4163.中国高鉄事故報告が延びている理由



中国高鉄事故報告が延びている理由
           平成23年(2011)10月25日(火)
           「地球に謙虚に運動」代表 仲津 英治

 中国国務院は、9月中旬に2011年7月23日に発生した温州高鉄事故の原因
報告を行なうと言明していましたが、理由と時期の明示もなく延期しています。
 延期理由に関して興味深い情報に接しましたのでお知らせします。
「七月?州動車事故報告仍未公布」と題する記事ですが、元をただせば、
当該記事は10月3日付のウオールストリート・ジャーナル(WSJ)の英文記事
を翻訳した中国語版WSJの記事の一部を引用したものです。中国専門家の北村
豊氏の教えて頂きました。以下の内容は、北村氏と学生時代からの友人鎌倉
国年の協力によるものです。
 
BUSINESS    OCTOBER 3, 2011
China Bullet Trains Trip on Technology 

By JAMES T. AREDDY  in Shanghai and 
NORIHIKO SHIROUZU  in Beijing


1.北京和利時(北京ホリシス、中国の信号部品メーカー)が信号通信系統を
担ったが、この元は日立製作所の部品である。
日立はブラックボックスを設けていて重要な企業秘密を守っていた。この為
に中国側は設備の故障原因をなかなか特定できない。
日立の幹部は企業秘密を盗まれた場合は競争相手に利する状況が生まれかね
ないと懸念していたと言明していた。
2. 北京ホリシスが中国高鉄用に供給した信号システムには日本の日立がホリ
シスの仕様に基づいて製造した回路システムを含むメーカーの技術が含まれて
いた(筆者;日立製作所は総合電機・発電機メ―カーで、川崎重工、東急車輛、
日本車輛、近畿車輛等と並んで、日本の有力な鉄道車輛メーカーです。英文記
事によりますと地上&車上信号保安設備を納入したものと思われます)。
3. 日立はホリシスに部品を販売する際に、技術を窃取されることを恐れて、
部品内部の機能原理を教えなかった。
この種のブラックボックスはコピーを作成することが難しいのみならず、外部
の人間には理解できない。
ホリシスが日立のノウハウを把握していないにもかかわらず、日立の製品を大
型の信号システムに組み込んだことは理解に苦しむし、未だにミステリーであ
ると日立の幹部は述べている。
4.日立がホリシスにATP(Auotomatic Train Protection=自動列車防護装置)
システムの部品を供給した際にも、ブラックボックスを設け、設計図は渡さなか
った。
5.これは日立とホリシスの契約が技術移転契約ではないためだが、日立は信頼
できる相手かつ、別の市場で脅威とならない相手であれば、設計図を渡すことも
あり得る。(ホリシスはそうした相手とは認定できなかった)

温州の事故で問題となっている信号機メーカーの主体は「北京全路通信信号
研究設計院有限公司」およびCASCO(中国鉄路通信信号総公司と仏アルストーム
のJ/V)ですが、WSJの記事はその主役に焦点を当てたものではなく、部品メーカー
であるホリシスに焦点を当てて、中国の信号技術が如何に外国技術に頼っている
か、独自の技術などほとんどない、ということを報じたもののようです。
それから英文記事をチェックしましたが、日立は公式には、一切コメントして
いないようです。
                           
10月3日付のウオールストリート・ジャーナル(WSJ)の英文記事をご所望の方は、
仲津までお申し出下さい。7ページもある記事です。
 
「地球に謙虚に運動」代表


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