4170.ユーロ・一難去って、また一難



ギリシャが連立政権を樹立した。これでユーロ圏に留まることがほ
ぼ確実に成った。ユーロ支援と緊縮財政の両方が進行することにな
る。   Fより

とやっと、ユーロ危機は一段落したのかというと、違い、イタリア
では緊縮財政への不満から国民がデモを行い、緊縮財政への反発を
強め、そして、議会でベルルスコーニ首相の不承認決議が可決する
事態になりそうである。

次のイタリアの政権に対して、欧州中央銀行(ECB)理事会メン
バーのメルシュ・ルクセンブルク中銀総裁は、イタリアが確約した
改革を実行しないと判断した場合、イタリア国債の買い入れ停止の
可能性をECBはしばしば討議しているとした。

今後はイタリアの番である。国債利回りは週末、6.39%と週末比0.49
%上昇した。価格は88.85であるから1割以上の損失が発生している
ことになる。国債残高から予測すればイタリア国債保有者は1,900億
ユーロの含み損を抱えていることになる。これだけの国債の値下が
りに見舞われれば、残高が巨額なだけに債券市場はギリシャ以上に
神経質になってくる。

また、イタ
リア国債のデフォルトを市場は意識しないといけない事態になって
いる。
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from Eiichi Morino
イタリアもIMFの監視を受けて、これから緊縮、緊縮が続くだろうが
、社会的な不安定がもたらされるだろうなあ。

日本でも緊縮が叫ばれたのは昭和初期(5年)ころかな。井上財政
の時代。
第一次大戦中の放漫な経済のやりくちが通じなくなった戦後から、
金本位への復帰は金解禁をどうするかで10年以上の長きにわたって
議論されてきた。それが実行されたのが昭和5年。井上財政は不況の
なかデフレ策を実行しようと、国民に緊縮のキャンペーンをはって
いた。公私に渡り経済を縮めて、国や市町村の財政を緊縮するのは
もとより、国民全般に消費の節約を呼びかけた。金解禁にはそれが
不可欠だとしたわけ。思えば金本位制の時代は事がシンプル。国内
消費が増し輸入が増えれば代金支払いで金が海外に流出する、それ
だけ国内の貨幣量が減るから不況になる。だから緊縮で流出を止め
、それで景気回復なんてことまで主張された。物価は下がるし生活
は楽になるのだ、金が流出して為替が下がっていれば、輸出も好く
なるし、国際貸借も緊縮で改善されるのだと。
今日の人間は、そうしたデフレ策が行き詰まって積極財政の高橋財
政に切り替わり、金再禁止が行われ、軍事予算にポンとカネを出す
インフレ策がとられたことを知っているし、途中でじぶんの引いた
レールが軍需インフレに火をつけたことに気づき、にわかに路線を
修正しようにももう止まらない。けっきょく2.26で皇道派決起軍に
よって高橋是清は命をとられ責任をとったともいえる。高橋財政は
工業製品の価格回復には役に立ったが、工業製品のいわゆる農産品
とのはさみ状価格差(シザーズ)は解消されず、農村恐慌は深まる
ばかり。真に日本経済を強化することにつながらなかった。
英国が日本に先立つこと5年、政治諸党派こぞって国や地方の経費
削減、租税も公債もできるかぎり減らすという方針で金解禁を実行
した。しかしこれは、大幅な平価切り下げをしたうえで金本位に復
帰したフランスとちがって、炭鉱ストなど社会的騒擾を惹起した。
直接的な原因は、ドイツから戦争賠償のカネのかわりに取り上げた
石炭を廉売しなければならず、賃金切り下げをせまられた炭鉱労働
者の怒りであったわけであるけれど、金本位復帰のためのデフレ策
がきほんにあった。

こんにち、金本位のころと事情は違うけれど、市場が国家財政を監
視している。そうしてデフレ策が強制されるか、しかし、市場はイ
ンフレ策も別の仕方で対応することで監視しているとも言える(た
とえば新興国)。社会的騒擾が日常茶飯の時代に入ってきている感
がする。

http://www.cnn.co.jp/business/30004493.html

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from Eiichi Morino
欧州の危機を解決するには、その原因が加盟国間の経常収支の不均
衡にあるのだから、ケインズプランのローカル版でいくしかないと
いうことを話したことがあるのですが、同じようなことを考えてい
る人はいるもの。

Mati?as Vernengo Europaper (2)[1].pdf
https://docs.google.com/viewer?url=http%3A%2F%2Fwww.utexas.edu%2Flbj%2Fsites%2Fdefault%2Ffiles%2Ffile%2Fnews%2FMati%25CC%2581as%2520Vernengo%2520Europaper%2520(2)%255B1%255D.pdf

