4350.米国で「自然に学ぶ」を講演



米国で「自然に学ぶ」を講演
                   平成24年(2012)5月5日(土)
                「地球に謙虚に運動」代表 仲津 英治                    

去る4月の17日(火)と18日(水)に米国のモントレイ湾水族館と
サンフランシスコのオートデスク(Autodesk)というコンピューター
による3次元設計を手掛けている会社で「自然に学ぶ」と題して500系
新幹線電車の開発経験に関して講演する機会を得ることができました。
妻とともに参りました。

4月17日 モントレイ湾水族館での講演
 モントレイ湾水族館は、サンフランシスコから南200キロ程の所にある
世界最大クラスの水族館で、1984年にイワシの缶詰工場を改造して創設
されました。アメリカのIT企業ヒューレット・パッカード社の創始者の一
人デビット・パッカードが寄付してモントレイ湾水族館財団が設立され、
同財団が建設し、その後の運営費の8割を担っているとか。

 同水族館は海洋生物に関する研究機関も兼ねており、驚いたことに520名
ものスタッフが勤務しているとのことでした。そのためか日本の水族館に多
いイルカ、鯨などのショープールはありませんが、小中学生の見学者が多
かったですね。
 
 ご縁は2年程前に逆上ります。同水族館が、自然から学んだ500系新幹線の
ことを知り、その当事者である私の連絡先を2年かけて探し出して、同水族
館での「自然に学ぶ」と言う視点から観客向けの解説の素材に使うので、私を
撮影するべくプロの大阪のカメラマンを派遣されて来たことがあったのです。

解説者は今回窓口であったマイク・チェンバレン氏です。多分同氏がJFS
(Japan For Sustainability)という日本のNPOが発信しているニュースレ
ターの中で「Technologies Learned from Living Things」March, 2005
(生き物から学んだ技術、2005年3月)という私に関する記事を見
られたのでしょうか。JFS(代表 枝廣淳子氏)は、日本における環境に
関する取組み情報を英語で毎日のように発信しているNPOです。
JHSによる英文記事


 私が今回モントレイ湾水族館などに講演に行く気になりましたのは、
「地球に謙虚に運動」ホームページの代表発信欄084「動物に学んだ世界の
重大技術」に書いておりますように、米国で発信されている情報の中に「高
速列車がトンネルに突入した時に発生する圧力波が乗客に不快感を与えてい
る」等と事実と異なる点が多々見受けられましたので、その誤解を解きたい
という気持ちからでした。実際ご迷惑を掛けたのはトンネ出入り口付近の住
民の方だったのです。
 「地球に謙虚に運動」ホームページ


水族館側にサンフランシスコに観光旅行に行き、水族館も訪問したいと伝
えたところ、ぜひ講演もという話になりました。

視聴者は水族館のスタッフで、40人ほど参加してくれていました。質問時
間も含め約1時間「フクロウに学び、カワセミに近づいた500系新幹線」の
話をさせて頂きました。「昼食時間なので、講演中の出入りがあるかも知
れないが気にしないで欲しい」と言われていましたが、途中退席する人も
おらず、皆熱心に聞いてくれたようです。質問も数件あり、数ケ月前から
英語のパワーポイントを用意した甲斐がありました。昼食を御馳走になっ
た時、同席したチャールズ・ファーウェルという年配の研究学芸員は、大
の日本ファンで500系にも何度か乗ったことがあるとのこと、そして何と
彼の名刺は英語と日本語が裏表になっていました。

 その後、水族館の中にある数百人は入るホールでのマイク・チェンバレン
氏によるバイオミミクリ(自然向学)に関する観客向け解説に同席することが
できました。次のユーチューブで同氏のプレゼンテーションを観ることができ
ます。

 
 ザトウクジラのヒレを参考にした発電用風車の羽根、海藻、フジツボ等が付
着しないサメの肌を生かした船舶塗料用のコーテイング材等と共に、カワセミ
に近似した500系新幹線電車の先頭形状のことを紹介してくれています。彼は
解説中に「今日はその当事者の仲津 英治氏が会場に来ています」と私のことを
紹介してくれました。立ち上がって挨拶すると、観客の方々から万雷の拍手を
浴びました。チェンバレン氏の解説の終了後、多くの方々から握手を求められ、
中には一緒に記念撮影をして欲しいと言うご夫婦もおられ、大変嬉しい思いを
致しました。

