4208.ユーロ危機は解決せず



毎週のようにユーロ問題を取り上げるが、それはユーロ危機が解決
されずに、徐々に世界的な問題になり始めていることによる。しか
し、日本の新聞でも日経は少し取り上げるが、他の新聞はほとんど
取り上げもしない。これでは危機があることを日本人は知らないこ
とになる。そのことに危機感を持つ。   津田より

0.はじめに
先週の有料版でもお話したように、12月8日、9日に開催されたEU
首脳会談は失敗であったようだ。

その証拠に、14日午前の欧州金融市場でイタリアの国債利回りが
上昇(価格は下落)し10年物は7.1%台と、自力での資金調達
が難しくなるとされる7%を再び突破した。このEU首脳会談が、
行われる前に、会議を期待して、利回りが6%に一旦下がっていた。

また、米格付け大手ムーディーズは16日、ベルギー国債の長期信
用格付けを上から2番目の「Aa1」から4番目の「Aa3」に2
段階引き下げると発表した。

ドイツが反対して、ユーロ共同債の発行やECB(欧州中銀)によ
る大規模な国債の購入ができないことが明確化したことで、クリス
マス前に欧州国債市場で「危機再燃」も予測されている。

しかし、ドイツは1920年代のハイパーインフレの教訓から反イ
ンフレ思想が強い。ユーロ圏の中でドイツは中心国であり、ECB
も多かれ少なかれ反インフレの伝統を引き継いでいる。

このため、ECBは米連邦準備制度理事会(FRB)やイングラ
ンド銀行が実施しているような量的緩和政策に消極的だ。これまで
確かにイタリアやスペインなどの国債を買い入れているが、国債価
格の変動をならすという目的になっている。そのため、それらの国
債買い入れ後には他の債券を売却するなどして資金を吸収して、ユ
ーロ圏全体のマネーサプライへの影響がないように「不胎化」政策
をしているのだ。

また、その上に、「欧州安定メカニズム(ESM)」の資金枠は現
在5000億ユーロだが、ファンロンパイ欧州連合(EU)大統領
は上限見直しの決定をしたいとしているが、ドイツのメルケル首相
は、このESMの融資上限に関し、いかなる引き上げ案も拒否した。

しかし、このドイツのメルケル首相でも、国内では求心力の低下を
懸念されている。国民の間ではEUに対する不信感が拡大。世論調
査では有権者の半数以上が首相の危機管理能力に不満を示している。

2013年の国政選挙を控え、首相はぶれない姿勢を示すことが支
持率確保につながると考えているはず。このため、メルケル首相は
ユーロ圏共同債の発行を一貫して拒否、欧州中央銀行(ECB)の
独立性が重要との立場を崩していない。

この姿勢が、EU首脳会議後も国債金利上昇、欧州株やユーロの値
下がりが続いている理由であるが、ドイツ国民は認めない。

このため、世界の問題児にドイツも入り、中国、イランとの3羽烏
になったいるとの声もある。

また、長期対策としてユーロ圏のいかなる国もGDP比で3%を上回
る財政赤字を出すことが禁じられるが、ユーロ圏の17カ国中、現在
その基準を満たしているのはわずかに4カ国で、そのうちの一つがイ
タリアだという。この基準を常習的に破ってきたのはPIIGS諸
国(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)
だけではなく、フランスやオーストリア、オランダなども基準を上
回っている。

このようにこの長期対策も疑問視されている。提案したドイツも何
遍か、この基準を上回っている。

そして、国債の金利上昇(国債価格の減少)で、多くの欧州の銀行
は、欧州問題国国債持高が大きく、大きな損失を出し、欧州銀行の
保有資本に対する不良債権比率が前年から上昇し、4分の1を超え
ていることが明らかになった。

このため、投資家が欧州銀行の債権を買わないために、資金調達が
厳しくなっている。銀行間取引の金利も上昇して止まっているよう
な状態になり始めていた。

このため、欧州銀行の資金繰りができなくなるのを防ぐために、日
銀、FRBなどが資金を貸し出している。金融危機に移行し始めた
が、ECB、欧州各国中央銀行、予算に縛りがある各国政府も、銀
行に資金を出さないため、今後の金融危機をどう乗り切るのかさえ
見えないことになっている。

1.今後の金融界の見通し
この状況を見て、米連邦準備理事会(FRB)が欧州危機のさらな
る拡大に身構えている。米国だけではなく、日本など主要国の政策
当局は、「欧州にらみ」のスタンスをかなりの期間にわたって強い
られると予想される。日本も批判があるが、為替介入を覆面で行う
方向であり、EUの動向を注視している。

このため、2012年に再び世界的な景気後退が起きないとするエコノ
ミストはほとんどいない。経済見通しは今、初秋時点よりも相当暗
くなっているというのが、エコノミストの一致した見方になってい
る。

この中で、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は15日、
世界経済は1930年代の不況と同様の段階に入る危険性があると
の見解を示し、「世界には現在、低所得国、新興国、中所得国、経
済先進大国のいずれの国にも、現在の危機の高まりに対する抵抗力
を持っている経済はない」と述べ、危機感を表わした。 

ブルッキングス研究所のエスワール・プラサド氏も「2009年初頭に
は、かすかな望みを見いだすのも難しかった。また同じ状況になっ
ている。だが、今の状況が異なるのは、2008年の危機が膨大な債務
負担を生み出し、政策に対する制約が当時よりずっと厳しくなった
ことだ」という。

しかし、危機の中心は欧州だ。ユーロ圏内およびユーロ圏周辺の国
々は今にも景気後退に入ろうとしている。ドイツなど少数の国が、
まだ持ちこたえているが、それは長く続かない。

