4321.鎮守の森が日本を守る



工業文明の時代から植生文明の時代になると、再三、このコラムで
述べてきた。その植生文明の全体像が徐々に明らかになってきてい
る。しかし、そのキーは日本を覆う鎮守の森である。その森から見
える日本の歴史とその森を活用した日本の災害からの備えを見てい
こう。                 津田より

0.はじめに
私が宮脇昭先生を知ったのは、ガレキを全国で燃やすのはおかしい。
それを盛り土にして森を作り、今後の津波に備えるべきであるとい
う、がれきを活用した「森の防波堤」構想を知ったことでした。

過去にも例があり、横浜市の山下公園は、関東大震災で発生したが
れきの上につくられたし、阪神大震災でも、このガレキは神戸港の
埋め立てに使っている。

宮脇さんの構想では、がれきから有害物質を取り除き、木質系(木
材、流木)とコンクリートを中心に土と混ぜ合わせて海岸沿いに埋
める。そこに土盛りし、上に土地本来の常緑広葉樹を植える。

 常緑広葉樹は根が深く、さらに、埋めたがれきの隙間(すきま)
に根が絡み、丈夫な森ができ、津波にも耐える。樹木の波砕効果で
津波の威力が軽減され、引き波によって人や家屋が海に流されるの
を防ぐという。この土地本来の常緑広葉樹のことを潜在自然植生と
いうようだ。

人の手が加わらない自然の森を形づくる樹種を潜在自然植生と呼び
、基本的に田舎にある昔ながらの鎮守の森が代表例あり、この鎮守
の森は縄文時代から保存された、その土地本来の木や草が覆い、植
生や動物たちのバランスが取れている持続可能な森であるという。
このため、人間の手間なしで、森自体がその植生を維持できる環境
にしている。

この森では個々の樹木は世代交代しても、森全体として次の氷河期
になる9000年は長持ちする持続可能な生態系になっている。日本の
広い範囲がタブやカシ、シイを主木とし、ヤブツバキやシロダモ、
ヤツデなど様々な樹種が混在して育つ多様性の高い森だ。

人間は、松や杉、ヒノキなどの木を植えて、商品性を高めたが、そ
れでは鎮守の森にはならない。人間が常に管理していないと杉も松
も育たない。潜在自然植生ではないことによる。

また、今回のような津波で海岸の松林が流された例が多く報告され
ている。マツは根が浅く、津波ではひとたまりもない。倒木が流さ
れて家を破壊した。仙台空港の海岸を見たが、ほとんどの松が押し
倒されており、その姿を目の辺りにしている。

今回の津波で、日本の海岸では長年、松林が人為的に維持されてき
たが、津波への備えにはならないことがはっきりした。

しかし、この「森の防波堤」構想の実現に向けた壁の一つに、法的
問題がある。環境省によると、廃棄物処理法では、コンクリート片
を資材として使用することを認めているが、木質系は腐敗してメタ
ンガスが発生したり、自然発火する恐れがあるため、同法に抵触す
るというのだ。

宮脇さんによると、木質系は腐食して分解されるため、樹木の養分
となり成長を促すというが、この法律との整合性を取ることが重要
になっている。

3月13日、がれき処理に関する関係閣僚会合で、野田首相は高台
や防波堤建設にがれきを利用する案の検討を指示した。この指示を
受けた環境省は法的問題の検討を進めているが、特例として、法の
弾力的な運用で、木質系も入れた構想の実現を目指してほしいもの
である。

「森の防波堤」構想の実現に向けた世論の支持がどうしても必要に
なっている。署名活動も必要なら行うことも考えたいほどである。
ガレキが被災地にうず高く山になっていることで復興が遅れ、かつ
全国の自治体で燃やすのでなく、地元の次の津波に備えたほうが、
生産的でもあるし、死んだ方たちの供養にもなる。

そして、今後、日本の広範な地域で地震が起こる可能性が高まって
いるというから、次の地震や津波に備えることが重要なことになっ
ている。しかし、コンクリートの防波堤はその防波堤を乗り越えら
れると意外ともろい事を今回の津波は教えている。

