4516.エネルギー安全保障について



原発ゼロにするなら、そのためのエネルギー供給をどうするかを考
えないといけない。だが現在、その問題以外でもエネルギー調達が
できなくなる可能性がある。しかし、この問題を政治家が考え始め
たことは、一歩前進である。     津田より

0.現状の状態
米国はシェールガス・オイル生産で、2030年代に自給可能にな
ることが確実であり、かつ米国は国防費の削減を求められている。

このため、軍事費を縮小させるために中東への軍派遣をしなくなる
。2014年までにアフガニスタンからの撤退で、米国は中東への
介入をしなくなる、できなくなる。

この方針は相当程度確かであるが、それに反対しているのがイスラ
エルである。イスラエルの存亡にかかる米国の方針変更になるため
で、イラン核開発問題を大事にして欧米の関心を引きつけようとし
ている。

イスラエルが中東にあることで、そうなる。イスラエルをアジアに
引越しさせれば、問題がなくなると米国も考えている可能性がある。
昔、第2次大戦前に日本がユダヤ人国家を満州に設立させる計画を
持っていたので、それと同じことできれば、それに越したことがな
いはずである。

このために、小国リトアニアの日本領事館に勤務していた杉原千畝
領事は、ユダヤ人にビザを発行し、英国は上海にユダヤ人を集めた
のだ。日本はロシアへの安全保障上の壁になるので企画したが、そ
れを当時の軍部などが潰したのだ。

一方、現在アジアは中国が軍備を拡大させて、周辺諸国への圧力を
増している。このため、米国はアジアへの軍備レベルは、現状の状
態を維持するというが、中国の軍事拡張でいつまで米国と同盟国の
優位な立場を維持できるか非常に危機な状況になっている。

特に中東へのシーレーンは中国も同じように防衛するべき対象であ
り、米国の安全保障がなくなることに危機感を感じている。中国は
、そのため米国に代わって安全保障に乗り出してくることになる。
そうすると、中国に楯突く国家のタンカーは守らない。

または、意図的に中国にとって好ましくない国のタンカーを海賊船
に襲わせることも行う国家である。このため、中国との領土紛争を
持つ国は中東の石油を使えなくなる。使えなくなると、中国は安値
で買えるので一石二鳥の利益を得る。このため、日本は石油確保が
苦しくなる。

1.エネルギー確保の道
このような近未来が現に見えている。この近未来を想定して、日本
は、次のエネルギー確保に向かわねばならない。

それは、中東の石油から北米のシェールガス・オイルにシフトする
しかない。と思っていたら、長島防衛副大臣が、私の思いと同じ方
向で意見を述べている。

TPPはプレシャーというより、日本が意思表示をしないと物事は前に
進まない。あまり大統領選挙のじゃまをしてはいけないと、自動車
産業などを刺激しないように、日本側ははっきり態度表明を先送り
してきた側面もあるが、再選されたことで、自動車業界や議会に気
兼ねすることなく大統領が意思決定できる環境が整っている。ここ
から先は日本の意思表示にすべてがかかっている。という。

TPPに加盟しないと、米国のシェールオイルを輸出してくれないこと
は米国の国内法上、確かである。または米国とFTAを結ぶかであるが
、どちらにしても日本の農業票を頼りにしている議員は反対するこ
とになる。

ここで、野田佳彦首相は、民主党内で賛否が割れている環太平洋連
携協定(TPP)交渉参加について、次期衆院選のマニフェスト(
政権公約)に明記する考えを表明した。民主党主流派は、石油確保
が難しくなることを知っている。このため、岡田克也副総理や前原
誠司国家戦略担当相、枝野幸男経済産業相もTPPに前向きだ。

これに対して、自民党の石破茂幹事長は、野田首相の環太平洋経済
連携協定(TPP)推進を争点化する考えを示したことについて「
首相には何をどのようにして守るのか説明する義務がある。それな
くして国内で二分された世論はなかなか収斂(しゅうれん)しない
」と批判し、「聖域なき例外なき関税撤廃には反対だ」とした。

というように自民党は都市議員より農村議員が多いことで、TPPに反
対するしかない。もう1つに自民は、エネルギー安全保障の見極め
がほとんどないことが確実になっている。もしあるのなら、近未来
のエネルギー確保の方法を説明することが必要になっている。

