4523.中国政治体制と今後



中国の政治体制は確定した。今後の中国の動きが大きな影響を周辺
諸国だけではなく、世界に影響を与えることになる。これを検討し
よう。   津田より

0.政治体制を見る
1章で述べるが常務委員、政治局員が中国のトップであり、この集
団での審議・多数決で運営しているのが、今の中国である。このた
め、常務委員7名だけではなく、政治局委員の25名も重要である。

この常務委員7名を見ると、総書記の習近平氏のほか、首相の李克
強氏、全人代常務委員会委員長の張徳江氏(66)、全国政協主席の
兪正声氏(67)、中央書記処常務書記の劉雲山氏(65)、中央規律
検査委員会委員長の王岐山氏(64)、常務副総理の張高麗氏(66)
であると予想されている。恐らく、この通りになると思う。前体制
と違い、首相と全人代委員長の順位が入れ替わっている。

その他の政治局員18名は、馬凱、王滬寧、劉延東(女性)、劉奇
葆、許其亮、孫春蘭(女性)、孫政才、李建国、李源潮、汪洋、
張春賢、范長竜、孟建柱、趙楽際、胡春華、栗戦書、郭金竜、韓正
である。

政治局25名の色分け(*印は政治局常務委員)を見ると、

太子党としては、習近平* 王岐山* 張高麗* 張徳江*であり
、常務委員しかいない。
 
共団派としては、李克強* 李源潮 王炉寧 劉延東(女) 劉奇保
 許其亮 王洋 胡春華 栗戦書 郭金龍 馬凱 張春堅など多数
を占めている。

上海閥(江沢民派の影響が強い)は、愈正声* 劉雲山* 韓正 孟
建柱である。

不明・中立は、氾長龍 李建国 趙楽際 孫春蘭(女) 孫政才であ
り、政治局で見ると、圧倒的に共団派が多くなる。

共団派で見ると改革派が多くなり、習近平体制では、改革を進める
可能性が高いことがわかる。

事前の予想と違うのは、特に李源潮氏、王洋氏が常務委員になれず
に兪正声氏、劉雲山氏がなったことである。胡氏は党大会前、軍と
党の両方の権力を実質、手中にしていたので、団派が有利と思われ
ていたが、江沢民が、習氏と温家宝首相のスキャンダルを握り、そ
れを欧米メディアに流すと脅して巻き返した。

その上に、胡氏や李克強氏、李源潮氏らの高官の不正情報をも流す
とし「共産党政権を道連れに共倒れする」という姿勢を取った。

このため、後影響を恐れて躊躇する胡氏の足元をみて、一派の常務
委入りを迫ったことで実現した。しかし、この取引で政治局員では
共団派が多くを占めたようだ。上海閥や太子党が占めていた天津や
重慶、深センなども共団派が取った。また、政治局を抑えたことで
、次を狙えることになった。

政治局常務委員の王岐山、劉雲山、張高麗、張徳江、愈正声の五人
は60歳代後半で68歳定年制の規制のために、「次」がない。
政治局員として置き、5年後を狙うことにしたようである。

この企みを阻止する役目が、太子党の王岐山である。汚職を取り締
まることで、党幹部に睨みを利かすことになる。

1.中国の政治体制とは
中国という国は共産党の領導で国を動かすことになっている。その
意味では、北朝鮮と同じである。領導である。個人か集団の違いが
あるだけだ。

そして、この領導対象である重要な政策、人事に関する決定権は、
政治局常務委員会という機関に帰属し、最高領導権は政治局常務委
員が共有されていることになっている。そのため、重大な問題につ
いては、「会議で決定する」という規則が盛り込まれ集団領導の制
度が確立されている。

しかし、大きな問題は常務委員会の前に政治局会議で論議して、常
務会議に掛ける。これは領導小組を動かしているのが実質、当該小
組の事務局である弁公室であるからで、弁公室主任は政治局員がな
っている。

他方、常務委員の間での担当分業の制度によって、「重大な問題」
に該当しない問題、業務執行上の問題に関する最終決定の権限は、
各常務委員によって分有されている。この基盤が領導小組か委員会
である。

総書記の党規約における権限は、最高領導権は付与されていなく他
の常務委員とほぼ同一である。しかし、常務委員会の会議の議題の
選定も含め、会議の準備作業を行う中央書記処の業務を主宰したり
、重要機関のトップを複数ポスト兼ねることで、実質的に他の常務
委員以上の権力を獲得している。このように、北朝鮮とは違い総書
記の権限は小さい。

