4509.日米共同政策フォーラム「エネルギーの未来」1



10月31日、ANAインターコンチネンタルホテル東京で開催された
日米共同政策「エネルギーの未来:日米の選択肢と協力の可能性」
を聞いた。今日(午前の部)と明日(午後の部)の2回でお送りし
ます。

基調講演が2つ続いた。
まず前米商務長官ジョン・ブライソン氏で、エジソン社のCEOであっ
た経験から、いろいろと話された。2つの話題を取り上げた。1つ
が原発の安全性で、もう1つが省エネである。

原発の安全性は最重要であり、3つ原発事故があり、1979年スリーマ
イル・アイランド、1986年チェルノブイリ、そして2011年福島であ
り、原発は経済性や効率より安全が重要であるといつも述べている。

6つの教訓がある。1つに安全性はもっとも重要であり、効率性よ
り重要ということ。2つは、規制当局が強いことが重要で、いつも
安全を優先させることである。3つは、規制当局は技術を持ち規制
能力を持っていることが重要である。4つは、強力な政府のリーダ
が必要である。5つは、オペレータやエンジニアの能力を高めるた
めに、常に注意して訓練を行うことである。6つは、指令体系を再
考し、速度と正確さを追求し、住民に正確な情報を知らせることで
ある。

エジソン社の社長時代に、2基の原発を廃止した。カリフォリニア
の80%がサザンカリフォルニア・エジソン社が供給し、その供給
量の20%がこの2基の原発であった。この2基を事故等で夏に止
めることになると、計画停電が必要になり、80万社の企業に影響
が出る事態となる。

このため、夏の間、安い発電を供給してくれる会社に供給をしても
らった。

もう1つの省エネで、2009年に国連のエネルギーと気候変動に関す
る調査会の委員として活動した。1年半で報告書を出したが、自然
エネルギーがメインではなかった。

その報告書には、1つに今後世界の13億人が新しく電気を使える
ように電気を供給することと、もう1つがエネルギーの効率を高め
ることが重要と勧告した。

1980年にカリフォルニア州の規制当局の委員長になり、石油を使う
ことにインセンティブをそれまでは与えていたが、省エネにインセ
ンティブを与えるように変更した。このため、カリフォリニアは、
エネルギー量が現在と30年前とは変わらない。

そして、日本はエネルギー効率が高いので、世界的に普及して欲し
い。


次に元IEA事務局長の田中伸男が講演した。
図を示して、今後、アジアの石油・ガス消費が伸びて、2030年には
70%になる。中国が30%、インドが20%、その他アジアが20%とな
る。

このため、石油輸入が伸びるので、中国は2020年には消費量で米国
を抜く。米国は逆に2035年までに輸入が必要なくなる。シェールオ
イルやガスで自給できることになる。このため、中東への関与が続
くのか心配である。ホルムズ海峡の自由通行が今後もできるのか、
誰が守るのか心配になる。

日本は、85%の石油、20%のLNGをここを通って運んでいる。
16億バレルの石油備蓄があるが、ガスは備蓄がない。ホルムズ海
峡が封鎖されたら、長くは持たないし、中国や韓国は備蓄をしてい
ない。もし、封鎖されたら、石油は160ドル/バレルになる。

このためには、いろいろな所から買うことで分散することである。
北米はもちろん、ロシア、アフリカからも持ってくることである。

中国はトルクメニスタンからパイプラインでLNGを買っている。しか
し、それだけでは足りない。中国はシーレーンを守る必要がある。

ロシアは欧州から東に目を移している。ロシアのパイプラインは欧
州に伸びているが、アジアへは少ない。日本は現在プレミアムを付
けて、買っている。米国の価格の5倍以上である。ドイツが中間の
価格である。値段が高いのでロシアも日本に売りたい。

LNG会議で消費国が結束することも重要であるが、原発など多様な
エネルギーを持つことで、ガス価格を下げる必要がある。ガスマー
ケットで優位に立ち、ガスを安く買うことが必要だ。

もう1つが、国内の体制を変革することが必要である。安く買うこ
とを今の総原価主義での価格設定は阻害している。自由化が重要で
ある。

原発ゼロでは、石炭・ガスが必要になる。ドイツが原発ゼロにでき
るのは、隣にフランスが居て、電気を買えるからである。

エネルギー安保が必要であり、電力線の統一が重要である。物理的
に統一して、電気をどこへでも流せることが重要である。再生エネ
ルギーも系統連係がないと有効に活用できない。

20世紀が石油の時代なら、21世紀は電気の時代になる。
日本国内のパイプラインを見ると、貧弱であるが、新潟と仙台が繋
がっていたことで、今回の地震でも仙台に石油が送れた。パイプラ
インの整備も必要になる。

原発も発展してきて、金属燃料での原発になる。この技術は米アル
ゴンヌ国立研究所の技術である。(Fが調査したらIFRである。)

そして、アジアで集団エネルギー安全保障が必要になっている。


ここで、質問を受けた。
質問:日米協力という観点で何ができますか?
答え:田中:シェールガスがあるが、米国は自給を優先しているの
   で、まだ時間がかかるかもしれないが、新しいテクノロジー
   の開発では日米は協力できる。原発技術や核拡散などという
   分野で組めると見る。(Fの独り言:これは、ある人の意見が
   反映されているような気がする。)

答え:ブライソン:再生エネルギーの投資で組める。原発について
   は、オバマ大統領は、当初原発に注力したが、現在、慎重に
   なっている。LNG火力の方がコスト的に安いため。そのため、
   エネルギー効率を高める方向での協力が現実的である。

質問:ブライソンさんへ規制当局のコスト効果については?
   福島は70%の稼働率しかなかった。過剰規制となっていた。
答え:規制当局は独立性が重要でかつ、技術的な能力も必要であっ
   た。必要な規制をかけることであるが、科学的な方法を突き
   詰めることである。無用な規制はいけない。
   安全で妥協することはできないし、ありえない。福島は事故
   以前に稼働してはいけなかったのでないか?40年以上も経
   った原子炉はいろいろな問題がある。
   この分野は、ステップバイステップで技術を磨くしかない。
   スリーマイル後、規制当局は原子炉会社に成績をつけていた。
   
質問:田中さんへ集団エネルギー安全保障をアジアでどうできるの
   か?
答え:田中:現在、非常に難しいが、話し合いを始めることである。
   フォーラムを開いて、そこに中韓だけではなく、ロシアも招
   くことである。

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