4275.「推認主義」司法へ舵取りか



「推認主義」司法へ舵取りか?小沢裁判は日本社会の岐路となる?

17日、東京地裁は、小沢一郎民主党元代表が約4億円の土地取引
をめぐる政治資金規正法違反に問われた陸山会事件の公判で、小沢
の関与を認めた元秘書の石川知裕衆議院議員らの供述調書の多くを
証拠から排除する決定を下した。

このため、有罪とする直接的な証拠は殆ど無くなる事となり、検察
官役の指定弁護士側は、間接事実の積み重ね等で有罪を立証する方
針を表明した。

石川ら小沢の3人の元秘書は、昨年既に4億円の定期預金を担保と
し小沢名義で銀行から同額を借入れする等の複雑な金の流れを報告
書に記載しなかった事と、土地購入を翌年の報告書に記載した事等
で政治資金報告書の虚偽記載により執行猶予付きの有罪判決を受け
ている。(何れも即時控訴)

この時、判決を下した東京地裁の登石郁朗裁判長は、虚偽記載の動
機を水谷建設側からの闇献金を隠すためとしたが、闇献金授受を示
す確かな証拠が無かったため、状況証拠からの「推認」を根拠とし
た。

なお、私見だが、もし小沢事務所に何らかの隠蔽の動機が無いとす
れば、定期預金を担保とした小沢名義の銀行借り入れ等は、事務所
資金の手元流動性を高めるため、定期預金利息が極端に低い昨今に
も関わらず、従来の資金繰り処理の慣習を惰性で続けていたという
以外には考え難いが、事実はどうだったのであろうか。

さて、4月下旬にも言い渡される見通しの小沢裁判の判決も、「推
認」という言葉を使うかどうかは別として、有罪判決が下される場
合には、犯罪事実の実質上の推認が判決理由の根拠となる。

法と証拠に基づき、「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立
証」あるいは「合理的な疑いを超える証明」には必ずしも基づかな
いが、ある程度の蓋然性により事実が「推認」される場合に有罪判
決を下すこの「推認主義」は、言うまでも無く冤罪を産む可能性を
高めるデメリットがある。

しかし一方では、複雑化して行く社会の中で犯罪を見逃しにせず、
再発防止効果を高めるメリットが生まれるだろう。

もし、小沢裁判で有罪判決が出たならば、「疑わしきは罰せず」と
いう推定無罪の原則や証拠中心主義の日本の司法の原則を転換させ
、「推認主義」に大きく舵を切る事となる。

そして、それが多くの国民の望む歴史の必然であるならば、過去の
基準との不公平感を超え、当該被告達はこの大きな流れの中で捨石
となるのを甘受する以外にあるまい。

小沢裁判の判決は、司法や政治を超え日本社会の未来の姿を決める
歴史の岐路となる。
(敬称略)
                    以上

佐藤


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