党中央は、政策を決める領導機関であり、その政策を実行するのが
国務院の行政機関、軍事機関である。このため、関係機関の調整を
するのが、領導小組である。

領導小組としては、中央外事工作領導小組、対台湾工作領導小組、
国家安全領導小組、中央財経領導小組、中央宣伝思想工作領導小組
、中央党的建設工作領導小組などがある。領導小組とは、国の中で
予算や人員の編制を受けていない場合の最高決定機関を指す。通常
、複数の党政府部門に関連する問題を議事として扱い、協議調整す
る枠組みである。

領導小組の他には、委員会がある。中央軍事委員会、全国人民代表
大会常務委員会、国家国防動員委員会、政治協商会議全国委員会、
中央規律検査委員会、中央政法委員会などがある。

党中央の領導小組は、常務委員が組長を兼ねて、政治局とその常務
委員会に責任を負う。領導小組での結論は、常務委員会と政治局で
最終決定を経なければならない。このため、政治局会議が重要にな
る。政治局会議で認められないと、常務委員会にいかない。

2.政策はどうなるか?
北京市中心部の人民大会堂1階の記者会見場で、習近平新総書記は
、「私たちの民族は偉大な民族だ」。こう切り出した。貧しく弱い
中国が共産党政権の正しい指導によって富強かつ繁栄国家になった
と強調。近年、“死語”になりつつある毛沢東時代の流行語「為人
民服務(人民に奉仕する)」を2度繰り返した。

次に「共同富裕の道を歩み続ける」という言葉だった。「先に豊か
になれる地域と人々から豊かになろう」というトウ小平氏が唱える
「先富論」に否定的なニュアンスをもつ「共同富裕」は実は、今春
、失脚した薄煕来・前重慶市党委書記が最も好んで使っていた政治
スローガンだった。

また、「わが党は多くの厳しい挑戦に直面しており、差し迫った問
題が山積しているが、とりわけ腐敗は解決する必要がある問題だ」
と強調した。 

次の日に、初の第18期中央政治局会議を北京で開き、「『小康社
会』(いくらかゆとりのある社会)の全面的建設」を進めることを
確認するなどし、習体制が本格始動した。

共産党関係者によると、太子党を中心に党内では、胡錦濤時代に実
のある経済改革が実施されなかったことへのいら立ちが募っている
という。習氏は、江氏によって常に権力行使を妨げられてきた胡氏
に比べれば、重要な経済改革を断行できる環境にあるとみられてい
る。

経済改革では所得格差是正策が重要であり、それは、富裕層への増
税や国有企業経営者の報酬規制が想定されているが、国有企業が抵
抗しており、対策が提示されるかどうかは分からないが、「共同富
裕」や「小康社会」と明言しているので進むはず。

一方政治改革の方は、経済改革以上に見通しは明るくない。改革派
の李源潮・党中央組織部長や汪洋広東省党委書記が常務委に入らな
かったことによるが、こちらは全国各地の抗議運動が後を絶たない
などで、社会的な抵抗運動で変わる可能性があるし、5年後には改
革派2名が常務委員になり、それから進む可能性がある。

対外政策は、厳しそうである。習近平氏は今後の軍の任務として「
断固として党中央の指揮に従い、軍事闘争準備の優先的地位を揺る
ぎなく堅持し、国家主権を守らなければならない」と指示した。

3.日本との関係
日中関係を取り仕切ってきた外交トップの中央外事工作領導小組弁
公室主任の戴秉国国務委員(副首相級)が定年退職したことで、パ
イプが細くなることである。

一方、楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)外相が戴氏の職責を引
き継げば、日中関係の改善は遠のきかねないし、政治局員でもない
ので方針を決める中央外事工作領導小組弁公室主任の立場ではない。
中国の外交前面にいるメンバの権限が小さいことで、日本との交渉
も行き詰まることになる。

政治局員クラスの中央外事工作領導小組弁公室主任の人間が、外交
前面に出てこないと、問題が解決できないことになる。特に日中関
係は難しい局面に来ている。この条件を揃えるのは、王滬寧氏か李
源潮氏である。2名ともに政治局員になったことで、外交前面に出
てくることを期待したい。

そして、日本サイドでは、この2名とのパイプを探していくことで
ある。自民党政権で外相になると思われる高村さんは戴秉国とのパ
イプはあったが、この2名とのパイプが必要になる。

さあ、どうなりましか?