ヘッジファンドマネジャーのカイル・バス氏は、数カ月のうちにギ
リシャとポルトガル、スペインの銀行で取り付け騒ぎが起きるとの
見方を示した。「この週末にラトビア国民がATM(現金自動預払
機)に殺到したが、同じことが欧州の周辺国全体で数カ月のうちに
起きるだろう」と予想。「銀行預金は現在、加速度的に減少してい
る。驚くべきなのは、もっと早く起きていなかったことだ」と付け
加えた。

すでに危機が欧米の金融機関の経営に波及している。格付け会社が
次々に格下げし、リストラの動きも相次いでいる。

米国銀行では、三菱UFJフィナンシャル・グループが出資してい
るモルガン・スタンレーが従業員の約3%に当たる1600人を削
減する計画だと報じたが、すでにゴールドマンが今年7〜9月期に
1300人を削減したほか、バンカメは約3万人、シティグループ
は約4500人をこれから削減すると発表している。欧州危機の波
及を予測して、早めに手を打っている。

2012年では、欧州債務問題が最大のリスク要因となり、クレジ
ット・デフォルト・スワップ(CDS)取引は神経質な展開が続き
そうだ。信用リスクを回避するプロテクションの買い圧力が高いが
、CDSは保証サイドのリスクが高いので高利率になるが、倒産時
の保証金が大変になる。これをギリシャ国債危機で見られるように
公的機関が阻止することである。

このため、CDSの保険会社、グリーンライト・キャピタル・リは
6月30日時点に、6億6700万ドル(約520億円)相当のソブリン債を
デフォルト(債務不履行)に対して保証するクレジット・デフォル
ト・スワップ(CDS)を保有していたが、7−9月(第3四半期
)にそのほぼ半分の保証契約を解消した。顧客を守るために、保険
を解消したという。代わりに米国以外のソブリン債の空売りポジシ
ョンを組んだ。規制当局への届け出から分かった。

この説明として、当局はソブリン債CDSで決済を引き起こすこと
を阻止しようとしていると指摘。決済が起こればCDSによる保証
を販売した欧州の銀行が大損失を被るからだというのだ。

このため、ヘッジファンドは、プライベートなCDS市場は何が起
こるかわからないので、公的に発行された国債の市場へと移ってい
るようだ。

2.アジアなどへの影響
このように欧州危機は、米国だけではなく、中国にとっても欧州が
最大の貿易相手だけに、痛手となっている。多くの製造業者は輸出
先を多様化し、混乱する西側市場を避け、発展途上国への販売を増
やそうとしているが、現時点輸出の30%が欧州向けであり、大き
な影響があるのだ。

欧州の銀行が貸し剥がしと欧州企業の投資資金の回収で、韓国など
アジア諸国の通貨が下落し、投資資金の回収で土地価格の下落など
が起きている。

欧州の景気が落ち込むと、アジアの輸出が減り、そのアジアに部品
を供給している日本も影響を受けることになる。

このため、日本も、復興予算などがあり、12年度は2.5%以上
の成長が見込まれていたが、円高や欧州経済の減速が設備投資や輸
出の下押し圧力になっていることで、2012年度がおよそ2%、
11年度はマイナス成長と下方に修正している。

しかし、資金確保のために欧州企業がアジアから撤退するために、
そのアジア企業を買うことができる。この資産を買えるのは、日本
企業しかない。日本企業の現預金量は過去最高になっているので、
チャンス到来になっている。

さあ、どうなりますか?

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欧州銀行の不良債権比率が上昇、4分の1超える=ECB統計
2011年 12月 17日 01:27 JST

[フランクフルト 16日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)
が16日発表したデータから、欧州銀行の保有資本に対する不良債
権比率が前年から上昇し、4分の1を超えていることが明らかにな
った。

今回のデータは、6月末に欧州の銀行4700行から収集した。そ
れによると、全体の不良債権は、銀行が支払い目的のために保有し
ている資本の27%に相当し、2010年の25%から上昇した。
2009年は20%だった。

ただ、銀行はバランスシートもある程度強化したもよう。支払い能
力を示す比率は平均で13.8%と、前年の13.2%から上昇。
資本バッファーの比率も10.9%で、前年の10.1%から改善
した。

債務危機にも関わらず収益性も改善した。ドイツの銀行の純利益は
58億ユーロで前年の43億ユーロから増加。フランスの銀行は
145億ユーロ(前年は140億ユーロ)、イタリアの銀行は49
億ユーロ(同42億ユーロ)にそれぞれ拡大した。

一方、スペイン、英国の銀行の純利益はともに減少した。 
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ベルギー国債:2段階下げ−−米ムーディーズ

 【ワシントン平地修】米格付け大手ムーディーズ・インベスター
ズ・サービスは16日、ベルギー国債の長期信用格付けを上から2
番目の「Aa1」から4番目の「Aa3」に2段階引き下げると発
表した。また、欧州系のフィッチ・レーティングスは同日、最上位
のフランス国債の格付け見通しを「弱含み」に引き下げたほか、イ
タリアやベルギーなど欧州6カ国を格下げ方向で見直すと発表。欧
州債務危機への懸念は一段と深刻化した。

 ムーディーズによるベルギー国債格下げは、資金調達の条件悪化
や、公的債務が高い水準にあることが主な理由。今年10月に破綻
した金融大手デクシアの銀行部門をベルギー政府が一時国有化する
ことを決めたことも理由に挙げている。

 ムーディーズは10月にベルギー国債の格付けを見直すと発表し
ていた。格付け大手では米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P
)も11月、ベルギー国債を格下げしている。

