人民日報によると、東アジアサミットでは、中国はこれまで、当該 地域における米国との潜在的な競争にばかり注目し、日本の役割を 軽視していた。中米間が争うことで、最終的に日本が利益を得たと 評価している。 東アジアサミットは、中国が想像したほど楽観的な状況ではない。 米国・ロシアの参加による影響は多方面に及び、長期化し、中国の 思い通りにならない。 日本の目標は大きく分けて3つあるという。1つ目は、米ロのEAS参加 後、多国間の安全保障問題に関する議題の討論を促進し、中国の戦 略的メリットを抑制すること。2つ目は、ASEAN+3からASEAN+6への 枠組み転換を図ること。3つ目は、ASEANのインフラ建設を効果的に コントロールすること。 中米両国がEASから得たものはほとんどなく、ASEANはいくつかの承 諾を取り付けただけだったが、日本は実益と戦略的メリットを獲得 しただけでなく、米国の正面攻撃を回避し、矛先を中国に向けさせ ることに成功した。この点から見るに、日本の戦略は成功したと言 えるという。 このように、日本からはTPPを含めた外交戦略を成功と言う意見がな いが、中国からは、日本の外交戦略を最大限、評価されている。中 国は、今後、日本を意識した外交方針が出てくると見る。 日本が米国の同盟国ではあるが、東南アジアに米国を引き込み、中 国と対応させて、日本は民生的な防衛面で東南アジアと結びつくこ とが日本と東南アジアの両方にとって、有効な手段になるようだ。 日本は東シナ海での軍事的な衝突を避けるために、中国とは中立的 な位置でもあることになる。中国と米国の対立において、中国の横 暴に反対するが、日中間は戦争に持つ込まない関係を築くことであ る。 ============================== アジアサミット、最大の勝者は日本 東アジアサミット(EAS)が先週土曜日に閉幕した。しかし、中米 両国は結局共通認識に達することができず、ASEANはいくつかの承諾 を取り付けたが実施にはまだ時間がかかり、新たに参加したロシア もCIS諸国とのFTA締結に忙しく、あまり熱心ではなかった。ところ が驚くべきことに、これまでずっと控えめな態度で各国の動きを静 観してきた日本が今回、大きな利益を上げたのだ。第一財経日報が 伝えた。 この状況に関し、中国現代国際関係研究院グローバル化研究セン ターの劉軍紅主任は、「現在、アジア太平洋における主な矛盾は依 然として日米間の矛盾だ。しかも日本はこれまでずっと、自国にと って不利な戦略体制を瓦解させようと努めてきた。しかし中国はこ れまで、当該地域における米国との潜在的な競争にばかり注目し、 日本の役割を軽視していた。中米間が争うことで、最終的に日本が 利益を得た」と語る。 ▽最大の勝者は日本 記者:このほど閉幕したEASの成果について総合的に評価してくだ さい。 劉軍紅:我々が想像したほど楽観的な状況ではない。米国・ロシ アの参加による影響は多方面に及び、長期化するだろう。今回のサ ミットの成果は主に3つある。1つ目は海上安全保障問題に関する共 通認識。2つ目は「ASEAN+3」から「ASEAN+6」へのFTA拡大。3つ目 は中日韓FTA産官学共同研究を早期に始める方針を確認したことだ。 記者:日本は今回、東南アジアのインフラ建設だけでも250億ドル の援助を承諾するなど、大きな動きを見せました。 劉軍紅:日本は総事業費2兆円規模のインフラ整備に対し支援を表 明した。これには建設、衛星提供、防災・減災体系、予報などが含 まれ、ASEANで日本モデルの普及を推進していく。日本は今回のEAS における最大の勝者と言える。 記者:それはなぜですか? 劉軍紅:野田首相が帰国前に語ったように、今回日本の外交戦略 は基本的に成功を収めた。ここ1年間の外交努力、会議の議事日程と 議題、各国の駆け引きなどから判断するに、日本は所定の目標を基 本的に実現したと言える。 日本の目標は大きく分けて3つある。1つ目は、米ロのEAS参加後、 多国間の安全保障問題に関する議題の討論を促進し、中国の戦略的 メリットを抑制すること。2つ目は、ASEAN+3からASEAN+6への枠組 み転換を図ること。3つ目は、ASEANのインフラ建設を効果的にコン トロールすること。 