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習氏、軍事闘争準備を指示=尖閣、南シナ海念頭か−胡氏から軍ト
ップ引き継ぎ・中国
 【北京時事】17日の国営新華社通信によると、中国の胡錦濤国
家主席と習近平・共産党総書記(党中央軍事委員会主席)は、16
日に北京で開かれた中央軍事委拡大会議に出席した。この中で、胡
氏は「習同志は総書記と軍事委主席に就任することに合格した」と
述べ、後継として問題がないことを強調。習氏は今後の軍の任務と
して「断固として党中央の指揮に従い、軍事闘争準備の優先的地位
を揺るぎなく堅持し、国家主権を守らなければならない」と指示し
た。
 胡氏は15日の党第18期中央委員会第1回総会(1中総会)で
、総書記と軍事委主席を退任し、習氏に譲った。今回の軍事委拡大
会議は軍トップの引き継ぎとともに、尖閣諸島や南シナ海などの問
題を念頭に「わが国の安全環境は多くの新たな状況・問題・挑戦に
直面している」(胡氏)中で、軍の闘争準備を加速化させる狙いも
ありそうだ。(2012/11/17-21:32)
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南シナ海問題進展せず=ASEAN外相会議
 【プノンペン時事】東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳らに
よる一連の会議に先立ち、加盟10カ国の外相会議が17日、カン
ボジアの首都プノンペンで開かれた。一部加盟国と中国が領有権を
争う南シナ海問題などについて議論したが、目立った進展は見られ
なかった。
 ASEANは中国との間で、南シナ海の活動に関し、法的拘束力
のある「行動規範」策定を目指している。ただ、中国が消極的で、
作業は停滞している。(2012/11/17-19:10)
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保守派ずらりの常務委 胡主席「政権共倒れ」回避のためか
【大紀元日本11月17日】中国の最高指導部に当たる政治局常務委員
会のメンバーが15日、発表された。総書記の習近平氏のほか、李
克強氏、張徳江氏、兪正声氏、劉雲山氏、王岐山氏、張高麗氏が常
務委入りを果たした。これまでの外部の予測と大きく外れ、メンバ
ーの顔ぶれは江沢民一派に偏り、改革派の後退が見受けられた。共
産党の存続を脅かす薄煕来事件以降、共産党政権内では熾烈なポス
ト争いが繰り広げられたが、最終的に、一党支配を維持させるため
に胡錦濤主席サイドが大きく譲歩したと見られる。

 だが、これで得た安定はすぐにぐらつくだろう。各種の対立をも
たらした根源が変わっておらず、それらがさらに大きな危機として
成長して行く。それはまたいずれ、共産党体制の足元を揺るがすこ
とになる。

 胡氏は党大会前、軍と党の両方の権力を実質上、手中にしていた。
だが、江沢民一派は、習氏と温家宝首相のスキャンダルを欧米メデ
ィアに流すことで巻き返しをはかった。胡氏や李克強氏、李源潮氏
らの高官の不正情報をも流すと言い放ったともいわれ、「共産党政
権を道連れに共倒れする」という姿勢をみせた。

 共産党政権は多くの暗黒部を有している。経済の統計数値から、
汚職、法輪功弾圧、臓器狩り、いずれの裏幕が破られても、その政
権の崩壊を招きかねない。江沢民一派はこの点につけ込み、高官の
スキャンダル情報を武器に、後影響を恐れて躊躇する胡氏の足元を
みて、一派の常務委入りを迫った。

 本来ならば、胡氏は薄氏の政変計画と臓器狩りを理由に、一挙に
周永康氏や江沢民氏を敗北させることができた。しかし、そのこと
によって、共産党政権の正当性がいっそう問われ、崩壊を招くこと
になる。胡氏は「党を守るため」にこの機会を失った。

 その結果、中央政法委のトップが政治局常務委員から外れたもの
の、江氏に近い張徳江氏、劉雲山氏、張高麗氏が常務委入りを果た
し、有力候補だった胡サイドの汪洋氏と李源潮氏が排除された。胡
氏自身は完全引退の形で江氏を道連れに、次期リーダーの習氏や李
克強氏が江氏の指図を受けなくてもよい身動きのできる状況を作っ
た。

 しかし、胡氏苦心の延命策も長く続かないだろう。現在、1億人
以上の中国人はインターネット上で共産党や、その関連組織「青年
団」「少先隊」からの脱退を表明している。全国各地で抗議運動が
勃発し、集団事件は後を絶たない。権力者の大多数は既得利益集団
であり、利益を独占する彼らは必然的に民衆と激しく対立する。今
回の人事でも明らかになっているのは、共産党指導部は自らの政権
を保つことは最重要課題であり、それと衝突するいかなる改革を行
う誠意も可能性も存在しないことだ。

