4215.北朝鮮の新体制と今後は?



北朝鮮の金正日総書記が死去して、その子の金正恩氏が後を継げる
かどうかが焦点であり、中国の影響力がどこまで高まるかももう1
つの注目点である。この検討をする。   津田より

0.はじめに
まず疑問点である金正日総書記はどこで死んだのかということであ
るが、地方視察の列車の中というのは、どうもおかしいことは韓国
情報部や韓国軍情報部の分析で分かっている。

その答えは、北朝鮮の国営朝鮮中央テレビの女性アナウンサー、リ
・チュンヒ氏が、10月19日の番組でニュースを伝えたのを最後に2か
月もの間テレビに出ていなかったことで分かる。

このことで、重い病気で2ケ月前に金正日総書記は、病院に入院し
たはずと見ていたが、やっと、情報が出てきた。

金総書記は、北京の病院に入院し16日か15日に死去して、北朝
鮮に遺体を返還したようである。中国政府は突然、「金総書記の実
母の蝋人形」を北朝鮮に贈っている。異例なことに、北朝鮮は200人
以上の大規模な訪問団を派遣して、北京でこの蝋人形の贈呈式に参
加した。

しかし情報筋によると、蝋人形の贈呈は表向きの口実であり、実際
には金正日・総書記の遺体を北朝鮮に運んでいたのではないかと噂
されている。このため、中国は、金正日が死んだことも知り、そし
て次の準備をした。

「死去を発表前に知っていたかのように中国の対応はスムーズだっ
た」と北京にいる外交筋も言う。そして、北朝鮮の金正日総書記の
死去が発表された当日に、常務委員の半分で北朝鮮大使館に弔問し
、日本に来た共産党青年団幹部も金総書記は急死ではないと、日本
の政治家に話をしている。

そして、北朝鮮の金正日総書記の死去が発表された当日に、中国政
府が、日本やアメリカなど4か国の北京駐在の大使を呼び、朝鮮半
島の安定のための協力を要請したのだ。

中国が、朝鮮半島情勢を巡り、日本などの大使に、直接、こうした
要請をするのは異例のことで、中国にとっての悪夢は、北朝鮮の内
部崩壊により混乱が国内に波及する事態と、特に警戒しているのは
、北朝鮮内部の権力闘争激化と、米国などによる北朝鮮干渉だ。

また、日中会談を延期した理由も、中国で入院している金総書記が
長くないと見越して、延期した可能性もある。

そして、北朝鮮の内部崩壊の事態に対して、情報筋から「変装した
中国の精鋭部隊は図們(国境地帯の小さな街)から北朝鮮に入った。
政変を防ぐために首都・平壌市の警備を担当することが目的だ。そ
こに駐留する外国メディアに知られないように、国境都市の丹東市
から北朝鮮入りすることは避けた。一方、派遣したのは解放軍か武
装警官か、その詳細の人数などは不明」ということである。

昨年、金総書記が中国を訪問し、長春市で急遽駆けつけた胡錦濤国
家主席と会談した際、金正恩氏も同行していた。金総書記は実質上
、その席で胡主席に後継者としての金正恩氏に関することを依頼し
、胡主席もそれを承諾した。その金正恩氏からの依頼で中国軍は、
動いたようである。これはまだ、金正恩氏と後見人の張成沢氏が、
北朝鮮軍の全体を抑えていないことを示している。

張成沢氏は、金正日総書記の妹、金敬姫(キム・ギョンヒ)の夫で
あるが、金正恩氏の後見人である。張成沢氏は、中国にも人脈があ
り、改革開放に積極的だというが、国内の保守的な軍部からは、中
国派と見られていた。このため、この国内派から張成沢氏自身、交
通事故で殺されかけている。

中国は、故金正日総書記に、改革開放を強く勧めたが、中国の思い
通りにならず、金正日総書記も中国を信用していなかった。このた
め、中国も張成沢氏に期待している。中国は金総書記時代以上に「
金正恩後継体制」への影響力を高め、「親中」体制にしようともく
ろんでいることは事実であろう。

また、金正恩氏の母、故高英姫(コ・ヨンヒ)氏は在日朝鮮人であ
るが、「最高機密」としたようだ。北朝鮮国内では、在日は下層階
級であり、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との関係見直しにも
着手したとされる。

1.北朝鮮の体制
ここからは、朝鮮日報の情報である。さすが、韓国は情報が整って
いる。

現時点、金正恩氏が党や軍でまだ十分な支持基盤を固めていないが
、国家安全保衛部と人民保安部(警察庁に相当)を、正恩氏が直接
統制権を行使しているという。国家安全保衛部を指揮しているのは
、ウ・ドンチュク第1副部長(69)で、金正日総書記と正恩氏の前で
「後継体制の構築で先頭に立つ」と誓ったとされた。この昇進と同
時に、国防委員会委員にもなっている。

リ・ミョンス人民保安部長(75)は、金正日体制が正式に発足した
1996年以降、金総書記の公的な活動には欠かさず同行した。国防委
員会行政局長を務めていた今年4月、金総書記から人民保安部長に任
命されたが、これは内部の統制を強化し、正恩氏への後継体制づく
りを進めるための配慮だったとみられる。

