4184.東アジアサミットの最大勝者



人民日報によると、東アジアサミットでは、中国はこれまで、当該
地域における米国との潜在的な競争にばかり注目し、日本の役割を
軽視していた。中米間が争うことで、最終的に日本が利益を得たと
評価している。

東アジアサミットは、中国が想像したほど楽観的な状況ではない。
米国・ロシアの参加による影響は多方面に及び、長期化し、中国の
思い通りにならない。

日本の目標は大きく分けて3つあるという。1つ目は、米ロのEAS参加
後、多国間の安全保障問題に関する議題の討論を促進し、中国の戦
略的メリットを抑制すること。2つ目は、ASEAN+3からASEAN+6への
枠組み転換を図ること。3つ目は、ASEANのインフラ建設を効果的に
コントロールすること。

中米両国がEASから得たものはほとんどなく、ASEANはいくつかの承
諾を取り付けただけだったが、日本は実益と戦略的メリットを獲得
しただけでなく、米国の正面攻撃を回避し、矛先を中国に向けさせ
ることに成功した。この点から見るに、日本の戦略は成功したと言
えるという。

このように、日本からはTPPを含めた外交戦略を成功と言う意見がな
いが、中国からは、日本の外交戦略を最大限、評価されている。中
国は、今後、日本を意識した外交方針が出てくると見る。

日本が米国の同盟国ではあるが、東南アジアに米国を引き込み、中
国と対応させて、日本は民生的な防衛面で東南アジアと結びつくこ
とが日本と東南アジアの両方にとって、有効な手段になるようだ。

日本は東シナ海での軍事的な衝突を避けるために、中国とは中立的
な位置でもあることになる。中国と米国の対立において、中国の横
暴に反対するが、日中間は戦争に持つ込まない関係を築くことであ
る。


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アジアサミット、最大の勝者は日本
 東アジアサミット(EAS)が先週土曜日に閉幕した。しかし、中米
両国は結局共通認識に達することができず、ASEANはいくつかの承諾
を取り付けたが実施にはまだ時間がかかり、新たに参加したロシア
もCIS諸国とのFTA締結に忙しく、あまり熱心ではなかった。ところ
が驚くべきことに、これまでずっと控えめな態度で各国の動きを静
観してきた日本が今回、大きな利益を上げたのだ。第一財経日報が
伝えた。

 この状況に関し、中国現代国際関係研究院グローバル化研究セン
ターの劉軍紅主任は、「現在、アジア太平洋における主な矛盾は依
然として日米間の矛盾だ。しかも日本はこれまでずっと、自国にと
って不利な戦略体制を瓦解させようと努めてきた。しかし中国はこ
れまで、当該地域における米国との潜在的な競争にばかり注目し、
日本の役割を軽視していた。中米間が争うことで、最終的に日本が
利益を得た」と語る。

 ▽最大の勝者は日本
 記者:このほど閉幕したEASの成果について総合的に評価してくだ
さい。

 劉軍紅:我々が想像したほど楽観的な状況ではない。米国・ロシ
アの参加による影響は多方面に及び、長期化するだろう。今回のサ
ミットの成果は主に3つある。1つ目は海上安全保障問題に関する共
通認識。2つ目は「ASEAN+3」から「ASEAN+6」へのFTA拡大。3つ目
は中日韓FTA産官学共同研究を早期に始める方針を確認したことだ。

 記者:日本は今回、東南アジアのインフラ建設だけでも250億ドル
の援助を承諾するなど、大きな動きを見せました。

 劉軍紅:日本は総事業費2兆円規模のインフラ整備に対し支援を表
明した。これには建設、衛星提供、防災・減災体系、予報などが含
まれ、ASEANで日本モデルの普及を推進していく。日本は今回のEAS
における最大の勝者と言える。

 記者:それはなぜですか?