 党大会前の布陣で、胡氏と習氏の側近により支配される軍部と、
江組が大半を占める常務委員会との間に、今後、衝突が避けられな
い。それもまた、胡氏の今回の延命策に終止符を打つことになるだ
ろう。
(大紀元日本編集部) (12/11/17 14:55)  
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「小康社会」建設を確認 新体制が本格始動
2012.11.16 23:36 sankei
 中国共産党は16日、新総書記に就任した習近平国家副主席が主
宰する初の第18期中央政治局会議を北京で開き、「『小康社会』
(いくらかゆとりのある社会)の全面的建設」を進めることを確認
するなどし、習体制が本格始動した。

 会議では、前総書記の胡錦濤国家主席が調和の取れた持続可能な
成長を目指す目的で提唱した「科学的発展観」の重要性についても
確認し、前指導部の政策路線を継承していく姿勢を強調した。会議
では新指導部選出を受けた党組織や地方トップの人事についても話
し合われたとみられる。

 また16日付の中国各紙によると、習氏は北京の人民大会堂で15
日、第18回党大会の代表らを前に重要講話を発表。「(胡氏らは
)率先して党中央の指導ポストを退き、崇高な徳性と高潔な人格を
体現した。敬意を表する」と述べ、前指導部の潔い引退を称賛した。
(共同)
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胡氏と決別「薄煕来の亡霊が現れた」
2012.11.16 14:08 sankei
 中国内外のメディア関係者約500人が、北京市中心部の人民大
会堂1階の記者会見場を埋め尽くしていた。予定時間を約1時間過
ぎた正午ごろ、閉会したばかりの共産党中央委員会総会で選出され
た7人の政治局常務委員が、党内の序列順に連なって登場した。

 先頭を歩くのは、13億人超の国民を率いる最高指導者のポスト
に上りつめた習近平総書記だ。濃紺のスーツに赤のネクタイ姿。笑
みをたたえながら会場の中央に立ち、指導部メンバーを1人ずつ紹
介し始めた。

 共産党の政治局常務委員の任期は5年だが、全員がそろって国内
外メディアと会見に臨むのは選出直後のこの1回しかない。会見と
いっても、総書記が一方的に話をするだけで、質問は受け付けない。

 前総書記の胡錦濤国家主席と同様、習氏もそれほど演説はうまく
ない。ただ、約5分間の決意表明は、胡主席ら過去の指導者の就任
スピーチとは明らかに違っていた。

 「私たちの民族は偉大な民族だ」。こう切り出した習氏は、貧し
く弱い中国が共産党政権の正しい指導によって富強かつ繁栄国家に
なったと強調。近年、“死語”になりつつある毛沢東時代の流行語
「為人民服務(人民に奉仕する)」を2度繰り返した。

 そして、次に習氏の口から発せられたのは「共同富裕の道を歩み
続ける」という言葉だった。「先に豊かになれる地域と人々から豊
かになろう」という●(=登におおざと)小平氏が唱える「先富論
」に否定的なニュアンスをもつ「共同富裕」は実は、今春、失脚し
た薄煕来・前重慶市党委書記が最も好んで使っていた政治スローガ
ンだった。

 習氏は薄氏と同じく太子党(高級幹部子弟)グループに属してい
る。ただ、2人は少年時代からのライバルで、個人的な関係は決し
て良くないと複数の関係者が証言しているが、支持基盤と人脈の多
くは重なっている。経歴も似ているため政治的スタンスも近い。

 その一方で、習氏は結局、胡政権の政策理念である「科学的発展
観」や「和諧(調和)社会」には触れなかった。政権を引き継いだ
直後の指導者が、いきなり前任者を無視するような演説をすること
は珍しい。

 この日のスピーチは、「胡錦濤政権への決別宣言」にも聞こえる
。北京の改革派知識人はこう感想を漏らした。

 「習近平氏の保守派としての本性が、ついに見えてきた。薄煕来
の亡霊が現れた−」。
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中国、習近平体制が発足−江沢民派が多数
2012年 11月 16日  10:12 JST 
WSJ
 【北京】中国共産党は15日、習近平新総書記を始めとする新指導
部を発表した。7人からなる新たな政治局常務委員は、江沢民前国家
主席(86)に近い勢力が多数を占め、江氏が権力闘争の中で先手を
打った形だ。 
 
