4113.米中の戦略を見よう



中国の戦略がどういうものであり、それに対して米国はどのような
戦略にしているのか、整理したい。これを知らないと今後のアジア
情勢が読めない。            津田より

0.はじめに
クリストファー・レインが「幻想の平和」で、ハワイ以西でのオフ
シェア・バランシングを提唱したのは、2006年であり、その2
年後、2008年3月には、その当時太平洋艦隊司令長官のキーテ
ィング氏に、中国の将軍から「空母を開発するから、太平洋のハワ
イから東部を米国がとり、西部を中国がとるというのはどうか」と
真剣に言われていたと議会で証言していた。

それを実現する方向で、中国はA2AD(接近阻止・拒否)戦略を
とり、オフシェア・バランシングへ米国を追い込むために、DF−
21D(対空母ミサイル)を開発した。この配備が始まったことを
受けて、統合エアシーバトル(ASB)構想を2010年2月に米国防省
のロバート・ゲイツ長官は正式に認めた。

ということで、クリストファー・レインが想定したオフシェア・バ
ランシングを中国の戦略家が勉強して、その方向に米国を向かわせ
ている。A2AD戦略のために対空母中距離誘導ミサイルDF-21Dや
巡航ミサイルCJ-10を開発した。米空母が第2列島線以内に近づけな
いようにするためであった。

この目標が完成したことを受けて、次の段階に中国は向かっている。

1997年まで中央軍事委員会常務副主席であった劉華清が、ケ小平の
意向にそった方針と言われるスケジュールがある。
「再建期」 1982-2000年 中国沿岸海域の完全な防備態勢を整備
      ほぼ達成済み 
「躍進前期」 2000-2010年 第一列島線内部(近海)の制海確保。

「躍進後期」 2010-2020年 第二列島線内部の制海権確保。航空母
      艦建造 
「完成期」 2020-2040年 米海軍による太平洋、インド洋の独占的
      支配を阻止、2040年 米海軍と対等な海軍建設 

というものである。
A2AD戦略から躍進後期になり、中国海軍は2005年に「鄭和航海
600年」を記念して、『500カイリ制海圏』構想を発表した。これは
即ち、外洋海軍への変革を目指していると考えられる。

中国の中学校歴史教科書には、かつて朝貢貿易を行っていた地域(
シンガポールからインドシナ半島全域、タイ、ネパール、朝鮮半島
、琉球など広大な地域)は、「清の版図でありながら列強に奪われ
た中国固有の領土である」と明記されており、中国では、これらの
地域を本来の国境とは別の「戦略的辺疆」と呼んでいる。このため
中国がいう中国の中核的な利益という地域は、この地域全体である
。これはドイツが第2次世界大戦前に、神聖ローマ帝国領土復活と
言っていたのと同じなのである。

しかし、その領域を超えて、「完成期」に向けて、中国海軍はイン
ド洋においてはミャンマーと軍事協力関係にあり、ミャンマー西端
のバングラデシュ国境近くのシュトウェと、アンダマン諸島に接す
る大ココ島の港湾を借りて、海軍基地にしている。
シュトウェには通信施設を設置し、主にインドに対する情報収集を
行っていると言われる。

また、パキスタン西部のオマーン湾の入口に当たるグワダルでは、
現在、パキスタン国内及びカラコルム山脈を越えて中国新疆ウイグ
ル自治区へと通じる物流ルートの起点とすべく中国の援助で港湾整
備を行っているが、港が完成した暁には、グワダル港を間借りして
海軍基地を置く見込みであるといわれる。

というように中国の自国生存権である、中東・アフリカからの物資
輸送ルートのシーレーン防衛を積極的に行い始めた。ますます、ナ
チス・ヒットラーの戦略に似てきている。

このような中国の拡大計画を知りながら、小泉政権当時でも注意し
が、中国を警戒するべきであるのに、米国は中東などイスラム教地
域での戦争を行い、それで疲弊してしまった。

とうとう、米国の疲弊から共和党茶会派が出てきて、増税はダメ、
聖域なしの財政再建をしろとなり、この勢力のために米国は孤立主
義的な様相を呈し始めている。それに引きづられて、軍事費の大幅
削減が行われることになった。

自国優先の思想である。そういう意味では軍事面でも、米国は日本
化してきている。自国の防衛より金儲けという日本よりはマシであ
るが、それでも、世界の警察はごめんという。

