4280.成長戦略を考える2



経営戦略とは、目標を決めて、現状との差を明確にして、そのギャ
ップを効率的に埋めることで目標に到達できる方法を決めることで
ある。この考え方を国の成長戦略に置き換えて考える。 津田より

0.戦略とは
戦略とは、「長期的な視点で国活動全体の方向づけをすること」であ
る。(1)結論から考えることで、最終的なゴール・イメージ 
(Where)を決めて、現状(Now)を正しく認識することだ。ゴール
・イメージと現状が正しく認識できれば、その間のギャップが分か
り、このギャップを認識できて初めて、どのようにギャップを埋め
ていくのか(How) が見えることになる。

(2)全体から考えることで、部分を必要以上に重視しないで、「国
の活動全体」を考える発想から見ることである。

(3)最後に重要なのが、しない事を決めることである。戦略とは、
目標を決めて、現状との差を明確にして、そのギャップを効率的に
埋めることである。このとき、捨てる分野、力を入れない分野もあ
ることを是認することだ。

最初に国家の理念やミッションが重要になる。国家として、何を目
指しているのか、国民の合意が重要である。日本の国家としてのあ
りようである。

戦略では、上位概念から下位概念に向かった計画を作ることである。
政治家の仕事は、上位概念の内で、目標と行動計画を立てるまでで
あろうと見る。理念、目標、行動計画、組織、行動の順であるが、
この上位概念の3つまでと行動チェックが政治家の仕事である。

目標ができたら計画であるが、これには現実的な中間目標を立てる
ことである。それが行動計画になる。それと各省ベースに分けるこ
とである。

それから以後は官僚の仕事になる。各省の行動計画や結果を報告さ
せて、目標に達しない場合は、その原因を探り、対応することも政
治家がやるべき仕事である。この場が国会だ。

前回は、現状分析をしたので、今回は理念、目標を定めることから
始める。

1.理念・目標とは
日本は、今まで平和国家として戦後位置づけてきた。しかし、一国
平和主義はなく、世界の平和に貢献する必要があり、国連のPKO
を行ってきた。しかし、国連での平和主義は、欧米と中ロの見解の
相違で、うまくいかなくなっている。

このため、平和の定義をシッカリする必要が出ている。それは、世
界の人たちの自由と民主主義を守ることである。その活動を通じて
平和主義の定義と日本の理念を拡大することであろう。

一方、日本が豊かでないと、世界の平和を推し進めることはできな
いので、日本の国益を追求することで理念を完成することができる
。国益とは豊かさ追求と安全の確保の2つであり、このことについ
ては国民共通の理解が必要である。安全の確保には集団自衛権の確
立が必要になる。もちろん、憲法9条の見直しは、どこかでやるべ
きである。

目標に移ると、現状分析から2100年には人口が3700万人程
度になる可能性が出ている。しかし、この人口減少をどこで食い止
めるかが重要である。2030年の新生児は40万人程度であるが
、これが2060年では新生児は30万人程度に減少する。

もし、このレベルが続くと、2100年以降では新生児30万人で
は、人口全体は2650万人、40万人では3400万人になってしまう。

この人口減少をどう食い止めるかが大きな目標になる。成長戦略で
最も大きく影響する要素は人口である。個人消費がGDPの60%を占め
ているためで、国民総生産で大きな要素になっているためだ。

2100年に現在の人口の半分程度の6000万人にしようとする
と、3700万人とのギャップが出る。2300万人である。この
増加を促す方法は、女性の出産促進と育児を助けることである。

もう1つが、移民政策を取ることだ。しかし、1000万人移民と
いうと、大きなストレスを国民に与えることで反発が起きる。しか
し、2100年までには、80年もある。2020年に移民制度が確立
したとしても、2100年までには80年もあり、20歳の夫婦が
移民してきたとして、2世代の間もある。発展途上国の人たちは、
多くの子供を生むので、1世代で倍になるとすると、年間5万人程
度で、2100年度には1000万人増加の可能性がある。

もう1つが出生率の改善である。今は1.34であるが、これを2
にすることが必要である。子供を社会が育てるという意識が必要な
のであろう。男性には厳しく、子供を持つ非結婚女性(離婚、未婚
女性)にはやさしく対応する社会を作る必要があると見る。なるべ
く、対象を絞らないと、日本は貧乏になるので予算が持たない。

ここでは目標を2100年に6000万人程度としていくとする。

もう1つが、1人当たりのGDPを今より上げることであり、少な
くても米国と同様なレベルにする必要がある。1当たりのGDPを
400万円とすると2100年のGDPは250兆円程度になる。
今の半分程度である。しかし、500万円にすると、300兆円程
度になる。人口が半分になっても、豊かな生活ができる。これを目
標としたい。