 党内関係者などによれば、新総書記となった習近平国家副主席は
江氏に近く、前任の胡錦濤国家主席よりも、既得権益への切り込み
が容易となるとみられている。問題は、江氏人脈で固まった新指導
部が1990年代以降の積極的な経済改革を継続するのか、それとも多
くの党幹部が享受している特権を守ろうとするのかである。 

 一方、今回の常務委員争いで敗れた胡氏グループの何人かの党幹
部は、2017年の次期党大会で常務委入りを狙える地位を確保した。
ただ胡氏は、軍を率いる党軍事委員会主席のポストを習氏に譲り、
2002年に党総書記から退任した後も2年間軍事委主席にとどまった江
氏と同様の影響力を持つつもりがないことを示した。 

 しかし江氏よりも17歳若い胡氏は、革命後の中国では初めて一度
にすべての権力から身を引く完全引退に踏み切った指導者として、
党内で評価を高める可能性がある。 

 習氏は、父親が高名な革命の元勲の一人で江氏に近かった習仲勲
で、党幹部の子弟からなる「太子党」の代表とみられている。年齢
の関係で17年以降も常務委にとどまれるのは習氏のほか、次期首相
と目されている李克強副首相だけで、残りの5人は任期が1期5年だけ
となり、17年には再び権力闘争が起きる可能性がある。 

 江氏は太子党が多数占める緩やかなグループを率いているといわ
れるのに対し、胡氏はライバル・グループの共産主義青年団(共青団
)出身者。米ブルッキングズ研究所の中国政治専門家の李成氏は、
「新たな政治局常務委員会はバランスを欠いており、江沢民と太子
党に対する反発が起きそうだ」と予想する。 

 中国は現在、景気減速や近隣諸国との緊張激化に直面し、人口の
高齢化にも見舞われており、一方で党幹部の汚職や権力乱用に対す
る国民の怒りが高まっている。また、太子党の一人で江氏の腹心だ
った薄熙来前重慶市党委書記のスキャンダルも発生し、内憂外患の
中で今回、10年に一度の中国の指導部交代を迎えた。 

 胡氏は、8日から14日まで開催された共産党大会の初日の演説で、
「官僚の腐敗が深刻な問題となっており、党ひいては国家を崩壊さ
せる恐れがある」と警告した。習氏も15日、総書記として初の会見
で「わが党は多くの厳しい挑戦に直面しており、差し迫った問題が
山積しているが、とりわけ腐敗は解決する必要がある問題だ」と強
調した。 

 共産党関係者によると、太子党を中心に党内では、胡錦濤時代に
実のある経済改革が実施されなかったことへのいら立ちが募ってい
るという。習氏は、江氏によって常に権力行使を妨げられてきた胡
氏に比べれば、重要な経済改革を断行できる環境にあるとみられて
いる。また、常務委員が9人から7人に減ったことで、合意をとりま
とめられやすくなりそうだ。さらに、習氏が最初から軍事委主席に
就任することも、新体制発足時からの権力掌握をより容易にするだ
ろう。 

 習氏と何度も会っているケビン・ラッド元豪州首相は、「習氏は
経済改革が共産党の存続にとって必須であることを理解しており、
前任者よりも積極的に取り組むだろう」と述べる。温家宝首相は、
農地の接収に関する地方政府の権限を弱めるための法改正と、所得
格差是正策のとりまとめを命じている。中国メディアによると、所
得格差是正策としては、富裕層への増税や国有企業経営者の報酬規
制が想定されているが、国有企業が抵抗しており、対策が提示され
るかどうかはまったく分からない。 

 一方政治改革の方は、経済改革以上に見通しは明るくない。多く
の専門家は、改革派の李源潮・党中央組織部長や汪洋広東省党委書
記が常務委に入らなかったことを指摘する。しかし政治専門家の間
では、胡氏に近い両氏とも、17年には常務委員に昇格する有力候補
となるとみられている。 
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常務委員7人、政治局員25人が決まる 中国共産党大会 
2012/11/15 22:19 nikkei
 【北京=菅原透】中国共産党は15日、新しい総書記に習近平国家
副主席(59)を選出した。習氏は軍の事実上のトップである党軍事
委員会主席にも就き、胡錦濤国家主席(69)は両ポストから退いた。
党の最高指導部を構成する政治局常務委員は江沢民・前国家主席
(86)に近いベテランが多数を占め、改革派とされる若手の登用は
無かった。欧米が望む民主化や民営企業の育成など経済改革は停滞
する恐れもある。
 