北朝鮮の朝鮮労働党中央軍事委員会で、金正恩氏以外に最も注目す
べき人物としては、李英浩(リ・ヨンホ)朝鮮人民軍総参謀長(69
)で、昨年9月の党代表者会で、正恩氏と共に党中央軍事委員会の共
同副委員長に任命された。名実共に朝鮮人民軍の「看板」で、正恩
氏の権力基盤を支える中心人物だ。張成沢の右腕とも言われている。

総政治局からは、キム・ジョンガク第1副局長(70)が党中央軍事委
員に選出された。韓国の情報当局の関係者は「正恩氏は09年上半期
から、キム第1副局長を通じ、軍の一挙手一投足を監視してきたと聞
いている」と語った。彼の直属の部下に当たるキム・ウォンホン副
局長も党中央軍事委員に選出された。

軍人からは、韓国海軍哨戒艦「天安」撃沈事件を主導したとされる
金英徹(キム・ヨンチョル)偵察総局長も名を連ねている。

民間人からは、党組織指導部のキム・ギョンオク第1副部長がその代
表格だ。組織指導部は、党・政府・軍の幹部たちの人事を管理する
中心的な権力機関だ。後見人の張成沢党行政部長(65)、崔竜海(
チェ・リョンへ)書記(61)などである。

この辺りが、金正恩氏、張成沢氏の体制を固める人脈であるが、こ
れに反対しそうな人脈を見る。

それは、始めに軍部の中心にいる実力者、呉克烈(オ・グクリョル
)国防委員会副委員長に従う勢力だ。呉克烈グループは、張成沢氏
の勢力に対する対抗軸であり、金正恩氏の異母兄の金正男(キム・
ジョンナム)氏を支持しているとされる。

もう1つが、李済剛(リ・ジェガン)党組織指導部第1副部長(昨年
死去)系の朱相成(チュ・サンソン)前人民保安相、キム・サンイ
ク人民武力部副部長、白世鳳(ペク・セボン)国防委第2経済委員長
らである。

また、金格植・前総参謀長、第4師団長や金永南(キム・ヨンナム
)最高人民会議常任委員長をはじめとする革命元老たちは、表面的
には金正恩氏の支持勢力とみられるが、金正恩氏が統治できなけれ
ば、高齢の党・軍幹部が反発する可能性もある。

2.金正恩の今後の方向は
党内の元老からどのように権力を奪い返すのかが、1つ目の焦点で
あるが、これは当分無理であろう。張成沢氏の人脈で固められてい
るので、徐々にしか、人事を触れない。

世代交代を進めるためには、金日成主席と金総書記に忠誠を尽くし
た革命第1世代の子弟たちが、金正恩氏に忠誠を尽くすように仕向け
て、いくことである。中でも最も注目されるのは、崔玄(チェ・ヒ
ョン)元人民武力部長(1907―82)の息子である崔竜海(チェ・リ
ョンヘ)氏(61)、呉振宇(オ・ジンウ)元人民武力部長(1917―
95)の息子である呉日正(オ・イルジョン)氏(67)などであろう。

しかし、まだ、中堅幹部になったばかりであり、10年程度の日時
が必要かもしれない。

もう1つが、中国が要求する改革開放の進め方であるが、中国に頼
る限り、これをする進める方向になる。しかし、数十年も閉鎖して
いた国が改革を行おうとすれば、どうなるか。北朝鮮の若者がイン
ターネットを通じて広い世界を知った時、そして自分を客観視でき
るようになった時が最もリスクが高まることになる。これも徐々に
しか進められないことになる。

ということは、当面、中国に食糧援助を頼み、中国の属国になって
時間を稼ぐしかないことになる。

3.日本はどうするか?
日本は北朝鮮との間で、交渉も接触もできない状態であり、北朝鮮
に少しでも譲歩すると、日本国内から批判が出てくる。このため、
中国などを経由してしか交渉ができない。

まあ、しょうがないですね。拉致被害者と支援者が、北朝鮮との交
渉もさせないことで、どうしようもできない状態になっている。

これでは、拉致被害者救出もできないことになるが、それを許さな
い右翼連中が拉致被害者家族と組んで、政府に交渉をさせないこと
になっていることによる。

情報を取るために、民間人を北朝鮮に送り、最低限の情報を得るし
かない。拉致被害者が高齢で死ぬまで、日本は直接交渉さえできな
いように思う。

無法的な行為とそうでないことの区別を着けないと、外交交渉はで
きない。このことが右翼連中の問題なのである。後30年以上は交
渉さえできない状態が続くことになりそうである。
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正恩氏、早めに服喪打ち切りも…トップ就任急ぐ
読売新聞 12月25日(日)3時3分配信
 【ソウル=中川孝之】北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は
24日、金正恩(キムジョンウン)氏(28)を朝鮮人民軍の「最高
司令官」「将軍」と呼び、指導者としての肩書の付与を急ぐ構え
みせた。

 韓国政府内では「早めに服喪期間を打ち切り、党や軍のトップに
就く」との見方が支配的だ。

 北朝鮮は金正日(キムジョンイル)総書記の葬儀翌日の29日まで
を「哀悼期間」としているが、儒教の伝統にのっとり、その後も服
喪を続ける見通し。労働新聞が正恩氏に「最高司令官」「将軍」の
呼称を使ったことは、服喪期間中に党中央委員会総会や最高人民会
議(国会)などでの手続きを経ることなく、党員らの「推挙」によ
って最高司令官に就任する可能性を示唆している。

