4286.成長戦略を考える3



どう効率的にイノベーションを起こすかが、このイノベーション不
足時代に問われている。イノベーションを起こし、世界にない便利
であるが高付加価値な製品を作り、労働賃金を高くすることである。
これを目指すしかない。  津田より

0.江戸時代にみる変革の考え方
昔、国鉄や電電公社という国家企業があった時は、鉄道技術研究所
や電気通信研究所が最先端の研究を行い、そこで得た技術を民間会
社に渡して、その民間会社が世界を相手に戦って勝っていた。

その国営企業を民営化したことで、膨大な費用を注ぎ込める国営研
究所がなくなり、民間会社化したことで日本の研究レベルがプアに
なったことで日本が沈没したと見る。イノベーションを起こす研究
所をどう作り、残すかが大きなテーマである。

今の時代は、各藩が農地開発を一段落させた享保・元禄時代に良く
似ている。この享保・元禄の時代は、日本が1つの市場になり、各
藩が米から付加価値の高い商品作物にシフトする時代であった。

これと同じでグローバル化、オープン化で世界の先進各国は、工業
の基礎製品から、高付加価値な商品を開発することでしか国民の生
活レベルを維持できなくなった。世界が1つ市場になってきたこと
による。これは江戸時代の享保・元禄期と同じで、日本を世界に、
藩を国に置き換えると同じになる。

そうすると、当時の日本の考え方を調査して、何が有効な方策があ
るかを尋ねることが必要である。そうすると、荻生徂徠の弟子であ
る太宰春台の経済論に突き当たる。

太宰春台は、各藩がユニークな商品を生み出し、それを藩専売とし
て藩経済・藩軍事を確立することであるという。この考え方が現在
にも有効のようである。

イノベーションを起こし、江戸末期に技術的に優位であった藩は、
佐賀藩と薩摩藩であるが、両藩ともに2重鎖国化して他藩から隔離
した藩内政策をして、密貿易で得た金を使い、秘密裏に技術を西洋
から取り寄せ、西洋的な工業を起こしていたのだ。このようなイノ
ベーションを起こすことは厳格な秘密とお金が必要である。

1.現代の取り組み
世界は、今、中国やロシア、シンガポールなどの国家資本主義の国
々が大きな国際競争力を持っている。シンガポールを見ると、世界
から優秀な研究者を国家が雇い、研究をさせている。この国家での
研究で中国は、有人宇宙船を宇宙に送ることが出来ている。

今後の日本は、このイノベーションを起こす国家の仕組みを再構築
することであると見ている。国営で一番必要な研究は軍事という安
全保障関連である。これを民営化しろという外圧はない。このため
、基本的には軍事的研究所を作ることだ。

軍事的研究開発は、機密性が必要なので、クローズドな環境になる。
世界はインターネットや人の動きがオープン・グローバルになるた
めに、直ぐに企業秘密が他社に漏れる。

これでは後から来る国や企業の方が得になる。このため、クローズ
ドでかつ人を移動させない体制を作ることである。1990年代に
日本人技術者が韓国のサムソンに移動して、技術を盗まれて、そこ
から日本家電企業の没落が始まる。このため、人の移動をさせない
ためには、軍事との関連がどうしても必要である。軍事系研究者は
、他国企業への就職を制限しておくことである。

しかし、それだけでは研究が陳腐になるので、DARPAのような
世界に向けた研究探索チームが必要になる。予算はアメリカ国防総
省の科学技術開発費の25%と決められているというように、ある一定
の金額を無条件に掛けることだ。これにより、世界の優秀な技術を
手に入れることができる。

DARPA長官の下には約150名の技術系職員がプロジェクトマネージャ
ーとして各分野の研究をおこなっている。技術系職員は公募で任期
は4〜6年で大半は民間人であり軍人は少ない。 DARPAの主な活動は
最先端科学技術の速やかな軍事技術への転用である。