枝野経産相は20日の衆院予算委員会で、人口減少下で高いレベルの
経済成長を追求すべきでないとする成長戦略論を展開したが、これ
は正しい。今以上のGDPを追求することは、現状を知らない政治
家の戯言である。現実的な政策は、1人当たりのGDPを高めるこ
とである。産業政策と所得の再分配の両方が必要である。

2.移民政策
一番キーになるのが、移民政策である。しかし、ミャンマー難民た
ちでさえ、日本への移住で「日本へ行った第1陣の人たちの一部か
ら『日本になじめない』という電話が残った親族にかかってきてい
る」ために、日本に行きたがらないという。日本はなじみやすくな
いのと、親戚が少ないと言ういう理由である。

移民たちは、ある程度集団になると、文化や習慣が違う場所でも、
助け合いでその社会になじまない人たちをも援助できる体制ができ
るので、集中的にある民族を移民させるほうが良い。

移民は意図的に選択して行うことである。日本の安全を脅かす人は
入れない。文化的に近い人たちを入れる。また、高いGDPを達成
するためには、有能な人たちを中心に入れることである。

成功すると、日本に定着した人たちが親族を呼ぶので、徐々に増え
てくる。この地域を選択する必要がある。タイ、ベトナムなどを対
象にしても、経済発展中で、自国にいたほうがチャンスがあり、優
秀な人たちが移民することはないようだ。

優秀な人が移民したほうがよいと思える国で、日本とも近い国は、
そう多くない。ブータン(70万人)、ネパール(2500万人)
、ミャンマー(6000万人)であろうが、前2国は人口が多くな
い。ということはミャンマーが有望である。

このミャンマーの民主化で、国の発展を志向し始めた。この国を積
極的に支援して、学校や大学を建てて、日本からオーバードクター
たちを教授にして送り出せばよい。その卒業生の半分が日本を目指
してもらえば、非常によいことになる。日本で成功すれば、親族を
呼び寄せるので、年間5万人程度の移民になる可能性がある。

ミャンマーとEPAを結び、日本からの教育支援と移民を含めた労
働市場開放をすることである。特に医者や理工学系技術者、エンジ
ニアなどを育成して、日本企業が雇うことである。

日本を活性化させるためにも、這い上がる上昇志向のある若い人た
ちが日本には必要である。日本復活の原動力になるはずだ。

このエネルギーを活性化するには、過度な生活保護があるとやる気
を失くすのでダメで、子供を持つ不遇な女性以外の生産世代にはつ
らくしないといけない。復活ができるような職業支援は必要である
が、それ以外では生命維持の最低線の補助しかしてはいけない。

最低限の生命維持ができるフードスタンプ的なポイント発行でパチ
ンコなどには使えないようにして、住居は無料の公的住宅を貸すこ
とである。電気ガス水道代は公的補助で行うが上限を決める。

アルバイトなどで現金を手に入れる可能性あるために、給付付税額
控除制度として、収入額に合わせて支給額を下げていくことだ。

この移民問題に関連して、中川少子化相は23日、日本で少子高齢
化が進んでいることで、「北欧諸国や米国は移民政策をみんな考え
ている。そういうものを視野に入れ、国の形を考えていく」と述べ、
移民を含めた外国人労働者の受け入れを検討するという。これは正
しい方向である。

3.産業政策
次に、産業政策である。現時点、6500万人の生産人口で、卸売
、小売業、飲食で1400万人の雇用、製造業1000万人、医療
・介護650万人、建設550万人、公務員400万人、運輸交通
通信放送260万人、農業は220万人、金融業25万人、水産業
10万人である。2000万人が非雇用者で、学生や専業主婦、無
職などであろう。

2100年の人口6000万人になるとすると、生産人口は3000
万人程度であり、全体を半分にする必要がある。民間企業は、海外
と言う逃げ手があるが、公務員だけは逃げて手がないので、半分に
することである。

現在の400万人から200万人へシフトしていく必要がある。こ
の過程で、中央政府を縮小して、道州制にして、そこが国政の中心
にして、エンドの市町区など地方自治体にして公務員数を削減する
必要がある。

世界は同一労働同一賃金になる。このため、イノベーションを起こ
して、世界にない高付加価値な労働を作る必要がある。しかし、現
時点、イノベーションの数が激減している。このため、一般的な労
働賃金は減少して、IT系の一部労働者や世界展開している大企業
の社員だけが高給になっている。このイノベーションを起こすため
に、どの分野に国家が投資して、研究を促進させるかと言う問題が
起きる。

前回で検討したように、エネルギー産業とその原料を加工する産業
、軍事産業が世界的な規模からして、有望である。このため、世界
の先進国は石油を求めて、世界に出ている。しかし、残念ながら日
本には石油は出ないので、それに代替するエネルギーを作るイノベ
ーションしかない。

