4144.ミャンマーの決断、中国離れ



ミャンマーの動きが注目される。ミャンマーは「民主化」への方向
を示すと、ASEANやインド、日本は積極的に援助して、反中陣営に引
き込み、中国のインド洋への出口を封じることができる。
                     Fより

ミャンマーは本来、中立的な立場による等距離外交を基本方針とし
ているが、1983年10月にはラングーン事件を起こした北朝鮮と国交
を断絶した(2006年10月国交回復)他、1997年7月には東南アジア諸
国連合(ASEAN)に加盟している。

また、欧米諸国とは、ビルマ国内の人権問題や政治の民主化をめぐ
る問題で対立しており、アメリカやEUからは経済制裁を受けている。

その一方で、インド洋方面への進出口を求めている中国からは多額
の援助を受けている他、インドとは経済的な結びつきを強化してい
るなど、近隣の大国とは比較的良好な関係を築いていた。

ASEAN加盟後のタイ政府やマレーシア政府の取り組み性は、ミャンマ
ーを地域政治の枠組みに入れた上で、民主化を促す点にある。ミャ
ンマーへの「建設的関与」策が成功すればASEANの国際的地位を飛躍
的に高めるはずだったが、ミャンマー軍政は自らの支配を危うくす
るあらゆる改革に反対する姿勢を貫き、この舞台に乗ることは決し
てなかった。

アウンサンスーチー襲撃事件と同氏の自宅軟禁の継続、キンニュン
元首相の更迭劇、首都移転、ASEAN側が派遣した特使への丁重とはい
えない処遇といった一連の政治的動きは、ASEANの「建設的関与」策
が完全に破綻したことを示していた。

2007年、アメリカとイギリスは軍事政権にアウンサンスーチーを始
めとする全ての政治犯の即時釈放を求める非難決議を提出し、1月12
日国際連合安全保障理事会で採決した。しかし、中国とロシアが拒
否権を発動し、否決された。ASEAN諸国では、軍事政権への非難には
慎重論が強かった。

対外的な軍事同盟締結を拒否し、原則的に外国に対して軍事基地を
提供していなかったが、中国には、ミャンマーへの援助に代わりに
1994年6月から大ココ島を賃借しており、中国はレーダー基地と軍港
を建設している。インド洋への出口を手に入れた。そして、南シナ
海をショートカットするべく、ミャンマーのチャウピー港から中国
の昆明までのパイプラインを建設中である。

しかし、分離独立を目指す少数民族の反乱が多発している。中国は
この反乱軍であるワ州連合軍などのミャンマー・中国国境に展開す
る反政府勢力への支援も継続しているという。中国の二枚舌も凄い
が、ミャンマーも中国の共産主義を認めていない。

ミャンマーは、反共的で今でも昔の王家がいて、その王家の領地が
非常に大きいし、軍政時代でも敬意を持って接されている。共産主
義と違う国家であった。

このミャンマーが、とうとう中国離れを始めたようである。ASE
AN諸国で、この頃の中国の強気には、その対応策をとる必要を強
く意識されていた。そして、とうとうミャンマーをASEAN諸国
が説得したようである。

このことが強く出たのが、ミャンマーのテインセイン大統領が北部
カチン州の水力発電用巨大ダムの建設を中断する方針を示したこと
である。このダムは、発電全量が中国への輸出である。工事費の全
額が中国の援助である。しかし、ダム建設に関し、環境破壊を懸念
する世論が強いことで、中止した格好にしている。
これに対して、中国習副主席は、建設中断方針の見直しを迫った。

それから、数日後にはミャンマー各地の刑務所では12日から政治
囚を含む6359人の受刑者が次々に釈放されていた。しかし、こ
のうち政治犯は最終的に300人内にとどまるとみられる。ミャン
マーのワナ・マウン・ルウィン外相は9月29日には米ワシントン
を訪問し、国務省高官と会談し、国際社会が3月に発足した新政権
下での民主化進展を見極めると言われている。その民主化の第一弾
目であるようだ。

この釈放と同時に、ミャンマーのテイン・セイン大統領は14日、
ニューデリーでインドのシン首相と会談し、ミャンマーとの国境付
近で活動するインドの反政府武装勢力の取り締まりや、ミャンマー
の天然ガス田開発など資源分野での協力を推進することで一致した。

ミャンマーは、インドに接近することで、中国をけん制する狙いも
ある。これで親中国のASEAN国家の1国がインドへ寝返った感
じである。中印対決を利用して、ASEAN諸国は生き残ろうとし
ているようだ。

そして、ミャンマー(ビルマ)のワナ・マウン・ルウィン外相が、
日本外務省の招請に応じて10月下旬に来日する。二国間会談を目
的とした首脳や外相の公式訪問は1995年以来16年ぶり。一部
を除き中断していた政府の途上国援助(ODA)の再開を表明する
という。