野田首相は長島副防衛大臣と同様な説明をするはずである。それに
対応した説明を自民党はしないとおかしい。

2.洋上風力発電など
エネルギー確保上、問題なのが原発ゼロでどのようにエネルギーを
持ってくるか、作り出すかになる。もう1つが、中国が海洋に乗り
出してくることが確実であり、米軍がいなくなるとそのシーレーン
は安定しなくなる。

このため、中東の石油が入らなくなることを想定した近未来のエネ
ルギー政策を考えることが必要になる。

太平洋ルートを安定させることが重要であり、訪米中の長島昭久防
衛副大臣は、国防総省でカーター副長官、国務省でキャンベル次官
補とそれぞれ会談し、自衛隊と米軍の連携の在り方を定めた日米防
衛協力指針(ガイドライン)見直しへ議論を開始することで一致し
た。長島氏は会談終了後、指針見直しをめぐる議論で「米側と方向
性が一致している」と表明したが、石油やLNGなどをカナダ、オース
トラリア、米国から輸入して、中東の石油の依存度を大幅に下げる
ことである。

もう1つが、洋上に風力発電や太陽光・熱発電で水素を作り、それ
を水素タンカーで日本の需要地に運び、固定酸化物燃料電池(SOFC)
と水蒸気タービンを使い、電気を作ることである。SOFCは、1000度
の熱が出るので、これでタービンを回すことができる。このため、
効率が高い。

また、石油を一番使うのが自動車であるが、2015年に燃料電池
車が発売されて、水素で動くことになる。2030年までに1500万
台になると予想されている。このため、洋上風力や太陽熱発電での
水素生成が重要になる。

もう1つが、使用済燃料の消滅処理をどうするかである。原発ゼロ
で新しい使用済燃料は出なくなるが、今までの使用済燃料は危険で
ある。この処理をしないと、福島4号機プールが崩壊すると使用済
燃料の放射線で、東京の住民にも避難勧告が出る事態になった可能
性があったが、これと同じことが起きる可能性もある。

このため、使用済燃料を消滅させるための消滅炉が必要になる。し
かし、これも原子炉であり、電気を生み出す。この消滅炉をどうす
るのか議論をすることが重要である。電気ではなく、水素を生成す
ることもできる。これは今後、計画が出来た段階で議論したい。

このようにエネルギー政策に必要なことは、多様なエネルギーのベ
ストミックスを探すことである。それがエネルギー安全保障でもあ
り、そのための政策を実現することが、国民を守ることになる。

3.自民党の政策を見ると
次回の衆議院選挙では、自民党が勝つことは確実である。しかし、
現状の公約を見ると、建武の中興を思い出す。国民を守るという視
点がない。一部の国民の利益を見て政策にしている。これは、建武
の中興と同じ構造のような気がしている。そのため、短期にダメに
なりそうである。

建武の中興では、後醍醐天皇が武士の利益を無視して、貴族の利益
を優先したことで、武士が再度、反乱して室町幕府を作ることにな
る。このままであると、その繰り返しになりそうである。もう少し
、現実の安全保障の問題点を直視して、政策にしないと、自民党次
期政権で日本を没落させそうで恐ろしい。

自民党の現実的な政策を期待したいが、

さあ、どうなりますか?

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TPP「公約に明記」=野田首相、衆院選での争点化狙う―民主内
の対立激化
2012年 11月 10日  19:06 JST 
 野田佳彦首相は10日、民主党内で賛否が割れている環太平洋連
携協定(TPP)交渉参加について、次期衆院選のマニフェスト(
政権公約)に明記する考えを表明した。首相は年内も含めて衆院解
散を検討しており、自民党が消極的なTPPへの参加を掲げ、次期
衆院選での争点化を狙う。ただ、民主党内の反対派は強く反発して
おり、分裂含みの対立に発展する可能性がある。 

 首相は10日、視察のため訪れた福岡市内で記者団に対し、「政
府・与党の考えは、TPPも日中韓の自由貿易協定(FTA)もア
ジアの域内包括的経済連携(RCEP)も同時に追求する姿勢だか
ら、マニフェストに書くことになる」と明言した。 