 フィッチの格下げ警告は、ギリシャとキプロスを除くユーロ圏15
カ国の一斉見直しを発表したS&P、欧州連合(EU)各国の見直
しを発表したムーディーズに続く動き。フランスの現行格付け
(トリプルA)は維持したが、2年以内に格下げの可能性があると
した。
毎日新聞 2011年12月17日
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経済成長見通し、下方修正 12年度は約2% 内閣府
2011年12月17日19時30分

 内閣府は、物価変動の影響を除いた実質経済成長率の見通しを、
2012年度がおよそ2%、11年度はマイナス成長とし、8月時
点の予測を大きく引き下げる方針だ。民間調査機関15社が発表し
た予測も、欧州経済の減速などを踏まえて下方修正している。

 政府見通しは「経済運営の目標」という意味合いもあり、民間の
予測を上回ることが多い。民間15社の平均は、12年度が1.8
%。11年度はマイナス0.5%で、全社がマイナス成長の見込み
に転じた。

 これまでの政府の見通しは、8月に東日本大震災の影響を織り込
んで算出したもので、11年度が0.5%、12年度は2.7〜2.9
%。しかし、円高や欧州経済の減速が設備投資や輸出の下押し圧力
になっていることや、5年に1度の基準改定で過去の成長率が引き
下げられたことを考慮し、21日に発表する見通しで下方修正する。

 12年度は復興需要による押し上げ効果が期待できるものの、世
界経済の先行きも不透明で、民間15社のうち12社は1%台を予
測。最も高くて2.1%だ。野田政権は「実質成長率2%程度」(
11年度から10年間の平均)を政策努力の目標に掲げるが、現時
点では高い目標といえそうだ。  
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大手ヘッジファンド、ソブリン債取引でCDSから空売りに

12月16日(ブルームバーグ):ギリシャ救済をシュールレアリズム
(超現実主義)の絵画にたとえたヘッジファンド運用者デービッド
・アインホーン氏は、ソブリン債売りのポジションを組み直した。
同氏は政府当局が大手銀行を守ろうとする動きがリスクになると考
えている。
  同氏が経営権を持つ保険会社、グリーンライト・キャピタル・
リは6月30日時点に、6億6700万ドル(約520億円)相当のソブリン
債をデフォルト(債務不履行)に対して保証するクレジット・デフ
ォルト・スワップ(CDS)を保有していたが、7−9月(第3四
半期)にそのほぼ半分の保証契約を解消。代わりに米国以外のソブ
リン債の空売りポジションを組んだ。規制当局への届け出から分か
った。
  CDSから空売りに変えたのは、国債相場暴落で上げられるは
ずの利益を、アインホーン氏が7月7日の投資家宛て書簡で警告し
た落とし穴から守るためだ。グリーンライト氏は書簡で、当局はソ
ブリン債CDSで決済を引き起こすことを阻止しようとしていると
指摘。決済が起こればCDSによる保証を販売した欧州の銀行が大
損失を被るからだと説明した。
  ニューヨークのコンサルティング会社、ICSリスク・アドバ
イザーズで資産運用・証券会社担当の部門を率いるゲーリー・スウ
ィマン氏によれば、「少なくとも3、4社の大手ファンドがアイン
ホーン氏と同じことをした」という。ヘッジファンドが「規制を受
けないプライベートな市場から、公的に発行された国債の市場へと
移っている」と同氏は論評した。
  米証券保管振替機関(DTCC)によると、フランスとギリシ
ャ、イタリア、ポルトガル、スペインの国債を保証するCDSのネ
ットの残高は12月2日の時点で668億ドルと、1月7日の745億ドル
から減少していた。減少が最大なのはギリシャ債を保証するCDS
で、12月2日の残高は純額で34億ドルと1月7日の63億ドルから46
%減っていた。
  ヘッジファンド会社グリーンライト・キャピタル社長のアイン
ホーン氏は、過小評価されていると考える企業にも投資するが、過
大評価されていると見られる企業の株も空売りする。2008年にはリ
ーマン・ブラザーズ・ホールディングスを売り、今年はグリーン・
マウンテン・コーヒー・ロースターズを空売りした。同氏はヘッジ
ファンド運用のほか、グリーンライト・リの資産の投資にも携わる。
事情に詳しい関係者によると、グリーンライト・リの保有資産は同
氏のヘッジファンドと同様だという。関係者は匿名を条件に述べた。
  グリーンライト・リの10月31日の米証券取引委員会(SEC)
への届け出によれば、同社は第3四半期に2億9460万ドル相当の
CDSを解消し、米国外の国債1億5380万ドル相当を空売りした。
グリーンライトの広報担当、ジョナサン・ガスサルター氏は取引に
ついてコメントを控えた。 
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欧州問題でCDS取引は神経質、一般債低位安定=2012年予測
2011年 12月 16日 14:55 JST
[東京 16日 ロイター] 2012年のクレジット市場では、
欧州債務問題が最大のリスク要因となり、クレジット・デフォルト
・スワップ(CDS)取引は神経質な展開が続きそうだ。一方で、
欧州問題の影響を直接受けづらい国内普通社債(SB)や政府保証
債・地方債などの一般債は、安全資産としてスプレッドの低位安定
が見込まれる。

国内での波乱要因は、社債発行残高が5兆円弱にのぼる東京電力の
動向や企業の収益環境だが、日銀による社債等買い入れオペが需給
を下支えする見通し。

<CDSは欧州情勢にらみ>

構造的に海外要因の影響を受けやすい日本のCDS取引は、2012
年も欧州情勢に振らされる展開が避けられそうにない。みずほ証券
の金融市場調査部クレジットアナリスト、坂本太郎氏は「引き続き
クレジットリンク商品への根強い需要に伴うプレミアム低下要因は
あるものの、欧州ソブリン問題をめぐりボラタイルな環境が続く展
開が想定される」と指摘する。