 韓国政府当局者は「最高指導者の権威を示すには党や軍トップの
肩書が必須だ。死去後100日の来年3月下旬にも服喪を事実上終
える可能性がある」と話す。
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中国 総書記死去当日に大使呼ぶ
12月25日 3時20分NHK 
北朝鮮のキム・ジョンイル総書記の死去が発表された当日に、中国
政府が、日本やアメリカなど4か国の北京駐在の大使を呼び、朝鮮
半島の安定のための協力を要請したことが明らかになり、北朝鮮情
勢の不安定化を強く懸念する中国の立場が浮き彫りになった形です。

日中関係筋によりますと、中国外務省の張志軍次官は、今月19日
に、キム総書記が死去したと発表されたあと、急きょ、北京駐在の
日本の丹羽大使をはじめ、アメリカ、韓国、それにロシアの4か国
の大使を個別に中国外務省に呼びました。この中で張次官は、「朝
鮮半島情勢の平和と安定は、中国のみならず、各国にとっても利益
だ」と述べるなど、朝鮮半島の安定の確保に向けた協力を要請した
ということです。

中国が、朝鮮半島情勢を巡り、日本などの大使に、直接、こうした
要請をするのは異例のことで、キム総書記の死去が発表された当日
に直ちに行われたことからも、北朝鮮情勢の不安定化を強く懸念す
る中国の立場が浮き彫りになった形です。

中国が要請を行った4か国は、いずれも6か国協議の参加国で、北
朝鮮を刺激する言動を避けるよう求める一方、北朝鮮に対しては、
6か国協議の再開に向けて努力を促すねらいもあるものとみられま
す。
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金正恩氏の要請を受け、中国政府は精鋭部隊を極秘派遣か=香港紙
(11/12/24 10:47)大紀元
北朝鮮の金総書記が死亡した後、中国政府は、後継者とされている
三男の金正恩氏の要請を受けて、政変を防ぐために精鋭部隊を極秘
に北朝鮮に送り込んだという。香港紙・アップルデイリーが報じた。

 同紙は情報筋からの証言として、次のように報道している。「変
装した中国の精鋭部隊は図們(国境地帯の小さな街)から北朝鮮に入
った。政変を防ぐために首都・平壌市の警備を担当することが目的
だ。そこに駐留する外国メディアに知られないように、国境都市の
丹東市から北朝鮮入りすることは避けた。一方、派遣したのは解放
軍か武装警官か、その詳細の人数などは不明」

 中国政府ではこの情報の信憑性は確認されていない。

 また、同報道は吉林省長春市の情報筋の証言を伝えている。それ
によると、昨年、金総書記が中国を訪問し、長春市で胡錦濤国家主
席と会談した際、金正恩氏も同行していた。金総書記は実質上、そ
の席で胡主席に後継者としての金正恩氏に関することを依頼し、胡
主席もそれを承諾した。

 金総書記の死後、同紙の記者が中朝国境地帯を訪れた。表向きに
は通常の生活をしており、異変は見られなかったが、同記者は立て
続けに中国国境警備隊や私服警官の職務質問と妨害を受け、あげく
の果てに軟禁されて現地から強制退去させられた。同紙は「金正日
の逝去は、中国政府にとって極めて敏感な一大事であることは明確
だ」と伝えた。

 一方、インターネットでは、北朝鮮の慈江道、平安南道、両江道
、黄海南の道、開城などの地区で大勢の民衆が集まっているという
書き込みが多く見られる。また世襲統治を反対するスローガンを叫
ぶ者が確認され、教育施設では金氏一族の統治を反対する壁紙新聞
までもが登場しているという。

 また、一部の地区では食糧倉庫と軍備倉庫で備蓄品の強奪事件が
あり、人民軍と政府機関の襲撃事件も発生しているという。元山や
金剛郡では人民軍が反旗をあげ、少数の人民軍兵士が逃亡したなど
の情報もある。現時点においては、これらの情報の真偽は明らかに
されていない。

 また金正日・総書記の死亡場所について、一つの説が浮上した。
同総書記は公務に向かう列車の中ではなく、北京の病院で死亡した
というのだ。

 同記事の伝えるところによると16日、中国政府は突然、「金総
書記の実母の蝋人形」を北朝鮮に贈っている。異例なことに、北朝
鮮は200人以上の大規模な訪問団を派遣して、北京でこの蝋人形
の贈呈式に参加した。しかし情報筋によると、蝋人形の贈呈は表向
きの口実であり、実際には金正日・総書記の遺体を北朝鮮に運んで
いたのではないかと噂されている。北朝鮮の医療技術が遅れている
中、近年健康状態が悪化していた金正日・総書記が北京で治療を受
けていたとの説を支持する意見は根強い。 

 (記者・李暁宇、翻訳編集・叶子)
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朝鮮総連に動揺…「正恩氏の在日母は誇り、3代世襲反対」
2011/12/24 15:36サンケイ

 北朝鮮が金正恩氏の母、故高英姫(コ・ヨンヒ)氏の在日出自を
「最高機密」とし、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との関係見
直しに着手したとされる問題は、「後継者の母」の高氏をひそかに
誇りとしてきた朝鮮総連に大きな動揺を与えそうだ。3代世襲に反
発しながらようやく正恩氏支持を打ち出した矢先に、本国とのはし
ごを外された形となる。(桜井紀雄)
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中国軍が早くも北朝鮮入り?金正恩氏の要請受け、昨年すでに
「密約」も?―香港紙
2011年12月23日23時12分Record China

