4124.少数の金持ちに依存する経済は弱い



ロバート・ライシュが、私の考えと同じようなことを言い始めている。
オバマ政権も「バフェット・ルール」という富裕層増税法案を議会
に提出している。

GDPに占める消費が日本は60%、米国70%と消費者の購買力
が景気に大きな影響を与えている。この消費は、中産階級が多いと
多くなり、貧乏人と富裕層に割れると消費は少なくなる。

このため、国の政策も結果の平等もある程度は図ることが重要であ
ることがわかる。消費税は、生活必需品への無税化などをしない日
本流消費税では、逆累進制度になっている。

貧乏人の消費を抑えているし、富裕層はあまり税金を納めないこと
になる。それを推進するように、所得税を減税して、消費税を増税
することを自民党政権時代で行ってきた。これには小泉政権でも大
反対した。

日本は仏教的な風土であり、富裕層に弱者への施しという心情的な
風土がない。平等を実現するには、国家の力が必要になる。高額所
得者へ重税を課すと、会社は給与を下げて、交際費などを増やすこ
とになる。こうすると、銀座などの高級クラブに金が行き、そこの
食品などは高級食材であり、その消費を促すことになる。

このように、消費が拡散することになる。どうせ、高額所得者へ給
与で出しても、そのほとんどは預金になるだけで、消費には向かな
い。それを国が吸収しているのが現在である。

このため、所得税を増やし、消費税は生活必需品に対して0%にし
て、それ以外に15%するような手段が必要になる。または、物品
税を導入して、消費税は5%のままで、高級品に物品税を掛けるな
どが必要になる。

1990年と現在の名目GDPは、ほとんど一緒なのに、所得税は
25兆円もあったのが、今は13兆円程度になっている。10兆円
以上少なくなっている。


2158.日本の理想的な国とは
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k7/171030.htm
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米政府、「バフェット増税」案を発表へ 
ウォール・ストリート・ジャーナル 9月18日(日)11時58分配信

 【ワシントン】米政府は19日、財政赤字削減策の一環として、富
裕層への増税案を発表する。事情に詳しい関係筋が明らかにした。

 この構想は、富裕層増税を求めてきた米著名投資家ウォーレン・
バフェット氏にちなんで、ホワイトハウス内で「バフェット・ルー
ル」と呼ばれている。バフェット氏は、高額所得者への増税を持論
とし、先月も米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿でその必要性を
主張している。

 富裕層向けの所得区分を新設するか否かなど、増税案の詳細は明
らかではないが、大まかなルールとして、年収100万ドル以上の層の
税率が年収25万ドル未満の層を下回るケースを是正することが目標
となる見通し。現状では、投資所得に対する税率が一般の所得税率
を下回っているため、そうしたケースが発生することが多い。

 ただ、富裕層増税は民主党がこれまでにも主張してきた考えだが
、共和党は財政赤字削減策としての増税に反対しており、実現まで
は紆余曲折が予想される。 
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少数の金持ちに依存する経済は弱い 
ニューヨークタイムズ 
2011年09月20日(火)
「没落した中流階級の再生なしにアメリカ経済は復活しない」少数
の金持ちに依存する経済は弱い
ロバート・ライシュ/カリフォルニア大バークレー校教授

翻訳:松村保孝(ジャーナリスト)

 最上位5%に属する高所得層アメリカ人の消費は、いまや全体の37%
の割合を占める、というのがムーディーズ・アナリティックスによる
最近の調査結果だ。驚くには当たらない。アメリカ社会はますます
不平等を広げたのだ。

 それほど多くの所得がトップにわたる一方で、中流階級がもっと
借金漬けにならなくとも経済を回していけるだけ十分な購買力をも
ちあわせていないとする。その結果は、すでに経験したように、ひ
どいことになる。

 少数者の消費に大きく依存する経済は、にわか景気と不況の交替
を引き起こしがちでもある。金持ちは貯蓄が好調だと派手に消費し
投資もするが、資産価値が急落すると引っ込む。これが時に大荒れ
の乱高下をみちびく。この点はすでに誰にも耳慣れた話だ。

 アメリカの不平等に向けたこの大きなうねりが逆転するまでは、
経済がほんとうに立ち直ることはない。たとえばなにか奇跡が起こ
って、ベン・バーナンキ議長のFRB(連邦準備制度理事会)が金利をほ
ぼゼロに保ったままで、オバマ大統領の第二次刺激策が(議会で)支
持されることになったとしても、中流階級が消費できる態勢になけ
れば、いずれもうまくはいかない。呼び水がうまく働くのは、そも
そも井戸に十分、水があるときだけなのだ。
この100年間、大金持ちが儲けた直後に景気後退が起きている