「ギリシャの有無にかかわらず、われわれには強いユーロが必要だ
」(メルケル)。欧州危機の先は長いなあ。

http://seekingalpha.com/article/304762-france-germany-to-withhold-aid-greece-to-be-ejected?ifp=0&source=email_porfolio

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ECBがイタリア国債買い入れ停止の可能性=ルクセンブルク中銀総裁
2011年 11月 7日 09:24 JS

 [ローマ 5日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)理事会メ
ンバーのメルシュ・ルクセンブルク中銀総裁は、イタリアが確約し
た改革を実行しないと判断した場合、イタリア国債の買い入れ停止
の可能性をECBはしばしば討議していると述べた。

 6日付イタリア紙とのインタビューで同総裁は、「われわれの介
入が政府の努力欠如により阻害される場合、インセンティブ効果の
問題を検討する必要がある」と指摘した。

 これはイタリアが欧州連合(EU)に確約した改革を実施しない
場合にイタリア国債の買い入れを停止するという意味かとの質問に
対して総裁は、「ECB理事会がもはや(過去の)決定に至った状
況にはないと判断した場合、いつでも決定を変更することができる。
これはいつも討議している」と述べた。 

 メルシュ総裁は、ユーロ圏債務危機解決に向けECBが最後の貸
し手となることは望まないとし、「責任を果たさない」政府の存在
によりECBの責務が困難になることを懸念していると指摘。「政
治家の錯誤を救済するのがECBの仕事ではない」と述べた。

 ビーニスマギ専務理事が引き続き職にとどまることには理解を示
し、「任期は8年だ。特定の国の財務省出身だからといってECB
理事になる権利があるとは条約には書いていない」と述べた。
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伊首相退陣求め大規模デモ 連立与党議員が大量離脱へ…過半数割れも
2011.11.7 05:00サンケイBIZ
債務危機対策として国際通貨基金(IMF)に債務削減計画の監視
を要請したイタリアのベルルスコーニ首相への退陣要求が強まって
いる。連立与党から大量の離脱者が出る見通しで、危機を乗り切れ
るかどうかの綱渡りが続く。同国では5日、野党・民主党の呼びか
けに応じ、同党の支持者ら数千人が数百台のバスや特別編成の列車
で全土からローマ入りし、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ
大聖堂の前でベルルスコーニ首相の退陣を求め「恥を知れ」「出て
行け」などと気勢を上げた。

 ベルルスコーニ首相は普段はミラノの自宅で週末を過ごすが、与
党議員が離党を表明し議会の過半数割れの懸念が強まったことを受
け、ローマで顧問らと対応を協議している。5日には「総辞職に関
する噂や観測が高まっているが、われわれには、有権者や国に対し
、危機をめぐる戦いを続ける責任がある」との声明を出した。

 しかし、8日にも下院で採決が行われる2010年度予算の決算
承認に失敗すれば辞任圧力が一段と強まる見通しだ。

 イタリア紙リパブリカは6日、連立与党の議員20人が8日の採
決を前に離脱の準備を進めていると報じた。離脱した議員は採決を
棄権する可能性があり、これはベルルスコーニ首相が下院での過半
数を確保できないことを意味する。

 モニュメント・セキュリティーズの債券アナリスト、マーク・オ
ストワルド氏(ロンドン在勤)は「ギリシャ悲劇がイタリアの悲劇
に転じてユーロ圏に一段と深刻かつ多大な影響をもたらさないよう
にするには、ベルルスコーニ首相が即刻辞任する必要がある。イタ
リアを経済地獄へ突き落とした張本人として歴史に残る可能性があ
る」とも語った。ただ、ベルルスコーニ首相が辞職したり、内閣信
任投票が行われ否決されたとしても、ただちに総選挙が行われると
はかぎらない。ナポリターノ大統領が、ベルルスコーニ首相を含め
た主要政党の代表との間で新政権を樹立できるかについて協議を行
い、場合によっては新政権を運営するため党派を超えた調整を行う
可能性がある。

 ニューエッジ・グループのエコノミスト、アナリサ・ピアッツァ
氏(ロンドン在勤)は「このような形で政権ができれば改革に向け
たプロセスをスピードアップできる。イタリアには、債務問題の悪
循環から脱出できるという信頼を形成することが求められている」
と語った。(ブルームバーグ)
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ギリシャ大統領:与野党が連立政権で合意−パパンドレウ首相辞任へ

  11月6日(ブルームバーグ):ギリシャのパパンドレウ首相と
最大野党・新民主主義党(ND)のサマラス党首は連立政権を樹立
し、同国への国際支援に関連した決定を実行後に選挙を行うことで
合意した。
  同国のパプリアス大統領が記者団に渡した声明によると、パパ
ンドレウ首相は次期政権を率いない。大統領が7日に各政党指導者
による会合を招集。パパンドレウ首相とサマラス党首が7日に次期
首相を決定する。


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