大変なことになった。戦後を支えた米国覇権の世界秩序の根幹が崩
れようとしているのだ。この重大さを日本人の多くが気がついてい
ない。

1.統合エアシーバトル(ASB)構想
 この統合エアシーバトル構想は、有名な軍略家のアンドリュー・
マーシャル相対評価局長が考えた戦略である。この構想の説明は、
中国人民日報が詳しい。

米軍は次のように考えている。広大な西太平洋海域で一旦衝突が起
きれば、中国軍は大規模な先制攻撃を実施し、西太平洋海域の米軍
は重大な損失を被る。米の空海軍部隊は西太平洋海域に進入不能と
なり、米軍の作戦エリアへの進入が遅れれば、米国の主要同盟国(日
本、韓国)及び友好国の安全確保や台湾への防衛協力という目的が有
効に果たせなくなる。

このような理由及び判断により、米国の軍事ブレーンや軍指導層は
、「統合エアシーバトル構想」を発展させ、米軍の西太平洋海域への
軍事力の輸送能力を維持することが必須だと提議している。

第一に、西太平洋海域の軍事拠点整備の更なる強化。2009年、米国
は巨費を投じてグアムの空軍基地の拡張、及び、海軍施設の整備を
行い、米軍の主要な最前方作戦基地とした。

第二に、グアムの空海軍の常駐兵力の増強。米海軍はグアムに一個
空母打撃群の配置を計画し、既に攻撃型原子力潜水艦を15隻にまで
増やした。米空軍は爆撃機6機、F15E戦闘機48機、無人偵察機「グロ
ーバルホーク」3機、空中給油機12機、及び、最新型のステルス戦闘
機F/A-22ラプターを増備する。

第三に、西太平洋海域の空海合同軍事演習の強化。米軍は最新鋭の
原子力空母ジョージ・ワシントン号を横須賀の海軍基地に配備し、
いつでも同盟国、友好国との東シナ海、黄海、南シナ海における空
海合同演習に参加できるようにして、中国の軍事力を威嚇、牽制す
る考えである。

第四に、アジア太平洋地域における基地建設の強化。既に、米軍は
マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナムなどの東
南アジア諸国及びオーストラリアで新たな基地の建設、及び、イン
ドの軍事基地の借用を計画し、西太平洋海域における危機対応力の
向上を目指している。

米軍の「統合エアシーバトル構想」の重点は、中国軍が「最後の切り札
」とする三つの武器・装備への攻撃に集中している。

第一は、中国の衛星及び作戦ネットワークの情報システムを撹乱し
、攻撃し、中国軍の指揮コントロールシステムや攻撃能力を崩壊さ
せ、麻痺させ、弱めることにより、自国の空海軍に制空権、制海権
を奪取させて主導権を握ること。

第二に、中国のミサイルシステムへの防御と攻撃に空母機動部隊の
機動性を組み合わせて、中国の防空の弱点に切り込み、中国内陸の
ミサイル基地などの戦略の中心に対して全縦深打撃を実施する。

第三に、中国海軍の潜水艦を攻撃し、各種の潜水艦探知システムや
水中無人機を運用して中国の潜水艦活動に関する情報を探り、その
情報を空海軍の空中対潜部隊に伝え、中国の潜水艦に対して非対称
攻撃を実施する。

しかし、中国の構想説明にはない意図が、アンドリュー・マーシャ
ル氏にはありそうである。それはインドと中国の対決が起こり、そ
のインドの民主主義と価値観が一緒である米国は支援して、中国の
意図を封鎖するということである。もう1つ、日本の位置づけは、
前衛基地であり「パワー・プロジェクション・プラットフォーム
(戦力投射のための根拠地)」と命名している。

野田首相が、「日印グローバル・パートナーシップ・サミット2011」
であいさつし「日本とインドは民主主義、法の支配、市場経済とい
った普遍的価値を共有している。アジアの二大民主主義国家として
、関係を強化していく決意だ」と述べ、インドとの関係強化に意欲
を示した。これに呼応して、キャンベル米国務次官補(東アジア・
太平洋担当)は、「日本とインドとの協調を向上させたい」と述べ
、3カ国の連携強化に意欲を示した。

インドは、ベトナムと友好関係にあり、そのベトナムを中国との前
衛基地化する方向である。一方、ミャンマーからインド国境の島を
借りて、インド監視の基地を中国は作っている。

