4446.シリアで山本美香さんが死亡



激戦地のアレッポでジャーナリスト山本美香さんが亡くなったが、
シリアは部族社会であり、その部族が反政府軍を構成しているので
、反政府組織がもとまっていない。

このため、シリア政府軍が優位に戦闘を進めている。政府軍はアレ
ッポの反体制派への空爆作戦を強化している。しかし、アレッポの
反政府地区司令官は「現状では自由シリア軍に政権側の空爆から市
民を守る能力はない」としている。

反政府軍は、米国にシリア領内に飛行禁止区域を設定するよう要求
している。それに応えて、オバマ米大統領は20日、「現時点で軍
事的な関与への命令は出していない」と述べる一方で、シリア政府
軍が化学・生物兵器の移動を始めたり、反体制派に使用するなら「
一線を越える」と述べ、米国が軍事介入を判断する分岐点になり得
るとした。今までは軍事介入しないとしていたので、反政府軍への
支援を本格的にする可能性が出てきた。

オバマ大統領が、軍事介入を言及する理由は、シリア内戦の行方に
ついて米国民の29%が非常に憂慮し、43%が多少の懸念を抱い
ていることがわかった最新世論調査によってである。

また、ロシアのチェチェン独立派は義勇兵をシリア反政府軍に送っ
ているが、これはチェチェンだけではない。スンニ派のゲリア組織
は、シリアに集結している。それはサウジから給与が出ることによ
る。

さあ、どうなりますか?

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チェチェン司令官長男、シリアで死亡=反体制派の義勇兵に
 【モスクワ時事】ロシアのチェチェン独立派系ウェブサイト「カ
フカス・センター」は22日までに、独立派武装勢力の故ルスラン
・ゲラエフ野戦司令官の20代の長男が今月、シリアで義勇兵とし
て反体制派に加わり、政府軍との戦闘で死亡したと伝えた。
 長男は1988年生まれのルスタム・ゲラエフ氏で、母親はロシ
ア人。同サイトは「8月11〜13日ごろ、シリア国内で(アサド
大統領が属するイスラム教シーア派分派)アラウィ派の政府軍と戦
闘となり、殉教を遂げた」としている。チェチェン人は反体制派と
同じくスンニ派が主体という背景がある。(2012/08/23-07:05)   
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山本さん「守れなかった」=シリア反体制派幹部が弔意
 【ワシントン時事】シリアの反体制派武装組織「自由シリア軍」
のアレッポ地区司令官、アブドルジャバル・アキディ氏は22日、
日本人女性ジャーナリスト、山本美香さんが同地で死亡した経緯に
ついて「戦闘を取材していたところ、アサド(大統領)の部隊に撃
たれた。(自由シリア軍は)守ろうとしたが、亡くなってしまった
」と説明した。
 アキディ氏は、シリア国内からインターネット電話を使ってワシ
ントンで開かれた記者会見に参加し、「彼女(山本さん)は殉難者
だ。日本国民にお悔やみ申し上げる」と弔意を示した。同氏らはま
た、「現状では自由シリア軍に政権側の空爆から市民を守る能力は
ない」と語り、シリア領内に飛行禁止区域を設定するよう米政府に
訴えた。(2012/08/23-01:30)
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政府軍が戦闘機再配置=アレッポなどへ空爆強化か−シリア反体制派
 【カイロ時事】シリア反体制派は21日、ロイター通信に対し、
政府軍が戦闘機30機を首都ダマスカスの北方と東方の基地から、
激しい衝突が続いている北部アレッポや東部デリゾールなどにより
近い基地に再配置したと語った。事実なら、政府軍は反体制派への
空爆作戦を強化する可能性がある。(2012/08/22-06:11)
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化学兵器疑惑、「介入の口実」とシリア副首相

 【モスクワ=寺口亮一】シリアのカドリ・ジャミリ副首相は21
日、モスクワで記者会見し、オバマ米大統領がシリアで化学兵器が
使用されるなどした場合に軍事介入も辞さない構えを示したことに
ついて、「化学兵器があるとの主張は介入の口実に過ぎない。イラ
クの出来事を思い起こさせる」と述べ批判した。

