4129.白川総裁の理論と復興予算



バブル崩壊後の景気後退の理論が、2つある。1つが白川日銀総裁
が主張する債務過剰で消費者が消費にカネが回らないために不景気
になるという理論であり、このことを欧米でリーマンショック後に
何遍も講演している。

しかし、バーナンキFRB議長は、バブル崩壊後のデフレが問題で、
これを日本のように放置したら、「失われた20年」になるという
理論である。デフレになるのは、通貨流通量の不足からなるので、
その対処処置は金融緩和で、大量の通貨を市場に供給することが重
要であるとして、QE1、QE2を行い、世界的なバブル景気を起
こそうとした。これは起こせた。

しかし、その結果は米国の失業率が高止まりで、景気が上向いた印
象が無いのに、インフレになっていく。ここで、バーナンキ議長の
理論が間違いであったことに気づくことになる。このため、バーナ
ンキ議長もオペレーション・ツイストという余り効果が期待できな
い政策しかなくなっている。

しかし、このような間違った金融政策をバーナンキ議長の米国など
相手国が取った時に、その金融政策が間違っているという指摘は必
要であるが、しかし、それに対応する正しい金融政策を日本はとら
ないと、日本だけ円高になり、日本企業は日本に居られなくなり、
海外に逃げ出すことになる。

生活保護件数が200万人となり、派遣社員が300万人も切られ
るということになる。

しかし、これも後少しの辛抱だ。復興予算の規模は、12兆円とい
うが、今までの景気対策での予算積み上げの数倍以上の規模があり
、通貨流通量の大幅な増加になり、円高を止める効果が期待できる
し、景気回復効果もあるし、次世代産業の育成にもなる。1石3鳥
になっている。

この実施時期をなるべく早くして日本の復興を早くする必要にある
のに、自民党はこの予算の議論を妨害すると言う。これはあっては
ならないことである。自民党への支持率は大きく落ちるぞ!!

==============================
キーパーソンは白川日銀総裁 米紙が「指導者」8人掲載
2011年9月25日23時34分

 新たな危機を避けるためのキーパーソンは、日本銀行の白川方明
(まさあき)総裁――。24日付の米有力紙ワシントン・ポストは
「経済危機を避けようと努力をする世界の指導者」として、白川氏
ら8人を紹介した。

 ほかは米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長、欧州
中央銀行(ECB)のトリシェ総裁、ガイトナー米財務長官、国際
通貨基金(IMF)のラガルド専務理事ら。

 記事では、白川氏について「世界3位の経済大国から一貫した経
済政策を発信している」と評価。急激な円高に対応するため、為替
介入の調整で中心となり支えたと紹介した。白川氏が2008年か
ら総裁を続けていることにも触れ、「5年間で7人の首相と9人の
財務相が交代した国では異例の長さ」と説明している。
(ワシントン=寺西和男)
==============================
円高の底流にみえる日銀総裁とFRB議長の確執 9月19日 
田村秀男
http://tamurah.iza.ne.jp/blog/

未曽有の金融危機「リーマン・ショック」から3年が過ぎた今、外
国為替市場は超円高局面に突入している。その底流には、ともに学
究肌の白川方明(まさあき)日銀総裁(61)と米連邦準備制度理
事会(FRB)のベン・バーナンキ議長(57)の間で垣間見える
確執のドラマがある。金融政策をめぐる両氏の対照的なスタンスを
検証した。(編集委員 田村秀男)

 世の中、おカネが回れば景気がよくなる。銀行がカネを貸さなく
なると、モノの値段が下がり続けるデフレ不況になる。ならば、中
央銀行が思い切ってカネを刷り、金融機関に流し込めばよい−。

 これが、バーナンキ氏の基本的な考え方だ。同氏は、FRBによ
るおカネの供給量が足りなかったことが1930年代の大恐慌の原
因だとする経済学者、故ミルトン・フリードマン教授の学説の信奉
者だ。

 バーナンキ氏はFRB理事になった2002年、フリードマン氏
の90歳の誕生パーティーで「FRBは二度と同じあやまちは繰り
返しません」と誓った。さらに「デフレ克服のためにはヘリコプタ
ーからお札をばらまけばよい」とまで言い切り、市場から「ヘリコ
プター・ベン」とあだ名されるようになった。

 対する白川氏はお札を刷っても景気や物価の刺激効果は乏しいと
みる。効き目があるのは、不良債権問題などで金融不安が生じてい
るときだとしている。

 白川氏は東大経済学部卒業後に日銀に入行。留学先はフリードマ
ン氏を始祖とするシカゴ学派の本拠、シカゴ大学大学院だ。担当教
授から大学に残るよう懇請されたほどの秀才だが、日銀に戻る道を
選び、「シカゴ」とは決別した。