12月の欧州連合(EU)首脳会議は、財政協定に関する合意など
で一歩前進したとはいえ、根本的な問題解決には至らなかったため
、信用リスクを回避するプロテクションの買い圧力が高まりやすい
。2012年2月から4月にかけて900億ユーロの償還を迎える
イタリア国債の動向が目先の焦点だが、欧州銀行への格下げ圧力が
収まらないことも不安を増幅させる。欧州銀行の格付けは現状では
相対的に高く、「投資不適格級への転落には十分なバッファーがあ
る」(市場筋)ものの、資産圧縮に動かざるを得ない局面を迎えた
場合、深刻な景気後退(リセッション)や信用収縮に陥らないとは
言い切れない。

2012年7月には欧州安定メカニズム(ESM)が発足するなど
、「市場の混乱を鎮静化する政策ツールがいよいよ出てくるが、金
融機関の自己資本の問題やマクロ経済悪化に伴う財政再建の遅れと
いったダウンサイドリスクもくすぶる」(第一生命経済研究所の主
席エコノミスト、熊野英生氏)という状況だ。
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ユーロ圏からの寒波に震えるアジア債務危機の影響で欧州向けの輸
出が急減
2011.12.16(金)Jpress
(2011年12月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

上海に近い海寧市は世界中に靴下を輸出していることで有名だが、
同市の工場は最近、ユーロ圏から吹き付ける寒風に見舞われている。

 「靴下メーカーでは今年、欧州連合(EU)向けの輸出が前年比で
約30%落ち込んでおり、9月から最も大きな落ち込みが始まった」と
海寧靴下協会のツォ・イエフェン会長は言う。

 中国やその他アジア諸国の至るところで輸出関連の製造業が欧州
の金融危機を感じており、2008年の金融危機の時と同じように、西
側諸国からの需要減少が再び急激な成長鈍化を招くのではないかと
いう不安を煽っている。

深刻な景気後退なら、中国の輸出は2ケタ減も

中国にとって欧州は最大の貿易相手だけに、ユーロ圏の危機は痛手
となる〔AFPBB News〕

 こうした状況に対応して、多くの製造業者は輸出先を多様化し、
混乱する西側市場を避け、発展途上国への販売を増やそうとしてい
る。

 大半の地域経済指標が、欧州向け輸出のデータが悪化する見込み
であるか、すでに悪化していることを示しているため、製造業者が
地域の成長を支えられるだけ多様化を進めたかどうかは、すぐに明
らかになるだろう。

 状況はまだ、2008年の世界危機の時ほど悪くはないが、最大の貿
易相手であるEU向けの中国の出荷の年間成長率は、第3四半期には
18.1%だったものが、10月には7.5%、11月には5%に減速している。

 大方のアナリストは、中国の欧州向け輸出が今月か来月にはマイ
ナスに転じると考えている。新規輸出受注の数字は11月に大幅な下
落を示した。

 「欧州の景気後退と世界的な景気後退がはるかに深刻になった場
合には、中国の輸出が10%から12%減少する可能性があると考えて
いる」。UBSのエコノミスト、王濤氏はこう言う。「今のところ、
2012年には中国の輸出の伸びがゼロになり、それが経済にかなり大
きなマイナス影響を与えると見ている」

日本企業や韓国企業にも大きな打撃
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欧米金融、格下げ相次ぐ 米大手は人員削減
2011年12月16日13時46分

 欧州の政府債務(借金)危機が欧米の金融機関の経営に波及して
いる。格付け会社が次々に格下げし、リストラの動きも相次ぐ。

 欧米系格付け会社のフィッチ・レーティングスは15日、欧州危
機の影響を受けやすいとして欧米の6金融大手の長期格付けを引き
下げた。

 米国のバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)とゴールドマン・サ
ックス、独ドイツ銀行、仏BNPパリバは1段階、英バークレイズ
とスイスのクレディ・スイスは2段階下げられた。これで、BNP
パリバとドイツ銀行は「Aプラス」(21段階の上から5番目)、
ほかは「A」(上から6番目)になった。

 米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は
15日、スペインの10銀行の格付けを引き下げた。大手のバンコ
・デ・サバデルが2段階、ほかが1段階下げられ、「A」(21段
階の上から6番目)〜「BBB」(上から9番目)になった。

 イタリアやスペインなど欧州の政府債務危機で各国の国債が下が
り、これを持つ欧米の金融機関にも損が出ている。金融市場が混乱
し、必要なお金をとりにくくもなっている。これらが格下げにつな
がっている。

 米金融大手は人員の削減を進めている。複数の米メディアは15
日、三菱UFJフィナンシャル・グループが出資しているモルガン
・スタンレーが従業員の約3%に当たる1600人を削減する計画
だと報じた。すでにゴールドマンが今年7〜9月期に1300人を
削減したほか、バンカメは約3万人、シティグループは約4500
人をこれから削減すると発表している。(ニューヨーク=山川一基)
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IMF専務理事:大恐慌が再来する
16.12.2011, 18:07 ロシアの声

国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は15日、世界経済は
1930年代の不況と同様の段階に入る危険性があるとの見解を示
した。 

イタル・タス通信とインタファークス通信が伝えたところによると
、ラガルド専務理事はパリとブリュッセルでユーロ圏状況について
集中的な協議を行っている。 

専務理事は、「世界には現在、低所得国、新興国、中所得国、経済
先進大国のいずれの国にも、現在の危機の高まりに対する抵抗力を
持っている経済はない」と述べた。 

専務理事は危機について、これは一つの国家集団のみの行動で克服
できるようなものではないとの見方を示し、金融市場は各国に対し
て政治プロセスを終了し、危機克服のための決定を承認するための
時間を与えるべきであると指摘した。 