 北京市内で第18回中央委員会第1回全体会議(1中全会)を開き
、習体制を決めた。常務委員は序列順で習総書記、李克強副首相
(57)、張徳江・副首相兼重慶市党委員会書記(66)、兪正声・上
海市党委書記(67)、劉雲山・党宣伝部長(65)、王岐山副首相
(64)、張高麗・天津市党委書記(66)の7人。従来の9人から減
らした。

 同時に、党指導部に当たる政治局員に胡春華・内モンゴル自治区
党委書記(49)や孫政才・吉林省党委書記(49)など「ポスト習」
世代の幹部ら合計25人を決めた。

◇
 中国共産党が15日の第18回中央委員会第1回全体会議(1中全会
)で選んだ政治局員は次の通り(敬称略、政治局常務委員は序列順
、その他は姓の画数順)。

 ▽習近平▽李克強▽張徳江▽兪正声▽劉雲山▽王岐山▽張高麗(
以上は政治局常務委員)

 ▽馬凱▽王滬寧▽劉延東(女性)▽劉奇葆▽許其亮▽孫春蘭(女
性)▽孫政才▽李建国▽李源潮▽汪洋▽張春賢▽范長竜▽孟建柱▽
趙楽際▽胡春華▽栗戦書▽郭金竜▽韓正
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共産党一党独裁への大衆の不満増幅 江沢民氏らの勢力、なお強い
影響力
2012.11.15 14:16 sankei[中国] 
 【北京=河崎真澄】中国共産党は第18回党大会の閉幕を受け、
第18期中央委員会第1回総会(1中総会)を15日、北京で開催
し、胡錦濤氏(69)の後任である新たな総書記(党内序列1位)
に習近平国家副主席(59)を選出した。党のトップ交代は10年
ぶり。これにより習指導部が正式発足した。

 習総書記が率いる党の最高指導部の政治局常務委員は、これまで
の9人体制から、習氏や来年春に首相に昇格する見通しの李克強副
首相(57)=党内序列2位=を含め、7人に減員された。胡氏に
近い共産主義青年団出身者は李氏のみで、胡氏の前任総書記である
江沢民氏(86)らの勢力が、なお強い影響力を残す布陣となって
いる。

 常務委員の2人減員は総書記の指導力を強め、意思決定のスピー
ドアップを図るためとされる。

 国営新華社通信によると胡氏は、軍トップの党中央軍事委員会主
席も退き、「完全引退」することが確定した。胡氏は政府の役職で
ある国家主席も来年3月の全国人民代表大会(全人代=国会)で習
氏に渡す。全人代で温家宝首相(70)の後任には李氏が就き、こ
の段階で党、政府ともに「習李体制」が確立する。

 常務委員の顔ぶれは、再任された習、李氏のほか、序列順に江氏
派の張徳江副首相(66)、太子党(高級幹部の子弟)の兪正声上
海市党委書記(67)、劉雲山党中央宣伝部長(65)、王岐山副
首相(64)、江氏派の張高麗天津市党委書記(66)。このうち
王氏は党中央規律検査委員会書記に就任した。

 胡指導部の10年間は「和諧(調和)社会」を訴えてバランスの
取れた発展を目標にしてきたが、実際は党幹部など特権階級の汚職
が拡大、都市と農村の貧富の格差も広がった。共産党一党独裁体制
への大衆の不満は増幅しており、習新指導部は経済政策や治安維持
など、発足直後から難しいカジ取りを迫られる。

 沖縄県の尖閣諸島をめぐる問題など、どのような対日姿勢を取る
かも注目される。
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「共産党の原点」回帰訴え=腐敗・民衆かい離に危機感−習総書記
が所信表明・中国
  【北京時事】中国共産党トップ・総書記に就任した習近平氏(国
家副主席)は15日、500人以上の内外記者団を前に「われわれ
は終始、人民と苦楽を共にし、人民と団結奮闘し、歴史と人民に向
けて合格と言われる答案を出すよう努力する」と述べ、人民と共に
歩むという共産党の原点に戻る姿勢を強調した。
 習氏は1949年の新中国建国を成し遂げた革命第1世代を父親
に持つ「太子党」。共産党の苦難と成功の歴史を持ち出し、中華民
族としての誇りと憂国意識に訴える一方、党をむしばむ幹部の腐敗
や民衆とのかい離が深刻化する現状に危機感を抱いた。約10分の
演説で「人民」を20回、「責任」を10回それぞれ繰り返した。
 さらに習氏は「近代以降、中華民族は最も危険な時を迎え、中華
民族の偉大な復興のため無数の志士たちが立ち上がり、失敗を重ね
た」と指摘。抗日戦争など列強の進出に苦しめられた「屈辱の近代
史」を持ち出すことで「愛国意識』」強調し、主権問題などで日本
に譲らない姿勢を示した。その上で「中国共産党成立後、人民が勇
敢に闘い、貧しく遅れた古い中国は日増しに繁栄・富強に向かう新
中国に変わった」と自賛した。(2012/11/16-00:09)
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戴秉国氏の中央委員引退は日本に痛手
2012.11.14 23:37 sankei
 【北京=川越一】中国共産党は14日、第18回党大会で新たな
中央委員205人を選出し、最高指導部の政治局常務委員会(現9
人)のうち、胡錦濤総書記や温家宝首相ら7人の引退が決まった。
沖縄県・尖閣諸島をめぐり中国と対立する日本にとって、常務委員
以外で気になるのが、外交トップの戴秉国国務委員(副首相級)の
定年退職だ。

