4201.ユーロの土壇場?



ユーロ危機を解決するEU首脳会議が12月8日、9日の両日に行
われた。この結果を考察する。   津田より

0.はじめに
欧州首脳会議で決まったことを上げると、
 1.財政規律に違反した国に対する制裁発動で、加盟国の4分の3の
  反対がない限り、自動的に実施する
 2.各国は、新たな財政規定を憲法や法規に加える
  ここまでは、23ケ国で協定を結ぶことになる。

 3.欧州版IMFという位置づけのESMは、予定を早めて来年7月に発足
  し、融資能力は5000億ユーロ(50兆円)。
 4.IMFへの資金拠出ですが、最大2000億ユーロ(20兆円)。ESM
  とIMFが問題国に、資金援助をする。

 5.英国は、財政規律を守るための金融取引税に結びつくような条
  約には、賛成できないと拒否。英国だけではなく、非ユーロ圏
  のハンガリー、スウェーデン、チェコが新財政協定に参加しな
  い可能性があるようだ。23カ国での財政規律協定になる方向。

そして、ECBの国債買い入れは、今までと同じで、週200億ユーロが
限度ということやユーロ共同債の発行はないことが決まった。

外部からの評価ですが、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は
、欧州連合(EU)首脳会議が打ち出した政府債務危機への総合対
策が不十分だと分析した。

この分析で、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&
P)が「近くユーロ圏数カ国の信用格付けを引き下げるだろう」と
の市場関係者のコメントを紹介。市場の警戒感を軽減するには「政
府の債務不履行や部分的なヘアカット(債務減免)は発生しないと
いう信認が必要」と強調した。

また、協定に反対したキャメロン英首相は、「提示されたことは英
国の利益にならないと判断した。自分たちのことは自分たちでする
ようにした方がよい」と語り、ユーロ圏を突き放した。逆に、これ
によってEUでの英国の孤立が深まり、そして、英国ではEU脱退
をめぐる議論が活発化している。国民投票が行われる可能性も出て
きた。英国は欧州連合(EU)から離脱することになるようだ。

米国の立場であるが、オバマ政権はガイトナー財務長官をEU首脳
会議の直前に欧州に派遣、迅速な対応をEUに促してきた。しかし
、カーニー米大統領報道官は9日、欧州連合(EU)がまとめた危
機対策は不十分との見方を示すとともに、「米国の納税者がこれ以
上関わる必要はない」として、国際通貨基金(IMF)への資金拠
出にも応じないと明言した。

中国人民銀行(中銀)が約3000億ドル規模の新運用機関の設立する
としたが、EU首脳会議後、7割を米国で運用するとして、ユーロ
圏の債権をあまり買わないようである。

ソロス氏は、イタリア国債を20億ドル購入したが、それは果たし
て成功であったのかが問われる事態のようだ。

また、米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは
9日、いずれも仏大手銀行のBNPパリバ、クレディ・アグリコル
、ソシエテ・ジェネラルの長期の債務格付けを、それぞれ1段階引
き下げたと発表した。

確実に言える事としては、EUは当分経済混乱が続くことになるし
、追加の支援策が必要になることでしょうね。

1.欧州の銀行はどうか?
欧州銀行監督局(EBA)は8日、欧州連合(EU)が新たに設け
た基準を満たすために欧州の主要銀行が必要とする資本額は、計
1146億8500万ユーロ(約11兆8千億円)になると発表し
た。資本基盤の強化が必要となる銀行は計31行になるという。

7月以降、欧州の銀行にとっては、こうした銀行債市場がほぼ完全に
凍結されてしまったため、最後の貸し手である中央銀行が銀行に資
本増強する必要があるが、各国中央銀行は紙幣の刷る増しができな
い。このため、ESMから各国政府に資金融資して国が各国銀行に
資本投下するしかないが、このため、現状の状態では融資できる資
金量が少な過ぎることになる。

しかし現実は、それよりひどく、各国政府が国債を買い続けるよう
地元銀行に圧力をかけているのだから、それは銀行としては、貸し
剥がしをしても資金を得るしかない。このため、欧州の銀行は、ア
ジアで資金を引き上げているのである。