 岡田克也副総理や前原誠司国家戦略担当相、枝野幸男経済産業相
もTPPに前向きだ。岡田氏は同日、三重県桑名市で講演し、「T
PP交渉そのものが、そんなに時間がかからずにまとまると言われ
ている。参加するならそろそろ参加(表明)しなければいけないし
、参加しないなら参加しないと明らかにする時期ではないか」と述
べ、衆院選前に方針を打ち出すべきだとの立場を強調した。 

 しかし、民主党の反対派は「TPP推進のマニフェストで次の選
挙を戦う気はない」(若手)と離党も辞さない姿勢を示す。山田正
彦元農林水産相らは15日に都内で超党派の反対集会を開き、首相
に圧力をかける考えで、首相が公約への明記を強行した場合は党分
裂に陥りかねない情勢だ。  
[時事通信社] 
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石破氏、TPP争点化を批判 「世論は収斂しない」
2012年11月10日20時1分
 自民党の石破茂幹事長は10日、野田佳彦首相が環太平洋経済連
携協定(TPP)推進を争点化する考えを示したことについて「首
相には何をどのようにして守るのか説明する義務がある。それなく
して国内で二分された世論はなかなか収斂(しゅうれん)しない」
と批判した。 

 石破氏は自民党の姿勢については「聖域なき例外なき関税撤廃に
は反対だ」と改めて説明した。名古屋市内で記者団に語った。 

 一方、公明党の山口那津男代表は10日、東京都内で記者団に「
我々もしっかり議論したいが、あまりに熟度が足りない。何が争点
なのかはまだ熟していない」と語った。 
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防衛指針、見直し議論開始で一致 日米高官
2012年11月10日 12時55分
 【ワシントン共同】訪米中の長島昭久防衛副大臣は9日、国防総
省でカーター副長官、国務省でキャンベル次官補とそれぞれ会談し
、自衛隊と米軍の連携の在り方を定めた日米防衛協力指針(ガイド
ライン)見直しへ議論を開始することで一致した。米軍嘉手納基地
(沖縄県嘉手納町など)以南の基地返還計画の詰めを急ぐことも確
認した。

 長島氏は会談終了後、記者団に対し、指針見直しをめぐる議論で
「米側と方向性が一致している」と表明。自衛隊の米軍基地共同使
用や日米演習の在り方などが議題になるとの見通しを示した。
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オバマ氏再選:TPPに弾み…日本は足並み乱れも
毎日新聞 2012年11月08日 02時56分
 オバマ大統領の再選で、TPPの拡大交渉が再び加速しそうだ。
野田佳彦首相も交渉参加に意欲を見せるが、慎重論も根強く、国内
調整に追われる事態が続きそうだ。

 TPPの拡大交渉を巡っては、関税撤廃などの具体論で交渉参加
国の利害が対立し、当初目指した年内合意は来年以降に先送りされ
た。しかし、雇用拡大を目指すオバマ大統領にとって、アジア太平
洋地域との関係強化は通商政策の肝。オバマ政権は交渉の加速に全
力を挙げる見通しだ。

 日本が拡大交渉に加わるには、米国との事前協議で了承を得る必
要があるが、日本の参加には米自動車業界などが反対している。選
挙前はオバマ政権の産業界への配慮などから日米協議が停滞してい
た。経済産業省幹部は「再選を決めたことで、日米の事前交渉も進
めやすくなるのでは」と期待する。

 ただ、国内では農業団体を中心にTPP参加に反対が依然として
根強い。首相は10月29日の所信表明演説でTPP推進に意欲を
見せたが、郡司彰農相は今月6日の記者会見で「私のところに寄せ
られる意見は圧倒的に反対か慎重が多い」とけん制し、足並みはそ
ろっていない。

 解散・総選挙後に政権復帰するとの見方が出ている自民党も、
TPPには慎重だ。政府・民主党内には「交渉参加を表明できれば
、自民と差別化できる」との積極論が浮上する一方、「TPP参加
を表明すれば、新たな離党者が出かねない」と不安も広がる。