22日、香港紙は、中朝国境付近で聞いた話として、北朝鮮の後継指
導者・金正恩氏の要請を受け、中国人民解放軍がすでに平壌に派遣
されたと報じた。写真は中朝国境を流れる「鴨緑江」付近。
2011年12月22日、香港紙・アップルデイリーは、中朝国境付近で聞
いた話として、北朝鮮の後継指導者・金正恩(キム・ジョンウン)
氏の要請を受け、中国人民解放軍がすでに平壌に派遣されたと報じ
た。

金正日(キム・ジョンイル)総書記死亡の発表を受け、同紙記者は
20日、中朝国境の街、吉林省延辺朝鮮族自治州の延吉市と図們市に
到着。そこで、中国がすでに人民解放軍の精鋭部隊を北朝鮮に派遣
し、正恩氏を助け、平壌の治安維持に努めているとの情報を入手し
た。

ただ、これが事実かどうかについては確認が取れていないとしてい
る。派遣されたのは武装警察との情報もある。規模についてははっ
きりしていない。だが、この情報筋は外国人記者の目につきにくい
図們の方から北朝鮮側に移動したことは確かだとしている。

また、同省長春市で得た情報によると、昨年、金総書記が訪中した
際、同市で胡錦濤(こ・きんとう)国家主席との会談が行われたが
、実はこの時、すでに金総書記は「自分亡き後」の正恩氏を胡主席
に託していた。そのため、今回、中国に助けを求めた正恩氏を胡主
席が助けるのはごく自然なことだという。

中国は北朝鮮の最も親密な戦友として、金総書記の死亡が発表され
ると、真っ先に弔電を送ったほか、胡主席ら政治局常務委員9人が全
員、北京の北朝鮮大使館に弔問に訪れている。こうしたことから、
中朝関係は毛沢東―金日成時代の名残をまだ色濃く残していること
がうかがえる。

中国は1950年に勃発した朝鮮戦争で多くの志願兵を北朝鮮に送り込
み、18万人を戦死させている。今回の派兵の噂が本当なら、2度目の
「義勇軍」派遣となる。(翻訳・編集/NN)
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政府、朝鮮総連“トップ”再入国要請を拒否
2011年12月23日01時41分日テレNEWS24

在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の最高幹部の一人・許宗萬氏ら
は、北朝鮮・金正日総書記の葬儀に参列するため、北朝鮮への渡航
と、その後に日本に再入国できるよう日本政府に要請していたが、
政府はこれを却下していたことがわかった。

 政府は、北朝鮮への経済制裁措置として総連幹部の日本への再入
国を禁じており、金総書記の死去に伴う特例も認めない考え。
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金正恩氏は功を急ぐあまり「先軍政治」に手を加える?リスク満載
の新体制―中国誌レコードチャイナ

2011年12月21日、中国の時事週刊誌・中国新聞週刊は、金正日(キ
ム・ジョンイル)総書記の後継指導者となった金正恩(キム・ジョ
ンウン)氏が直面する「3つの課題」を考察した。以下はその概略。

それによると、1つ目の課題は「『80後』(80年代生まれ)の若者が
、80歳を超えた年寄り相手にどこまで渡り合えるか」。朝鮮労働党
の中央委員会政治局の常務委員5人のうち3人が80歳を超えており、
その中でどのように名実ともに権力を掌握し、「金正恩体制」を築
いていくのか。

2つ目は「党内の元老からどのように権力を奪い返すのか」。金総書
記は正恩氏とともに妹の金敬姫(キム・ギョンヒ)氏も大将の地位
に昇進させている。これは息子を助けて欲しいという思いからだろ
うが、金氏と夫の張成沢(チャン・ソンテク)氏が果たして大人し
く正恩氏の言うことを聞くだろうか。

そして、3つ目は「改革のリスク」。正恩氏は功績を上げるため、父
の「先軍政治」を自分なりに改良するのではないか。だが、数十年
も閉鎖していた国が改革を行おうとすれば、どうなるか。北朝鮮の
若者がインターネットを通じて広い世界を知った時、そして自分を
客観視できるようになった時が最もリスクが高まる時ではないだろ
うか。(翻訳・編集/NN)
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金正恩体制「親中化」もくろむ=米の関与にクギ−対北朝鮮で主導
権・中国