これで、中国から投資資金回収をしているために、人民元が下限に
張り付いている。インドのルピーも為替レートが下がっているし、
ブラジルのレアルも同様になっている。資金の巻き戻しが、起こっ
ているために、それに吊られて、円、ドルなども巻き戻しが起きて
全体的に新興国通貨が値下がりした。このように新興国の経済成長
にも大きな影響を与えて、ブラジルの2012年経済成長はゼロと
している。中国やインドの経済成長も低成長になる。

しかし、欧州での資金貸し剥がしが一番大きく、欧州全域が投資資
金がなく、景気は下落してきている。その景気下落で、欧州中央銀
行(ECB)も8日、政策金利を年1.25%から1.0%に引き
下げることを決めたのだ。

2.日本への影響
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8日、日本の多額の国
内貯蓄、公的部門以外におけるレバレッジが低水準であることから
、金融資産で赤字を賄うことが可能となっているために、日本の政
府債務格付けAa3および安定的の見通しを支える要因は依然とし
て強いものの、長期的には課題が生じてくる可能性があるとした。

多額の対外純資産および非居住債権者への依存度の低さが、世界の
金融市場ショックを回避する要因になるとともに、経常黒字を支え
る多額の所得流入を生み出しているとも言う。

しかし、現在の政策および成長トレンドでは債務増大を抑制できな
いために、いつか債権危機になる可能性があるとした。消費税増税
などの財政赤字の減少をいつかはしないといけないという。

国債の金利上昇などと市場から催促される前に、国内説得して行え
るかどうかが重要なことになる。

しかし、それが不調になれば、最後は金利上昇などの市場からの攻
撃を受けることになる。その攻撃をスムーズにできる手段を東証は
準備した。

11月21日から取引時間を夜11時30分に延長しているが、取引時
間の延長だけではなく、デリバティブ(金融派生商品)取引の新し
い売買システム「Tdex+(ティーデックスプラス)システム」
を利用して先物取引の運用も開始した。この取引でヘッジファンド
の戦略が見えることになるので、日本としては、重要な情報源を手
に入れたことになる。

まだ、当分ヘッジファンドの当面の目標はユーロになるから、日本
をターゲットにするのは、まだ先であるとは思う。

消費税増税は、絶対に近日中に施行しないと、日本はイタリアと同
様なことになるとは思うので、野田首相はやるというので応援する
が、国民を説得するためには、政治家の身を切り、官僚も身を切る
ことが重要である。しかし、これができないでいる。

しかし、そろそろ、時間切れになりそうである。すでに貿易赤字に
なり始め、経常黒字幅も減少している。経常赤字になると、流れは
変わる事になる。

さあ、どうなりますか??

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欧州首脳会議のまとめ
2011年12月10日 11:40 mkubo1

EU首脳(27カ国)は、会議を続けて、妥協するところは妥協し、譲
れない一線もあり、結局、何とか、落としどころを探した感じです。

財政協定についてですが、次の2点です。

1、 財政規律に違反した国に対する制裁発動で、加盟国の4分の3の
反対がない限り、自動的に実施

2、 各国は、新たな財政規定を憲法や法規に加える

欧州版IMFという位置づけのESMは、予定を早めて来年7月に発足させ
ます。融資能力は5000億ユーロです。ファンロンバイ大統領は、ECB
が資金を融資できるように、銀行免許を付与するよう提案したので
すが、ドイツの反対にあって、銀行免許は付与されません。

IMFへの資金拠出ですが、最大2000億ユーロとなりました(これもド
イツが折れました)。ユーロ圏17カ国から1500億ユーロ、非ユーロ
圏10カ国から500億ユーロ拠出します。これは、早急に実施されるよ
うで、短期的な安全弁と考えているようです。さらに、域外からの
融資を合わせて期待しているようです。

偶然か意図的か分かりませんが、中国人民銀行(中銀)が約3000億
ドル規模の新運用機関の設立するようです。また、カタールは、ド
イツと話し合いを持っており、EFSFやドイツ向けの投資を検討して
いるようです。一方、米国は、当初報道とは逆で、IMFに追加融資は
しないそうです。