 米国が、大量破壊兵器の開発疑惑を理由にイラク攻撃に踏み切っ
たものの結局そうした兵器を発見出来なかったことを引き合いに出
したものだ。シリアの外務省報道官は7月23日の記者会見で化学
兵器の保有を認める発言をしたが、その後撤回していた。

 インターファクス通信によると、ジャミリ副首相はオバマ大統領
の発言について、「大統領選に関連した、挑発的かつ政治的宣伝が
目的の脅しだ」とも語ってやゆした。

(2012年8月22日01時29分 読売新聞)
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化学・生物兵器使用は「一線越える」 米大統領、軍事介入示唆
2012.8.21 11:27 sankei[政変・反政府デモ]
 【ワシントン=犬塚陽介】オバマ米大統領は20日の記者会見で
、シリアのアサド大統領が化学・生物兵器の移動を始めたり、反体
制派に使用するなら「一線を越える」と述べ、米国が軍事介入を判
断する分岐点になり得ると警告した。

 米政府は「すべての選択肢を排除しない」としながらも軍事行動
には消極的な姿勢を示してきたが、シリア側が化学・生物兵器の使
用に踏み切るなら、従来の方針を見直す可能性を示唆した。

 オバマ大統領は「現時点で軍事的な関与への命令は出していない
」と述べる一方で、化学・生物兵器の使用は米国や周辺国にとって
「危機的だ」と指摘。こうした兵器が「不適切な勢力の手に落ちる
状況も看過できない」と懸念を示した。

 その上で、シリアが化学兵器を使用すれば「わたしの計算法を著
しく変更させるだろう」と警告。実質的な内戦にあるシリアで、化
学・生物兵器が安全に管理されていると「自信を持っては言えない
」と述べ、状況を「極めて注意深く注視している」と述べた。

 一方、アサド政権が米国などの要求を受け入れて早期退陣する「
ソフトランディング(軟着陸)の可能性は、かなり遠いようだ」と
の認識も示し、現状ではシリア情勢が好転する兆しに乏しいことも
認めた。
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米国民29%がシリア内戦を非常に懸念、関心なしは26%
2012.08.19 Sun posted at 16:48 JST
(CNN) シリア内戦の行方について米国民の29%が非常に憂慮
し、43%が多少の懸念を抱いていることが最新世論調査で19日
までにわかった。シリア情勢に関心がないとした比率は26%だっ
た。
調査はCNNと世論調査期間ORCが共同実施した。調査結果によ
ると、46%が米国や他国が空軍を出動させてシリアに安全保護地
域を設けることに支持を表明。逆の意見は49%だった。
64%はシリアの反体制派の安全地域を確保するため米国や他国が
兵力を派遣することに反対し、地上部隊派遣に賛成したのは32%
だった。
反体制派に兵器や他の物資の支援を実施することを支持したのは48
%で、反対は47%だった。
19%は、シリアのアサド政権の追放を極めて重要な政策目標にす
べきと回答。多少重要としたのは46%で、重要ではないとしたの
は33%だった。
今回調査は8月7〜8両日、成人1010人を対象に電話で実施し
た。
オバマ米政権のシリア政策では、米議会の一部で介入に消極的との
批判が出ている。オバマ大統領の安全保障問題担当顧問は最近、ワ
シントンでの講演で飛行禁止空域の設定を含めシリアの反体制派支
援のため大統領はあらゆる選択肢を検討していると指摘していた。
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シリア情勢(取り敢えずのコメント)
2012年08月22日 20:49 中東の窓 シリア中東関連
シリアでは邦人女性報道家が亡くなられたこともあり、マスコミで
もシリアが大きく取り上げられ、このブログにも多くのコメントが
あったほか、電話インタビューを受けるという光栄もありました。
日々の動きについては、アラビア語のネットから取りまとめ、毎日
お届けしていますが、このような状況に鑑み、コメント等で質問ま
たはご意見のあった点についての私の意見などまとめておくのも、
意味があるかと思い、以下思いつくままに取りまとめてみました。
おそらく、以下はこれまで何度か書いたことと重複しているところ
も多いと思うし、いずれにしても報道からしか現地情勢をフォロー
できない田舎の隠居爺さんである私の個人的意見に過ぎませんから
、忙しい人はぜひパスしてください。

