4440.米子・足立美術館事情



18きっぷで、今回は足立美術館を見るために、米子に来ている。
13日、東京の一番電車5時20分で沼津行きに乗ったが、この電
車が満員状態で、まるで通勤時の山手線と同じようになっている。

この電車は、繋がりがよくて、2から5分待ちで次の電車につなが
っている。このため、通勤時の山手線の混雑が、各繋がっている電
車もそうなる。

しかし、その電車から1本あとの電車は、空いているが、繋がりが
よくない。各繋がりが20分程度の待ち時間がある。私は沼津で、
1本あとの空いた電車に乗り、浜松に着たが、9時48分の大垣行き
電車が大幅に遅れていて、前の混んだ電車組に追いついてしまった。

このため、豊橋で、再度1本後の電車にした。そして、岡山に来た。
岡山で一泊し、岡山名物と言われる、ままかりを食べたが、コハダ
の酢付けと同じ感じであり、あまりおいしくない。同じく、有名な
黄ニラのお寿司も食べたが、これもあまり、おいしいと思わない。
天然ものの刺身を食べたが、味はよいが、非常に高かった。岡山は
吉備の国で太古の時代は、一大中心地であって文化的には高いはず
が、食事では見るべきものがない。

14日、岡山5時28分発の米子行きに乗ったが、朝一番しか伯備
線を全線通しで運転する普通電車がない。途中で方谷駅を見た。山
田方谷に知なんで付けた駅で人名を駅名にした唯一の駅だそうであ
る。山田方谷は、備中松山藩の家老であり、財政再建を行った。方
谷が自身から開墾したのが、方谷駅の近くであるという。方谷を有
名にしたのは、長岡藩の家老、河井継之助が弟子入りしたことであ
る。

米子で西出雲行きのディーゼル車に乗り換えて、安来に行き、そこ
で足立美術館行きのバスで美術館に行った。

この庭は、米国の庭園の雑誌で2003年から今まで9年間も常に
1位に輝いているが、日本の庭園評価では足立美術館の庭園を1位
にしているランキングを見ない。この理由を調べるために見に行く
ことにしたのだ。

米国人が評価するのは、足立美術館の庭園の圧倒的なスケール感で
ある。180度すべてが枯山水の庭であり、その調和が見事である。
池庭や苔庭、白砂青松庭、滝など、いろいろな庭や要素が配されて
いる5万坪の広いお庭であり、庭のすべての技術を見ることでき、
かつスケールが、どの庭も大きい。

しかし、日本人の美は、箱庭にわびさびの空間美を追求するので、
足立美術館のスケールが大きな庭の美意識とは違う感じであるので
日本人からの評価が低くなっている。しかし、現代人は西洋化して
いるので、圧倒的なスケールの美も好まれるはずである。

このためか、非常に混んでいるし、大人2200円と入場料も高い。
松江に由志園という有名ではないが、ランキング上位にある庭園の
入場料は600円である。足立美術館は、横山大観などの日本画も
鑑賞できるので、その価格がついているとは思うが、ほとんどの人
は庭園を見に来ていると思う。

足立美術館の庭園の圧倒的なスケールの美としては、江戸時代の大
名たちが好んだ回遊式の庭園風であるが、足立美術館は館内から庭
を見るという京都の寺院にある庭と同じ思考である。

館内からの風景だけをよくするスケールの大きな庭であり、回遊式
とは違いいろいろな美を高める細工ができることは確かであるが、
今までにない志向の日本庭園である。岩はすべて揖斐川のもので統
一されているので違和感がない。人工であるが自然的な庭である。

その雄大な庭を見て、喫茶室からコーヒーを飲んで優雅な時間を持
てた。

しかし、このような田舎に世界的に有名な庭園があることが日本の
強さである。この安来に日本・世界から観光客を集めるのであり、
それだけの可能性を地方は持っている。そういえば、このような美
術館としては、足利市にある伊万里・鍋島焼を集めた栗田美術館を
思い出す。地方の名士が1つか2つの分野の名品収集をして、それ
が世界的・日本的に評価される例が多い。

ということはどこでも、可能性があることになる。どの特徴を出し
て行くのか、今後の地方の活性化の勝負であろう。

米子に戻り、時間があるので米子城を見に行った。米子は鳥取藩の
領内であり、文化的には見るべきものが少ない。鉄道の集中点とな
っているので有名であるが、歴史的な厚みが薄いようだ。

ゲゲゲの喜太郎の作家の生まれが境港であるので、それを宣伝して
いるが、何かの手を打たないと、生き残りは大変であると思う。幸
い、鳥取大学の医学部が米子であるので、それとの産学連携を考え
るのもよいかもしれない。

15日は米子6時00発の鳥取行きに乗る。山陰本線を京都まで乗
る心算である。鳥取駅の手前で、息子から電話があり、今日は姫路
から米原までの新快速が運休になっていると。新快速を使っても、
東京に0時過ぎに着くので、新快速が運休であると今日中には東京
に帰れないことになる。

急遽、時刻表をチェックして、新幹線で京都から名古屋間を乗り、
東京に行けば、今日中に帰れるので、計画を変更した。新幹線の料
金は、4960円であり、大きな出費であるが、途中の東横インに
泊まると4900円程度は掛かるので、同じである。

今後も、18きっぷで全国を回り、宮脇俊三さんのようにJRの全
ての鉄道線に乗りたいが、しかし、宮脇さんのような手段を目的に
する乗り鉄はいやだし、風景を見ているといつの間にか寝ているか
考え事をして風景を見ていない。私は目的地に行く手段としてJR
を使い、かつ全国の線を18きっぷで乗るということにしたい。

宮脇さんの時代と違い、盲腸線や北海道の多くの線はなくなってい
るので、全国制覇はしやすいが、時期が一年で3回しかない。それ
も、鈍行の旅である。そして、旅の目的は今後の地方分権を見据え
て、日本の各地を見ておくことである。今後、地方分権になると、
江戸時代の藩の復活である。

日本は各藩が特産物を作り、有名な物を生み出してきた。地方分権
をすると、藩独自の商品を作り、藩が商社のような働きをすること
になる。このため、今後の日本を地方分権化する方向のようであり
、その政策の参考に日本の地方を18きっぷで回りたいと思ってい
るのだ。

一人旅をすると多くの人に話すと、いいねとは言うが、それを実行
しようとする人は少ない。そういえば、自分も昔、若い時は嫌いで
あった。何もしない、ボーとしている時間がもったいないと思い、
ボーとできなかった。

しかし、年を重ねてボーとすることができるようになったし、好き
になった。自分がストレスから解放されて、心に余裕がでてきてい
るためのような気がする。このため、心に映る物を素直に見ること
が出来る。

その意味では、一人旅は座禅にも似た雰囲気である。心で庭などを
見ることができるので、楽しいのであろう。昔、会社員の時には、
カネに換算して評価していたように思う。その感じがなくなった。
自分の感覚で判断できるような気がする。自分の美意識が確立した
のかもしれない。

今後も、18きっぷでの一人旅を続けるつもりだ。



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