英国内では金融業の比重があまりにも大きいため、(財政規律を守
るための)金融取引税に結びつくような条約には、賛成できないの
でしょう。

英国だけではなく、非ユーロ圏のハンガリー、スウェーデン、チェ
コが新財政協定に参加しない可能性があるようです。ということは
、23カ国での協定ということになりそうです。

最後に、ドイツは欧州共同債に引き続き反対して、今回は見送りと
なりました。

この合意を受けて、ECBが何らかの拡大策をとるかと思いきや、ECB
の国債買い入れは、今までと同じで、週200億ユーロが限度だそうで
す。また、S&Pは、この合意を受けて、格付けを精査するようです。
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EUの債務危機対策「不十分」 FTが論評  :日本経済新聞
2011/12/10 12:18
10日付の英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は、9日に閉幕し
た欧州連合(EU)首脳会議が打ち出した政府債務危機への総合対
策が不十分だと分析した。クリスマス前にイタリアなど「周辺国の
債券は(市場の)攻撃を受けるリスクが残る」と指摘、短期の市場
安定策に課題があるとの見方を示した。

同紙は米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が
「近くユーロ圏数カ国の信用格付けを引き下げるだろう」との市場
関係者のコメントを紹介。市場の警戒感を軽減するには「政府の債
務不履行や部分的なヘアカット(債務減免)は発生しないという信
認が必要」と強調した。

 市場は欧州中央銀行(ECB)にユーロ圏各国の国債購入拡大な
どを期待しているが、今回の首脳会議はECBのドラギ総裁を説得
するには力不足だったと指摘した。
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欧州債務危機、「ユーロがドイツ経済の足を引っ張っている」 
世論調査
2011.12.10 Sat posted at: 09:37 JST

CNN) ユーロに加盟していなければドイツ経済は今よりも好調
だったと考えている人がドイツ国民の約半数に上ることが最近の調
査で明らかになった。この調査は今月、欧州7カ国で1429人の
成人を対象に実施され、欧州連合(EU)首脳会議が金融危機の回
避に向けユーロ圏の財政規律強化で基本合意した9日に結果が発表
された。

調査結果を見ると、同じ欧州の国でも財政状況によって意見が大き
く分かれた。ドイツでは、メルケル首相が支持する欧州の統合強化
について国民の約半数が反対したのに対し、財政難のスペインやギ
リシャなどでは支持する声が多かった。

またドイツやフランスなど財政的に豊かな国々では、ユーロ圏17
カ国の経済の健全性について否定的な意見が多かったのに対し、金
融支援を受けているギリシャ、アイルランド、ポルトガルなどは肯
定的にとらえていた。

またユーロに加盟していなければ自国の経済はより好調だったと考
えている人の割合は、ドイツとフランスではおよそ4割だったのに
対し、ギリシャでは33%、アイルランドでは27%、ポルトガル
では36%にとどまった。また、この3カ国では欧州の財政協力の
強化を支持する声が多かった。

ドイツではユーロ加盟の決断を支持する人は47%に過ぎず、単一
通貨に対するドイツ国民の迷いが浮き彫りとなった。またドイツ以
外では、スペインで49%、アイルランドで54%、イタリアで
52%、ポルトガルで47%という結果だった。

ユーロ圏に留まるべきか否かについては国によって意見が分かれた。
イタリアでは国民の大半がユーロ圏残留に賛成したのに対し、フラ
ンスでは全体のわずか34%にすぎなかった。
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英首相、独仏と袂分かつ 「提示案は利益にならず」
2011.12.10 05:00サンケイbiz

キャメロン英首相は9日、英国が欧州連合(EU)加盟27カ国を
対象とする既存の条約の改正に反対したことについて、記者団に「
提示されたことは英国の利益にならないと判断した。自分たちのこ
とは自分たちでするようにした方がよい」と語り、ユーロ圏を突き
放した。

 同首相は、英国の金融サービスがEUの規制下に入ることを食い
止める措置の確保に失敗した後、条約改正への反対を決め、フラン
スやドイツと袂(たもと)を分かつ結果となった。英国のほか、場
合によってはハンガリーとスウェーデン、チェコが新たな財政規律
の枠組みの外にとどまる見通しだ。