 劉軍紅:野田首相が帰国前に語ったように、今回日本の外交戦略
は基本的に成功を収めた。ここ1年間の外交努力、会議の議事日程と
議題、各国の駆け引きなどから判断するに、日本は所定の目標を基
本的に実現したと言える。

 日本の目標は大きく分けて3つある。1つ目は、米ロのEAS参加後、
多国間の安全保障問題に関する議題の討論を促進し、中国の戦略的
メリットを抑制すること。2つ目は、ASEAN+3からASEAN+6への枠組
み転換を図ること。3つ目は、ASEANのインフラ建設を効果的にコン
トロールすること。

 結果、中米両国がEASから得たものはほとんどなく、ASEANはいく
つかの承諾を取り付けただけだったが、日本は実益と戦略的メリッ
トを獲得しただけでなく、米国の正面攻撃を回避し、矛先を中国に
向けさせることに成功した。この点から見るに、日本の策略は成功
したと言える。

▽日本、うまく立ち回って「ASEAN+6」への拡大に成功
 記者:将来の東アジアの主導権についてはどう見ますか?日本が
重要な役割を果たすでしょうか?

 劉軍紅:そうだと言える。表面上は米国が主導権を握るように見
えるが、米国は東アジアの枠組み内で経済協力について話し合いを
するのではなく、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を推進してい
く。これにより、日本はこの枠組みの中で矛盾を利用しつつ、事実
上の指導権を握ることができるようになる。実は日本はすでにそれ
を実行している。日本はサミット前にTPP交渉への参加を宣言し、東
アジアを動揺させた。もし日本、メキシコ、カナダがTPPに参加すれ
ば、TPP参加国のGDPが世界全体の39%を占めることになり、ASEAN+
3のFTAの影響力が下がるからだ。そこで日本がASEAN+6にしたらど
うかと提案したところ、各国は皆同意し、結局思惑通りとなった。

 実際、日本はTPPという「てこ」を使ってEASを動かした。日本は
まだTPP交渉に正式に参加したと宣言したわけではない。正式な参加
は理論的にはまだ6カ月先のことであり、来年春以降にならないと確
定しないのだ。

 記者:中国はTPPをどのように見るべきでしょうか?

 劉軍紅:これは一種の駆け引きと言える。まず基本的な判断が必
要だ。まず、TPPが合意に達したと仮定すると、中国に対するマイナ
ス影響はどれくらいなのか。もう1つは、もし中国も参加したらどう
か、実行可能性はあるのかということだ。現在のところ、実行可能
性はあきらかに無いと言える。関税だけをとっても、現在の中国の
関税は米国を大幅に下回っている。

 百歩譲ってもし合意に達したとしても、TPPの効果が現れるのは各
参加国と中国との間で経済貿易関係が生じたときだけだ。しかも現
在の関税水準を上回ることはなく、3−4年の緩衝期間もある。こう
して見ると、中国はTPPにうろたえる必要はなく、動きを静観すると
いう態度でいればよいことが分かる。ただし、ASEANとの関係を引き
続き深化させる、ASEAN+3を動揺させない、という2つの原則が必要だ。

▽真のライバルは日本
 記者:中国はこの変化にどのように対応すべきでしょうか?

 劉軍紅:我々は反省するべきだ。中国はこれまでずっとASEANと緊
密な関係を築こうと努めてきたが、現在、この努力は全く報われて
いない。これは自国にも原因があり、改善の必要があるが、一方で
、ライバル国による瓦解の動きを軽視してきたことも原因だ。我々
を瓦解させようとするライバル国は、実は日本であり、これまであ
まり重視してこなかった。

 これからは、過度に理想的な考え方や物言いを調整すべきだ。例
えば現在、中国は米ドル体制に挑戦する能力が全く無いのだから、
米ドル体制を変化させようとする考えを提起する必要は無い。また
、金融危機にかこつけて米国の経済成長モデルを批判する必要もな
い。そんなことをすれば、米国が中国に対して小細工をしかけ、そ
の他の小国が動揺するだけだ。中米が互いに争えば日本が得をする。
これは中国の真の利益を失うことにつながる。

 日本が行っているのは戦略的な瓦解もあり、戦術的な瓦解もある。
今回のサミットのほかにも、日本はこのほど、20年ぶりに東京証券
取引所などの取引時間を30分延長した。これは、アジア金融市場で
日本の影響力を拡張させようという意図の表れであり、日本円にア
ジアでの主導権を握らせようという意図は明らかだ。

 地域協力において日本の戦略は変わらず、その方向性を堅持して
いる。一方で1997年以降、中国の地域協力における戦略的メリット
は基本的に瓦解された。日本が2006年に定めた「ASEANをすばやく攻
略し、中韓をけん制し、東アジア共同体の主導権を握る」という目
標は、今日も基本的にその方向を維持し続けており、ますます好調
と言える。(編集SN)

 「人民網日本語版」2011年11月21日

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