壮大な構想でこの統合エアシーバトル構想はできている。この構想
範囲は、西経160度のハワイ〜東経17度の喜望峰であり、中国
のシーレーン崩壊も目指すことがわかる。中国のシーレーン防衛を
壊すことで自国生存権構想を崩壊させることがわかる。第2次大戦時
のドイツ海軍崩壊と同じように物資の封鎖作戦を同時に行うことを
目指していることがわかる。このことで、アンドリュー・マーシャ
ル氏は、中国と戦前のナチス・ドイツを同列に見ていることがわか
る。

2.この構想に沿った動き
東南アジアの海軍力は小さく、ベトナム海軍で兵力は4万‐5万人で
、軍艦100隻余りはいずれも小型であり、ミサイルではなく大砲で武
装しているものが多い。兵力が3万人余りのフィリピン、1万人余り
のマレーシアは、ベトナムより小さい。

それに比べて、海軍兵力25万人に空母まで保有する中国の海軍力と
は比較にならない。

この地域で、中国が恐れるのは、ベトナムだけだ。ベトナムは今年
6月、南シナ海上で大規模な実弾射撃演習を行ったほか、1979年の中
越戦争以来32年ぶりの徴兵令を出すなど、南シナ海の紛争当事国で
も最も積極的な対応して、海兵隊を中心に上陸作戦、防衛演習がし
っかりと行われており、ベトナムが紛争地域を占領すれば、中国の
反撃は容易ではないと分析している。

日本海自兵力は、4万5000人と少ない。ベトナムと大体同じ規
模であるが、艦艇の規模が違う。860隻の中国に比べて、160
隻と少ないが。インド海軍5万5000人、世界第3位の規模の海
軍である。インド海軍は空母ヴィラートを含む155隻の艦艇を保有し
ている。

韓国海軍の兵力は6万8000人であり、艦艇170隻である。韓
国は自国国益を達成できる均衡艦隊を作ろうとしている。均衡艦隊
とは、独自に国家戦略目標を達成できる艦隊で、その手段はイージ
ス駆逐艦に原子力潜水艦と中型空母で構成された機動艦隊になる。
その中心的な基地が済州海軍基地であり、米軍の艦隊も寄港できる
ように、大規模な基地になるようだ。

というように4ケ国を合わせた規模が中国海軍と同程度になる。と
いうように4ケ国が共同しないと中国との紛争には勝てない。

3.最近の動き
中国は来年、初の空母の就役に合わせ、空母船団を中心とする第4
艦隊を新設することを検討しているもようだ。山東省青島市を基地
とする北海艦隊は、黄海(韓国名・西海)を管轄。浙江省寧波市に
司令部を置く東海艦隊は東シナ海、広東省湛江市の南海艦隊は南シ
ナ海をそれぞれ管轄しているが、第4艦隊は海南島に置くようだ。

日本、フィリピン両政府は9日、外務省で海洋の安全保障に関する
初の実務者協議を開き、南シナ海を巡る問題は国連海洋法条約など
の国際ルールに従った解決が必要とし、今後両国間で実務者協議を
定期的に開催し、連携を強化することで合意した。

米空母ジョージ・ワシントンは、インドネシア沖のスンダ海峡やオ
ーストラリア沖で空母航空団と豪州海軍による合同演習、洋上で化
学・生物・放射線攻撃からの防護訓練などを実施そて横須賀に戻っ
た。南シナ海での紛争で航海ができなくなったことを想定して、イ
ンドネシアのズンダ海峡、ロンボク海峡を安全な航路にしておくこ
とが必要になる。この航路の安全に豪州海軍が参加したことは大き
な意味がある。

インドネシアは、中国との紛争地域がなく、中国に対して友好的で
ある。このため、米国は同盟国である豪州海軍との合同演習になる。

中国が東南アジア諸国への装備売却を加速させている。欧米の装備
に比べ価格が安いうえ、技術移転にも積極的で、装備の更新、近代
化を推進する東南アジア諸国の需要を巧みに吸い上げている。イン
ドネシアに、中国は携行式地対空ミサイルQW1、短距離対艦誘導
ミサイルC802Aなどを売却。122ミリロケット砲などをイン
ドネシア国内で共同生産することも検討している。タイに、WS−
1B多連装ロケットシステムの技術を供与している。