 サルコジ仏大統領は、キャメロン首相が英国を金融規制の対象か
ら外すよう求めるという「受け入れがたい要求」をし、欧州の二極
化を促進したとして非難。「英国のユーロへの不参加が欧州の二極
化を生み出した」と述べた。

 今回の判断はユーロに懐疑的な英保守党議員にとって勝利となっ
たが、これによってEUでの英国の孤立が深まりそうだ。

 英国ではEU脱退をめぐる議論が活発化している。10月に行わ
れたEU脱退の国民投票を求める議会採決では、保守党議員の4分
の1以上が賛成票を投じた。これを受け、キャメロン首相にEUか
ら権限を回復するよう求める圧力が強まっている。

 ピーターソン北アイルランド大臣は英誌スペクテーターのインタ
ビューで、ユーロ加盟国が公的債務危機終結のために団結を強める
なら、国民投票の実施は避けられないと述べた。
(ブルームバーグ )
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英と独仏、鋭く対立 EU首脳会議閉幕:主権巡り深まる溝、今後
の金融規制に影響も
日経新聞12月10日
【ブリュッセル=瀬能繁】欧州債務危機対策の最大のヤマ場となっ
た欧州連合(EU)首脳会議が9日閉幕した。これまでの1週間は
独仏英の3首脳が激しく駆け引きを繰り広げ、8日の討議は9日早
朝の午前5時まで続く約10時間の長丁場となった。妥協を重ねた独
仏と、あえて別の道を歩むことを決断した英国。双方の間に生まれ
た溝は今後のEUの金融規制・税制などでさらに深まる可能性が出
てきた。

独仏首脳は「非ユーロ圏もユーロ圏の会合に参加したい」(ポーラ
ンドのトゥスク首相)という声に配慮し、まずはEU27カ国による
EU条約改正を模索。英国が反対する場合は、ユーロ圏と非ユーロ
圏の有志で新条約をつくる二段構えの作戦だった。

英国はEUのヘッジファンド規制や銀行監督規制などで独仏に主導
権を奪われた。英国は孤立感を深め「英国抜き」がEUの政策決定
の日常風景になるのは必至だ。
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「もう米国民は関わらない」迷走欧州に米報道官 IMF資金供出
も否定
2011.12.10 21:01サンケイ
 【ワシントン=柿内公輔】カーニー米大統領報道官は9日、欧州
連合(EU)がまとめた危機対策は不十分との見方を示すとともに
、国際通貨基金(IMF)への資金拠出にも応じないと明言した。

 EUが財政規律強化へ新協定を打ち出したことに、カーニー氏は
「進展の兆しはある」としながらも「一層の取り組みが必要なのは
明白だ」と強調。EU新基本条約制定やユーロ共同債で合意できな
かったことに不満を隠さなかった。

 一方、米有力シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究
所のエコノミスト、デスモンド・ラックマン氏は「EUは欧州で広
がる信用危機への処方箋を示せなかった」と分析。EUがIMFへ
最大2千億ユーロの融資を決めたことにも、ブルッキングス研究所
のダグラス・エリオット研究員は「市場を納得させるには不十分」
とみる。カーニー氏も「米国の納税者がこれ以上関わる必要はない
」として、米国はIMFに拠出しないと指摘。「欧州が解決すべき
問題だ」と突き放した。

 オバマ政権はガイトナー財務長官をEU首脳会議の直前に欧州に
派遣、迅速な対応をEUに促してきた。
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ムーディーズ、仏大手3行を格下げ 欧州危機の拡大受け
2011年12月10日0時56分

 欧州の政府債務危機の拡大を受け、米格付け会社のムーディーズ
・インベスターズ・サービスは9日、いずれも仏大手銀行のBNP
パリバ、クレディ・アグリコル、ソシエテ・ジェネラルの長期の債
務格付けを、それぞれ1段階引き下げたと発表した。BNPパリバ
とクレディ・アグリコルは上から4番目の「Aa3」、ソシエテ・
ジェネラルは同5番目の「A1」となった。見通しはいずれも「ネ
ガティブ(弱含み)」。(ブリュッセル=寺西和男)
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欧州主要銀、11兆円の資本不足 31行が強化必要
2011年12月9日13時32分