ラガルド専務理事は、全地域の全ての国からの支援によって危機が
克服されることに期待を表明した。 

専務理事は、保護主義、孤立、別の経済的決定の誤りについて警告
し、「これら全ては、1939年代と同様の状況を構築しかねない
」と述べた。
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欧州周辺国、数カ月のうちに銀行取り付け騒ぎに−ヘイマンのバス氏

  12月15日(ブルームバーグ):ヘッジファンドマネジャーのカ
イル・バス氏は、数カ月のうちにギリシャとポルトガル、スペイン
の銀行で取り付け騒ぎが起きるとの見方を示した。同氏は2009年、
複数の国が3年以内にデフォルト(債務不履行)すると予想した。
  ヘイマン・キャピタル・マネジメントを経営するバス氏は、投
資家宛ての書簡で「この週末にラトビア国民がATM(現金自動預
払機)に殺到したが、同じことが欧州の周辺国全体で数カ月のうち
に起きるだろう」と予想。「銀行預金は現在、加速度的に減少して
いる。驚くべきなのは、もっと早く起きていなかったことだ」と付
け加えた。
  ラトビアでは、預金者が資金にアクセスできなくなるとの観測
が広がり、11、12両日に国内にあるスウェーデンの銀行スウェドバ
ンクのATMから約5400万ドル(約42億円)が引き出された。  
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2012年、世界経済に垂れ込める暗雲
2011.12.15(木)
(2011年12月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

2012年に再び世界的な景気後退が起きない方に大きく賭けるエコノ
ミストはほとんどいない。経済見通しは今、初秋時点よりも相当暗
くなっているというのが、エコノミストの一致した見方だ。

 ユーロ圏の危機は悪化し、イタリアとスペインに波及、フランス
の玄関にまで打ち寄せている。その他先進国の景気回復は依然、弱
々しい。新興国も重圧を感じ始めている。

危険な局面が現実に
 政策立案者たちは不安を抱いている。国際通貨基金(IMF)のクリ
スティーヌ・ラガルド専務理事は9月に、世界経済が「危険な局面」
に入ったと繰り返し警鐘を鳴らした。12月に入ると、脅威は現実と
なり始めたと言うようになった。
 ラガルド専務理事は今月ブラジルで記者団に対し、「世界経済の
見通しは、我々が当初予想していたより低くなる。一部地域では大
幅に低くなるだろう」と語っている。

 もっと暗い悲観論が経済協力開発機構(OECD)を襲っている。特
に不安視されているのが、先進国の政治家の対応だ。

 OECDのチーフエコノミスト、ピエール・カルロ・パドアン氏は「
政策立案者たちが世界経済のリスクに対処するために断固たる行動
を取る緊急性を理解していないことを懸念している」と言う。

 この評価には民間部門のエコノミストも同意している。投資銀行
ゴールドマン・サックスが経済見通しを下方修正した際、同社の米
国担当チーフエコノミスト、ヤン・ハチウス氏は、多くの先進国で
は増税と家計・企業債務の返済努力によって成長が妨げられている
とし、「この組み合わせのせいで標準以下の成長があと2年続く可能
性が高い」と述べた。

2008年の危機より厳しい理由
 大手シンクタンク、ブルッキングス研究所のエスワール・プラサ
ド氏は、もっと悲観的だ。「2009年初頭には、かすかな望みを見い
だすのも難しかった。また同じ状況になっている。だが、今の状況
が異なるのは、2008年の危機が膨大な債務負担を生み出し、政策に
対する制約が当時よりずっと厳しくなったことだ」
 だが、エコノミストらが心配する一方、世界のすべての地域が苦
しんでいるわけではない。ドイツの就業者数は10月に再び、東西統
一後の最高水準を記録し、同国の繁栄とユーロ圏周縁国の苦痛のず
れを浮き彫りにした。

 予想は下方修正されているものの、大抵のエコノミストは世界経
済が2012年に3%を多少上回る成長を遂げると見ている。これは2011
年の成長率を1ポイント下回るだけで、景気拡大の大半を新興国が担
う見通しだ。

景気後退入りが近い欧州
 危機の中心は欧州だ。ユーロ圏内およびユーロ圏周辺の国々は今
にも景気後退に入ろうとしているように見える。「バズーカ砲」が
イタリアとスペインへの危機波及を防いでくれるという希望が打ち
砕かれた今、欧州の大部分では、公式借り入れコストが再び歴史的
な低水準になったにもかかわらず、政府、家計、企業が金利上昇に
直面している。

 ユーロ圏が急速に回復すると考える向きは、ほとんどない。大半
のエコノミストは2012年初頭にユーロ圏経済が縮小に転じ、英国な
ど、単一通貨圏を取り巻く国々がほぼ停滞状態に陥ると予想している。
 特に懸念されているのは、景気の悪化が、問題が解決されたとは
とても言えない国債市場と銀行の資金調達市場の緊張を高め、2008
年のような悪循環を生み、ユーロ崩壊を招きかねないことだ。

 マネーサプライ(通貨供給量)は2009年初頭以来最も速いペース
で減少しており、大手金融機関クレディ・スイスのネビル・ヒル氏
は「例えば欧州中央銀行(ECB)やドイツ連銀など、金融指標を特に
重視する機関にとっては、これは警戒すべきサインのはずだ」と言う。

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ドイツ首相・連銀総裁、ECB買い入れ拡大を拒否
2011年 12月 15日 08:07 JST

