中国の対米投資は120億ドル、16万人の中国人が
米国に留学している。3万人の米国人が中国に留学している。
このような2国間のダイナミックスな関係を知ることが重要である。

しかし、この10年で大きく変化してきた。主要な要因は競合と協
力の関係である。協力より競合が上回り、非対照的な競争になって
きている。非対照的な関係が続くと戦争になる危険もある。

戦争と平和の問題になり、その間に現在いる。
協調的な関係は脆弱になってきて、相互の安全保障のジレンマに陥
っている。緊張的な関係になってきている。

台頭する大国の権力移行の理論に従い始めている。この理論では今
までの大国は不安な気持ちになり、台頭する大国を叩く可能性があ
るという。

2020年から2030年は難しい時代になっていくことになると
見る。強い競合関係にならないように管理することが必要になって
いる。しかし、G2の関係になるように2年前、中国に呼びかけた
が、中国は拒否した。

このため、競合関係が強くなり、協調関係が弱くなって両国ともに
不信感が大きくなってきている。国際関係での協力的な関係がなく
なっている。

このため、胡錦涛主席もオバマ大統領、クリントン国務長官ともに
新しいタイプの関係を築くことが重要であるという。非対照的な関
係が戦争にならないような関係をつくることであるが、まだその姿
が見えない。

米中間では政治構造も違うし、世界観も違う。条件が違うために関
係の構築が難しい。米中関係がギクシャクしていると、周りの国に
大きな影響を与える。日本も同様である。

また、中国政府がコントロールできない国内構造ができている。し
かし、中国はグローバル・プレーヤーになってきている。そして、
当初、中国は米国の権益を侵さないようにしていたが、東アジアや
中央アジアなどで権益を侵し初めて競合関係になってきた。この競
合関係を戦いの関係にしないようにどうするか、米国は考えている。

対立の関係にしないように、米中がマネージすることが必要である。
イデオロギーでも中国モデルとワシントンモデルでは大きく違う。

2国間の対話の場が現在60以上もある。しかし、その60以上の
対話の場でも合意ができないでいる。協力のための対話から競合を
高めないための対話になっている。心理的な格闘を対話の場所では
している。1つの合意ができず、お互いの違いを知るしかない会議
になっている。

しかし、それでも、このように対話の場を作ることに米国は注力し
ているので、中国封じ込めというオプションはない。

しかし、両国民の不信感は60%以上になり、両国間に不信感が根
付いている。東アジア諸国でも中国に不信感がある。しかし、封じ
込めというのは冷戦のことであり、それはしない。

米国は、現在リバランシングに向かっている。ピボット戦略を取っ
ているが、これが中国の誤解を生んでいる。このため、説明方法を
考えている。一面的な軍事上のことではなく、包括的な関係を作る
ことで中国の懸念を下げる必要がある。このためTPPもある。

2009年、10年以降、中国は動き出した。自己主張を前面に出
してきた。主張する外交に変化した。このため、表向き米中関係は
競合関係が広がっているように見える。キシンジャーは米中を共進
化した関係にして、両国が伸びていく関係にするしかないという。

もし、米中が離婚すると、悲惨な戦争になる。このようなことを実
現させるわけにはいかない。

しかし、北京に住んでいて分かるが、中国の反米感情が大きくなっ
ている。それを解決する策は今のところ、思いつかない。

(添谷教授のコメント)
つい最近の香港での会議に出たことがあり、中国は強く日本・米国
を非難してくる。中国の歴史的な屈辱感からのマインドで、かつ自
信を持ってきたことでの対立が生じている。変えようがない感じで
ある。今後、長い間、摩擦の状況が続くことになりそうで憂鬱な気
分になってくる。

Q:尖閣問題で中国がエスカレートさせる理由は何か?
A:2・3の理由がある。
 1.日本の様子を見る。
 2.軍事力や国内ナショナリズムで状態を変化させる。
   これにより共産党の権力基盤を確立させる。
 3.日米同盟で米国がどう出るかを探る。
   このため、毅然とした対応が必要である。

Q:安倍外交についてどう思いますか?
A:安倍外交については支持しているが、中国にも声をかけるべき
で、ヘッジングすることが必要だと思う。中国にも手を差しのべる
ことである。封じ込めと思われないことである。

Q:解決するにはどうすれば良いのですか?
A:対中政策は、対立の中に協力もする。中国を固める方向から国
内を分散させる方向に持っていくことだと考える。しかし、民主化
しても不変かもしれない。

最後に、添谷教授が中国は難しいと世界が見られているので、これ
を活用することが必要とコメントした。

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