 【北京時事】北朝鮮の金正日総書記死去を受け、中国共産党・政
府が金総書記時代以上に「金正恩後継体制」への影響力を高め、「
親中」体制にしようともくろんでいるとの見方が、北京の外交筋の
間で広まっている。中国が日米韓の外相といち早く「朝鮮半島の平
和・安定」の重要性を確認したのは「米などが北朝鮮を刺激しない
ようクギを刺す」(同筋)狙いがあり、国際社会における北朝鮮対
応で主導権を握り、北朝鮮の「中国化」を推し進めたい思惑とみら
れる。
 「死去を発表前に知っていたかのように中国の対応はスムーズだ
った」−。外交筋はこう漏らす。習近平国家副主席は予定通り、
20日からベトナムを訪問。金総書記死去に動じない姿勢を内外に
誇示した。さらに胡錦濤国家主席ら党政治局常務委員9人が2グル
ープに分かれ、北京の北朝鮮大使館を弔問する対応は、1994年
の金日成主席死去時を踏襲。対北朝鮮政策の「不変性」をアピール
し、正恩体制を安心させる狙いも込めた。
 中国にとっての悪夢は、北朝鮮の内部崩壊により混乱が国内に波
及する事態。特に警戒しているのは、北朝鮮内部の権力闘争激化と
、米国などによる北朝鮮干渉だ。
 唐家セン前国務委員が最近、日本の国会議員に「大事なのは朝鮮
を刺激しないことで、中国の玄関口での混乱は断じて許さない」と
発言したのは、日米韓が無用な口出しをしないようけん制したもの
だ。(2011/12/23-15:02)
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中国、特使派遣の予定なし=金総書記告別式
 【北京時事】中国外務省の劉為民報道局参事官は23日の定例会
見で、28日に行われる北朝鮮の金正日総書記の告別式に中国が特
使を派遣するかどうかについて「(北)朝鮮は外国代表団を受け入
れないとしている」とした上で「現在のところ中国にも派遣の予定
はない」と言明した。(2011/12/23-18:17)
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北新体制:北朝鮮版「太子党」、革命第2世代が急浮上
2011/12/22 12:28
権力基盤弱い金正恩氏、革命元老の2世を重用する見通し
葬儀委員会にも名を連ねる

 北朝鮮の金王朝の「第3代君主」となった金正恩(キム・ジョンウ
ン)氏は、今後権力を掌握する過程で、祖父の故・金日成(キム・
イルソン)主席と共に抗日パルチザン活動を行った「革命元老」の
子弟を重用するとの見方が相次いでいる。韓国政府の安全保障担当
部処(省庁)の当局者は「金正恩氏はまだ権力基盤が弱いため、故
・金日成主席や故・金正日(キム・ジョンイル)総書記の権威を借
り、人民に“代を引き継いだ忠誠”を訴えなければならない。その
ためには金日成主席と金総書記に忠誠を尽くした革命第1世代の子弟
たちが金正恩氏に忠誠を尽くすことを示す必要がある」と述べた。

 革命第1世代の子弟たちは、昨年9月28日に開催された党代表者会
でいずれも要職に就いている。中でも最も注目されるのは、崔玄(
チェ・ヒョン)元人民武力部長(1907―82)の息子である崔竜海(
チェ・リョンヘ)氏(61)だ。同氏はこれまで、黄海北道の党責任
秘書(道知事に相当)を経て朝鮮人民軍大将、政治局候補委員、秘
書局秘書、党中央軍事委員などの要職に就くなど、朝鮮労働党の主
要機関には全て名を連ねている。

 また、呉振宇(オ・ジンウ)元人民武力部長(1917―95)の息子
である呉日正(オ・イルジョン)氏(67)は、朝鮮労働党軍事部長
に起用されている。軍事部長とは400万人の労農赤衛隊をはじめとす
る北朝鮮予備役の大部分(500万人以上)のトップに当たる要職だ。
もちろん北朝鮮でも予備役は現役の兵士よりも人数が多い。今年9月
9日に朝鮮中央テレビで生中継された政権樹立63周年の軍事パレード
では、労農赤衛隊司令官として金総書記にパレードについての報告
を行い、存在感を誇示した。

 呉白竜(オ・ペクリョン)元護衛総局長(1911―84)の長男であ
る呉金哲(オ・グムチョル)上将(64)は、党代表者会で朝鮮労働
党中央委員会候補委員から正式に委員に指名され、総参謀部副総参
謀長にも就任した。現在、李英鎬(リ・ヨンホ)次帥(69)が総参
謀長(韓国の参謀総長に相当)を務める総参謀部は、戦時の指揮系
統上では最高司令官から直接の指示を受け、朝鮮人民軍全体の作戦
を指揮する立場にある。
呉白竜氏の次男であるオ・チョルサン海軍司令部政治委員は、昨年
の故・金日成主席の誕生日(4月15日)前日に断行された将校昇進人
事で上将に任命された。ちなみに当時の昇進者は全員「金正恩氏支
持者」に分類される人物だ。その中でも代表的な人物は、金正恩氏
に最も近い側近とされる禹東測(ウ・ドンチュク)国家安全保衛部
第1副部長で、上将から大将に昇進した。

 これらの革命第2世代は、金正恩氏の後継者としての地位がまだ不
安定だった昨年上半期、金正日・正恩父子の前で「金正恩大将同志
を命懸けで守る」と宣言した上で、金正恩氏擁立の先頭に立ち、自
分の父たちと同じ役割を果たすことを誓った。金日成主席の抗日パ
ルチザン時代の同志だった崔玄、呉振宇、呉白竜の各氏は、1970年
代に金総書記が叔父の金英柱(キム・ヨンジュ)氏(91)と後継者
争いをしていたころ、金総書記を積極的に後押しし、今もなお「首
領決死擁護の化身」と呼ばれている。彼らが金総書記を擁立したこ
とを美化した『遺産』という映画もある。北朝鮮はこの映画を昨年
の党代表者会の前後に放映した。

 崔竜海、呉日正、呉金哲、オ・チョルサンの各氏は今回、いずれ
も金総書記葬儀委員会に委員として名前が記載され「浮上する明け
の明星」であることを誇示した。こうした革命第2世代の急浮上につ
いては、「北朝鮮版の太子党が金正恩時代の権力者として浮上した
」との声も聞かれる。太子党とは、中国共産革命の元老の子弟たち
を意味する言葉だ。

