4432.小沢氏に「原発10年後ゼロ」を問う。



■小沢氏に「原発10年後ゼロ」を問う。
        日本の未来に勝算はあるか??

小沢一郎氏が、8月1日に記者会見を行い、代表を務める新党「国
民の生活が第一」の基本政策骨子の一つとして、10年後目処の原
発全廃を掲げた。

小沢氏は、使用済み核燃料の最終処分の見込みが立たない事などか
ら、予てから原発を過渡的エネルギーとしてきた。

だが、今回「原発10年後全廃」を掲げた背景には、国会前での毎
週の脱原発デモ等に現れる国民世論の趨勢に加え、連携を模索する
橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会との駆け引きで、橋下氏より
急進的な脱原発路線を掲げる必要性もあった。

◆原発ゼロの問題点◆
原発ゼロとした場合、ざっと次の事が問題となる。

(1)盛夏等に、家庭用・産業用の電力需要を供給が賄えるかの電
      力ピーク問題
(2)自然エネルギー導入及び火力発電依存による生活・産業に於
   ける電力コスト問題
(3)火力発電依存による化石燃料輸入量・単価増大による貿易赤
   字拡大
(4)化石燃料を安定的に輸入できるかのエネルギー安全保障問題
(5)一部の不安定な自然エネルギーに関する安定供給問題
(6)日本の核兵器の潜在的保有能力への原料の濃縮ウラン・プル
   トニウム不足の影響

小沢氏は、記者会見で「原発ゼロ」について「現実問題として東京
電力の原発は動いていない。毎日真夏日が続いているが電力不足は
ない」と指摘し、「火力発電の技術改良や代替エネルギーを開発、
推進していくイメージだ」と語った。 

しかし、関西電力管内については、橋下氏も今夏の直前になり、関
電発表で15%とも言われた電力不足の可能性に「怖じ気ついて」
大飯原発の再稼動を認めたように、電力ピークに関し原発無しでは
かなり需給がタイトだった。

また、原発なしで電力ピーク等に対応するには、省エネに加え、上
記の電力コスト、貿易赤字、エネルギー安全保障、安定供給問題が
複合的に起きてくる。

更に、比較的リスクの少ないと言われる新型のトリウム型原発や地
下式原発をどう位置付けるのかの問題も派生する。

◆原発ゼロのメリットと具体策◆
もちろん、片方では、原発ゼロでのメリットとして、原発事故の逓
減、代替エネルギー技術開発・輸出による経済効果・外貨獲得、エ
ネルギー多元化によるリスク分散等が挙げられる。

筆者について言えば、これらのメリットとデメリットの狭間で、原
発の具体的将来像を決めかねていると言うのが正直なところだ。

小沢氏の「原発ゼロ」政策表明は、単に評論家や活動家、他の政治
家の発言とは意味合いが異なる。

消費増税実現等を掲げる自民・民主連合に対抗して次期衆院解散総
選挙を戦った場合、選挙前後での合従連衡の末に政治の主導権を握
る可能性が少なからずある。

小沢氏は、先ず各種代替エネルギーと火力発電の割合、省エネ効果
の規模、シェールガス等の輸入ルートの確保と輸入量・契約価格、
代替エネルギー技術開発・輸出による経済効果・外貨獲得規模等の
凡その目処を示さなくてはならない。

加えて、最低限それらの目処を実現させるためのスケジュールと具
体的な手段を例示しなければならない。

なお、記憶に寄れば、小沢氏は中曽根康弘元総理等と同様に核兵器
の潜在的保有能力確保論者であったはずで、その主張を変えていな
ければ、現有の使用済み核燃料の量と状態で核兵器の原料を潜在的
に賄えるのか等が問われる。

これらの具体的議論なしでは、総選挙後の政権を握るのが例え小沢
氏であっても自民・民主連合であっても、エネルギー、経済、安全
保障面で日本の迷走は続き、やがて滅びの淵に立つ。

与野党には、総選挙を前にして国民に隠し立てせず、かつ臆する事
のない真剣な議論を望みたい。
                    以上

佐藤 鴻全





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