 この100年を振りかえってみれば、あるパターンが見えてくる。
1947年から1977年にいたる偉大なアメリカの繁栄期のように、大金
持ちが全体の収益中のより少ない部分を家に持ち帰っていたときに
は、アメリカ全体は急速に成長し、賃金の中央値が急騰した。好循
環が生まれたのだ。かつてなく成長した中流階級は、より多くの商
品とサービスを消費する能力があるので、さらに多くのいい職(ジョ
ブス)を生みだし、その結果、需要がかきたてられる。上げ潮は事実
すべての船を押し上げたのである。

 1918年から1933年までの期間のように、あるいは1981年から現在
までの大後退の時期のように、大金持ちが収益のより大きな部分を
家に持ち帰った時には成長は鈍化し、賃金中央値は沈滞し、われわ
れは巨大な景気後退に苦しむことになる。

 この100年間で、国の総所得中からのトップ所得者たちの取り分が
最大になったのは1928年と2007年であり、この二つの年はいずれも
史上有数の大規模景気下降の直前に当たっていた。これは単なる偶
然の一致などではけっしてない。

 1970年代後半からアメリカの中流階級は弱りはじめた。生産性は
上がり経済は拡大しつづけたが賃金は1970年代に入ると横ばいとな
った。コンテナ船やサテライト通信、ついにはコンピューターとイ
ンターネットといった新技術が、オートメ化を可能にし、海外でも
っと(コストを)安くあげて、アメリカ人の職を削りとったせいだ。

 同じ技術は、経営革新や問題解決にその技術を使う人々には、か
つてない多額の報酬を与えることとなった。中のある者は製品起業
家であり、人気がウナギ登りだったのは金融商品の起業家であった。
一流大学やMBA課程の卒業生は、タレントとして重役室やウォールス
トリートで権力の頂点を極め、その報酬は急騰した。

 金持ちへの税金を多くし、貧しいアメリカ人への課税を下げるこ
ともできたであろう。

 しかし、1970年代末から始まり、その後30年間というもの、ます
ます熱心に政府がやったことはそれと全く反対のことであった。規
制を撤廃し民営化した。対国家経済比でのインフラ出費をカットし
、公的高等教育のコストを家族に転嫁した。セーフティネットはず
たずたにされた。(失業者のたった27%にだけ失業保険が適用される
)そして企業には組合破りを許し、組合を組織しようとする従業員は
脅迫される。労働組合に加入している民間部門の労働者は今、8%以
下である。

 ドイツではトップ1%のドイツの家計は、国民総所得の11%を家に持
ち帰ったに過ぎない。これは1970年とほぼ変わらない数字である。
この数ヵ月間、ドイツは近隣諸国の債務危機に見舞われてはいるが
、その失業率は金融危機が2007年に始まる前の水準をいまだに下ま
わっている。

 ドイツはそれをどう達成したのか? それは主に、レーザー装置で
狙うように教育に焦点を定め(ドイツ人学生の数学の点数はアメリカ
人をリードし続けている)、強い労働組合を維持することによってで
ある。

「上げ潮」から「引き潮」の時代へと変化する

 アメリカの大きな退歩の本当の理由は政治的なものだ。収入と富
がより少数の者に集中し、マリナー・エクルズ(FRB元議長)が1920年
代に「巨大な経済力を持つ(中流の)人々が、経済ゲームのルール作
りに過小な影響力しか持たないとき」起こる、と述べた状況に逆戻
りしたのである。

 多分、アメリカの中流階級の巨大な購買力を復興する戦略なしに
アメリカ経済は現在の沈滞から抜け出せない。上位5%の大富豪たち
だけの消費では、雇用機会を増やし生活水準を上げる好循環をもた
らすことはできない。そのギャップを埋めるために輸出に頼ること
もできない。アメリカを含めた経済大国が、(輸入額より輸出額が多
い)純輸出国になることは不可能なことである。

 中流階級の復興のためには、何十年にもわたった格差拡大の傾向
をわれわれが逆転させる必要がある。経営幹部階層がもつ政治的パ
ワーにもかかわらず、これは可能である。非常に多くの人々が職を
失い、収入を下落させ、住宅価値の減退に遭遇している今、アメリ
カ人は結集することができる。

 さらに経済は(あるプレーヤーの利益が増せば、その分だけ他の
プレーヤーの損失が増える)ゼロサム・ゲームではない。経営幹部階
層であっても、これまでのトレンドを逆転させることが自己利益で
あると十分に理解している。

 その夢はいまだにわれわれの手の届く範囲にある。

ロバート・ライシュ
1946年、ペンシルバニア州に生まれる。ハーバード大学教授、ブラ
ンダイス大学教授などを経て、クリントン政権で労働長官を務める。
『アメリカン・プロスペクト』の共同創立者兼編集者。2003年に経済
・社会思想における先駆的業績によりバーツラフ・ハベル財団賞受賞。
2008年5月『ウォールストリート・ジャーナル』紙で「最も影響力の
ある経営思想家20人」の1人に選ばれる。邦訳書多数


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