李竜洙(イ・ヨンス)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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北新体制:張成沢氏が党・軍の掌握

世襲過程で疎外された呉克烈派に注目

 北朝鮮の3代にわたる世襲体制は、今後どれだけ順調に行くかは、
後継者の金正恩(キム・ジョンウン)氏が各派閥のパワーエリート
からどれだけ忠誠を得られるかにかかっている。

 元世勲(ウォン・セフン)国家情報院長は20日、国会情報委員会
で「葬儀委員の名簿に載った人物(232人)は親金正恩派だ」と述べ
たという。しかし、北朝鮮専門家はそれを額面通りに受け取ること
はできないと指摘する。名簿に含まれた人物は、表面的には金正恩
氏に忠誠を尽くしているように見えるが、いつでも派閥間の権力闘
争が起きる可能性があるからだ。高官出身の脱北者は21日、「名簿
に含まれた一部の人物は、金正恩氏による世襲統治に反発する可能
性がある」と語った。

■親金正恩派は表面だけ
 現在、金正恩・党中央軍事委員会副委員長を支持する最大勢力は
、おばの夫に当たる張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長の人脈
だ。張成沢氏は、2008年8月に金正日(キム・ジョンイル)総書記が
脳血管系の疾患で倒れた後、権力の中心である労働党と軍を掌握し
、多数の側近を置いた。金正恩氏とともに、党中央軍事委副委員長
に出世し、軍序列1位の李英浩(リ・ヨンホ)朝鮮人民軍総参謀長が
、張成沢氏の右腕とされる。

 金正恩氏への絶対忠誠を誓った最側近グループも存在する。韓国
の国家情報院に当たる北朝鮮の情報機関、国家安全保衛部の禹東測
(ウ・ドンチュク)第1副部長、キム・チャンソプ政治局長、金英哲
(キム・ヨンチョル)偵察総局長らがそうだ。

■元老グループと呉克烈系の反発可能性
 しかし、金正恩後継体制をめぐっては、反対するグループもある
と専門家がし適する。金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任
委員長をはじめとする革命元老たちは、表面的には金正恩氏の支持
勢力とみられる。ただ、元老たちにとって、20代後半の金正恩氏は
祖父の金日成(キム・イルソン)主席、父親の金正日総書記による
「親の七光り」に過ぎない。米ランド研究所のブルース・ベネット
博士は「金正恩氏がしっかりと統治できなければ、高齢の党・軍幹
部が反発する可能性がある」と述べた。

 軍部の中心にいる実力者、呉克烈(オ・グクリョル)国防委員会
副委員長に従う勢力も注目対象だ。呉克烈グループは、張成沢氏の
勢力に対する対抗軸であり、金正恩氏の異母兄の金正男(キム・ジ
ョンナム)氏を支持しているとされる。韓国政府系シンクタンク、
世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)首席研究委員は「呉克
烈氏は、金正恩氏による後継が確実となった昨年9月の党代表者会で
、党政治局にも党中央軍事委にも加われないという屈辱を味わった。
呉氏が金正恩後継体制の構築に消極的だったためだ」と分析した。
呉氏は偽造紙幣や麻薬取引などを統括する「党39号室」の実質的管
理者だったが、金正恩氏の最側近である金英哲偵察総局長が約2年前
、その金づるを断ったとされる。そこには呉氏をけん制し、無力化
する狙いがあったと受け止められている。

 軍内部で張成沢系に反対するグループがいるという意見もある。
韓国国防研究院の白承周(ペク・スンジュ)安保戦略研究センター
長は「軍の中心人物は、張成沢系と李済剛(リ・ジェガン)党組織
指導部第1副部長(昨年死去)系に分かれる」と分析した。白センタ
ー長によると、朱相成(チュ・サンソン)前人民保安相、キム・サ
ンイク人民武力部副部長などが李済剛系に属していた。いずれも、
金正男支持勢力として分類されており、金正日総書記の葬儀委員の
名簿に名前はなかった。張成沢系が金正恩後継体制確立のバックに
あるとはされるが、李済剛系の白世鳳(ペク・セボン)国防委第2経
済委員長らが健在で、いつでも金正恩氏に反旗を翻す可能性がある
との見方も存在する。

権景福(クォン・ギョンボク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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北新体制:労働党中央軍事委員会の顔触れ
18人のうち、民間人は正恩氏を含め5人
2011/12/21 14:06
党・軍の人事権を掌握、核開発を主導したチュ・ギュチャン氏も

 北朝鮮の朝鮮労働党中央軍事委員会で、金正恩(キム・ジョンウ
ン)氏以外に最も注目すべき人物としては、李英浩(リ・ヨンホ)
朝鮮人民軍総参謀長(69)が挙げられる。韓国の合同参謀議長に相
当する李総参謀長は、昨年9月の党代表者会で、正恩氏と共に党中央
軍事委員会の共同副委員長に任命された。名実共に朝鮮人民軍の「
看板」で、正恩氏の権力基盤を支える中心人物だ。これまで師団参
謀長、軍団作戦部長、総参謀部作戦局副局長を歴任するなど、軍事
作戦に精通している。2009年2月に大将に昇任した後、昨年9月に一
般軍人が就くことのできる最高ポストの次帥に昇進した。