 引退の常務委員は胡、温両氏のほか、呉邦国全国人民代表大会(
全人代=国会)常務委員長と賈慶林全国政治協商会議主席、李長春
、賀国強、周永康の各氏。

 現在71歳の戴秉国氏は中国の外交を統括する立場にあり、温首
相らが標榜(ひょうぼう)する国際協調路線を実践してきた。日本
と相対するときも両国間の摩擦を拡大させないよう尽力。2008
年の東シナ海ガス田の共同開発に関する日中合意をまとめた立役者
とされる。ただ、日本政府による尖閣諸島国有化への対応では、党
内から「弱腰」との批判を受けた。

 一方、楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)外相は今年9月の国
連総会一般討論演説で、尖閣諸島を「日本が盗んだ」と繰り返し強
調した。今回の中央委員選挙で再選された楊氏が戴氏の職責を引き
継げば、日中関係の改善は遠のきかねない。

 また李長春氏のほか、劉淇・前北京市党委書記、陳至立全人代常
務副委員長ら江沢民前総書記に近い中央委員が多数、委員を外れた。
かつての最高実力者、●(=登におおざと)小平氏の次女、●(=
登におおざと)楠氏も引退し●(=登におおざと)一族が党中枢か
ら姿を消した。「ミスター人民元」と称された経済政策通の周小川
中国人民銀行(中央銀行)総裁も引退した。

 今回、新任された中央委員で注目されるのは黄奇帆重慶市長だ。
失脚した薄煕来前重慶市党委書記を支えた黄氏が選ばれたことは、
党が薄事件の影響を極力抑え、党内融和路線を選択した可能性を示
唆している。
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薄氏関係者も中央委員に=6割が交代−中国
 【北京時事】中国共産党の第18回大会で14日に選出された中
央委員は、205人の6割を新人が占める大幅な入れ替えとなり、
若返りが進んだ。重慶市トップの党委書記を解任され、党籍も剥奪
された薄熙来氏と関係が深かった人たちも中央委員に名を連ねた。
 同市ナンバー2の黄奇帆市長は中央委員に昇格。故劉少奇元国家
主席の息子で、高級幹部子弟グループ「太子党」を通じて、薄氏と
の関係が深かった劉源・軍総後勤部政治委員は中央委員に再任され
た。薄氏の大連市党委書記時代の部下だった夏徳仁遼寧省党委副書
記は中央委員候補に選出された。
 胡錦濤国家主席の側近として党中央弁公庁主任を務め、党政治局
員への昇格も有望視されながら、党中央統一戦線工作部長に転任し
た令計画氏は中央委員に再選。家族の不正が発覚したための左遷と
されるが、中央委員からの失脚は免れた。(2012/11/14-21:59)
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 この習近平政権は頭だけ自派だが、実働部隊は殆どが団派
  胡錦涛は名を捨てて団派(共産主義青年団)が実権を事実上掌握
したのではないか?
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」2012年11月16日no.3815

政治局25名の色分け(*印は政治局常務委員)

習近平派 習近平* 王岐山* 劉雲山* 張高麗* 張徳江* 
 
李克強派 李克強* 李源潮 王炉寧 劉延東(女) 劉奇保 許其
亮 王洋 胡春華 栗戦書 郭金龍 馬凱 張春堅

上海派(江沢民派の影響が強い) 愈正声* 韓正 孟建柱

不明或いは中立  氾長龍 李建国 趙楽際 孫春蘭(女) 孫政才
 こうみると、政治局全体25名のなかで、李克強がこれから率い
ることになる団派は多数派を占めていることが分かる。
下馬評で政治局入りするとされた陳明銘と周強は「落選」。ただし
周強は最高裁のトップに回るとされる。
また予測されたように胡錦涛の秘蔵っ子だった令計画は政治局員か
らも漏れた。