 その後、会話が通じにくい時の通訳役を担って戴いた越川ミクヨさん(同水
族館の米国人男性と結婚し、共に勤務中)とともにモントレイ湾水族館の中を
彼がガイドしてくれました。
チェンバレン氏の奥さんも同水族館の職員で鴛鴦夫婦の感がありました。

4月18日 オートデスク社(Autodesk)での講演
サンフランシスコに本社のあるオートデスク社とのご縁は、昨年9月16日同
社の生産課長でサラー・クラスレイさんという女性が、東京の日本支社の方
と共に「自然に学んだ500系新幹線の事」で私を訪ねて来られ、京都でお会い
して以来のことです。もちろん日本に同社の3次元設計技術のセールスビジネ
スに来られた訳ですが、「自然に学ぶ」というスタンスが会社に基本方針の
一つになっているとの事でした。今年になってサンフランシスコ旅行を企画し、
彼女に連絡を取ったところ、ぜひ「自然に学ぶ」をテーマに講演して欲しいと
言う話になりました。
4月18日同じく昼頃の1時間、同社の展示コーナーの一角で講演を行ないました。
予めFace Bookで知らせておいてくれたらしく、オートデスク社の社員だけでな
く、一般の方も見えている様子でした。40〜50人が参加してくれていたように
思います。

冒頭、日本の新幹線に乗った事がある方と、手を上げてもらうと20人近くはい
たように思います。その中で500系新幹線を利用した方と問うと、何と10人弱の
方が手を上げてくれました。500系新幹線がのぞみ号として東京〜博多間を走っ
ていたのは平成9年(1997)11月から平成22年2月まででしたから、関心の高い方
が会場に来てくれていたことも有りましょうが、米国のかなりの方が新幹線に
乗り、中でも500系のぞみを利用して頂いていたと言うことでしょうか。驚い
た次第です。

質問が3点ほどあったでしょうか。「何故500系の電気を取るパンタグラフにフ
クロウを参考にしたのですか?」。新幹線の高速化において静かに走る事が一
番の課題で、実は最大の騒音源は屋根上にある架線から電気を取り入れるパン
タグラフだったのです。「1990年(財)日本野鳥の会大阪支部の講演会で故矢島
誠一さんからフクロウが自然界で一番静かに飛ぶと教わったことが切掛けとな
った」と答えました。
「500系の後の高速車両はどんな形をしているのですか?」
「円形断面に近い500系の窓際の席は、車両の屋根が迫り窮屈感があるので、
後続の700系以降の車両は長方形断面に戻っています」。
ただ2日間に渡る講演でどちらの会場でどんな質問が出たか、記憶が混沌として
いるところがあり、重なっているかも知れません。お一方の質問はスピーカー
から聞こえており、会場以外にも社内で講演は同時放送されていたようです。

講演終了後、5〜6名の方からご挨拶を受けました。内2人が日本の方でした。
若い女子学生と、もう一人の方はカーネギーメロン大学の教授でピッツバーグ
から出張でサンフランシスコに来ており、この講演の事を聞いて態々出席され
たとのことでした。有り難いことでした。
サンフランシスコ湾に面するフィッシャーマンズ・ワーフ(直訳すれば漁民
埠頭か漁民桟橋)のあるレストランで昼食を戴いたおり、バイオミミクリに
関する研究、出版などを行なっているバイオドリームマシン(BioDreamMachine)
という会社でしょうか、そのトップの方が同席されており、今回の講演を踏
まえ、一筆書くとの事でした。楽しみにしております。
最後になりますが、オートデスク社のスコット・シェパードという若い社員
が私の講演をブログに掲載してくれています。下記のものです。大半が英語
ですが、一部日本語もあります。ご覧になって戴くと幸甚です。
April 23, 2012  Scott Sheppard
Eiji Nakatsu: Lecture on Biomimicry as applied to a Japanese Train
http://labs.blogs.com/its_alive_in_the_lab/2012/04/biomimicry-japanese-train.html
                     
                            以上 
「地球に謙虚に運動」代表 



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