4150.米軍中東撤退後の体制



米国は、中東からも撤退する計画で、準備を進めている。イラクか
らは2011年末までに撤退することが決まっている。このため、
イラクが再度、混乱すると可能性が大きい。このときどうなるか?

スンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派の盟主イランとの間の緊
張の高まりを受けて、今年末に米軍の少なくとも一部撤退が予定さ
れているイラクで、サウジとイランの代理戦争が再発するのではな
いか懸念が広まっている。

米国の撤退後が中東では心配されているが、米国代理人としてのサ
ウジが米国の穴を埋める方向のようである。米国の代理人をイスラ
エルすると、全イスラム教を敵にしてしまうので、不適格である。

そして、サウジアラビアは、中東軍事力では第二位の軍事大国であ
る。1位はイスラエルであるが、相当な軍事力を備えている。

バーレーンの反政府デモの鎮静支援のため、サウジは軍隊を派遣し
たり、スンニ派王政を守る意向が強い。特に騒乱を作るシーア派に
対しては、断固とした対応をしている。サウジは、この紛争をイラ
ンの差し金と見ている。

このため、スンニ派が支配するサウジとシーア派のイランは、イラ
クでそれぞれの宗派を支持してきており、サウジとイランはイラク
で新たな対立を引き起こす可能性が大きい。

これは米国が中東から撤退した後の維持体制を作るには、大きな礎
になっている。このように着々と米国覇権後の親米国中心の世界体
制を構築している様に感じる。

2014年に撤退するアフガンは、タリバンとの平和条約を結ぶと言う
ように、そこからは完全撤退で、親米国を諦めている。親中、また
は親イラン国になる可能性もあるが、米国は完全放棄でしょうね。

そそして、東南アジア版体制ももちろん、米国は撤退後を企画して
いる。その内、台湾は完全放棄であるが、この体制に日本は乗るの
かどうかと米国は、日本に問いかけている。

この問いかけに答えないと、日本なしでアジア版NATOを構築する可
能性もある。

私は、親米国中心の世界体制に乗るべきであると思うが、どうか?

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「中東の軍備大国、イスラエルとサウジアラビア」
2002年8月24日 前田高行 
http://www2.pf-x.net/~informant/saudi/saudiisraeliforces2.htm

近代兵器で重装備するイスラエルとサウジアラビア 

 中東諸国の中ではサウジアラビアとイスラエルが年間国防費では
1位と3位(各187億ドル、95億ドル)を占める。兵員の数では
人口が多いエジプト、イラン、トルコ、イラクなどに比べるべくも
ないが、両国は戦闘機や戦車などの装備の面では軍備大国である。

 まずジェット戦闘機の数を比較するとイスラエルが最多の709
機を保有している。次いでシリア589機、エジプト583機、ト
ルコ440機と続き、サウジアラビアは432機で保有機数として
は第5位である。しかしながら年間国防費の多寡及び過去の米ソと
の関係をあわせて考えると、サウジアラビアとイスラエルが米国製
の最新型戦闘機に次々と更新しているのに対して、他の3カ国が保
有する戦闘機の多くはソ連製或いは旧式の米国製であると推定され
る。戦闘能力の面では前者が大きく上回っていることは間違いない。 

 次に戦車保有台数を見ると少し事情が異なる。ここでは顕在的或
いは潜在的な敵対国と国境を接する国々が多数の戦車を保有してい
る。アラビア半島の付け根一帯は土漠(desert)或いはチグリス・ユ
ーフラテス平野の平坦な地形が多く、戦車のような機動力のある地
上兵器が戦術的に攻撃及び防御の両面において有効である。従って
シリアがこの地域で最も多い4700台を保有していることは肯け
る。シリアに続くのがトルコ4200台、エジプト3900台であ
り、イスラエルは第5位(3800台)である。サウジアラビアの保
有台数は1100台でありヨルダンよりも少ない。これは千キロ以
上に及ぶ北部国境線が全て平坦な土漠であり、戦車による完全な国
境防衛が事実上不可能であると認識しているためであろう。 

 上記の通りイスラエルは空中戦闘能力及び地上戦闘能力のいずれ
においても質量共に近隣諸国を圧倒している。またサウジアラビア
は自衛的な制空権を確保して広大な国土とそこに点在する都市を防
衛することを主眼に今後も財政事情の許す限り最新鋭戦闘機を配備
するものと考えられる。 
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サウジの米軍夏までに撤退 イラク脅威消失で

 【カイロ29日共同】サウジアラビアからの報道によると、ペル
シャ湾岸諸国を歴訪中のラムズフェルド米国防長官は29日、イラ
ク戦争によるフセイン・イラク政権の崩壊を受け、米国の中東戦略
の要だったサウジアラビア駐留米軍部隊約1万人をこの夏までに実
質的に撤退させることでサウジ側と合意したことを明らかにした。