 欧州銀行監督局(EBA)は8日、欧州連合(EU)が新たに設
けた基準を満たすために欧州の主要銀行が必要とする資本額は、計
1146億8500万ユーロ(約11兆8千億円)になると発表し
た。資本基盤の強化が必要となる銀行は計31行になるという。

 銀行別の資本不足額では、スペインのサンタンデールが153億
200万ユーロで最も多かった。ギリシャの銀行は、国際通貨基金
(IMF)などから支援を受けているため、把握できないとした。

 EUは10月、欧州の銀行に対し、銀行の資産のうち、経営体力
を示す「中核的自己資本」の比率を9%確保するよう求めることを
決めた。保有する国債などの資産が値下がりしても、銀行の経営が
不安定にならないようにするためだ。

 EBAは10月に銀行の資本不足額は1064億ユーロになる見
通しと公表。今回は約80億ユーロ増えた。10月は銀行側の見通
しに基づいていたが、今回はEBAが精査した。ただ、銀行が持つ
国債は前回と同じく9月末時点での価格で評価したので、金額は大
きく変わらなかった。
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欧州の銀行:いよいよ厳しくなる資金調達 
12月9日 英エコノミスト誌

問題を抱えた欧州の銀行は資金が不足しつつある。

普通なら、1ペニーを貸し出す前に顧客を丹念に調べるのが銀行だ。
だが、欧州では今、投資家や企業、預金者がお金を貸し出す前に、
厳密な調査を受けるのが銀行だ。投資家のストに見舞われ、銀行は
新規融資を中断し、可能なものをすべて売却したり、担保にしたり
している。

 投資家のストがすぐに終わらなければ、欧州は信用収縮に陥る恐
れがある。最悪の場合、銀行の取り付け騒ぎや破綻が起きるかもし
れない。

銀行債券市場に見る静かな取り付け騒ぎ
 ある意味では、ゆっくりとした銀行取り付け騒ぎは、銀行債券の
市場で既に起きている。この市場はもっと満ち足りた時期なら、長
期の安定した資金を供給し、金融当局者が夜ぐっすりと眠れる状況
を生み出す。

7月以降、欧州の銀行にとっては、こうした銀行債市場がほぼ完全に
凍結されてしまった。

 債券の発行は大幅に減少しており(図参照)、銀行がデフォルト
(債務不履行)した場合に投資家が手に入れられる資産の裏づけが
ある担保付き債券にシフトしている。

 投資銀行バークレイズ・キャピタルのデビッド・ライアン氏の試
算では、6月末以降に発行された欧州の銀行の無担保債券は、前年同
期の1200億ユーロに対して、わずか170億ユーロにとどまっている。

 「必要額に照らしてみると、これは微々たる額の資金調達だ」と
ライアン氏は言う。

 資金調達市場で起きている欧州の銀行の取り付け騒ぎは、ある意
味では、一部の国債市場で起きている動きをそのまま映し出してい
る。銀行と政府との繋がりを考えると、これは当然予想されること
だ。

 2008年の危機時には、政府が自国の銀行を下支えした。今では、
政府が国債を買い続けるよう銀行に圧力をかけている。その結果、
スペインやイタリア(イタリアでは11月29日に実施された3年物国債
の入札で、落札利回りが持続不可能な7.9%まで急騰した)のような
ユーロ圏周縁国では、最も強力な銀行でさえ投資家から借り入れを
行うのが難しくなっている。(後略)
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EU、IMFに20兆円融資へ 首脳会議で合意
2011年12月9日23時31分

 欧州連合(EU)首脳会議(サミット)は9日、政府債務(借金
)危機の解決に向けた追加策をまとめた。加盟国が国際通貨基金(
IMF)に最大2千億ユーロ(20兆6千億円)を融資し、その見
返りにIMFから欧州の財政危機の国への資金援助などを求める。
EU自身の対策が不十分なため、IMFによる支援強化で補っても
らう狙いだ。