[ベルリン/フランクフルト 14日 ロイター] ドイツのメル
ケル首相とドイツ連銀のバイトマン総裁は14日、欧州諸国は財政
規律の強化を進めるべきだと主張、欧州中央銀行(ECB)の国債
買い入れ拡大に反対する姿勢をあらためて示した。

メルケル首相は議会で、債務危機の解決には数年かかると指摘。「
必要な忍耐と我慢強さを持てば、逆戻りの動きに抵抗すれば、財政
・安定同盟に向けて一貫して進めば」欧州は強くなれると発言。「
ドイツ政府は、欧州債務危機を一度に解決することはできないとの
立場を常に表明してきた。一度に解決することはできない」と述べた。

ECB理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁も14日、記者団に
対し、ECBの国債購入拡大にあらためて反対するとともに、国際
通貨基金(IMF)への融資枠拡大は、欧州以外の国も資金拠出を
行う場合に限り実行可能との考えを示した。

総裁は記者団に対し、ECBの責務により国債の無制限購入はでき
ないとし、実施すればインフレ高進は免れないことを過去の経験が
証明していると指摘。「規則を破ることで、信頼を獲得できるとい
うのは、驚くべき考えだ」と述べた。

また周辺国への支援を拡大するようECBへの圧力が高まっている
ことについては、アルコール依存症患者を引き合いに出し「明日か
ら酒を断ち、ルールを守るから今夜は飲ませてくれとせがむアルコ
ール依存症患者に対し、酒を与えることが賢明な判断だと思わない。
患者の問題解決への意欲を損ねてしまう」と述べた。

欧州首脳が前週の首脳会議で、財政規律の強化で基本合意したこと
については「正しい方向に向かっている」としたが、合意を受けて
、ECBが責務の領域を超えた国債購入拡大に乗り出すと期待すべ
きではないとした。
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ユーロ圏にはびこる“反インフレ”の呪縛
2011.12.15サンケイ

 欧州中央銀行(ECB)は8日の理事会で、25ベーシスポイン
ト(bp)の利下げを決定した。しかし、ドラギ総裁は包括的な危
機対策としての国債買い入れ拡大や国際通貨基金(IMF)への融
資案については否定的な立場を示したことで、その後の欧米株式市
場では失望売りが出て、日本市場にも影響があった。

 ECBの業務はユーロ圏の金融政策の実施だ。17カ国、人口3
億2600万人の巨大経済圏を受け持っている。

 所在地はドイツ・フランクフルトで、伝統的にドイツの中央銀行
であったドイツ連銀の影響が強い。ドイツ連銀は1920年代のハ
イパーインフレの教訓から反インフレ思想が強かった。ユーロ圏の
中でドイツは中心国であり、ECBも多かれ少なかれ反インフレの
伝統を引き継いでいる。

 このため、ECBは米連邦準備制度理事会(FRB)やイングラ
ンド銀行が実施しているような量的緩和政策に消極的だ。これまで
確かにイタリアやスペインなどの国債を買い入れているが、国債価
格の変動をならすという目的になっている。そのため、それらの国
債買い入れ後には他の債券を売却するなどして資金を吸収して、ユ
ーロ圏全体のマネーサプライへの影響がないように「不胎化」政策
をしているのだ。

 ECBをめぐっては、量的緩和策の一環として国債買い入れの拡
大をやるのではという噂があった。ECBが直接国債を買い入れる
のではなくても、ECBが国際通貨基金IMFに融資して、IMF
がその資金でECBの代わりに国債を買い入れるという話もあった。
ドラギ総裁はそうした話を一蹴したのだ。

 これで、やはりECBは反インフレ思想であることが確認された
が、今のような欧州危機に対して、ユーロ圏が自らの金融政策を自
ら縛るというのは「羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」
ことにほかならない。この意味でかなり異常な事態だ。

 リーマン・ショック以降、FRBが量的緩和を実施したことで、
米国はかろうじて最悪の事態を避けられた。ゆっくりであるが、失
業率も改善の方向になっている。

 欧州でも、ユーロ圏でないイギリスのイングランド銀行も同じよ
うに強烈な量的緩和を行い、イギリス経済はユーロ危機と一線を画
している。同じくユーロ圏でないスウェーデンも、スウェーデン国
立銀行も量的緩和を行い、スウェーデン経済はユーロ危機と無縁で
好調だ。イギリスもスウェーデンも今ほどユーロに入らなくてよか
ったと思うときはないだろう。

 このままECBが量的緩和などを行わないと、いずれ財政調整だ
けでは限界になるだろう。また、ユーロ加盟が無理な周辺国をどの
ように救ったらいいのかという問題もある。ECBは本来の役割で
ある金融政策をフル稼働すべきだ。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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独首相、ESMの上限引き上げに反対=連立与党筋
2011年 12月 14日 05:54 JST

[ベルリン 13日 ロイター] ドイツのメルケル首相は、ユー
ロ圏の恒久的な金融安全網である「欧州安定メカニズム(ESM)
」の融資上限に関し、これまでいかなる引き上げ案も拒否した。連
立与党関係者が13日、首相との会談後に明らかにした。

ESMの資金枠は現在5000億ユーロだが、ファンロンパイ欧州
連合(EU)大統領はこの日、上限見直しの決定を3月までに完了
させる意向を示している。 
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にわかには信用できない欧州の新たな財政統合
マーケットウォッチ
2011年 12月 14日 8:20 JST
WSJ
 【ボストン】欧州連合(EU)首脳は先週末の基本合意について
、財政安定と強化の新時代到来を告げるものだと主張した。

 思い返せば、EUの首脳たちは過去にも同じようなことを言って
いた。

 12日、国際金融市場がEUに大ブーイングを浴びせたのも無理は
ない。ユーロStoxx50種指数は3%以上も下落した。その一方でひど
く「孤立」した気の毒な英国のFTSE100指数の下落は2%未満だった。