・かなり時間が過ぎたので、記憶されていない方も多いかと思いま
すが、現在のシリアの悲惨な状況が始まった端緒は、ダマスカスで
の細々とした抗議デモ(確か雨の中で300人程度が黙って立っていた
だけ)であったのが、政権側の度を越す弾圧で、特にダラアでの少
年の拷問と殺害を機会にデモが大きくなり、治安当局の発砲での死
者の葬列にまた発砲し・・という具合にエスカレートしていったも
ので、政権側が主張するようにテロリストやイスラム過激派が引き
起こしたものでは全くない。
これらの「危険分子」は混乱が長引いて、情勢が軍事化したことの
影響で、主としてシリア外から流入してきたものと思われ(もちろ
んこれに合流するシリア人の過激派もいる)、今後シリアの混乱が
長引けば長引くほど、シリア情勢の過激化、国際化は避けられない
ところと思われる。
その意味で今回の危機は、政権が作り上げた面が極めて大きいが、
その背景に長年のバース党の独裁政治に対する国民の不満が堆積し
ていたことが挙げられる。要するにアラブ民族主義というイデオロ
ギーはその存在理由をとうの昔に失って、単なる政権維持のための
公的イデオロギーに成り下がっていたことが指摘される。おまけに
皆が指摘する通り、このバース党政権はそのハードコアはアラウィ
派という、少数派の宗派出身で固められていて、その意味でも国民
の大多数を占めるスンニ派にとっては異質なものであった。
現在のアサド大統領が就任してから、経済について一部自由化され
たと言われるが、レストランやカフェの自由化といったコスメティ
ックなものの他は、民間に認められた企業の多くがアサドやその親
族及び一部スンニ派を含む政権中枢の利権となっていて、一般国民
の利益にはつながらなかったと言われる。

・要するに、今回の危機は、「耐用期間」を大幅に過ぎた政権が、
強権を持って、政権にしがみつこうとしているために生じたもので
あるが、リビアの時と同様に、政権が独裁的で、抑圧的であればあ
るほど、改革や自由化を通じての変革は困難で、軍と警察、情報機
関等を通じて国民を殺戮して、延命を図るしか手がないことになる
という典型的なケースと思われる(イラクの場合も終わり方はかな
り違うが、政権の基本的在り方は全く同じと思われる)。
その点で、憲法改正して取り敢えず乗り切ったモロッコはもちろん
、大統領の辞任や逃亡で政権が崩壊したエジプトやチュニジアとは
異なり、リビアと基本的に同じケースと思われる。

・危機発生後、アラブ連盟、GCC、国連等地域社会お飛び国際社会が
、その平和的解決のために乗り出し、幾多のイニシアティブがあっ
たが、アサド政権は口では同意しつつも、実際には武力行使を続け
るという、背信行為を続けてきたが、要するに政権側としては、こ
れらのイニシアティブを時間稼ぎとして利用しつつも、基本政策は
力による抑え込みであったと思われ、その政策は今も変更がない。

・このような過程で、政権による虐殺や過剰な武力行使で多くの犠
牲者を出し、これに反発するスンニ派の将兵等多くの離反者を出し
た。
軍からの離反者は現在も続いているが、政権にとって最重要なエリ
ート部隊等は、現在も健在で、政権を強力に支持し、シャビーハ(
バース党民兵)とともに、政権維持の最重要の要因となっている。
離反した兵士は、当初アサアド大佐の組織した自由シリア軍に属し
たが、その後将官等が離反するにつれ、内部対立、抗争が目立ち、
現在どの程度自由シリア軍が統一的軍組織として機能しているかは
疑問である。むしろ各地の自由シリア軍が、名前は同じでも基本的
には独立の単位として機能していると考えた方がよいかもしれない。
いずれにしても軍事的には、火力と組織力、兵力に勝る政府軍が、
優勢に作戦を進めているように見えたが、離反兵士等の増加もあり
、政府軍は「もぐらたたき」的対応を迫られている模様で、客観的
に見れば現在士気の点も含めれば拮抗しているというところではな
いかと思われる。政府軍がシリアのほとんどを実行的に支配してい
るということはなさそうである。

