4390.バイオスクリーブハウス



現代という芸術 アラカワNo.18

生命を切りひらくバイオスクリーブハウス その2

手続き記憶を獲得するための手続き的な建築

 バイオスクリーブハウスの地下倉庫に、ほこりまみれのドロップハンド ルの
自転車があった。ああ、そういえば、三鷹天命反転住宅の庭にも子ども用の補助
輪のついた自転車があったなと記憶の隅が一瞬刺激され る。アラカワが意図的
にここに置いたオブジェだろう。

 自転車と天命反転。手続き的建築と建築的身体。いったいどう結びつく のか。

我々の体内にはじつにたくさんの種類の記憶が保存され ている。60兆個の細胞
のそれぞれの核内に保存されている30億塩基対のDNA情報にもとづく生命の記
憶。これらの記憶は我々の意識下で眠っている。

一方、言葉の意味も記憶である。般若心経にいう「眼耳 鼻舌身」の五官が感じ
る「色声香味触」の記憶と、脳内で行われた論理操作「意」の結果である「法」
の記憶。これらの記憶のネットワークが 言葉と結びついて意味となる。

このほかに、言葉で説明できない手続き記憶と呼ばれる 記憶がある。水泳や自
転車の乗り方のようにバランスをとった体の統合的な動かし方の記憶である。着
物の着方や板前の調理など、体で覚える ほかなく、言葉では他者に伝えようが
ない記憶である。しかしこれも、意識下の感覚・運動機能を活性化するように体
を使えば、ちゃんと獲得 できる。

文法は手続き記憶である。だから、母国語の文法は、他 人には説明できないの
に使いこなせる。一方、外国語の文法はいくら本を読んでも使いこなせないが、
実際にその言葉が使われている環境で生 活すると自然と身につく。

手続き記憶を身につけるための環境が「手続き的建築」 ではないか。

アラカワの家の中で、使用法にしたがって生活をする と、アラカワと同じ意識
を身につけることができる。アラカワと同じ神経や免疫細胞ネットワークの経路
が確立される。

 それが可能な我々のことを「建築的身体」というだろう。建築的環境が あれ
ば、我々は、意識と無意識の両方の領域に記憶のネットワーク経路を、設計図ど
おりに構築できるのだ。

自転車のオブジェはそれに気づかせるためにある。

http://www.milestone-art.com/MILESTONES/issue136/htm/p14tokumaru.html
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バイオスクリーブハウスの地下にあった自転車のおかげで、アラカワの家の床
が、なぜ平たくないのかが、ひらめきました。

床が斜めになっていると、三半規管とかからの信号をもとにして体がバランスを
取るように、指令が出るのです。

すると、身の回りにあるさまざまな現象や物質や自分の体性感覚・運動制御を、
とりまとめようとする。ここで手続き記憶が生まれるのです。

だから武道で受け身を取ると、頭がよくなるのでしょう。斉藤孝も内田樹も、最
近の売れっ子の評論家は武道をやってる。なぜか。それは体が危なくな いよう
に無意識に丸くなろうとするから。この丸くなって安全に転がろうとするとき、
自転車に乗るのと同じような「手続きの記憶」が活性化される。

だから、本を読む前と後に、受け身をとると、本の内容が正しいかどうか、自然
とわかるようになる。

武道はだから、受け身のない剣道よりも、投げ技の受け身のある柔道のほうがよ
い。お互いに投げあう合気道こそ、知的になるためにもっとも有効な武 道なの
だといえます。
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バイオスクリーブハウスの訪問記を、冨山の画廊でアップしてもらいました。

どうぞご覧ください。

http://www.milestone-art.com/htm/sp/tokumaru-7.html

とくまる



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