完全に中国離れをさせて、中国封じ込めを完成させるようであるが、
これには、経済カードを中国は切ってきた。日系企業に社会保険料
を来月から徴収すると、急遽決定した。

中国との戦争を意識した途端、中国に企業は出てはいけないし、進
出している日本企業は、なるべく早く撤退することである。1年で
540億円の負担が大きいぞ。

さ、どうなりますか?
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社会保険料、来月から徴収=従業員収入の4割、進出企業に打撃
            ―中国
2011年10月14日23時6分

 【北京時事】中国政府はこのほど、新たに施行された社会保険法
に基づき、11月から就業外国人を対象に保険料の徴収を開始する
方針を決定した。日本企業の駐在員も対象で、保険料率は従業員が
中国内で得た収入の約4割。中国進出企業の負担が一気に増える。
日本政府関係者が14日、明らかにした。

 外国人も中国の社会保障サービスが受けられるようになる一方、
保険料を日中両国で支払う義務が生じるため、日本政府は二重払い
回避に向け、中国政府と社会保障協定の締結交渉を開始した。今後
は2〜3カ月に1度のペースで交渉を続け、1〜2年後の合意を目
指す。 

[時事通信社]
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対ミャンマーODA再開表明へ 21日に外相会談
2011年10月15日3時1分

 玄葉光一郎外相は14日、ミャンマーのワナ・マウン・ルウィン
外相と21日に東京都内で会談することを明らかにした。二国間会
談を目的とした首脳や外相の公式訪問は1995年以来16年ぶり。
玄葉氏は会談で一部を除き中断していた政府の途上国援助(ODA
)の再開を表明する方針。

 ミャンマー政府は12日から政治犯を含む受刑者の恩赦を始めた
が、国際社会の評価は定まっていない。とはいえ外務省は14日、
「民主化と国民和解に向けた具体的前進として評価する」との大臣
談話を発表。「ミャンマーの改革を後押しすることが大事だ」(幹
部)として、要人の往来を再開させて関係強化の姿勢を鮮明にする。

 21日の外相会談では、人的交流、ODA、経済関係、文化交流
の4分野について協力強化を打ち出す。ODAについては、03年
の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんの拘束で中断し
ていたバルーチャン第2水力発電所の補修計画や、07年の反政府
デモ弾圧で中断した人材育成開発センターの建設の再開を表明。今
年度中に現地調査などに入る見通しだ。
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ミャンマー外相訪日へ 16年ぶり公式訪問
2011年10月14日14時19分

 ミャンマー(ビルマ)のワナ・マウン・ルウィン外相が、日本外
務省の招請に応じて10月下旬に来日することがわかった。21日
に玄葉光一郎外相と会談する。国際会議を除き、2国間会談を目的
としたミャンマーの首脳や外相による公式訪問は、1995年以来
16年ぶりとなる。

 外相会談では、ミャンマー側に民主化の進展を求めたうえで、人
的交流、政府の途上国援助(ODA)、経済関係、文化交流の4分
野について協議し、協力強化を打ち出す。

 ワナ・マウン・ルウィン外相は先月29日には米ワシントンを訪
問し、国務省高官と会談した。国際社会が3月に発足した新政権下
での民主化進展を見極めるなか、日本政府は外相会談を日本で開き
、関係強化の姿勢を鮮明にする。
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釈放は政治犯の1割強、有力者含まれず ミャンマー
2011年10月14日21時30分

 ミャンマー(ビルマ)新政府が12日以降の恩赦実施を発表した
6359人の受刑者は、政府関係者によると、大半が14日までに
釈放された模様だ。タイに拠点を置くビルマ政治犯支援協会の推計
によると、このうち政治犯は最終的に300人内にとどまるとみら
れる。著名な指導者はほとんど含まれていない。釈放が急進的な反
政府活動につながることを警戒している可能性がある。

 支援協会が恩赦前に政治犯の家族らに連絡をとって集計したとこ
ろ、収監中は1245人で収監されている可能性があるのは654
人だった。協会は13日夜までに220人の政治犯釈放を確認して
おり、収監中かその可能性がある人たちの1割強にとどまっている。

 人気コメディアンのザガナル氏ら数人を除き、民主化勢力や少数
民族の著名な政治犯はほとんど釈放されなかった。1988年の反
政府デモで中核となった「88世代学生グループ」の指導者ミン・
コー・ナイン氏もその1人。89年に逮捕され2004年に恩赦で
釈放されたが、07年の反政府デモに参加して再逮捕され懲役65
年の刑を受けた。
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軍事や資源協力で一致 印ミャンマー首脳会談、中国牽制も
2011.10.14 19:18サンケイ