 皮肉なもので、今回の首脳会議は、単一通貨発足のきっかけとな
った歴史的なマーストリヒト条約からちょうど20年後に開かれた。
ドイツのメルケル首相、フランスのサルコジ大統領を含む数カ国の
首脳は、これを吉兆と捉えていたが、実際はその逆である。

 マーストリヒト条約も財政安定と欧州全域の健全性を確立する新
たな時代を築くはずだった。あれから20年。欧州の現状はご承知の
通りだ。

 まるでハリウッドスター同士の結婚である。不貞は新婚当初から
始まった。記憶力が良い人なら、最初に条約違反を犯したのがドイ
ツだったことを覚えているだろう。1990年代初頭、ドイツは連銀保
有の金の再評価益で財政赤字を穴埋めしようとして問題になった。

 今回の合意がもし条約として批准されるようなことになれば、ユ
ーロ圏のいかなる国も対国内総生産(GDP)比で3%を上回る構造的
な財政赤字を出すことが禁じられる。条約違反を犯した国は、事実
上EUの管理下に置かれ、財政主権を失うことになる。そうなれば
その国の歳出は削減され、増税が実施されるだろう。

 こうしたことはどれほど頻繁に起き得るのか。

 国際通貨基金(IMF)によると、ユーロ圏の17カ国中、現在その基
準を満たしているのはわずかに4カ国で、しかもそのうちの一つはイ
タリアだというのだから皮肉である。

 フランスの現在の構造的財政赤字は対GDP比で3.8%、ちなみに
2009年は4.8%、2010年は4.6%だった。自らの予算案でも3%の上限
が守れないサルコジ大統領がEUの新条約をユーロ圏諸国に守れと
言えるだろうか。他の誰かにフランスを統治させたいのなら、大統
領を辞任すべきである。

 1992年以来、フランスの財政赤字の対GDP比は平均3.5%となって
いる。つまり、フランスが他の欧州諸国を批判するなどもっての外
なのだ。自らの行いを棚に上げて「われわれの言う通りにしろ」と
はひどい話である。

 この新しい上限を常習的に破ってきたのはいわゆるPIIGS諸
国(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)
だけではない。今日では慎重とされているオーストリアやオランダ
でさえ、今年度の財政赤字の対GDP比はそれぞれ3.2%と3.3%である。

 違反国への自動制裁を支持してきたドイツでさえ、国内経済の低
迷を乗り切るために3%の上限を破ったことがあった。近年では2002
年、2003年、2004年の3回、3%を上回った。新条約の下では起こる
ことが許されないことである。

 果たして欧州諸国は新条約を順守するだろうか。過去のことを思
うと、楽観的にはなれない。

(ブレット・アレンズ氏はマーケットウォッチのシニア・コラムニ
スト。同氏はまた、ウォール・ストリート・ジャーナルのパーソナ
ル・ファイナンス・コラムニストでもある)   
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コラム:欧州危機拡大に身構えるFRB、景気後退への強い懸念
2011年 12月 14日 13:07 JST

[東京 14日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)が欧州
危機のさらなる拡大に身構えている。13日の米連邦公開市場委員
会(FOMC)は金融政策を維持した。

しかし、これは、欧州の金融情勢次第でいつでも強力な緩和政策を
実行に移せるよう、今回はカードを温存した判断と見るべきだ。米
国や日本など主要国の政策当局は、「欧州にらみ」のスタンスをか
なりの期間にわたって強いられると予想する。

市場では、最近のやや強めに振れている米経済指標を材料に、米経
済の先行きに楽観的な見方も出ているが、11月米小売売上高の弱
い数字を見れば、過剰な期待感は肩透かしを食う可能性がある。住
宅市場が低迷し、経済のエンジンの1つが機能不全になっている米
経済は、せいぜい2%前後の成長ができる体力しかないとみるべき
だ。そこに欧州危機が襲来すれば、大きな景気後退に陥る懸念を
FRBは強く抱いている──。今回のFOMC声明文からはそんな
メッセージが読み取れる。
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メルケル独首相、国内で求心力に陰りも
2011年 12月 14日 15:26 JST

[ベルリン 13日 ロイター] 欧州連合(EU)首脳会議で粘
り強い交渉力を発揮したドイツのメルケル首相だが、国内では求心
力の低下を懸念する声が出ている。

国民の間ではEUに対する不信感が拡大。世論調査では有権者の半
数以上が首相の危機管理能力に不満を示している。

与党内でも、欧州委員会による予算審査や欧州安定メカニズム(E
SM)の稼働前倒しなど、首脳会議の決定事項について、議会通過
は容易ではないとの指摘が出ている。

与党・キリスト教民主同盟(CDU)に所属するラマート下院議長
は「欧州委員会などが国家予算と議会の予算審議に直接介入するこ
とで憲法上の問題が生じないか、下院は調査する」と発言。憲法裁
判所がこうした問題を厳しく審理するドイツでは、議会がESMの
稼働前倒しを承認すると考えるのは「非常に野心的だ」と指摘した。

2013年の国政選挙を控え、首相はぶれない姿勢を示すことが支
持率確保につながると考えているはずだ。メルケル首相はユーロ圏
共同債の発行を一貫して拒否、欧州中央銀行(ECB)の独立性が
重要との立場を崩していない。