これに対して、米国は、南シナ海での緊張の高まりなどを受け、東
南アジア諸国への装備売却を促されている。インドネシアに、数億
ドルで戦闘機や輸送機を売却する計画で、装備の更新のために約
3570万ドル(約27億6200万円)規模の支援をする。

戴秉国・国務委員は6日、ハノイで2国間協力に関する定期会合に
出席し、両国が友好関係を維持するため、対立の火種の南シナ海領
有問題を「深い協議を通して適切に取り扱う」ことで合意した。
中国もベトナムとの紛争では過去、痛い目に何度もあっている。ま
た、国家主席が変わるので、そのため、この時期の紛争は起こした
くないようだ。

インドのシン首相は6日、バングラデシュの首都ダッカでハシナ首
相と会談し、「飛び地」の交換によって国境線を画定させることで
合意した。長年の懸案だった領土問題が解決に向かうことになる。
親中国のミャンマーとの国境があり、バングラデシュがインドと友
好関係になると、中国の影響国を絞れる。日本企業は、ベトナムと
インド、バングラディシュに進出するべきである。同盟関係国との
経済連携が重要である。

中国包囲網での中国は苦しいので、中国としても包囲網を突破する
ことが重要になる。反対に日米豪印越は、中国包囲網への参加を東
南アジア諸国に勧誘することになる。

さあ、どうなりますか??

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日比が初の海洋協議 中国念頭に定例化へ 国際ルールに従った解
決が必要と認識一致
2011.9.9 21:23サンケイ
 日本、フィリピン両政府は9日、外務省で海洋の安全保障に関す
る初の実務者協議を開いた。南シナ海や東シナ海で海洋活動を活発
化させている中国を念頭に、海洋をめぐる問題は国連海洋法条約な
どの国際ルールに従った解決が必要との認識で一致。今後両国間で
実務者協議を定期的に開催し、連携を強化することで合意した。

 フィリピンは南シナ海の南沙(英語名・スプラトリー)諸島の領
有権をめぐり中国と対立。中国は沖縄・尖閣諸島を含む東シナ海で
も活動を強化している。実務者協議の定例化で中国に共同で対抗す
る狙いがあるとみられる。

 協議には日本側から外務省や防衛省、海上保安庁などの担当者、
フィリピン側は外務省や沿岸警備隊関係者が出席した。
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米原子力空母:ジョージ・ワシントン、2カ月半ぶりに横須賀帰港
 /神奈川

 米海軍横須賀基地に配備されている原子力空母ジョージ・ワシン
トン(GW)が25日、夏季警戒のための約2カ月半の航海を終え
、横須賀港の同基地に帰港した。

 米海軍によると、GWは今年6月12日に同港を出航後、インド
ネシア沖のスンダ海峡やオーストラリア沖で空母航空団と豪州海軍
による合同演習、洋上で化学・生物・放射線攻撃からの防護訓練な
どを実施。洋上でタイやベトナム、日本など約6カ国の要人を迎え
、特に寄港したタイ・レムチャバンでは500人の高僧や王妃らを
迎えたレセプションを行ったという。【田中義宏】

毎日新聞 2011年8月26日 地方版
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【時論】「インド洋・太平洋分割、管理しよう」
2011年09月08日17時31分中央日報

  「中国が空母を持てば、中国と米国がインド洋と太平洋を分割し
て管理しよう」。09年5月、中国の最高位海軍将校が米太平洋司
令官キーティング大将に提案した言葉だ。 大洋進出に対する中国の
野心が分かる。 これを実現させると言わんばかりに初の中国空母が
試験航海を始めた。 すると海洋で勢力均衡が崩れることを懸念した
米国が、空母の使用目的を明らかにしろと中国に圧力をかけた。
中国国防省は研究・訓練用だと低姿勢を見せているが、中国軍の郭
建躍大佐は開放軍報への寄稿で、中国の空母は領土紛争など国益の
保護に使用することを明確にした。 

  中国は東アジアの海洋で米海軍の介入を阻止する「接近拒否戦略
」を強化している。 これは台湾など中国近海で紛争が生じた場合、
米軍の接近を抑制、拒否する戦略であり、これまでの米国中心の海
洋秩序を崩すものだ。 中国がいよいよ米国の海洋覇権にノー(No
)と言い始めた。 台湾の独立制止はもちろん、南シナ海を核心利益
と規定し、領有権紛争に米国が介入した場合は一戦も辞さないとい
う意志を見せている。 中国は南中国海で、中国戦闘機の米海軍偵察
機EP−3に対する空中衝突を始め、21世紀に入って5度も米海
軍活動を物理的に制止した。 

