4196.現代という芸術アラカワ



現代という芸術アラカワ 記憶は鏡像として夜つくられる
From: tokumaru

皆様、

現代という芸術アラカワをお届けします。

http://www.milestone-art.com/MILESTONES/issue129/htm/p17tokumaru.html

現代という芸術 アラカワ No.11

記憶は鏡像として夜つくられる

 言語学や心理学など人間の認知にかかわる科学は、記憶という一
番大切な問題を避けている。難しいから避けているのだろうが、あ
まりにみんなが避けているから、まるでタブーのようになっている。
その結果、いくら研究しても、誰も答えにたどりつけない。
 意味とは記憶である。記憶を語らずして、意味のメカニズムは明
らかにならない。
 ヒトだけでない。鳥や獣も昆虫も、生きものはみんな記憶をもっ
ている。ひとつは、DNAが伝える生命の記憶、もうひとつは経験によ
って獲得する学習の記憶。おそらくこれも脳内でDNAの二重らせん構
造として記憶されているのだろう。
 そして、何かを見たとき、何かを聞いたとき、記憶を参照して、
向かうか、逃げるか、無視するかを判断する。記憶は、再認のため
の受動的な装置である。現前の顔や姿は、記憶に参照されて、それ
が記憶にあると所定の行動のスイッチが入る。

 意味のメカニズムの14は、「意味の記憶の構築」と題されていて
、「記憶の研究:記憶のはたらき、記憶の範囲、意味が実現すると
きの記憶の役割、記憶が記憶自体(そのはたらき)を思い出せる全体
状況の構築をめざす」とある。
 男が鏡に向かってカメラを向けている。その写真の上には、白い
手書きの鏡文字で母への手紙が書いてあり、下の余白には「夜」と
ひと言。
 記憶は、鏡像や鏡文字になっていて、それは寝ている間につくら
れるのだ。
 どうして鏡文字なのだろう。細胞の核内でDNAがメッセンジャーRNA
に転写されるとき、アデニン(A)はウラシル(U)に、グアニン(G)はシ
トシン(C)と反転する。それが核膜を通過すると、細胞質内のリボソ
ームにアンチコドン構造をもつトランスファーRNAが待ち受けていて
、ふたたび反転する仕組みになっている。
 われわれの記憶も、同じように反転、再反転して、記銘、再生、
再認が行なわれているのではないか。記憶にもとづく再認(パターン
認識)のメカニズムと、再認のための記憶の構築メカニズムについて
、このあと、アラカワはいくつもの投射や分解の図で示す。脳とい
う生体コンピュータが、われわれの記憶を整理して保存し、使える
ようにする作業である。




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