■小沢氏に「原発10年後ゼロ」を問う。 日本の未来に勝算はあるか?? 小沢一郎氏が、8月1日に記者会見を行い、代表を務める新党「国 民の生活が第一」の基本政策骨子の一つとして、10年後目処の原 発全廃を掲げた。 小沢氏は、使用済み核燃料の最終処分の見込みが立たない事などか ら、予てから原発を過渡的エネルギーとしてきた。 だが、今回「原発10年後全廃」を掲げた背景には、国会前での毎 週の脱原発デモ等に現れる国民世論の趨勢に加え、連携を模索する 橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会との駆け引きで、橋下氏より 急進的な脱原発路線を掲げる必要性もあった。 ◆原発ゼロの問題点◆ 原発ゼロとした場合、ざっと次の事が問題となる。 (1)盛夏等に、家庭用・産業用の電力需要を供給が賄えるかの電 力ピーク問題 (2)自然エネルギー導入及び火力発電依存による生活・産業に於 ける電力コスト問題 (3)火力発電依存による化石燃料輸入量・単価増大による貿易赤 字拡大 (4)化石燃料を安定的に輸入できるかのエネルギー安全保障問題 (5)一部の不安定な自然エネルギーに関する安定供給問題 (6)日本の核兵器の潜在的保有能力への原料の濃縮ウラン・プル トニウム不足の影響 小沢氏は、記者会見で「原発ゼロ」について「現実問題として東京 電力の原発は動いていない。毎日真夏日が続いているが電力不足は ない」と指摘し、「火力発電の技術改良や代替エネルギーを開発、 推進していくイメージだ」と語った。 しかし、関西電力管内については、橋下氏も今夏の直前になり、関 電発表で15%とも言われた電力不足の可能性に「怖じ気ついて」 大飯原発の再稼動を認めたように、電力ピークに関し原発無しでは かなり需給がタイトだった。 また、原発なしで電力ピーク等に対応するには、省エネに加え、上 記の電力コスト、貿易赤字、エネルギー安全保障、安定供給問題が 複合的に起きてくる。 更に、比較的リスクの少ないと言われる新型のトリウム型原発や地 下式原発をどう位置付けるのかの問題も派生する。 ◆原発ゼロのメリットと具体策◆ もちろん、片方では、原発ゼロでのメリットとして、原発事故の逓 減、代替エネルギー技術開発・輸出による経済効果・外貨獲得、エ ネルギー多元化によるリスク分散等が挙げられる。 筆者について言えば、これらのメリットとデメリットの狭間で、原 発の具体的将来像を決めかねていると言うのが正直なところだ。 小沢氏の「原発ゼロ」政策表明は、単に評論家や活動家、他の政治 家の発言とは意味合いが異なる。 消費増税実現等を掲げる自民・民主連合に対抗して次期衆院解散総 選挙を戦った場合、選挙前後での合従連衡の末に政治の主導権を握 る可能性が少なからずある。 小沢氏は、先ず各種代替エネルギーと火力発電の割合、省エネ効果 の規模、シェールガス等の輸入ルートの確保と輸入量・契約価格、 代替エネルギー技術開発・輸出による経済効果・外貨獲得規模等の 凡その目処を示さなくてはならない。 加えて、最低限それらの目処を実現させるためのスケジュールと具 体的な手段を例示しなければならない。 なお、記憶に寄れば、小沢氏は中曽根康弘元総理等と同様に核兵器 の潜在的保有能力確保論者であったはずで、その主張を変えていな ければ、現有の使用済み核燃料の量と状態で核兵器の原料を潜在的 に賄えるのか等が問われる。 これらの具体的議論なしでは、総選挙後の政権を握るのが例え小沢 氏であっても自民・民主連合であっても、エネルギー、経済、安全 保障面で日本の迷走は続き、やがて滅びの淵に立つ。 与野党には、総選挙を前にして国民に隠し立てせず、かつ臆する事 のない真剣な議論を望みたい。 以上 佐藤 鴻全