 李総参謀長が率いる総参謀部は軍の作戦権を掌握しているが、軍
の人事・監督権を有する総政治局からは、キム・ジョンガク第1副局
長(70)が党中央軍事委員に選出された。韓国の情報当局の関係者
は「正恩氏は09年上半期から、キム第1副局長を通じ、軍の一挙手一
投足を監視してきたと聞いている」と語った。軍内部で正恩氏に反
対する勢力をあぶり出す役割を担っているというわけだ。キム第1副
局長と共に、直属の部下に当たるキム・ウォンホン副局長も党中央
軍事委員に選出されたが、これは正恩氏による軍部の掌握をそれほ
ど重要視していることを示唆している。

 このほか、軍の階級を持つ民間人の委員で、軍人以上に大きな役
割を担っている人物もいる。党組織指導部のキム・ギョンオク第1副
部長がその代表格だ。組織指導部は、党・政府・軍の幹部たちの人
事を管理する中心的な権力機関だ。金総書記が死去する直前まで、
組織指導部長は金総書記が兼任していたが、今後は正恩氏が同部長
に昇格するものと予想されている。このため、キム第1副部長が正恩
氏の命令を受け、軍だけでなく全ての機関の人事権を掌握する可能
性が高い。なお、キム第1副部長は昨年9月、正恩氏と共に朝鮮人民
軍大将の称号を授与されたが、それ以外に目立った経歴はない。一
方、張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長(65)や崔竜海(チェ
・リョンへ)書記(61)も注目すべき人物だ。張部長は正恩氏のお
じに当たり、後見人の役割を担っている人物だ。現在の党の要人は
全て張部長に近い人物で占められていると言っても過言ではなく、
金正恩体制を支える最高の実力者だ。

 崔書記は正恩氏が後継者として公の場に登場した昨年9月、党代表
者会で党政治局委員候補、党中央委員兼書記、党中央軍事委員など
の肩書きを与えられた。また、キム・ギョンオク組織指導部第1副部
長と共に、朝鮮人民軍大将の称号を授与され、幹部による写真撮影
の際には、正恩氏の真後ろに立つことが多い。崔書記は正恩氏の祖
父、故・金日成(キム・イルソン)主席のパルチザン時代の同僚と
される崔賢(チェ・ヒョン)氏の次男で、出身成分(身分)も最も
高い。

 金総書記の信任が厚かったチュ・ギュチャン委員も強い権力を有
する人物だ。チュ委員は核開発を主導しているとされる党機械工業
部の部長を務めている。金総書記の死後、権力継承の過程で核問題
が重要視されるにつれ、チュ委員の役割もますます増大するものと
みられる。

 このほか、軍人出身の党中央軍事委員には、韓国海軍哨戒艦「天
安」撃沈事件を主導したとされる金英徹(キム・ヨンチョル)偵察
総局長も名を連ねている。同局は韓国やそのほかの国に対し、あら
ゆる工作任務を担ってきた労働党35号室と作戦部が合併して発足し
た機関だ。

権景福(クォン・ギョンボク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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北新体制:金正恩氏、保安機関には統制権を行使
2011/12/21 14:07

 金正恩(キム・ジョンウン)氏が党や軍でまだ十分な支持基盤を
固めていない一方、保安機関では正恩氏が直接統制権を行使してい
るとの見方が出ている。韓国の情報当局の関係者は20日「今年初め
から、正恩氏が国家安全保衛部(韓国の国家情報院に相当)や人民
保安部(警察庁に相当)などをたびたび視察し、側近を通じて両機
関の業務を掌握している」と語った。国家安全保衛部は、情報に関
する業務と、反党・反体制の政治犯をあぶり出す秘密警察の任務を
同時に遂行している。一方、人民保安部は住民たちを監視する役割
を担っている。

 国家安全保衛部で最高の実力者はウ・ドンチュク第1副部長(69)
だ。ウ氏は2009年4月、最高人民会議(国会に相当)から国防委員会
委員に任命された。同部出身の人物が国防委員会委員になった前例
はなく、ウ氏の国防委員会委員就任は異例といえる。当時、副部長
から第1副部長に昇任したウ氏は、金正日(キム・ジョンイル)総書
記と正恩氏の前で「後継体制の構築で先頭に立つ」と誓ったとされ
る。金日成(キム・イルソン)総合大を卒業したウ氏は、09年に人
民軍上将(中将に相当)の階級を付与された後、昨年には大将に昇
任した。情報関係者は「2年前にウ氏が第1副部長に就任した後、保
衛部の役割が拡大した」と語った。

 一方、韓国の警察庁長官に相当するリ・ミョンス人民保安部長(75
)は当初、軍部で金総書記の側近中の側近とされる人物だった。金
正日体制が正式に発足した1996年以降、金総書記の公的な活動には
欠かさず同行した。国防委員会行政局長を務めていた今年4月、金総
書記から人民保安部長に任命されたが、これは内部の統制を強化し
、正恩氏への後継体制づくりを進めるための配慮だったとみられる。
韓国政府は金総書記の死後、北朝鮮の住民たちが騒乱を起こす可能
性は「比較的低い」とみているが、これはリ部長がこれまで、住民
の統制を抜かりなく行ってきたとの評価も背景にあるとされる。

