4508.日本経済:安定的・持続的成長への筋道



10月29日ダニエル・オキモト・スタンフォード大学名誉教授の
講演会があり、赤坂に行った。その議事録。

オキモト氏は、日米交流の現在の一人者であり、米日系2世である。

日本経済は、1950年から1970年まで平均9.5%の成長を
し、1971年〜1990年までは3.8%、しかし1990年〜
2010年までは0.8%である。

この20年間、失われた時代が続く。バブル崩壊時、3年〜4年の
調整が必要であると思ったが、バランスシート調整に20年以上の
時間が立っている。

スーパーマンから病人に落ちている。日本をバッシング(叩き)か
らハッシング(素通り)になり、シンキング(低下)からシュリン
キング(縮む)になっていると見ている。

日本経済の欠点は、モタモタした、スローモーションで、破綻の方
向になっていることが第1の問題。政府債務を抱えてGDPの230%にも
なっていることが第2。第3にデフレを止められないで、その立場
にとどまる立ち泳ぎの状況である。

第4に人口構成で老齢化、人口減少で女性の出産率が1.2になっ
ている。このままであれば、2050年には1億900万人に、
2100年には6400万人になる。年間80万人が減り、この人
口は、米サンフランシスコの人口と同じである。毎年サンフランシ
スコがなくなることになる。

第5として問題があるのに、危機意識が欠けていることであり、20
年の失われた時代でも危機感がない。

日本企業は、ソニーもパナソニックもだんだんダメになっている。
1990年代でも、スティーブジョブスでもソニーはゴールドスタ
ンダートであると言っていた。しかし、現在、ソニーの時価総額は
120億ドルで、サムソンは1600億ドル、アップルは6380
億ドルとなり、サムソンは13倍、アップルは53倍の株価になっ
ている。

現在、ソニーもパナソニックもシャープも赤字になっている。
今後、変化できるか?、適用できるか?が問われている。

日本の家電企業は、インターネットへの適応ができていない。ソフ
トウエアのオープン化に適応できなかった。アップルの攻撃に競争
的な立場になれなかった。複合材料でも同様になっている。

もう1つが、女性の40%しか労働参加していない。女性の給与は
男性の60%で、CEOは4%しかなっていない。性別格差順では
世界の103位と先進国では非常に低い。労働人口における外国人
率は2%しかいない。米国は4300万人で14%もいる。しかし
、その内1600万人は不法滞在者ではあるが。カナダは17%、
オーストラリアは18.8%である。

孤立化した日本は、コストがかかる。流入人口が少ない。米国は、
労働ビザが10万通も毎年外国人に発給されている。成功企業の35
%の経営者がインド人や中国人である。

もう1つが、イノベーションを実現できるかである。エネルギーも
原発を15%まで削減するとか0%にするとかするというが、再生
エネルギーにより、エネルギーが高価になる。

日本においてもグローバル化が迫り、指導者は国益より狭い利益を
重要視している。政治が大きな利益を取らなくなっている。

ヨーロッパの危機が出ている。中国、インドでも景気が下がってい
る。中国では企業の縁故主義や腐敗の政治で問題が出ている。

中東では安全保障の問題が出て、シリアの問題がレバノンやトルコ
に影響している。石油危機が起こる可能性が出ている。また尖閣問
題が日中で出ている。ナショナリズムが各国で台頭している。

このようなさまざまな問題が出ている。

日本が反撃する可能性や分野を見ると、
経済面ではイノベーションや変革の時代を迎えている。技術が変わ
る。IT、ストレージなどいろいろな部門が変化している。ここに
成長がある。

研究分野では、IPS細胞で医療の世界に変化を起こす。このように、
イノベーションの部門では日本は上にいる。グローバルなインフラ
の整備が必要になっている。エネルギー、交通・輸送分野、水など
であり、この分野は2030年には3.8兆ドルになると予測され
ている。

この市場に参加すると、自動車やAVより市場規模が上である。イン
フラの世界では、日本は競争上優位にある。新幹線技術はすごい。
開業以来事故で死傷者を出していない。JRが海外で売ることがで
きる。その情報をスタンフォード大学は日本に提供している。
エネルギー部門でも超伝導の材料などでも優位にある。