結果、中米両国がEASから得たものはほとんどなく、ASEANはいく つかの承諾を取り付けただけだったが、日本は実益と戦略的メリッ トを獲得しただけでなく、米国の正面攻撃を回避し、矛先を中国に 向けさせることに成功した。この点から見るに、日本の策略は成功 したと言える。 ▽日本、うまく立ち回って「ASEAN+6」への拡大に成功 記者:将来の東アジアの主導権についてはどう見ますか?日本が 重要な役割を果たすでしょうか? 劉軍紅:そうだと言える。表面上は米国が主導権を握るように見 えるが、米国は東アジアの枠組み内で経済協力について話し合いを するのではなく、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を推進してい く。これにより、日本はこの枠組みの中で矛盾を利用しつつ、事実 上の指導権を握ることができるようになる。実は日本はすでにそれ を実行している。日本はサミット前にTPP交渉への参加を宣言し、東 アジアを動揺させた。もし日本、メキシコ、カナダがTPPに参加すれ ば、TPP参加国のGDPが世界全体の39%を占めることになり、ASEAN+ 3のFTAの影響力が下がるからだ。そこで日本がASEAN+6にしたらど うかと提案したところ、各国は皆同意し、結局思惑通りとなった。 実際、日本はTPPという「てこ」を使ってEASを動かした。日本は まだTPP交渉に正式に参加したと宣言したわけではない。正式な参加 は理論的にはまだ6カ月先のことであり、来年春以降にならないと確 定しないのだ。 記者:中国はTPPをどのように見るべきでしょうか? 劉軍紅:これは一種の駆け引きと言える。まず基本的な判断が必 要だ。まず、TPPが合意に達したと仮定すると、中国に対するマイナ ス影響はどれくらいなのか。もう1つは、もし中国も参加したらどう か、実行可能性はあるのかということだ。現在のところ、実行可能 性はあきらかに無いと言える。関税だけをとっても、現在の中国の 関税は米国を大幅に下回っている。 百歩譲ってもし合意に達したとしても、TPPの効果が現れるのは各 参加国と中国との間で経済貿易関係が生じたときだけだ。しかも現 在の関税水準を上回ることはなく、3−4年の緩衝期間もある。こう して見ると、中国はTPPにうろたえる必要はなく、動きを静観すると いう態度でいればよいことが分かる。ただし、ASEANとの関係を引き 続き深化させる、ASEAN+3を動揺させない、という2つの原則が必要だ。 ▽真のライバルは日本 記者:中国はこの変化にどのように対応すべきでしょうか? 劉軍紅:我々は反省するべきだ。中国はこれまでずっとASEANと緊 密な関係を築こうと努めてきたが、現在、この努力は全く報われて いない。これは自国にも原因があり、改善の必要があるが、一方で 、ライバル国による瓦解の動きを軽視してきたことも原因だ。我々 を瓦解させようとするライバル国は、実は日本であり、これまであ まり重視してこなかった。 これからは、過度に理想的な考え方や物言いを調整すべきだ。例 えば現在、中国は米ドル体制に挑戦する能力が全く無いのだから、 米ドル体制を変化させようとする考えを提起する必要は無い。また 、金融危機にかこつけて米国の経済成長モデルを批判する必要もな い。そんなことをすれば、米国が中国に対して小細工をしかけ、そ の他の小国が動揺するだけだ。中米が互いに争えば日本が得をする。 これは中国の真の利益を失うことにつながる。 日本が行っているのは戦略的な瓦解もあり、戦術的な瓦解もある。 今回のサミットのほかにも、日本はこのほど、20年ぶりに東京証券 取引所などの取引時間を30分延長した。これは、アジア金融市場で 日本の影響力を拡張させようという意図の表れであり、日本円にア ジアでの主導権を握らせようという意図は明らかだ。 地域協力において日本の戦略は変わらず、その方向性を堅持して いる。一方で1997年以降、中国の地域協力における戦略的メリット は基本的に瓦解された。日本が2006年に定めた「ASEANをすばやく攻 略し、中韓をけん制し、東アジア共同体の主導権を握る」という目 標は、今日も基本的にその方向を維持し続けており、ますます好調 と言える。(編集SN) 「人民網日本語版」2011年11月21日