 IMFは現在、EUなどと連携して、財政危機に陥ったギリシャ
やポルトガルなどに融資し、資金繰りを助けている。EUが今回打
ち出した対策では、各国がIMFにお金を出すことでIMFの資金
基盤を広げ、欧州各国への支援額を増やしてもらう方針だ。

 本来ならEU各国が直接、財政危機の国に貸し出せばいいが、各
国とも財政資金に余裕がなく、焦げ付く可能性のある融資は避けた
い。このため、各国が貸し出す先はIMFにして、IMFから財政
危機の国に融資してもらい、焦げ付いて損を被るリスクもIMFに
負ってもらうことにしたとみられる。
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欧州中銀が利下げ、2カ月連続 景気悪化に対応
2011年12月8日23時6分

 ユーロ圏の金融政策を決める欧州中央銀行(ECB)は8日、理
事会を開き、政策金利を年1.25%から1.0%に引き下げるこ
とを決めた。利下げは11月に続いて2カ月連続になる。欧州の政
府債務(借金)危機で景気が悪くなってきたため、利下げによって
投資や消費を刺激する必要があると判断した。

 経済協力開発機構(OECD)の経済見通しによると、ユーロ圏
は、年率に計算し直した四半期の成長率が2011年10〜12月
期にマイナス1.0%、12年1〜3月期にマイナス0.4%で、
2四半期続けて「マイナス成長」になる見込み。ユーロ圏の10月
の失業率も、10.3%と高い水準が続いている。

 一方でユーロ圏のインフレ率は11月の速報値が前年同月比3.0
%に達しており、ECBが目指す「2%以下」を上回っている。欧
州の多くの国で緊縮財政が続き、景気刺激策が限られるなか、EC
Bはインフレに多少目をつぶっても景気の下支えをする姿勢だ。
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日本国債格付け、「長期的には課題生じる可能性」=ムーディーズ
2011年 12月 8日 15:14 JS
[東京 8日 ロイター] ムーディーズ・インベスターズ・サー
ビスは8日、日本の政府債務格付けAa3および安定的の見通しを
支える要因(多額の債務を低水準の調達コストで賄う能力を含む)
は依然として強いものの、長期的には課題が生じてくる可能性があ
るとのコメントを発表した。

ムーディーズによると、具体的には、日本の多額の国内貯蓄、公的
部門以外におけるレバレッジが低水準であることから、金融資産で
赤字を賄うことが可能となっている。

対外的な強み、すなわち非常に多額の対外純資産および非居住債権
者への依存度の低さが、世界の金融市場ショックを回避する要因に
なるとともに、経常黒字を支える多額の所得流入を生み出している
と指摘している。

ムーディーズは8月24日、2008年の世界的経済危機後の財政
赤字および債務の増大を根拠に、日本の政府債務格付けをAa2か
らAa3に格下げした。

最新のアナリスト・リポートでは、2006年以降の首相の頻繁な
交代が、成長促進と債務抑制のために必要な経済・財政改革を阻ん
でおり、3月11日の東日本大震災および原発事故が2009年の
世界的景気後退とデフレからの回復を遅らせていると指摘。

4つの要因に着目し、経済力は「強い」、制度の頑健性は「非常に
強い」、財政力は「中位」、イベントリスクに対する感応度は「低
い」としている。

また、同リポートによると、日本政府債務の調達における日本の投
資家の根強い国内投資志向はすぐに低下することは考えにくいとい
う。これは多額の国内貯蓄、多額の対外純資産に基づくものだが、
長期的にはリスクの兆しがみられ、それが政府の調達コストの転換
点につながる可能性があると指摘している。

したがって、最大のイベントリスクは日本国債の調達危機だが、そ
うした展開は短期的には非常に考えにくい。ただし、長期的には圧
力が高まる可能性がある。

さらに、リポートでは、財政方針の有効性と信頼性、とりわけ長期
目標を明確に示すことは小泉政権後、難しくなっているとしている。

5年間で6人の首相就任で、2007年以降、政治的リーダーシッ
プは不安定。2009年に自民党が歴史的大敗を喫し、それまでの
野党であった民主党が第一党となったことによっても政治的不確実
性は払しょくされていないという。