また、DARPAは軍の研究開発機関とは独立しており軍や議会からの批
判や抵抗を受けないという特徴を持つ。

一年半から二年周期でDARPATechという一般公募を行っている。これ
にはアメリカ人だけでなく海外からも参加が可能であり、書類審査
を通過した3000人が参加している。

この一般公募には面白いことにアメリカ軍そのものも一般人と同条
件で参加しており、アメリカ軍がDARPAから予算を貰って軍内部で研
究しているという事例もある。

軍事研究ではスピンオフ、スピンオンがあり、スピンオンはDARPAで
あり、スピンオフは軍事研究の成果を民間企業に移転することであり
、この方法を考えることである。

2.研究開発費・投資
もう1つが、この軍事研究所を運営する研究開発費の問題である。
これは特許料だけでは無理で、専売にすることを考える。その売上
げの利益を次の研究に使うことである。特にその有望なものは、藻
からの石油ではないかと思う。

藻からの石油製造会社を完全国営にして専売にする。そこの利益を
次の研究投資や国庫に入れて税外収入として、社会保障費などに活
用して、国民の税金を安くすることである。これにより一人当たり
のGDPは相当大きくできると見る。この国営企業の売り上げは、
50兆円程度とすると、1バーレル100円程度のときに、原価は
50円とすると、半分が儲けになる。25兆円程度が儲けとなる。

現時点の税収は40兆円で消費税増税でも50兆円程度になる。し
かし、特別会計を整理すると、5兆円程度の税外収入があり、それ
に25兆円があれば、80兆円と収支は黒字になる。税収を落とし
て、この石油からの利益だけで国家運営ができれば、国民は非常に
豊かになる。アラブの産油国と同様な生活ができれば、移民希望者
は多数に上るはずである。そして、この利益を再投資して、より儲
けを増やすことである。

このため、ここで得た利益の一定割合を再投資に向ける。軍事研究
で得た技術を民間移転する。このための国家ファンドを作り、官僚
ではなく経営や技術がわかる人たちが、スピンオフする産業・企業
に投資する。または、国営企業が商品化する。

軍事研究の項目は、武器、エネルギー、食糧、医療やリクニンなど
安全保障上必要な分野を網羅することだ。武器の分野にはロボット
、ロケット、工作機械、電気機器などとこれも広範囲である。

どうも軍事研究を中心にして、イノベーションと産業を再構築する
ことが最終的な成長戦略の回答のようである。国家資本主義という
より、国家イノベーション主義と言うことである。

製造業、その中でも石油代替エネルギー生産を中心に投資して、こ
の利益で、イノベーション主導の軍事研究所を作り、その研究所の
成果をスピンオフして、日本企業に技術を開放することで、より多
くの高付加価値製品を作り儲けを出して、国民を豊かにすると言う
のが成長戦略の政策である。

3.人口減少での農業は
現時点で220万人の農業は、今後地方崩壊と共に、地方農業の担
い手は、どんどん少なくなる。100万人以下になると見ている。
このため、地方は大規模農業になり、企業が中心となった農業にな
るはずだ。その農業産品を原料とした製品まで一貫して作り、それ
をスーパーなどに出すことである。

2つのモデルがある。1つは、北海道のコンビニであるセイコーマ
ートで、北海道の農業、酪農と食品工場、それにコンビニの一連の
上流から下流までを1社でカバーしている。他社への依存がないこ
とで、安く商品を顧客に提供している。

もう1つが、業務スーパーを展開する神戸物産である。海外・国内
に食品加工工場や貿易会社等を持ち、国内では農業も直接行い、自
社製品の割安な商品をそろえて、フランチャイズ店の展開をしてい
いる。このフランチャイズ店があることで取り扱い量を増やし、ス
ケールメリットを出して、ここでも下流から上流までを1社で行う
体制にしている。またロイヤリティが1%と他のコンビニに比べて
非常に安いことである。それは商品が神戸物産の製品であり、その
利益があるためだ。

というように、総合流通加工会社化した企業が、農業も行うという
体制になってきた。また、サイゼリアなどのファミリーレストラン
が農業を行い、新鮮な野菜を提供している。