権景福(クォン・ギョンボク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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北新体制:金正恩氏の後見役、張成沢氏の素顔
朝鮮日報日本語版 12月24日(土)13時0分配信

 「側近とのパーティーで、酔った金正日(キム・ジョンイル)が
理由は分からないが、張成沢(チャン・ソンテク)ほおを殴った。
他の側近ならば『自分は終わりだ』と感じ、足が震えるはずだ。し
かし、張成沢は私の方を見て笑った。度胸があり、カリスマもある」
 韓国に亡命した故ファン・ジャンヨプ元朝鮮労働党書記は「北朝
鮮で金正日のほかに自分の名前で人を使う唯一の人物が張成沢だ」
と語っていた。

■二度の粛清と復活
 金正日総書記の妹、金敬姫(キム・ギョンヒ)労働党軽工業部長
の夫である張成沢氏は、自分の側近を固めようとして、金総書記に
2回も「粛清」された経験を持つ。金総書記の義理のおいに当たる李
韓永(イ・ハンヨン)氏(1997年に暗殺)の自伝などによれば、張
氏は1978年、東平壌外交招待所で週1回、自分の側近たちとパーティ
ーを開いていたことから、保衛部に摘発された。報告を受けた金総
書記は「お前(張氏)はなぜ私のまねをするのか」と責め、張氏を
降仙製鋼所の作業班長へと追放した。張氏はそこで2年間の「革命化
教育」を受けた。当時、張氏を救ったのは、金総書記の妻で、長男
・金正男(キム・ジョンナム)氏の母に当たる成恵琳(ソン・ヘリ
ム)氏だ。成氏は80年2月16日、金総書記の誕生日に張氏を強引に呼
び、金総書記の前に立たせ、「張成沢を許してほしい」と頼んだと
いう。

 張氏が金総書記の信頼を取り戻したのは、1989年の平壌世界青年
学生祝典の前後だ。当時、平壌再建設事業を担当していた張氏は、
全国から資材と人材を集め、期限内に工事を終えた。金総書記は「
努力英雄」として張氏を称賛し、三大革命小組部長(1989年)、党
組織指導部第1副部長(1995年)などに抜てきした。当時、張氏の長
兄、張成禹(チャン・ソンウ)次帥(2009年死去)は、平壌防衛部
隊の第3軍団長に昇進し、次兄の張成吉(チャン・ソンギル)中将
(06年死去)中将は、戦車軍団政治委員として活動するなど、張氏
3兄弟は順調に出世した。

 しかし、張氏は2004年初め、側近の豪華な結婚式に出席したこと
が問題になり、派閥形成の疑いで再び失脚した。当時の労働党で「
張成沢人脈」とされた幹部も全て左遷された。張氏は70年代末とは
異なり、地方には追放されなかったが、全ての職位を??失った。2年
間の公の場から姿を消した張氏は06年、党第1副部長として復帰した
のに続き、07年末には党行政部長に昇進し、司法・公安機関を統括
した。治安政策研究所のユ・ドンリョル先任研究官は「金総書記が
張氏をけん制しながらも、右腕として使ったのは、同じ母親を持つ
妹の金敬姫の夫だからではないか。金総書記は晩年を迎えるほど、
親戚のほか、金日成(キム・イルソン)主席の側近の子孫に当たる
革命第2世代を重用する傾向を見せた」と分析した。

■ナンバー2か、権力奪取か
 金総書記は生前、派閥の形成を全く許さなかった。しかし、張氏
には二度も警告しながらも、「金正恩氏の後見役」を任せた。対北
朝鮮消息筋は「義弟である張氏の能力を知っていたため、妹の金敬
姫氏とともに若い後継者を守ってほしいという意味だ」と分析した。

 しかし、張氏が金総書記の遺志を最後まで貫くかどうかは分から
ないとの見方も少なくない。国防委員会副委員長兼党行政部長とし
て、公安機関を掌握しているため、反対派の監視と支持勢力の拡大
にも有利な地位にある。

 張氏は軍の将軍だった2人の兄の威光を背景として、李英浩(リ・
ヨンホ)総参謀長、金永春(キム・ヨンチュン)人民武力部長ら軍
の実力者らにも近い。02年には経済視察団の一員として、ソウルを
訪れたこともあるほか、中国にも人脈があるとされる。張氏は改革
開放に積極的だとの見方もある。こうした理由から、「(張氏が)
首陽大君になることにあり得る」(情報当局者)という分析も聞か
れる。首陽大君は15世紀に朝鮮王朝の第6代国王・端宗から王位を奪
い、自ら王位に就いた。2001年まで13年間、金総書記の料理人を務
めた藤本健二氏は「2000年ごろ張氏の役職が組織指導部第1副部長か
ら(平の)副部長へと降格されたことがあったが、誰も張氏を『副
部長』と呼ぶことができず、『部長』と呼んでいたほど威勢があっ
た」と話した。

 張氏の性格についての評価は分かれる。張氏と一緒に労働党内で
働いたことある脱北者は「ユーモアのセンスに優れ、ソフトなほう
だ。相手の気持ちに合わせるスタイルだ」と語った。しかし、ある
幹部出身の脱北者は「冷たい」と証言した。張氏のライバルだった
李済剛(リ・ジェガン)組織指導部第1副部長は昨年5月末、張氏が
国防委員会副委員長に昇進する数日前に疑わしい交通事故で死亡し
た。


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