次の津波ときに減災させるためには、日本の海岸にある白砂青松の
松林を常緑広葉樹の潜在自然植生に変えることが重要であり、その
ことをいつ実施するかでしょうね。常緑広葉樹が生育して高い木に
なるのは、最低でも10年は掛かる。それまでに地震が起こると、
逆に災害が大きくなってしまう。

1.日本の森をどうするか?
日本には土地本来の鎮守の森は 0.06%しか残っていない、全部人間
が手を入れて人工的な森にしてしまったというが、生産林や里山の
林など、日本の風景を作ってきたし、サクラなどの名所も多くある。
クワガタなどの虫も、里山があることで生育できている。

また、杉や松、ヒノキなどを生産する林業は重要な産業の1つであ
り、全ての森を鎮守の森にすることはできない。今後、石油が高騰
すると、リグニンの生産や木質ペレットなどの生産を林業は行うこ
とになる。林業はメイン産業になる。

このように、鎮守の森と生産林、里山などの林の形も多様であるべ
きである。この時、どのような住み分けを行うかが重要になる。

鎮守の森は、防災林や減災林や防火林、防砂林、防波堤としての役
割や災害時の避難場所(公園等)が、まず候補でしょうね。

山形県酒田市の大火災時、本間家にあった常緑のダブノキが2本あ
り、その木が延焼を止めている。このため、酒田市では、「タブノ
キ1本、消防車1台」という掛け声で、いろいろな市の施設の周り
にタブノキを植えた。このように防火にも鎮守の森は、役立ってい
る。

また、関東の直下型大地震時延焼を止める必要が出る。東京の地震
災害マップを見ると目黒、中野、赤羽、下町の一円など山手線の外
側のドーナツ状の地域が火災発生危険地帯になっている。この地域
の大きな道路や川端などに鎮守の森を帯状に構成することが必要な
のであろう。

というように、都市の防火林や海岸の防砂林、防波堤としてまず、
鎮守の森構想を広げることである。災害を減災する技術としての鎮
守の森の復活が今、日本には必要なようである。次の地震が迫って
いる現在、日本を守る鎮守の森構想を大々的に、行うことであろう。

3.歴史から見える鎮守の森
縄文人が常緑樹の森からドングリを拾い、その渋さをさらして食用
にした。しかし時代が下がると、住居の傍には栗などの単種類の木
を植えていくことになる。人間によって有効な里山の林を作る最初
である。

そして、弥生人が住むと、丘陵地から平地に出る水が湧き出す辺り
から下の林を開墾して田畑を作ることになる。平地でも海に近いと
ころは水の制御が難しいので、ある程度勾配がある水が出る土地に
棚田を作り、稲を育てたようである。

この様子は奈良の葛城の里に行くと分かる。大きな池のある高鴨神
社の大きな神社から緩い下り道の両側は段々の水田が広がる。この
神社から上、湧水地にあるのが小ぶりの高天彦神社で、その上は鎮
守の森である。このように、神社を丘陵地の上におき、湧水を維持
するために、後背地を鎮守の森として水を守ったようだ。

このように、山の中腹に神社を作り、湧水地を押さえたのだ。この
鎮守の森に入ることも禁止して、そこに八百万神がいるとし、神聖
化した。この信仰が、日本の古神道であるが、のちに道教の神道派
が教義や祭りのスタイルを持ち込み、それを取り入れて神道になる。

その神道の巫女が、アマテラスになり日本を統治することになる。
このように鎮守の森は、古代から日本の田を守ってきたが、徐々に
時代が下り、都市の建設や大仏の建立などで森が失われることにな
り、神社の神域を規定して、その森だけを守ることにして、鎮守の
森を厳格化したようである。

江戸時代になると、林業生産としてヒノキ、松、杉などが全国に普
及して、古代の森を一変させることになる。商品作物としての価値
の高い森に変えているし、海岸は松林にしている。

明治時代には、日本の文明が遅れているとして捨てて、西洋文明の
林業が入り、効率性の追求してきた。このため、日本の古代からの
常緑樹は見向きもされなくなってしまった。全国に残るのは鎮守の
森だけになり、日本の本来の木を維持していたのだ。

とうとう、古代の森が現代によみがえることになる。この森の効果
はまだ、誰も分からないが、エンドファイトという木種の間で酵素
のやり取りを行い、外部の毒等を中和する効果もあるような気がす
る。今後の研究を待つ必要があるが、何か日本を守る八百万神たち
が活動できる基盤を整備しているように思うがどうであろう。