15兆ドルのファイナンスが日本にはある。これをインフラ投資と
して使えば、年7%程度のリターンがある。また、老人が増加して
ヘルスケア部門でもチャンスがある。

インフラでもJRは売ったことがないので、価格競争力がない可能
性がある。しかし、そこは乗り越えることができる。

もう1つは、中小企業の小さな部品は優れている。この中小企業が
グローバル化が必要と意識されてきた。

ここでも、金融リソースを活用する必要がある。IIBであるイン
フラ投資銀行を作り、海外投資をすることである。

もう1つが、産業スタンダードを作ることである。日本のアーキテ
クチャを外国と繋いで、シリコン・バレーと繋いで作ることである。
スタンフォード大学は1930以上の企業は作ったが、新しい産業
を作ってきた。HPやグーグルなどである。
日本企業がイノベーションを作るが、その方法はベンチャーである
可能性がある。

女性を活用する。820万人の人が8810億ドルのGDPを作ること
になる。スキルの高い人を海外から1万人入れる。この人たちをイン
フラや技術に入れることである。

自己満足から抜けることである。危機案を持って対処することであ
る。シンキング・シュリンキングの日本から成長の日本にしてほし
いものである。

質問:このような明るい方向に向けるには、どのような政策が必要
   か?
答え:全体的な政策が必要である。政治のリーダーシップが必要で
   ある。財政面では消費税の増税は必要であるが、2014年
   のカケコミ需要で景気が上向くが、その後は景気に刺激が必
   要になる。しかし、あまり方法がない。
   QE3も疑問であり、ロムニー候補は予算をカットして税を
   上げないという。経済を上げて税金を増収させるというが、
   これは難しい。
   インフラ投資をすることである。教育投資や高速鉄道投資な
   どである。
   日本の学生の米国留学が減少している。人材を育成する必要
   がある。

質問:日本の政治状況をどう思いますか?
答え:ガバナンス問題が出ている。民主主義では景気が弱くなると
   野党はその弱点に付け込む。与党に協力しない。議事を妨害
   する。国益より自分の利益を優先する。民主主義国のすべて
   が陥る欠点である。米国でも金融分野でまずいことになって
   いる。

   もう1つ、日本には戦略がない。権力の中核もない。権力の
   信認が弱いことで、グジャグジャになっている。首相公選な
   どで権力の信認を高める必要があると見る。
   日本の政党では、市民の動員がない。ボランティアがいない。
   市民との繋がりがない。プロセスに市民が参加していない。
   このため、説明責任を議員が負っていない。
   このため、日本でも穏健な議員が排除されている。いなくな
   っている。市民に政策の悪い点、良い点を説明することが重
   要である。

質問:中小企業が金機関から借りることができないが、どうすれば
   よいか?
答え:20年間、市場で資本を適切に使わなかったことで現状があ
   る。1990年では22兆ドルのファイナンスがあったのに
   、現在15兆ドルに減っている。今も同じである。投資が適
   切であれば、5%から7%のリターンがあるが、このままで
   あれば、金利は0%である。
   今は円高であり、海外投資は絶好の機会である。
   しかし、中小企業でもゾンビ企業には投資してはいけない。
   一概に中小企業に貸せば良いということでもない。

質問:リーダーシップで業界標準を作らない。PPPは複雑である。
答え:グローバル経済では、グローバルな標準が必要である。輸送
   ・水などのインフラ分野で日米は業界標準を作るべきである。

質問:円高で製造業界は海外に拠点を移している。これに対応する
   必要があると思うがどうか?
答え:2011年、財務省は為替介入した。介入したとしても円高
   を止めることはできないことがわかった。元でも2011年
   中で11%も上昇した。日銀、財務省ともに効果的な為替介
   入はできないと思う。それより、民間セクターが企業買収や
   海外での投資などを行い、バランスを取ることしかない。
   現在は欧州から円に来ている。このため、円高ドル高になっ
   ているのだ。


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