・反アサド派の問題は、内部分裂で、これは軍の方もさることなが
ら、シリア国民評議会党政治的組織の方がより深刻ではないかと思
われ、これがシリア問題の解決を妨げる大きな要因となっているよ
うに思われる。
これに対してアサド政権はアサド父の貢献もあり、今のところ一枚
岩で大きな亀裂は無いように見受けられる。
勿論、多くの軍人の離反に加え、前首相の離反等の話題には事欠か
ないが、しょせん彼らはアサド政権の中枢にいた人物ではなく、政
権にとって致命的な問題とは言えないと思われる(この点シャラア
副大統領も所詮はお飾りではあるが、「副大統領」という肩書上、
彼が本当に亡命しているとすれば…可能性は低いと思うが・・政権
にとっては大きな痛手であろう)。
むしろ、政権にとっての痛手は、先日の爆破事件で治安関係者4名だ
ったかを失ったことで、仮にマーヘルが死亡したとのニュースが真
実であれば、政権、アサドにとっては大きな痛手となろう。

・日本国内では、国際社会が何かをなすべきだ、との議論を時々聞
くが、そもそも国際社会とは何かという問題もあり、これが世界を
形作る大多数の国の意向という意味であれば、2回ほどの国連総会で
の決議に対する態度がそれで(大多数の国がシリア非難の決議に賛
成した)、またこの決議は勧告だけのもので実効性を伴わない、と
いう意味で現実の国際社会の力を示していると思われる。
より現実的に考えれば、安保理、さらに米欧、ロシア等の影響力の
ある国、アラブ諸国ということになろうが、安保理がロシア、中国
の拒否権で麻痺していて、近い将来両国が立場を変える見込みが少
ないことを考えれば、安保理による解決は当分望み薄と思われる。
アラブ社会も、当初アラブ連盟が活発に動いたが、途中から国連に
げたを預けた形となリ、その無力ぶりが目立っている。
欧米にしても、特に米国は中東での武力介入で火傷をし、オバマ大
統領は大統領選挙もあってか、シリア問題に単独で介入するつもり
は全くないようである。英仏等も時々景気の良い発言はするが、米
国抜きで介入する力も気力もなく、しょせんは口先介入であろう。
ロシアがシリアとの伝統的関係を生かして、平和解決に努力してく
れレば、かなりの期待は持てると思うが、平和解決というのは全く
の口先だけのことで、これまでの戦略は軍事的解決というアサド路
線の絶対支持以外の政策をとる素振りも見せていない。ロシアの仲
介を期待するのは時間の無駄であろう。
要するにロシアも中国も、こと中東に関しては、冷戦以来の伝統で
ある、人様の努力を邪魔するという意味での後ろ向きの役割は果た
せても、自ら平和解決をするという前向きの貢献をする意思も能力
もないということであろう。
また、隣接国のトルコが当初景気の良い発言をしていたが、最近は
慎重な発言になってきており、クルド問題等でアサドがとんでもな
い誤りを犯しでもしない限り、トルコが単独で介入することもなさ
そうである。

・以上要するに、ある意味で双方の力は拮抗しており、次のような
事態が生じない限り、現在の状況が続いていくのではなかろうか?
    マーヘルの死去等で政権中枢が自ら崩壊する。
    政権の中枢幹部がアサドを見捨てる(そもそも誰が中枢幹
部かという問題はあるが)か、もしくはエリート部隊に反乱でも生
じる。
    現在細々と続いている自由シリア軍に対する武器援助が大
幅に増大し、力のバランスが崩れる。
    ロシアがアサドを見捨てる。
    トルコが介入する。
    (逆に反政府派の方は分裂していることもあり一挙に崩壊
することは考えにくい)
ということは今後とも当面、シリア各地で殺戮と破壊が続き、過激
派の浸透が続き、レバノン等近隣諸国にその影響が波及していくと
いう甚だ、遺憾な状況が続いていくどころか、さらに悪化していく
のではないかと思われる。

以上が取り敢えずの思いつきのコメントですが、あまりに悲観的で
、反アサド的で、消極的でしょうか?


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