 米政府は、世界最大の産油国であるサウジとの同盟関係は維持す
るとみられるが、1990年の湾岸危機以来続いてきた米駐留部隊
の撤退により米国にとってのサウジアラビアの重要性が早晩、薄ま
ることは避けられず、米軍の再編により中東地域の戦略地図の塗り
替えが一挙に進みそうだ。

 米軍はイラクのクウェート侵攻をきっかけにサウジ駐留を開始。
同国のプリンス・スルタン空軍基地は、90年代を通じ、「フセイ
ン・イラク政権の脅威から湾岸諸国を防衛する」という米国の中東
戦略の象徴だった。

2003/04/29 15:19   【共同通信】
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2011年までにイラク駐留米軍撤退完了へ、米国との交渉で合意
2008年08月23日 09:49 

【8月23日 AFP】イラク駐留米軍の地位協定について米国と交渉を続
けていたイラク側の交渉責任者が22日、両国政府は合意に達したと
AFPに明らかにした。合意では2011年までにイラクに駐留する米軍の
撤退を完了させることになっているといい、実現すれば8年におよん
だ米軍のイラク占領が終わることになる。
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1000人超のサウジ軍部隊、バーレーンに入国
2011年 3月 15日  6:48 JST 
WSJ
【マナマ(バーレーン)】サウジアラビアをはじめとするペルシャ
湾岸のアラブ諸国はバーレーンの反政府デモの鎮静支援のため、軍
隊を派遣した。昨年12月のチュニジアでの政情不安がアラブ諸国に
飛び火して以来、アラブ諸国の国境を越えた軍隊派遣は初めて。 

  湾岸協力会議(GCC)のペルシャ湾岸6カ国による広範な支援
の一環として、1000人を超えるサウジ軍部隊が14日、バーレーンに
入国した。同国を支配するアール・ハリーファ王族に対する脅威が
一段と高まっていることに対する強まる警戒の表れとみられる。軍
隊の最終的な規模は明らかになっていないが、アラブ首長国連邦
(UAE)も軍隊を派遣していることを明らかにした。 

 サウジの当局者一人によると、軍隊の派遣はバーレーンの石油と
発電施設など主要施設の保護が目的だという。ただ、バーレーンの
どの地域の護衛に当たっているかといった詳細は公表されていない。 

 バーレーンの国営テレビ局は、サウジアラビアのタンカーや装甲
車の映像を放映するとともに、バーレーンの安全保障を揺るがし、
罪のない市民や住民を恐怖に陥れている「バーレーン王国の悲惨な
状況のために」、軍隊が到着したと報じた。 

 一方、イスラム教・スンニ派の王族に対し、ほとんどがシーア派
の同国のデモ隊側は、国連の潘基文事務総長と国連安全保障理事会
常任理事国に対して抗議の書簡を送付すると明らかにした。 
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サウジとイランがイラクで代理戦争か―米軍撤退後に
2011年 10月 18日 8:15 JST
WSJ
 サウジアラビアとイランとの間の緊張の高まりを受けて、今年末
に米軍の少なくとも一部撤退が予定されているイラクで、サウジと
イランの代理戦争が再発するのではないかとの懸念が強まっている。

 アラブの春の思わぬ影響の一つが、中東におけるサウジの支援国
とイラン支援国との間の力の均衡が崩れたことだ。サウジはイラン
がバーレーンやイエメンで政情不安をあおっていると非難する一方
、イランは反政府抗議行動を弾圧しているシリアを支援し、中東地
域の民衆のイラン支持の低下に見舞われている。

 スンニ派が支配するサウジとシーア派のイランは、イラクでそれ
ぞれの宗派を支持してきており、サウジとイランはイラクで新たな
対立を引き起こす可能性が大きい。

 米政府が先週、イランが駐米サウジアラビア大使の暗殺を企てて
いたと明らかにしたことは、アラブ世界を震撼させた。スンニ派の
アラブ諸国は、イランがイラクやレバノン、シリアなどで影響力を
強めていると懸念を抱いている。イランは米政府の発表について、
イランとサウジの緊張を呼び起こすためのでっち上げだと否定して
いる。

 サウジは近年、イランによるシリアやレバノンに対する影響力の
拡大を阻止しようと努めてきているが、成果をあげていない。サウ
ジはイラクについては、シーア派主導の政権ではあるものの、米軍
の大規模駐留がイランの影響力浸透の防波堤になっているとみてき
た。

 サウジは、イラクでシーア派とスンニ派との宗派紛争が最高潮と
なった2006、07年にはイランが歴史的にはサウジの裏庭であるイラ
クに影響力を強めようとしているとみて、イラクのスンニ派武装勢
力に対し積極的に資金援助を行った過去がある。

 アラブの当局者は、イランからイラクのシーア派への支援のパイ
プラインは強化されている一方、サウジによるイラクのスンニ派へ
の支援網も簡単に復活するものだと指摘する。あるアラブの外交官
は、「米軍が撤退すれば、イラクがサウジとイランの新たな競技場
になる可能性がある」と述べる。

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