以来、「趣味は金融政策だ」と伝えられるほど日銀独自の理論に固
執する。東大時代の恩師であるエール大学の浜田宏一教授に「日銀
流理論は世界的には非常識」と批判されても、「最新の理論を教え
てあげましょうか」と言い返すほどの自信家である。バーナンキ氏
には「違和感を覚える」と周囲に漏らす。

 バーナンキ氏にとって十数年もデフレが続く日本は格好の教材だ
った。プリンストン大教授時代(1985〜2002年)から日銀
の政策がいかに間違ってきたかを研究。FRB入りした02年には
「デフレを米国で起こさせないために」、翌年には「日本の金融政
策に関する若干の考察」との表題で講演した。

 趣旨は、思い切った規模での量的緩和政策(継続的なお札の増刷
)による脱デフレだが、その内容は、02年に理事に就任した白川
氏ら日銀幹部を驚愕(きょうがく)させるのに十分な激しさだった。

 バーナンキ氏は、01年3月に量的緩和を導入した日銀の金融政
策を中途半端だと一蹴、物価がデフレ前の水準に戻るまでお札を刷
り続けるべきだと迫った。さらに日銀が国債を大量に買い上げ、減
税財源を引き受けるべきだと訴えた。「長期国債の買い切り、ある
いは引き受けはごめんこうむりたいというセントラルバンカーとし
ての宗教」(当時の速水優総裁)の路線の全面的な否定だ。

 日銀はガードを固めた。長期国債保有額を日銀券発行額の限度内
に収めるという内規「日銀券ルール」を徹底。06年3月に4カ月
連続で物価の上昇率が0%台になると、すかさず量的緩和政策を解
除した。

 ただ、その後、デフレの方はバーナンキ氏の指摘通り、今も解消
していない

徹底した量的緩和を通じた脱デフレの“大実験”を日銀に迫ってい
たバーナンキ氏がFRB議長に就任したのは06年2月だった。や
がて自身の手で持論を実行するときが訪れる。08年9月のリーマ
ン・ショックである。

 世界経済が大混乱に陥る中、FRBは09年3月から1年間、紙
くずになりかけた住宅ローン担保証券などを1・75兆ドル買い入
れる量的緩和第1弾を実施。10年11月から今年6月には米国債
を8千億ドル買い上げる量的緩和第2弾を行った。

 FRBの資産はリーマン前から3倍に膨張、バーナンキ氏のもく
ろみ通り、米国はデフレに陥らずに済んだ。だが、ドルは金融機関
を経由して株式、さらに原油や穀物、金市場に流れ出て、世界的に
物価を押し上げた。一方で景気はそれほど改善しない。この点ばか
りは、今のところ白川氏の主張に分がありそうだ。

 白川氏は、米国流の量的緩和以外に解を探そうと模索してきた。
リーマン危機が起きても米欧にただちに同調せず、利下げは遅れ、
資金供給も小規模だった。ようやく昨年10月、脱デフレのための
包括緩和策を打ち出し、「実質的にゼロ金利政策を採用しているこ
とを明確化した」と回りくどく宣言した。

 実質金利とはインフレ分を加味した金利だ。デフレ下の日本の場
合は名目の金利よりデフレの分だけ上乗せされて高くなる。米国は
量的緩和の結果、インフレ率は3%台だ。短期市場金利は日本とほ
とんど変わらないので、米国の実質金利はこの数カ月間、実にマイ
ナス3・5%前後で推移しており、日本は米国を4%前後も上回る。

他通貨と比べて実質金利が高いということは、その国の通貨による
預金や国債などの金融資産の価値が高いことを意味する。だから国
内外の投資家はドルを売って円を買う。超円高はこうして起きてい
る。FRBが今月、量的緩和第3弾に踏み切れば、さらに超「超円
高」へと向かう。デフレ下の増税が重なり、企業は国内を見切る。
雇用機会もなくなる。

 学術的に白川、バーナンキ両氏のどちらが正しいかは不明だが、
少なくともお札を大量に刷ればデフレ病にかからないという事実は
明らかだ。デフレから抜け出ることが確実になるまで大規模な量的
緩和に打って出る。物価を年2〜3%程度まで上げると宣言して市
場に実質金利低下の決意を示し、円高是正を促すことこそが日銀総
裁の義務ではないか。


コラム目次に戻る
トップページに戻る