宮崎駿氏の動画でこの辺りを取り上げてほしいものである。

さあ、どうなりますか?
==============================
記者の目:がれき活用策としても注目=山本悟
毎日新聞 2012年04月12日 00時12分

 ◇「森の防波堤」構想の実現を
 東日本大震災で大量に発生したがれきの広域処理が足踏みしてい
る中、がれきを活用した「森の防波堤」構想がにわかに注目され始
めた。がれきを埋めて土盛りし、その上に津波を防ぐ森をつくろう
という構想だ。がれきは単なるごみではなく、被災者にとっては遺
品であり、歴史の遺物でもある。次世代の生命を守る有用資材とし
て活用し、防災意識を後世に引き継ぐ、防災文化の象徴としての森
を整備するよう提案したい。
 3月13日、がれき処理に関する関係閣僚会合で、野田佳彦首相
は関東大震災で発生したがれきの上につくられた横浜市の山下公園
を例にあげて、高台や防波堤建設にがれきを利用する案の検討を指
示した。
 森の防波堤構想は、宮脇昭・横浜国立大名誉教授(植物生態学)
が震災後まもなく提案した。私は昨年6月5日の本紙朝刊で「いの
ちを守る緑の防波堤構想」として、それを紹介した。
 宮脇さんの構想では、がれきから有害物質を取り除き、木質系(
木材、流木)とコンクリートを中心に土と混ぜ合わせて海岸沿いに
埋める。そこに土盛りし、上に土地本来の常緑広葉樹を植える。
 常緑広葉樹は根が深く、さらに、埋めたがれきの隙間(すきま)
に根が絡み、丈夫な森ができ、津波にも耐える。樹木の波砕効果で
津波の威力が軽減され、引き波によって人や家屋が海に流されるの
を防ぐ。

 私が宮脇さんに同行した東北3県の被災地調査では、津波を受け
て残っている常緑広葉樹が多く見られた。

 ◇和歌山県の「広村堤防」という先例
 がれきを埋めた堤防の先例が和歌山県にあると聞き、同県広川町
の国の史跡「広村堤防」を訪ねた。広村堤防は安政元(1854)
年の安政の南海地震津波を契機に、当時の実業家、浜口梧陵が整備
した。漁港と住宅地の間に、高さ3ー5メートルの土手が636メ
ートルにわたって続く。高さ約15メートルのマツが海側の斜面に
並び、宅地側はマサキやサンゴジュなどの常緑広葉樹が茂る。堤の
上に延びた小道では子供が遊ぶ姿が見られ、散歩する住民も多い。
林間から海が見えるため、海の異変に気付きやすい。
 土手のかさ上げには、津波で打ち上げられた石などが利用され、
失業した被災住民を雇って整備した。1946年の昭和の南海地震
では4ー5メートルの津波に襲われ同町で22人が犠牲になったが
、堤防に守られた中心部の家屋は無傷だった。

 感心させられたのは、堤防を核に防災意識が受け継がれているこ
とだ。毎年11月、消防団や小中学校の子供たちが参加して堤防前
で「津浪祭」が開かれ、子供が各自持ち寄った土を堤にまいて補修
する。今年は110回を迎える。子供を含めた町民が堤防の草取り
やごみ拾いを欠かさない。さらに、町の有志15人が「語り部ボラ
ンティア」になり、堤防や浜口梧陵について説明する。津波の教訓
や防災への構えが地域文化として根付いている。
 東北の被災3県のがれきは計2246万トンあり、うち処理でき
たのは8.1%にすぎない。今後は建築物の基礎をはがしたコンク
リート片が大量に追加されることは明白だ。がれきを早期に処理す
る上で、森の防波堤への利用は有力な選択肢になる。
 実現に向けた壁の一つに、法的問題がある。環境省によると、廃
棄物処理法では、コンクリート片を資材として使用することを認め
ているが、木質系は腐敗してメタンガスが発生したり、自然発火す
る恐れがあるため、同法に抵触する可能性があるという。陥没の危
険性も指摘する。
 ◇法を弾力運用し特例で道を開け
 そうだろうか。3年前に宮脇さんの手法を採用し、広島県呉市の
野路山国有林で行われた試験植樹では、深さ1メートルの穴にスギ
丸太などを土と混ぜて入れ、その上に植栽したが、火災や陥没も起
こっていない。