リポートによると、現在の政策および成長トレンドでは債務増大を
抑制できない。3月11日の大震災以前の経済・財政見通しは、政
府にとってすでに難しい課題となっていた。大震災の影響で短期的
な見通しはさらに厳しいものとなり、長期見通しにも影を落とすも
のとみられる、という。
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コラム:欧州危機、IMFが中心的役割果たすべき局面に=サマーズ氏
2011年 12月 9日 13:15 JS
[ケンブリッジ(米マサチューセッツ州) 8日 ロイター] 欧
州のリーダーらはきょう、再び「歴史的な」首脳会議に臨むことに
なる。欧州の運命は今回の会合にかかっているが、これが金融危機
解決に向けた最後の会議となるわけではない。

フランスやドイツの方針を参考にすれば、首脳会議では財政規律の
強化や、共通の危機対応メカニズムを構築することで合意する見通
しだ。イタリアが打ち出した緊縮財政策を歓迎する意向が示され、
通貨統合の維持に向けた強力な政治的コミットメントについても再
確認されそうだ。これらはいずれも必要かつ望ましいことではある
が、世界経済は今後も厳しい状況が続くだろう。

欧州が世界最大の経済圏であることを考えれば、他の国々にとって
、大規模な金融危機を回避するため支援することは大きな利益とな
る。欧州経済の成長や欧州の金融システムを支えることも、世界全
体の投資にとって好ましい影響を与える。

国際通貨基金(IMF)にとっても「歴史的な」局面が到来してい
る。危機対応策の焦点は、ブリュッセル(欧州連合)やフランクフ
ルト(欧州中央銀行)からIMFに移りつつある。

1970年代の英国やイタリアの危機から1980年代の中南米債
務危機、1990年代のアジアやロシアの金融危機に至るさまざま
な危機の局面で、IMFは当事国が回復に向けて必要な措置を講じ
ることについて強いコミットメントを示すことを条件に、流動性供
給を通じて支援を行ってきた。

IMFが過去に実施してきた政策については、大きな議論の余地が
ある。だが、IMFは一貫して、経済原則が政治圧力に屈すること
は好ましくないとの立場を維持してきた。重要な局面では、IMF
は資金の借り入れを必要としている国ばかりでなく、世界経済にと
って重要な国に対して処方箋を提供してきた。

IMFのラガルド専務理事は8月、ジャクソンホールに金融関係者
が集まった際、欧州が深刻な問題を抱えていると警告。その上で、
欧州の銀行システムが資本不足に陥っており、成長を持続させる方
法で構造調整が必要になるとの見方を示した。IMFにとって、さ
まざまな問題について声を上げ、行動すべき時がやってきた。

第1に、イタリアはIMFのプログラムに沿って改革を実行するこ
とが不可欠だ。欧州の当局者はギリシャが完全な債務返済能力を持
っていると強調しているが、彼らだけで市場を納得させることがで
きるとは思えない。しかも、北部の欧州諸国がイタリアに条件を課
すかどうかにかかわらず、欧州内部で政治的に大きな溝が生まれて
いる。これらのトラウマはIMFに委ねる方が望ましい。

第2に、IMFは欧州それぞれの国を支援する際、彼らが金融シス
テムや数多くの国際的なコミュニティーに組み込まれていることを
、これまで以上に認識する必要がある。中央銀行が適切な金融政策
をとっていない国や、銀行システムにおける責務を無視する国に対
して資金を融資することは考えにくい。IMFによる欧州各国の支
援策は、当事国の金融政策をコントロールする欧州中央銀行(EC
B)による理解を前提に実施される必要がある。

第3に、IMFはユーロ圏のメンバー国を支援する際、その国だけ
の見通しについて評価してはならない。ある国の貿易赤字が減少す
れば、他の国の黒字が減少することになる。黒字の削減に向けた明
確な道筋が描けなければ、赤字削減に向けた明確な道筋を定めるこ
ともできず、債務返済能力を確実なものとすることも難しい。もっ
と一般的に言えば、いかなるプログラムについても、経済動向に関
する現実的な予測に基づいて持続可能性を評価する必要がある。
IMFは現実離れした調整プログラムを承認しないよう、細心の注
意を払わなくてはならない。