  中国の海洋膨脹戦略は米国の海洋覇権に対する重大な挑戦だ。 第
2次世界大戦以降、米国の世界戦略は海洋統制を前提にした介入戦
略だ。 仮に中国の挑戦で米国中心の海洋秩序が崩れれば、米国の世
界戦略は全面修正が避けられない。 このため米国は決して中国の海
洋覇権挑戦を容認しないはずだ。 米国は前進防御を強化し、太平洋
に米海軍勢力の60%を配置した。 グアム基地を拡張し、シンガポ
ールに最新型ステルス戦闘艦を配置するなど、中国牽制を強化して
いる。	

  米国と中国の海洋覇権競争は避けられなくなった。 しかし大洋で
両国間の正面衝突まで進む可能性は薄い。 この場合、中国は経済が
後退するだけでなく、地上国境に潜在敵国を置いているため、海洋
への全力投球が難しくなる。 さらに20年以上も米国に後れている
軍事技術を短期間で高めるのも容易でない。 米国も金融危機で経済
が沈滞し、増えた国家負債のため、史上初の米国債格下げという危
機を迎えた。 経済回復のために今後10年間、6000億ドルの国
防予算を削減するという。 

  このため米中間の海洋での全面武力衝突は考えにくいが、偶発的
な局地紛争の可能性は今なお残る。 その時期はスウェインが話した
「米国が中国を独断的で侵略的だと考え、中国は米国が衰退してい
るという認識を強く抱いた時」だ。 このような時に核心利益が脅か
されれば紛争につながる。 代表的なのが西海(ソヘ、黄海)上の南
北武力衝突だ。 この時、米空母の進入に対抗して中国が自国の安保
を理由に介入し、状況が悪化すれば、中国は北朝鮮カードをいつで
も前面に出すことができるからだ。 

  米中海洋覇権競争の本格化で、韓半島安保脅威の軸も地上から海
上に移動する可能性が高い。 これに対応して韓国は韓米同盟を強化
し、韓国が米国の死活的利益になるように戦略的価値を創出するこ
とが要求される。このため韓国は均衡艦隊を建設し、有事の際には
周辺国の海洋統制を拒否できなければならない。 均衡艦隊とは、独
自に国家戦略目標を達成できる艦隊で、その手段はイージス駆逐艦
に原子力潜水艦と中型空母で構成された機動艦隊になる。特に機動
艦隊が迅速な機動力を発揮するためには、済州(チェジュ)海軍基
地が早期に建設される必要がある。こうした点でその間中断されて
いた海軍基地の建設が正常に推進されたのは幸いだ。済州海軍基地
は韓国の平和と繁栄を開く関門にならなければならない。 

  パク・ホソプ海軍大学名誉教授	
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米中 東南アジアへの装備売却でもせめぎ合い
2011.9.8 20:52サンケイ
 【シンガポール=青木伸行】中国が東南アジア諸国への装備売却
を加速させている。欧米の装備に比べ価格が安いうえ、技術移転に
も積極的で、装備の更新、近代化を推進する東南アジア諸国の需要
を巧みに吸い上げている。南シナ海の領有権問題で東南アジア諸国
との連携を強化する米国を見据え、中国は装備の分野でも相互依存
度を高めることで、東南アジア諸国をつなぎ留める戦略だとみられ
ている。これに危機感を抱く米国は、装備売却の動きを強め巻き返
しに出ている。

 装備調達の多くを米国に依存してきたインドネシアに、中国は携
行式地対空ミサイルQW1、短距離対艦誘導ミサイルC802Aな
どを売却。122ミリロケット砲などをインドネシア国内で共同生
産することも検討している。

 米国は1999年、東ティモール紛争でのインドネシア軍による
人権侵害を受け、インドネシアへの兵器輸出を停止、2005年に
禁輸措置を解除した経緯がある。この間に同国は兵器の調達先を、
中国やロシアなどに多角化した。