 原発停止で発電コストが高止まりする中、米国から安価な「シェ
ールガス」を輸入したいところだが、この議論もTPP交渉と並行
して進む可能性がある。野田政権の腰が定まらない中、米政府高官
は「日本は参加について決断する時期だ」と促す。日本の交渉参加
判断が遅れる一方で、日本以外の拡大交渉が進展すれば、TPPの
ルール作りに日本が乗り遅れる懸念がある。
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海洋強国を建設する…胡総書記、日本けん制
 【北京=五十嵐文】中国共産党の胡錦濤フージンタオ総書記(国
家主席)は、8日開幕した第18回党大会で行った中央委員会報告
(政治報告)で、「国家の主権、安全保障、発展の利益を守り、外
部のいかなる圧力にも決して屈しない」と強調、「海洋権益を断固
守り、海洋強国を建設する」との方針を打ち出した。

 日本政府の尖閣諸島国有化や、東南アジア諸国連合(ASEAN
)諸国と対立する南シナ海問題などを念頭に、強硬姿勢を貫く姿勢
を示したものとみられる。
 
 胡氏は報告で、「2020年までに、人民解放軍の機械化、情報
化建設で重大な進展を遂げる」との目標を掲げ、特に「海洋、宇宙
、サイバー空間」の分野を重視すると強調。さらに、「公共・文化
外交を着実に推進し、海外における我が国の合法的利益を守る」と
も述べ、国際社会での宣伝を強化する方針も示した。
(2012年11月8日22時17分  読売新聞)
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オバマ氏2期目、日本に対してより厳しい政権に=長島防衛副大臣
2012年 11月 7日  18:34 JST 
 長島昭久・防衛副大臣は、6日に投開票された米大統領選でオバマ
大統領が再選されたことを受けて、2期目のオバマ政権が日本に対し
てより厳しくなるとの見方を示した。 

 日米の外交、安全保障問題に精通し、民主党内で米国政府とのパ
イプ役を果たしている同氏のコメントの概要は以下の通り: 

 政策はあまり変わらないと思うが、プレーヤーは変わる。国務長
官、国防長官、もっと言えば国務次官補のキャンベル氏も退任する
見通し。日本にとっては多少厳しい政権になってくると思う。 

 ポイントは、11月6日から来年1月21日の新政権発足までのこの3カ
月間に、日本がどういう意志を示せるのか。たとえばTPP(環太平洋
経済連携協定)でどういう積極的なメッセージが出せるのか。逆に
いうと、出せないともう置いてきぼりになる可能性が高いと思って
いる。 

 安全保障でも、もちろん尖閣の問題はあるが、尖閣に安全保障条
約の5条が、適用されるかされないかのような、お涙ちょうだいの話
で日本側がいると、これまではキャンベル氏などが辛抱強くつきあ
ってくれていた面があるが、もう少しドライな感じになると思う。
また、クリントン国務長官は中国に対してはある意味で強硬、毅然
(きぜん)とした姿勢を貫いていたが、今度の国務長官が対中融和
的な人になると、日米同盟とは言うものの、かなり日本にとっては
厳しい局面が予想されると思う。 

TPPについて 
 TPPはプレシャーというより、日本が意思表示をしないと物事は前
に進まない。あまり大統領選挙のじゃまをしてはいけないと、自動
車産業などを刺激しないように、日本側ははっきり態度表明を先送
りしてきた側面もあるが、再選されたことで、自動車業界や議会に
気兼ねすることなく大統領が意思決定できる環境が整っている。こ
こから先は日本の意思表示にすべてがかかっている。それでも日本
がうじうじしているようだと、もう日本はやる気がないのか、だっ
たら今の11カ国でルールを決めようということになってしまうと思
う。逆に日本がきちんと意志表示をすれば、オバマ大統領は気兼ね
する対象がなくなっているので、ただちにやれるところにあると思う。 

 TPPは野田政権として、最後の政策決定としてできる。もっとどき
つく言えば、自民党は党内情勢を考えれば、TPPはなかなか踏ん切り
がつかないと思う。 

中国について 
 いま防衛省がこれから進めようとしているガイドラインの見直し
をしている。これは日米間の安全保障協力をもっと前に進めていこ
う、役割分担をもう一度はっきり再提起しようというもの。それは
日本が日本の責任をこれまで以上に果たすということ。そういう日
本の姿勢をアメリカがどう受け止めるかがポイントで、中国の台頭
は著しいわけだから、日米ともにそれにヘッジをかけていかなくて
はいけない。その意味で、日本側の同盟協力のあり方にたいするイ
ニシアチブは非常に大事だ。 