 宮脇さんによると、木質系は腐食して分解されるため、樹木の養
分となり成長を促すという。野田首相の指示を受けた環境省は法的
問題の検討を進めているが、特例として、法の弾力的な運用で、木
質系も入れた構想の実現に道を開くべきだ。
 宮脇さんの提案を受け、森の防波堤構想に取り組もうとしている
被災地の自治体は複数ある。住民が植栽作業に参加すれば、住民自
らがつくる堤防となる。
 がれき処理の問題を解決し、次の津波に備え、災害の記憶と防災
意識を後世に残す。森の防波堤構想はそうした意義を持つ、地域の
生きた復興策になるはずだ。(水と緑の地球環境本部)
==============================
震災がれきを活用、東北に「森の防波堤」を 横国大の宮脇氏に聞
く  :日本経済新聞
2012/2/1 7:00
 東日本大震災で被災した東北地方の海岸線に「森の防波堤」をつ
くろう。国内外での植樹活動で知られる植物生態学者、宮脇昭・横
浜国立大学名誉教授は森づくりの長い経験に基づくユニークな復興
計画を提唱する。森を育てる土台には処分に困っているがれきが使
えるという。

 ――震災がれきを活用した「森の防波堤」とは。
 「震災で生じたがれきのほとんどは、家屋などに使われていた廃
木材やコンクリートだ。これらはもともと自然が生み出したエコロ
ジカルな『地球資源』だ。捨てたり焼いたりしないで有効に活用す
べきだ」
 「海岸部に穴を掘り、がれきと土を混ぜ、かまぼこ状のほっこり
したマウンド(土塁)を築く。そこに、その土地の本来の樹種であ
る潜在自然植生の木を選んで苗を植えていけば、10〜20年で防災・
環境保全林が海岸に沿って生まれる。この森では個々の樹木は世代
交代しても、森全体として9000年は長持ちする持続可能な生態系に
なる」
 「将来再び巨大な津波が襲来しても、森は津波のエネルギーを吸
収する。東北地方の潜在自然植生であるタブノキやカシ、シイ類な
どは根が真っすぐに深く地下に入る直根性・深根性の木であるため
容易に倒れず波砕効果を持つ。背後の市街地の被害を和らげ、引き
波に対してはフェンスとなって海に流される人命を救うこともでき
る」

 ――タブノキなどは常緑広葉樹ですが、東北地方の海岸で育つの
ですか。
 「人の手が加わらない自然の森を形づくる樹種を潜在自然植生と
呼ぶ。岩手県釜石の北までタブノキなどの常緑広葉樹が自生できる
環境だ。日本人が農耕生活を始める以前には常緑広葉樹の森があっ
た。私たちの祖先が定住生活を始め耕作地をたくさん必要にするよ
うになったため古来の森を伐採した。また古い森を伐採した後にス
ギやヒノキなどを植林したりもした」
 「しかし賢明であったのは、土地本来の森を全部なくしてしまわ
ずに一部を残してきたことだ。各地に残る鎮守の森こそ日本の潜在
自然植生を残した森だ。タブやカシ、シイを主木とし、ヤブツバキ
やシロダモ、ヤツデなど様々な樹種が混在して育つ多様性の高い森
だ。東北の海岸線に南北300〜400キロ、幅30〜100メートルほどの鎮
守の森を再生できれば、緑の防波堤となるだけでなく、鎮魂の場に
もなり、後世の人々が緑を満喫できる自然公園にもなる」