 一方、マレーシアは、中国からFN6携行式地対空ミサイルなど
を購入。パキスタンを通じ、中国製のHJ8対戦車誘導ミサイルな
どを調達してもいる。

 ■ニンジンは技術移転■
 中国製装備の“売り”はまず、低価格にある。イランも中国の協
力で生産するC802Aを例にとると、フランスの対艦ミサイル、
エグゾセの半分程度だ。昨年1月の「中国・ASEAN自由貿易協
定」(CAFTA)も、中国の装備輸出拡大を後押ししている。

 中国は、売却した装備の“ローン返済”にも柔軟に対応しており
、国防予算が限られ、過度の財政負担を避けたい東南アジア諸国に
はありがたい。

 東南アジア諸国の鼻先にぶら下げられた最もおいしい“ニンジン
”は、技術移転だろう。東南アジア諸国には、国防産業の基盤がな
いに等しい。その育成を希求する各国にとり、技術の獲得は極めて
魅力的だ。

 中国はタイに、WS−1B多連装ロケットシステムの技術を供与。
インドネシア国内でのC802Aの共同生産も、技術移転を伴うと
みられている。

 ■巻き返し図る米国■  
 アジア・太平洋地域への装備輸出が、39%とトップのシェアを
占め、同地域への関与を強める米国は、南シナ海での緊張の高まり
などを受け、東南アジア諸国への装備売却を促されている。

 米国はインドネシアに、数億ドルで戦闘機や輸送機を売却する計
画で、装備の更新のために約3570万ドル(約27億6200万
円)規模の支援をする。

 フィリピンは南シナ海を警戒するため、新たに6機のヘリコプタ
ーを購入し、基地を建設して配備するほか、4カ所にレーダーを設
置する方針で、米国が供給、支援するとみられる。

 装備の売却は、米国が強化する東南アジア諸国との合同軍事演習
や、作戦を遂行するうえでの相互運用性という観点からも重要だ。
その意味でも、中国製装備のシェア拡大は、米国にとり大きな障害
だといえる。
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中国、空母就役で第4艦隊創設へ
2011/09/08 09:30:22朝鮮日報
 中国は来年、初の空母の就役に合わせ、空母船団を中心とする第
4艦隊を新設することを検討しているもようだ。

 7日付香港紙・明報は、中国の消息筋の話として、中国初の空母が
試験航行に入ったことを受け、中国海軍の第4艦隊が近く創設される
と伝えた。第4艦隊は南シナ海に面する海南島の三亜に基地を置き、
長期的には2個の空母船団が配備されるもようだ。旧ソ連の空母ワリ
ヤーグを改造した中国初の空母は、来年8月1日の人民解放軍建軍記
念日に合わせ、就役が見込まれており、第4艦隊の発足は来年初めか
半ばになるとみられる。

 中国海軍は海域ごとに三つの艦隊から成る。山東省青島市を基地
とする北海艦隊は、黄海(韓国名・西海)を管轄。浙江省寧波市に
司令部を置く東海艦隊は東シナ海、広東省湛江市の南海艦隊は南シ
ナ海をそれぞれ管轄している。

 中国が第4艦隊を新設するのは、既存の三つの艦隊が沿海、近海の
防衛を担当しており、攻撃任務を持つ空母船団を既存艦隊に組み込
むのは困難との判断があるためとされる。新設される空母船団は、
既存の部隊とは独立した特殊戦略部隊で、中国軍の統帥権を持つ党
中央軍事委員会に直接報告を行う。戦略・戦術核ミサイル部隊で、
中央軍事委が直接管轄している「第2砲兵部隊」と似た性格となる。

 明報は、初の空母を中心とする空母船団の構成は、遠距離防空駆
逐艦2隻、中距離防空・対潜作戦用駆逐艦4隻、護衛艦2隻、原子力潜
水艦2隻が空母を護衛する形になると報じた。潜水艦は中国の攻撃用
潜水艦「093型商級原子力潜水艦」になるという。093型原潜は、全
長107メートル、幅11メートル、排水量6000トンの規模で、加圧水型
原子炉2基を搭載している。マカオ国際軍事学会の黄東会長は「第4
艦隊がまともな戦力を確保するのは2020年以降になる」と予測した。