オバマ氏に全体的に期待すること 

 期待する事はあまりない。議会は下院が共和党。これだけ接戦に
なると、最初からレームダックではないが、これ以上の再選はない
わけだから、オバマ氏の政権運営はかなり厳しい。しかも予算はど
んどん削られていくわけだから、あまり思い切った手は打てなくな
る。そこでオバマ氏がどういう国政の舵取りをするか注目している
が、当初あった“Yes, we can”というような熱気ももうない。核の
ない世界に向けた演説もしたが、そういうドラスチックなリーダー
シップはなかなか期待できない。 
記者: Yuka Hayashi   
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日米合同軍事演習 《Keen sword(鋭敏な剣)》は中国を驚かしてい
ない
イリナ イワノワ 6.11.2012, 17:48 VOR
   日米が東シナ海で開始した大規模な合同軍事演習はどうやらその
目的を果たすことができないようだ。演習は中国に対し当初日米が
考えていたようなものとは全く異なるシグナルを送ってしまってい
る。
   軍事演習は11月3日からスタートしたが、開始早々からスキャ
ンダルを伴った。日米の軍人らが仮想敵国から向けられた弾道ミサ
イルの迎撃を行なった瞬間、演習海域に突如としてロシア太平洋艦
隊、海軍の2機の航空機が現れたからだ。原子力潜水艦の発見、駆
除手段以外にロシアのIL38機は電子モニタリングシステムを搭
載している。IL38機が日米のレーダーの波を測定してしまうこ
とを恐れ、演習は一時中断された。ロシア太平洋艦隊の広報は、こ
の飛行はあらかじめ計画されていたもので国際的な規則には反して
いないという声明を表したが、日本側はこれに不服を示した。しか
し、これよりも演習の実施自体により大きな不服を表したのは中国
である。

   極東研究所、日本調査センターのヴァレリー・キスタノフ所長は
、中国はそう考える根拠を少なからず有しているとして、次のよう
に語っている。

   「この演習はあまりに大規模に展開されている。日本側からは3
万7000人の自衛隊員が参加し、米側からは1万人が参加してい
る。これだけの規模の軍事演習は昨今行なわれていないと思う。そ
の目的は明白だ。それは根拠地の、つまり太平洋において誰が主で
あるかを見せ付けるというものだ。」

   キスタノフ氏はまた、演習は、日中の領土争いで懸案の釣魚諸島
(日本名で尖閣諸島)が日米安保条約の第5項目の行動範囲に入っ
ていることを中国側に思い知らせる目的で行なわれていると指摘す
る。これはつまり尖閣諸島が外国からの攻撃を受けた場合、米国は
日本に軍事援助を行なうことを示す。

   当初、軍事演習のシナリオは仮想の敵に襲われた無人島の解放作
戦を練ることを想定したものだった。ところがこれが煽動して、懸
案の島へ中国が、たとえばパラシュート部隊を降下させるなどの決
定的行動をとりかねないことを危惧した日米は、この項目を演習計
画からはずした。キスタノフ氏は、それでも日米のこうした配慮は
中国にはとどかなかったと考察している。中国をいらだたせている
のは演習の規模であり、それに米の空母が参加しているという事実
である。このため、演習はただただ、アジア太平洋地域における米
中のライバル関係を今後も悪化させる結果につながってしまった。

   中国国防相の報道官は北京で行なったブリーフィングで「中国は
日本が他国を呼んで合同軍事演習を実施することに断固として反対
する。こうした演習は地域の緊張悪化を招くだけだ」とする声明を
表した。こうした一方で新聞「中国青年?」に掲載された記事は注目
に値する。記事では「沖縄以南の諸島の解放作戦」が演習項目から
はずされたことで、釣魚諸島をめぐる緊張度が低くなったという指
摘がなされた。と同時に、日米が演習をはずしたのは中国が軍事行
為に出る姿勢を示したからであり、沖縄近海における「米軍の犯罪
行為」は中国国内の反日感情を煽ってしまったとも書かれている。
一方で「中国青年?」は中国が警戒および戦闘準備を怠ってはならな
いことも指摘している。

   どうやらこの軍事演習は、中国人が懸案水域で強硬路線を選び、
軍拡を行なうことを正当化したにとどまってしまったようだ。


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