 インドのシン首相は14日、ニューデリーでミャンマーのテイン
・セイン大統領と会談し、ミャンマーとの国境付近で活動するイン
ドの反政府武装勢力の取り締まりや、ミャンマーの天然ガス田開発
など資源分野での協力を推進することで一致した。

 ことし3月のミャンマー新政権発足後、テイン・セイン大統領の
インド訪問は初めて。政治や経済面で中国との関係が深いミャンマ
ーだが、中国がミャンマー国内で進める水力発電用巨大ダムの建設
問題などで最近は中国と対立。ミャンマー側には、もう一つの隣国
であるインドに接近することで、中国をけん制する狙いもある。

 会談後に発表された共同声明は、ミャンマーとの国境付近で活動
するインドの反政府勢力への対策強化を協議したと指摘。インド紙
によると、反政府勢力掃討を想定した合同軍事演習の実施について
インド側が会談で取り上げた可能性がある。(共同)
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<ミャンマー>政治囚を釈放 政府批判のコメディアンも
毎日新聞 10月12日(水)12時20分配信

 【バンコク西尾英之】ミャンマー当局は12日朝までに、政治囚
として服役中だったミャンマーの人気コメディアン、ザガナル氏を
釈放した。ザガナル氏の関係者が毎日新聞に明らかにした。11日
発表された6359人の受刑者への恩赦の一環。08年のサイクロ
ン「ナルギス」救援活動を行った際に政府批判をしたとして、禁錮
35年の刑を受けていた。

 今回の恩赦で著名な政治囚の釈放が確認されたのは初めて。各地
の刑務所では12日から政治囚を含む受刑者が次々に釈放される見
通しで、最大都市ヤンゴン郊外のインセイン刑務所前には朝から、
受刑者の家族数百人が訪れ釈放を待っている。

 恩赦対象者のリストは公表されておらず、何人の政治囚が釈放さ
れるかは不明。タイに拠点を置く民主化勢力系誌「イラワディ」は
11日、複数の著名な民主活動家を含む約600人の政治囚が釈放
されるとの、政治囚の家族による見通しを伝えた。一方、匿名の政
府当局者は同誌に「釈放される政治囚は1000人以下」と語った。

 政治囚はこれまで2000人以上とされてきたが、最大民主化勢
力「国民民主連盟」は再集計作業の結果「現時点で確認できるのは
600人以上」と人数を下方修正した。
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習中国副主席、ミャンマー外相と会談 ダム建設中断で
2011.10.10 21:01 [中国]サンケイ

 ミャンマーのワナ・マウン・ルウィン外相が10日、大統領特使
として中国・北京を訪問、習近平国家副主席らと会談し、中国の国
有企業などがミャンマー国内で進める水力発電用巨大ダムの建設中
断問題などについて協議した。

 中国外務省によると、習氏は「友好的な協議を通じて適切な解決
方法を探し求めていくことを希望している」と述べ、遠回しに建設
中断方針の見直しを迫った。

 一方、外相は「テイン・セイン大統領とミャンマー政府は両国の
友好協力関係をとても重要視している」などと応じた。

 ダム建設中断を表明したテイン・セイン大統領と一線を画す「守
旧派」のティハ・トゥラ・ティン・アウン・ミン・ウー副大統領が
近く中国を訪問する予定で、外相の訪中は、その「調整」の意味合
いが強いとみられる。(共同)
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ミャンマー:ダム建設中断、中国企業反発 「環境負荷小さい」

 【北京・共同】ミャンマーのテインセイン大統領が北部カチン州
の水力発電用巨大ダムの建設を中断する方針を示したことについて
、ミャンマー側と合同でダム建設を進める中国の国有企業「中国電
力投資集団」の陸啓洲社長は「ミャンマー側の突然の中断は理解で
きない」と反発した。国営通信の新華社が報じた。

 インタビューで陸社長は、ミャンマー側は税収や無償電力供給な
どで540億ドル(約4兆1300億円)の直接的利益を得るほか
、施設や道路の建設などで4万人以上雇用が拡大すると強調。「計
画通りに建設が進み、中国とミャンマーの互恵が実現することを希
望する」と訴えた。

 ダム建設に関し、環境破壊を懸念する世論が強いことには「環境
への影響は比較的小さいという結論だった」と環境アセスメントの
結果を基に反論。環境保護団体に対して「国民生活を改善する経済
プロジェクトを妨害している」と非難し、不快感をあらわにした。

 問題のダムは2009年に建設が始まった「ミッソンダム」。36
億ドルを投資してミャンマー企業と合同で建設。完成後も中国企業
が50年間にわたって運用し、発電量の9割を中国に送電する。

毎日新聞 2011年10月9日 東京朝刊



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