このとき、忘れてはならないことがある。ERPである。エネルギ
ー効率であり、これを無視すると、エネルギーを使うほうが多くな
る。

このエネルギー効率を高めるには、エネルギーの質(密度など)と
人工的な加工や手間が少ないことが重要である。

石油を生み出す藻「オーランチオキトリウム」は、光合成をしない。
このため、たんぱく質を他の生物から得ることが必要である。一番
の候補は、下水処理場であるが、光合成する藻を餌にして、生育す
るというが、これは可能かどうかである。手間を掛けるとERPが
劣化することになる。

メタンハイドレードはより敷居が高い。3000Mの海底から海面
まで上げて、かつ温度を下げてないと気体になり、ほどんど失うと
いうことで、相当なエネルギーを使う可能性が高い。ERPが非常
に低くなる可能性を感じる。

ススキからのエタノールも成熟期間が問題であるし、熟成期間での
作業があり、また複数工程が必要であるとERPが下がる可能性が
ある。というようにイノベーションを起こすためにも、複数案を研
究しておくことが必要である。

太陽光、風力はERPがある程度見えるので、その程度で整備する
ことである。一番ERP的に可能性があるのが、木質ペレットと水
力・地熱発電であり、この2つのERPは他の物に比べて大きい。

当面は水力と木質ペレット、地熱などのERPの高いものを整備す
ることである。

イノベーションが起きたら、それを中心に日本を変えていくことだ
。石油やエタノールが生み出されると、これは大きな産業が構築で
きるし、1人当たりのGDPも増えることになる。しかし、これは
可能性の問題である。木質を作るリグニンの産業も大きいが、こち
らは、石油やエタノールが精製した後の加工産業となる。これも大
きい。優先順位をかげるべき研究は、この分野でしょうね。

次の優先分野である軍事産業は、その中心にDARPA的な研究開
発機関が必要になる。

この検討は次回にする。


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「企業収益より所得再分配」 経産相が独自成長論:日経
2012/2/20 20:53
 枝野幸男経済産業相は20日の衆院予算委員会で、人口減少下で高
いレベルの経済成長を追求すべきでないとする成長戦略論を展開し
た。20年間の日本経済停滞の原因は明治維新や戦後の高度成長期の
成功体験にとらわれたことにあると指摘。「人口減少が進み所得水
準も高い国にふさわしい高付加価値分野に(成長を生み出す)構造
を変えていくべきだ」と語った。

 枝野氏は「バブル崩壊以降、(2009年の)政権交代までの間、企
業収益を高めるウエートが高過ぎた」と述べ、企業の収益拡大を経
済成長のエンジンととらえた自公政権時代の成長戦略を批判。所得
再分配を強めることで個人の購買力を高め内需を喚起する方に戦略
の軸足を移すべきだとの考えを示した。

 質問した自民党の菅原一秀氏は「経産相が人口減少下だから成長
は難しいというメッセージを出すと市場はどう見るか」とし、枝野
氏は経済成長の旗振り役の経産相には不適任と強調した。
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ミャンマー難民、日本への移住希望減る 「適応に苦労」
2012年2月15日18時39分
 タイに住むミャンマー難民のうち、日本への移住を希望する人た
ちの適性を調べるための面談が15日、タイ北西部メソトで開かれ
た。先に日本へ渡った人たちの一部から苦境が伝えられる中、面談
を受けたのは2家族9人にとどまった。 

 難民受け入れは、日本政府が2010年に始め、今年は試行期間
3年間の最終年。「第三国定住制度」と呼ばれ、これまでに9家族
45人が日本に移住。最終年に当たる今年の応募は最も少ない10
人だった。うち1人は会場に姿を見せず、今後、追加面接する。全
員が移住できたとしても、3年間の合計人数は当初予定だった90
人の約6割にとどまる。 

 日本政府が移住希望者を募っているメソト郊外のメラキャンプに
は現在、約4万6千人の難民が暮らす。05年に制度を始めた米国
には、すでにタイ各地の難民キャンプから5万人超が移住。後発組
の日本には親族や知人がいないからと、元々人気が低かった。難民
委員会のトゥントゥン委員長は「日本へ行った第1陣の人たちの一
部から『日本になじめない』という電話が残った親族にかかってき
ている」と話す。
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中川少子化相「移民政策を視野」…政府で議論も

 中川少子化相は23日、読売新聞などとのインタビューで、日本
で少子高齢化が進んでいることに関連し、「北欧諸国や米国は移民
政策をみんな考えている。そういうものを視野に入れ、国の形を考
えていく」と述べ、移民を含めた外国人労働者の受け入れ拡大を目
指し、政府内に議論の場を設けることを検討する考えを示した。

 少子化対策だけで日本の人口減少に歯止めをかけるのは難しいと
の認識を示したものだ。中川氏は「現状でも多くの外国人が実質移
民という形で日本に入っている。どういう形で外国人を受け入れて
いくか議論しなければいけない時期だ」と語った。

(2012年2月24日08時04分  読売新聞)


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