いろいろな企業が農業に参入できるように、法整備をして、効率よ
い農業をできる法整備をするべきである。企業農業が次の日本農業
のあるべき姿のようである。企業農業にすれば、海外からの農産品
と日本の農産物は共存できる。企業が日本で作るべきものと海外か
らの物を最適化する。

しかし、日本の米については、一定量は作る必要がある。これには
所得保障をして、保護するべきである。食糧安保は必要である。

4.人口減少での国土は
日本企業が海外市場を狙い、海外需要で生きることになる。日本は
需要が人口減少のために、制限されていることで、内需では成長は
できない。しかし、日本は石油やその他材料産業等を起こして、そ
の輸出で生きるしかない。自国だけでも生きれるような最低必要な
食糧などの安全保障を行い、基礎産業は確保することである。

しかし、人口減少で鉄道、道路などの拡充は、復興事業以外では、
そろそろ止めるべきである。新幹線を延長しようとしているが、そ
れに乗る人が少なくなり、採算が取れないことになる。地方空港も
そろそろ整理しないと、赤字が拡大する。国土の縮小をどうしてい
くのかを検討していく時代であり、その検討は州政府が行うにして
も、現時点での国土拡充は非常におかしいことである。しかし、羽
田の拡張はしないと、周辺諸国にハブ空港を取られかねない。とい
うように、大都市に集中への必要である。

老人介護を見るなら、都市を縮小して、コンパクトシティ化してい
くことが地方自治体では必要になる。日本の縮小化を今から地方の
県庁は考えていくことである。拡張はいけない。

さあ、この研究でたいだいの成長政策はできた。後は有能な政治家
の出番である。この3回の成長戦略を参考にして、政治を行ってい
ただきたいものである。

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国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency)
は軍隊使用のための新技術開発および研究を行うアメリカ国防総省
の機関である。日本語では防衛高等研究計画局、国防高等研究事業
局、国防高等研究計画庁などとも表記される。略称はダーパ (DARPA
) 。ARPAの時期にインターネットの原型であるARPANET・全地球測位
システムのGPSを開発したことで、よく知られている。

組織概要
アメリカ国防総省・国防総省内部部局。大統領と国防長官の直轄の
組織でありアメリカ軍から直接的な干渉を受けない組織になってい
る。構成人員は300人ほどで組織としては小さい。DARPA長官の下に
は約150名の技術系職員がプロジェクトマネージャーとして各分野の
研究をおこなっている。技術系職員は公募で任期は4〜6年で大半は
民間人であり軍人は少ない。 DARPAの主な活動は最先端科学技術の
速やかな軍事技術への転用である。その中でも軍や科学技術基金な
どの組織が投資を行わない隙間への投資を積極的に行う。そのため
、固定観念に囚われない自由度の高い研究への投資を重視している
性質から、一見すると空想的だったりトンデモに見えるような研究
内容が多数ある。予算はアメリカ国防総省の科学技術開発費の25%と
決められており、2007年度予算は32億ドル(約3400億円)になる。
DARPAの研究施設という建物は存在せず、実際の研究はプロジェクト
マネージャーが企業や大学の研究施設で行っている。

国防高等研究計画局は軍の研究開発機関とは独立しており軍や議会
からの批判や抵抗を受けないという特徴を持つ。

一年半から二年周期でDARPATechという一般公募を行っている。これ
にはアメリカ人だけでなく海外からも参加が可能であり、書類審査
を通過した3000人が参加している。この一般公募には面白いことに
アメリカ軍そのものも一般人と同条件で参加しており、アメリカ軍
がDARPAから予算を貰って軍内部で研究しているという事例もある。
これ以外にも無人自動車による競技大会などを定期的に開いたりし
て技術の公募を行っている。

国防高等研究計画局で行われている研究は全て一般公募という形を
取る為、全ての研究目標が公開されており、一般に秘匿されている
ような極秘研究は無い。


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