 ――がれきを使うことに問題はないのですか。
 「がれきを使うことにこそ意味がある。根が浅いマツなどと違っ
て常緑広葉樹は根が深く地中に入る。根は息をしており,生育には
土壌の通気性が大事だ。土とがれきを混ぜることで通気性のよい土
になる。木材など有機性の廃棄物はゆっくり分解し樹木の養分とな
る。木の根はセメントのかたまりなどをしっかり抱いて深く安定し
た根を張る。毒性のあるものやプラスチックなどは事前に取り除い
ておく」
 「津波で海岸の松林が流された例が多く報告されている。マツは
根が浅くひとたまりもない。倒木が流されて家を破壊した。震災後
に現地を調べてまわったが、鎮守の森が波を食い止めた例がいくつ
かある。マツは日当たりのよい場所で早く育つが、自然のままに500
年も放置されれば松林はやがて常緑広葉樹の森に変わっていく。白
砂青松の松林を愛し利用してきた人間の営みによって、日本の海岸
では長年、松林が人為的に維持されてきたが、津波への備えにはな
らないことがはっきりした」
 「がれきを利用した復興の事例はたくさんある。第2次世界大戦
後の復興でドイツやオランダでは公園づくりにがれきを利用した。
身近な例では横浜の山下公園は関東大震災のがれきを埋め立てて復
興のシンボルにした」

 ――潜在自然植生の森なら、丈夫で長持ちするということですか。
 「世界各地で植樹活動をしてきたが、世界は日本をじっと見つめ
ている。大災害からどのように立ち直るのか、日本人の力を見定め
ようとしている。日本人は6000年にわたって守り続けてきた鎮守の
森の知恵を生かし、9000年はもつ本物の命の森をつくり、二度と津
波で多くの人命が失われないようにしなければならない。世界にも
例がない先見的な試みをやってのけたときに、世界の人たちは『さ
すが日本人』と言うに違いない」
 「現代最高の技術力による備えが自然の力でもろくも崩れること
を知った。ギネスブックに載った巨大な防波堤が壊れ、そこを乗り
越えた海水が猛烈な勢いで市街地に押し寄せた。地球規模の自然の
営みの中で、近代科学の知識はわずかに点と線を押さえているのに
すぎない。本物の自然が備える能力を見方につけて、数百年〜1000
年に1度の自然災害に備えていくことが必要だ」

 ■取材を終えて
 宮脇さんを「4000万本の木を植えた人」と呼ぶ人もいる。日本国
内各地や中国、インドネシア、ブラジル、アフリカなどで植樹によ
る森林の回復に力を尽くしてきた。その手法はインタビューの中で
も再三言及された「潜在自然植生」という考え方に基づく。本来そ
の土地で持続的に育つ樹種を選び出し多数の樹種を群生させること
によって、人の手入れがなくても長期に存続する森を目指す。

国内では三菱商事や新日本製鉄、横浜ゴム、トヨタ自動車などの企
業が工場や自社の土地の緑化に「宮脇方式」を採用している。また
東日本大震災後は、千葉県浦安市の松崎秀樹市長が宮脇さんを招き
、その指導の下で海岸線に「緑の防波堤」づくりを始めている。
==============================
「日本の雑木林はニセモノだ、本来の森に帰せ」(宮脇昭)

今朝のNHK総合「知るを楽しむ選 この人この世界」はたいへん
勉強になった。日本中の植生を徹底的に現地調査して『日本植生誌
全十巻』をまとめた宮脇昭先生は、日本には土地本来の森は 0.06% 
しか残っていない、全部人間が手を入れて人工的な森にしてしまっ
たもの、これが諸悪の根源であると言う。

曰く:
今の里山のクヌギなどが中心の雑木林は人間が人工的に作ったもの
で、本来の植生はシラカシなどの常緑樹、海岸部は照葉樹林。
現在の雑木林は20年に一回の伐採と三年に一回の下草刈りが前提
。それをやらないと維持できないニセモノの森。
マツにしてももともと条件の悪い山頂部などに限定して生えていた
だけのもの。それが人間が広げてしまった。マツクイムシの大発生
は自然の摂理。
自然災害もこのために起こる。
元に戻すのが一番。そのためには200年間は森に人間がへんな手
を加えないこと。200年で元に戻る。

「田舎の里山の伝統的生活にこそが環境を守る」としょっちゅう主
張しているNHKにしては、めずらしく科学的で公正な番組。地方
では、自然環境を守るとかいって、ボランティアを動員して里山の
伐採とか下草刈りをしているらしいが、何もしないことが一番の自
然保護なのである。ここにも「省事」が望まれる。

何もしないで森を自然体で放置すると美しい極相林が出来上がるこ
とは明治神宮の森を見ても明らか。明治神宮の場合わずか100年
で極相林になった。

Posted: Tue - December 20, 2005 at 11:02 AM

コラム目次に戻る
トップページに戻る