「跳ぶが如く」司馬遼太郎著にあるこの文章は、今のTPP問題に も言えそうである。TPP問題と征韓論の共通性が面白い。 ー引用開始ー 弧絶した環境にある日本においては、外交は利害計算よりも多分に 呪術性もしくは魔術性を持っている。 幕末、欧米諸国が通商をもとめたとき、日本史上空前の人民レベル にいたるまでの沸騰がみられた。たかが国家の利害計算の範囲内に すぎない外交問題が、革命のエネルギーに最初から変質してしまっ ていた。 夷を攘うということが同時に王を尊ぶという国内統一の課題と矛盾 なしに一致し、これによって幕府が倒れ、明治維新が成立したので ある。外交がつねにだたの外交におわることなく、かならず悪霊の ような魔術性をもち、国内問題にむかって強烈な呪術力を発揮する 点で、日本はきわめて特異であり、世界の政治分野のなかで特別な 国であるとみなければ、征韓論(もTPP問題)もわからない。 それがいったん過ぎ去ってしまうと、あたかも病状の去った神経発 作のような発病中の自分の心理なり病状なりがどういうものであっ たかよくわからないところがある。 ー引用終りー まあ、そういう心理が今の日本人にあるのでしょうね。しかし、こ の征韓論の時代も、今の時代も海外へ出て、ある程度ビジネスをし たり、交渉をしたりした人間は、この日本人の魔性に影響されなく なり、単なる国家の利害計算で物事を考えることになる。 しかし、残念なのが、日本人の内で海外でビジネスをした経験や外 交の世界を経験した人たちが、全人口の2割程度しかいないことで 、8割の日本の政治家がTPP問題を国内問題にむかっての強烈な 呪術力として使っている。 そこが、日本は外交問題を国内問題にしている要因である。