4239.橋下が描く日本改造の青写真



橋下が描く日本改造の青写真:既得権複合体との戦争に勝利出来るのか?

大阪都構想を掲げて「大阪維新の会」として昨年末の大阪府知事・
大阪市長W選を制した橋下氏にとって都構想は通過点に過ぎず、最
終的に目指すものは、日本改造によるジリ貧になったこの国の再浮
上である。

◆橋下構想?◆
橋下氏の描く青写真を、著書や発言から探ると流動的ながら凡そ以
下のようなもののようだ。

●大阪都構想を成就させ、それを成功モデルに全国に道州制を導入
し成長戦略を競わせる。一方、国政には首相公選制を導入し意思決
定を迅速明確化する。
●社会保障も道州に任せる。年金は積み立て型にシフトし、それら
により現役世代・子育て世代の活力をアップさせ、その余力で高齢
者も支える。
●税制については、納税者番号と共に所得税の消費控除、貯蓄・資
産課税等を導入し消費を促す。
●成長戦略は内需と外需を車の両輪と位置付け、発送電分離を始と
した規制緩和、税制、および税の投入等を適宜組み合わせて推進す
る。

なお、行政組織についての上山信一・慶大教授、成長戦略について
の作家の堺屋太一氏や元経産官僚の古賀茂明氏等と並んで財政・金
融政策のブレーンに元財務官僚の高橋洋一氏が就いているところか
ら、同氏の持論である日銀法の改正と国債の日銀引き受け等の金融
緩和策・インフレターゲット政策も橋下氏の視野に入っていると思
われる。

さて、もしこれらが実現すれば、日本は再浮上できるのか?
筆者は、方向性は基本的に正しいと考える。何故なら、これらは現
民主党政権および歴代自民党政権がやってきたことの真逆だからだ。

デフレ、景気低迷、円高、財政赤字、少子高齢化に歯止めが掛から
ず、日本がジリ貧に突き進んでいるのは、一言で言えば政・財・官
・学・大手マスコミによって構成された「既得権複合体」が癌細胞
のようにこの国を蝕んでいるからである。

◆既得権複合体との戦争◆
増税が自己目的化し寧ろ不況を願望する財務省、デフレのドグマを
信奉する日銀、権限温存のため規制緩和と地方分権を妨害する司法
を含めた官僚組織全体、高給等の特権維持を図る国地方の公務員及
び労働組合、電力・ガス等の地域独占的許認可事業者と天下り法人
、これら及び特定業界・特定層を代弁して得票と政治資金を得る政
治家達、上記の利権を擁護する見返りに電波割当制と記者クラブ制
度と再販価格維持制度に守られる大手マスコミや一部の学者。

これらが、アメーバのように集団意識によって結びつく利益共同体
を形成している。この既得権複合体、橋下氏の言葉を借りれば「シ
ロアリどもの巣」を破壊しない限り、日本の再浮上は無い。

橋下氏は、果たしてこれを行えるか?
これは、既得権者の飯の食い扶持を左右する血の雨が降る権力闘争
だ。橋下氏は、何時狙撃や凶刃に倒れても、また検察や警察権力や
税務当局によって刺されても不思議ではない。

橋下氏の日教組等の敵を浮き彫りにして支持を集める手法は、小泉
元首相に似ていると言われる。しかし、同氏の戦術はそれだけでは
ない。大阪知事時代に公務員人件費削減の中で、いち早く敢えて警
察官の増員を図った事は、治安の強化に加えて自分に牙をむくかも
知れない逮捕調査権を持つ実力集団を味方に付けるためである。

これは、ロシアのプーチン首相が大統領就任直後に潜水艦を閲兵し
てそのまま「ついうっかり」艦内で飲み明かして見せ、将兵の心を
掌握し軍隊を味方に付けた事と同じ仕掛けだ。

また、例えば大阪府職員給与の1割減を遂行し全都道府県最低レベ
ルとしたが、それでも民間と比べればまだまだ高く、このように最
初は強く対決姿勢で出て、相手の妥協点を探って落とすのも得意技
の一つであるようだ。

その他、任せる所と自ら指揮を執る所の切り分け等、組織運営術は
要諦を押さえて老練ですらある。「既得権複合体」の破壊は、国民
にとっては慣れ親しんだ秩序に変化をもたらす事でもある。

場合によっては、当事者ならずとも少なからず恩恵に浴している既
得権の放棄を迫る。「孟子」に「天の時、地の利、人の和(天の時
は地の利に如かず。地の利は人の和に如かず)」とある。

この革命児の日本改造の成否は、最終的に即ち国民の意志に依る。

                    以上
佐藤


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