第4に、IMFは世界経済を脅かしている脅威について明確に発言
する責任がある。たとえ欧州債券のスプレッドが縮小し、欧州が緩
やかな成長を回復したとしても、欧州の銀行による大規模なレバレ
ッジ解消の動きが世界経済を脅かしている。各国の財政状況が改善
すればプラス要因となるが、それでは不十分だ。銀行が迅速に大規
模な資本再編を実施しなければ、世界的に大規模な信用収縮が起き
る恐れがある。

9日のEU首脳会合以降はIMFに注目が移る見通しで、そうなら
なくてはならない。IMFは大胆な行動をとる必要があるが、過去
の危機からの重要な教訓を忘れてはならない。国際社会は支援を提
供できるかもしれないが、各国や地域の繁栄は、つまるところ当事
者それぞれの努力にかかっている。

(ローレンス・H・サマーズ氏はハーバード大学教授。元米財務長官)
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S&Pが再び政治に横やり、ユーロ圏15カ国を格下げ方向で見直し

12月6日(ブルームバーグ):米格付け会社スタンダード・アンド
・プアーズ(S&P)が再び政治プロセスに横やりを入れた。同社
は8月、米財政赤字をめぐる政治の行き詰まりを受けて米国を格下
げし、資産家ウォーレン・バフェット氏から非難された経緯がある
が、今回は欧州債務危機の収拾を目指す欧州連合(EU)首脳会議
を目前にしてユーロ圏15カ国を格下げ方向で見直すと発表した。
  S&Pは5日、域内債務危機への対処方法をめぐり各国当局者
の意見が引き続き一致していないため金融の安定に悪影響が及ぶリ
スクがあるとして、ドイツとフランスを含む15カ国の格付けを「ク
レジットウオッチネガティブ」に指定した。同社は、4カ月前には
米国の格付けを「AA+」に引き下げており、1兆ドルを超す財政
赤字の削減方法をめぐる協議が難航し米国の信用の質が損なわれた
と指摘していた。
  S&Pが今月8−9日のブリュッセルでのEU首脳会議を間近
に控えたタイミングで動いたことをめぐって、債券保有者から疑問
の声が上がった。同社の動きに先立ってメルケル独首相とサルコジ
仏大統領は同日、経済協力を強化する方向でのEU条約変更を求め
る計画を提示していた。
  LPLフィナシャル(サンディエゴ)の市場ストラテジスト、
アンソニー・バレリ氏は5日の電話インタビューで、「S&Pは引
っ込んでいるべきだ」と述べ、「債務問題の解決を目指すEU首脳
の仕事を複雑にさせる」と指摘した。
  S&Pによると、EU首脳会議の結果が同社の基準を満たさな
い場合、オーストリアとベルギー、フィンランド、ドイツ、オラン
ダ、ルクセンブルクの格付けは1段階、その他の国は最大2段階引
き下げる可能性がある。ブルームバーグの集計データによると、
S&Pが15カ国全てを格下げした場合、8兆1000億ドル(約630兆円
)を超す国債に影響が及ぶ。
  S&Pはリポートで「今度のEU首脳会議は、政策当局者がこ
れまでの断片的で受け身の措置から脱却し、各国の利益や優先事項
を乗り越え、投資家の信認回復につながる信頼できる危機対応を前
進させる機会となる」と指摘した。
  欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバー、オーストリア
中銀のノボトニー総裁は、首脳会議の成果に格付けを結び付ける今
回のS&Pの動きを批判し、「格付け会社が政治的役割をますます
強めるという問題を浮き彫りにしている」と指摘した。
  S&Pは5日の発表文で、首脳会議を前にして格付け見直しを
決めたのは危機深刻化のリスクが「著しく上昇した」ためと説明。
「政策当局者のこれまでの行動は、高まる市場の圧力に応じただけ
のように見える」との認識を示した。



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