ただEU首脳会議後も、欧州株やユーロの値下がりは続いており、
市場では年内にもう1度首脳会議が必要になるとの憶測まで飛び交
っている。

調査会社エムニトの世論調査によると、有権者の46%は「EUが
ないほうがよい」と回答。「EUがあるほうがよい」との回答は45
%だった。DIMAPの世論調査では、有権者の半数以上がメルケ
ル首相の危機管理能力に不満を示した。
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伊国債利回り、再び7%台=株価は下落−欧州市場
 【ロンドン時事】14日午前の欧州金融市場では、イタリアの国
債利回りが上昇(価格は下落)し10年物は7.1%台(前日は
6.7%台)と、自力での資金調達が難しくなるとされる7%を再
び突破した。この日行われた同国の国債入札が不調に終わり、市場
では欧州債務問題への警戒感がくすぶり続けている。
(2011/12/14-21:52)  
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グローバル情報=EU首脳会議経てもなお課題山積、クリスマス前
に欧州国債市場で「危機再燃」も
2011/12/12 11:52

 欧州債務問題の行方を占ううえでマーケットが注視していたEU
(欧州連合)首脳会議が現地時間9日に閉幕し、英国を除くEU26
カ国で財政規律の強化を目指す新たな条約をつくることで合意した。
12年3月までに新条約の締結を目指す。新条約では、財政赤字が
GDP(国内総生産)の3%を超えた国に対して、大半の国が反対
しない限り自動的に制裁が課される。また、景気循環の影響を除い
た構造的な財政赤字がGDP(国内総生産)の0.5%を上回らな
いようにする規定を各国の憲法などに盛り込むことが求められる。

 EFSF(欧州金融安定化基金)の後継となる恒久的な安全網の
ESM(欧州安定メカニズム)に関しては当初設立予定だった13
年半ばから1年近く前倒しし、12年7月に発足させることを決め
た。さらに、ユーロ圏を中心に欧州諸国が2000億ユーロ(約21
兆円)をIMF(国際通貨基金)に融資し、欧州債務危機に対応す
る新たな枠組みを設けることでも合意した。

 もっとも、ドイツが反対していたユーロ共同債の発行やECB(
欧州中銀)による大規模な国債の購入については合意に至らなかっ
た。特に懸念されるのが、短期的に欧州の債券市場の安定化を図る
うえでの対策が不十分とみられていることだ。EFSFは来年1月
に本格稼動する見込み。それまでは引き続きECBに欧州重債務国
の国債を買い支える役割が期待されるが、ECBのドラギ総裁は8
日のECB理事会後の会見で積極的な国債買い入れに改めて否定的
な見解を示した。フィナンシャル・タイムズ紙は9日付記事(電子
版)で、ECBの役割を強化する策が依然として打ち出されていな
いことに言及し、今回のEU首脳会議は「クリスマスまでの期間を
乗り切るために十分な内容だったかと言えば、答えは恐らくノーだ
」と指摘。今後2週間以内にユーロ圏加盟国の国債をめぐる危機が
再燃する可能性があるとの見方を示した。

 また、ユーロ圏各国が財政危機に対処するうえで他国との協調体
制を構築できるかについて懐疑的にみる向きもある。EUは今回の
首脳会議で当初、財政規律を厳しくするためにEU条約を改正する
方向で協議したが、英国が自国の金融セクターの保護を理由に反対
したため、英国を除くEU26カ国で新条約の締結を目指すことで
一致。EU内の亀裂が鮮明となった格好だ。

 さらに、今回のEU首脳会議では2000億ユーロのIMFへの
融資を決定し、これに加えて欧州以外からの協力も求める方針を固
めたが、米メディアによると、米政府高官は米国が欧州支援のため
にIMFへの追加的な拠出を行う予定はないとの見解を示したとさ
れる。中国などの新興国が支援に前向きな姿勢を示すかどうかも不
透明だ。

 S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)は、前週にユーロ圏
15カ国やEFSF、EUのほか、ユーロ圏の一部大手銀行の格付
けを引き下げ方向で見直すと相次ぎ発表。9日には、EU首脳会議
の結果を受けて、S&Pフランスの責任者であるキャロル・シルー
氏がユーロ圏加盟国の格付けについて、「必要な要素をすべて考慮
したうえで、数日以内に判断を下す」と発言したと伝わった。同氏
によると、S&Pは今回の合意内容が経済や金融市場に及ぼす影響
を分析するほか、会合の結果がECBの積極的な危機対応を促すか
どうかも考慮するという。

 9日にはEU首脳会議の合意内容を好感して米国株式が大幅に上
昇。しかし、S&Pがユーロ圏15カ国の一斉格下げに踏み切れば
、再び投資家のリスク許容度が低下して株安基調に転じるリスクが
ある。(坂本浩明)

提供:モーニングスター社
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欧州の銀行:いよいよ厳しくなる資金調達 
jbpress(12月9日 英エコノミスト誌)

問題を抱えた欧州の銀行は資金が不足しつつある。

普通なら、1ペニーを貸し出す前に顧客を丹念に調べるのが銀行だ。
だが、欧州では今、投資家や企業、預金者がお金を貸し出す前に、
厳密な調査を受けるのが銀行だ。投資家のストに見舞われ、銀行は
新規融資を中断し、可能なものをすべて売却したり、担保にしたり
している。

 投資家のストがすぐに終わらなければ、欧州は信用収縮に陥る恐
れがある。最悪の場合、銀行の取り付け騒ぎや破綻が起きるかもし
れない。

銀行債券市場に見る静かな取り付け騒ぎ
 ある意味では、ゆっくりとした銀行取り付け騒ぎは、銀行債券の
市場で既に起きている。この市場はもっと満ち足りた時期なら、長
期の安定した資金を供給し、金融当局者が夜ぐっすりと眠れる状況
を生み出す。

7月以降、欧州の銀行にとっては、こうした銀行債市場がほぼ完全に
凍結されてしまった。


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