 胡錦涛は「見えない院政」を敷いたフシがある。
第一に政治局常務委員の王岐山、劉雲山、張高麗、張徳江、愈正声
の五人は60歳代後半で「次」がない。五年後に焦点をあてたとす
れば、次の五年間に中国の政治決定、政策を主導するのは政治局の
中堅どころ、すなわち李克強以下の団派で李源潮、劉延東、王洋の
「三羽がらす」(いずれも政治局常務委員にはなれず)に加えて、
首都北京の書記を担う郭金龍、中央弁公庁主任となって習近平の官
房長官訳をつとめる栗戦書、軍の制服組の事実上のトップ(副主任)
となった許其亮、そして軍との連絡調整役という中枢を担う劉奇保
と、いずれもが団派であり、五年後にはいきなり第六世代のチャン
ピオン胡春華を浮上させるというビジョンがあるのではないのか。

 第二に北京、上海、天津、重慶という四大都市と広東省深センと
いう中国の中でも顕著な繁栄都市は上海をのぞいて団派人脈がおさ
えた。

 第三に胡錦涛が党の軍事委員会主任も降りたのは、江沢民の院政
に終止符を打つための道連れであったとするなら、飾りの主任とな
る習近平のまわりを囲むのは胡錦涛派ばかり。
副主任の許其亮が主導権をにぎり、参謀部、政治部も団派。
 予算を認めれば第二砲兵(戦略ミサイル軍)も、いずれ団派主導に
追随せざるをえず、軍内で団派の大物、劉源と張海陽がメンバー入
りから外され、習近平に近い太子党が得たのは総後勤部と総装備部
、国防部長となった常万全は江沢民派だが、しょせん、軍のなかで
国防部長は飾り、実力は総参謀部長、総政治部長に比べるとかなり
低い。
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香港紙「次期外相に李源潮氏」の予測、外相の地位低下に歯止めか
2011年6月10日 12時43分 サーチナ
 中国共産党の新しい指導者集団が決まる第18回党大会を来年に控
え、将来の中国の外交を誰が担うのかに国内外の注目が集まってい
る。香港紙・明報は9日、「現中央政治局委員で党中央組織部長の李
源潮氏(61)が、次期外交トップの本命」とする記事を掲載した。
多維新聞網が伝えた。

 記事は、「10年前に銭其シン・元外相が退いて以後、外交トップ
の地位が低下しており、唐家セン・元外相も、戴秉国氏も国務委員
どまりで、政策決定の中枢である政治局に入っていない」と指摘。
さらに「戴秉国氏は、中共中央外事工作指導小組弁公室主任として
中共の外交を任されているが、外相はその下での実行役にすぎない
」とした。有識者は、「近年の中国の外交には全体的な計画性が欠
けていて、国際的に重要な一部地区での対応が弱いのは、外交のト
ップが最高レベルの政策決定に関わっていないからだ」と指摘して
いる。

 現在、事実上の外交分野のトップである戴秉国・国務委員(外交
担当)は70歳。来年の共産党大会で慣例を破って政治局常務委員に
抜擢されない限り、引退は必至と言える。現外相の楊潔チ氏は、来
年62歳とまだ引退の年齢には達しておらず、予想外の事がなければ
、たとえ国務委員に昇格しなかったとしても、少なくとも外相を再
任すると思われる。しかし、楊氏の経歴、能力、健康状態から見る
と、別の人選もあり得るという。

 記事はさらに、「次期指導者層のなかで、外交トップは必ずしも
外交官の出身である必要はない」とし、「現在、中央組織部長を務
める李源潮氏が有力候補」と分析している。

 李源潮氏は、1990年代に国務院新聞弁公室及びその前身である中
央対外宣伝小組で働き、近年は、海外人材誘致計画「千人計画」を
指揮したほか、日中の外交を水面下で推進するなど、外交分野での
活躍も目立つ。将来、李氏が政治局常務委員として、習近平氏が主
管する外交事務を助ける形となれば、自然で道理にかなっている。

 記事は最後に、他の有力候補として王滬寧氏の名前を挙げている
。王滬寧氏は現在、中央書記処書記、党中央政策研究室主任をつと
め、18回大会での政治局入りが確実視されている。前職は復旦大学
国際政治学部教授で、英語・フランス語が堪能、国際法に精通して
おり、近年は胡錦濤総書記に随行して各国を訪問するなど、豊富な
経験をもっている。(編集担当:中岡秀雄)


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