1ユーロ=104円90銭付近まで上昇している。ユーロ圏の混乱 が拡大して、最終的な解決に向うしかない状態である。 ギリシャ国債は、指標となる10年物国債の利回りが9日の欧州市 場で21%台に上昇(価格は下落)。ギリシャが債務不履行(デフ ォルト)に陥れば、巨額のギリシャ国債を保有する欧州の金融機関 にとって資本増強は不可欠。国際通貨基金(IMF)のラガルド専 務理事は「資本注入が必要」と訴え続けている。 このような状態で、ドイツのレスラー副首相兼経済技術相は、とう とうギリシャの秩序ある破綻をタブー視すべきではないとの見解を 示し、ドイツ財政省はギリシャが債務不履行(デフォルト)した場 合の準備を進めいるとした。 フランス・マルセイユで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁 会議(G7)では、ギリシャ支援や金融機関への資本注入などで有 効な対策は打ち出せなかった。 危機長期化の最大の理由は、肝心の欧州が、ユーロ共通債の発行な ど抜本策を打ち出せないことだ。ドイツの世論調査では、国民の3 分の2がギリシャなどへの支援策に反対している。 欧州の混乱で、米国も景気の腰折れ懸念が強まる中、G7でガイト ナー長官は、総額4470億ドル(約34・6兆円)の景気・雇用 対策を説明した。だが、野党の共和党は批判的で、実現できる保証 はない。 G7で抜本策が打ち出されなかったことに、金融市場では失望感 が広がっている。 ドイツの銀行は、ドイツ政府が資本注入を行うから持つが、その他 の国の銀行は、はたして資本注入できるか?2度目のリーマンショ ックの予感がする事態である。 ============================== ユーロ、一時104円台 10年ぶり円高水準 2011年9月12日12時10分 12日の外国為替市場では、欧州の財政問題への懸念からユーロ が売られている。 早朝のオセアニア市場の円相場は、一時、1ユーロ=104円90 銭付近まで上昇し、2001年6月以来約10年ぶりの円高ユーロ 安水準をつけた。東京市場の正午現在は、前週末午後5時時点より 2円30銭円高ユーロ安の1ユーロ=105円33〜40銭。対ド ルの円相場は、同07銭円高ドル安の1ドル=77円47〜55銭 となっている。 先週末、欧州中央銀行(ECB)のドイツ出身理事の辞任が発表 され、ギリシャ支援を巡る欧州内の対立への懸念から、ユーロが売 られる流れが続いている。さらに12日には、独メディアが「独財 務省がギリシャが債務不履行に陥るシナリオを検討している」と報 道し、欧州債務問題への不安が高まっている。 ============================== 独与党からギリシャのユーロ圏離脱の声、「もはやタブーない」 [ベルリン 11日 ロイター] ドイツのレスラー副首相兼経 済技術相は、ギリシャの秩序ある破綻をタブー視すべきではないと の見解を示した。 連立与党の一角を占める自由民主党(FDP)党首でもある同相 は、ウェルト紙に対し「ユーロ安定に向け、もはやタブーはない。 これには必要とされる方策が可能な場合のギリシャの秩序ある破綻 も含む」と述べた。また、多大な財政赤字に陥った祖国には、欧州 連合(EU)での投票権はく奪などの制裁を科すべきとの見方を示 した。 FDPのリンドナー幹事長は、ベルリナー・モルゲンポスト紙で 、ギリシャのユーロ離脱を同党は排除していないと述べた。 このほかシュピーゲル誌は、ドイツ財政省はギリシャが債務不履 行(デフォルト)した場合の準備を進め、通貨ドラクマ再導入など を想定した作業を進めていると報じた。 同じく連立与党のキリスト教社会同盟(CSU)のゼーホーファ ー党首は11日、ギリシャがユーロを離脱する可能性を否定できな いとの見解をあらためて示した。 ============================== G7:閉幕 欧州危機、抜本策示せず 市場混乱、長期化の恐れ 【マルセイユ(フランス南部)赤間清広、ロンドン会川晴之、ワ シントン斉藤信宏】フランスで開かれた先進7カ国財務相・中央銀 行総裁会議(G7)は9日夜(日本時間10日早朝)、欧州の債務 危機や世界経済の減速に対し協調行動を取ることで合意し、閉幕し た。しかし、危機の震源である欧州のギリシャ支援や金融機関への 資本注入などで有効な対策は打ち出せず、金融市場には失望感が広 がった。 「欧州の金融安定にしっかり取り組む必要があるということで一 致した」。日銀の白川方明総裁は会合後の会見で、欧州の債務危機 が世界経済を左右するとの見方を強調した。G7では債務危機を集 中討議した模様で、ガイトナー米財務長官も「欧州の担当者は事態 の深刻さを完全に理解している」と説明、日米がそろって欧州に対 策を要請した。 危機長期化の最大の理由は、肝心の欧州が、ユーロ共通債の発行 など抜本策を打ち出せないことだ。ドイツの世論調査では、国民の 3分の2がギリシャなどへの支援策に反対している。メルケル独首 相は「ギリシャは約束を果たすべきだ」と自助努力を促すのが精い っぱいで、イタリアやスペインなど財政赤字に苦しむ南欧諸国との 乖離(かいり)は大きい。 ギリシャ国債は、指標となる10年物国債の利回りが9日の欧州 市場で21%台に上昇(価格は下落)。欧州中央銀行(ECB)は 8月、イタリア、スペイン国債の市場買い入れを始めたが、反対す るドイツ出身のシュタルク専務理事が9日に辞任表明したことも、 市場の混乱に拍車をかけた。 ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥れば、巨額のギリシャ 国債を保有する欧州の金融機関にとって資本増強は不可欠。国際通 貨基金(IMF)のラガルド専務理事は「資本注入が必要」と訴え 続けている。G7は欧州の銀行の資本不足で議論をした模様だが、 合意文書は「必要なすべての行動を取る」と公的資金投入の必要性 を示唆するにとどまった。 一方、米国は欧州債務危機の拡大を懸念する。オバマ大統領は8 月、メルケル独首相、サルコジ仏大統領と電話協議し、「欧州のリ ーダーが断固たる措置を取る必要がある」と要請。米国も景気の腰 折れ懸念が強まる中、G7でガイトナー長官は、総額4470億ド ル(約34・6兆円)の景気・雇用対策を説明した。だが、野党の 共和党は批判的で、実現できる保証はない。欧州金融不安が波及す れば、米欧経済がそろって腰折れするリスクが強まるが、ガイトナ ー長官は「危機に断固として対処する」と述べるにとどまった。 G7で抜本策が打ち出されなかったことに、金融市場では失望感 が広がっている。第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミスト は「投資家のリスク回避姿勢が高まれば、月内に日経平均株価が 8000円台前半に落ち込み、円相場が再び最高値を更新する可能 性もある」と述べた。日本は円高対策での協調を引き出すことに失 敗したこともあり、世界的な同時株安や円高進行も懸念される。 毎日新聞 2011年9月11日 東京朝刊