北京=崔有植(チェ・ユシク)特派員
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日印との連携強化に意欲=米高官
 【ワシントン時事】キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋
担当)は7日、ワシントン市内の講演で、日米印3カ国の局長級会
合が開かれるとの報道に関し、「日本とインドとの協調を向上させ
たい」と述べ、3カ国の連携強化に意欲を示した。
 次官補は会合については具体的な言及を避けたものの、「インド
を一層、アジア太平洋地域に引き込むために尽力する」と表明。イ
ンドがアジア地域で戦略・経済的に重要な役割を果たし、外交上も
協力を強化していくことが必要だと強調した。
 また、北朝鮮に関する日米韓外相会談など、特定の課題に関して
小規模な多国間グループで協議を行う機会が増えているとした上で
、中国政府にも具体的提案を示し、積極的な働き掛けを行っている
と述べた。(2011/09/08-07:20)
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中越:南シナ海「適切に扱う」

 ベトナム訪問中の中国の戴秉国・国務委員は6日、ハノイで2国
間協力に関する定期会合に出席。新華社によると、両国が友好関係
を維持するため、対立の火種の南シナ海領有問題を「深い協議を通
して適切に取り扱う」ことで合意した。戴委員とベトナムのグエン
・ティエン・ニャン副首相が共同議長を務めた会合では、双方が戦
略的協力関係を新しい段階へと高めることで一致した。【バンコク】

毎日新聞 2011年9月7日 20時54分
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中国、インド両海軍に衝突の危険、印艦艇の南シナ海航行で緊張
2011/09/08(木) 19:03サーチナ 

  中国の空母が2週間の初試験航行を実施するのに先駆け、インド
海軍の軍艦1隻がすでに南シナ海海域に入り、南シナ海全体の主権を
主張する中国への対抗意識をはっきり示した。英国のメディアは、
南シナ近海で中印両国の海軍が衝突する可能性が高まったとの見方
を伝えた。多維新聞網が伝えた。

  6日付ロイター電によると、インド軍の強襲揚陸艦「エイラバッ
ト(INS Airavat)」が7月、ベトナム・ニャチャン港を
訪問した帰り、南シナ海カムラン湾(Cam Ranh Bay)
沖を航行中に中国軍から警告を受けた。

  インド外交部によると、中国海軍関係者と名乗る人が、エイラ
バットが中国領海に侵入したと公開無線を通じて警告したという。
両国とも、この事件を問題視するつもりはないようで、インド側は
「両国間でいさかいが起こった訳ではない」とコメント、中国側は
「事実を裏づける根拠がない」とした。

  しかし、この事件によって、増強を続けるアジア主要国の海軍
力に対する注目が高まった。中印両国がどちらも、海上貿易ルート
の安全保護を模索するのと同時に、両国海軍が衝突する可能性が高
まっているという見方もある。

  中国のシーパワーに包囲されることが懸念事項であり続けたイ
ンドは、長期にわたるパートナー・ベトナムと防衛提携を強化し、
南シナ海での存在感を慎重に強めてきた。インドのシンクタンク・
ORFのProbal Ghosh上級研究員(元海軍 司令官)
は、「中国は、インド洋がインドのものだとは思っておらず、イン
ドにとっての戦略的海域とも思っていない。また、南シナ海と東シ
ナ海の領有権は中国にあると認識している」と分析している。

  インドと中国は長い間、表面上は友好関係を保ってきた。しか
し、両国間では1962年、国境紛争が起きたことがある。中国は、イ
ンドの強敵・パキスタンと極めて親密な関係を保ちつつ、ベトナム
との結びつきを強めるインドに対し、警戒の目を向け続けている。
(編集担当:松本夏穂)
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東アジア共同体「必要ない」=野田首相が論文
 野田佳彦首相が10日発売の月刊誌「Voice」に、外交・安
全保障や財政に関する基本的な考えを記した「わが政治哲学」と題
する論文を寄稿していることが6日分かった。外交面では「日米同
盟を堅持していく」と重ねて強調した上で「いま、この時期に東ア
ジア共同体などといった大ビジョンを打ち出す必要はない」として
、鳩山由紀夫元首相が掲げた「東アジア共同体」構想に否定的な見
解を表明している。(2011/09/06-18:37)
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中国 「平和白書」を公表

 中国政府は6日、「平和発展白書」を公表し、防御のための国防
力を堅持するが覇権は求めないという立場を改めて強調した。軍備
について白書は、これまで大国が取ってきた「国が強くなれば必ず
覇権を唱える」という伝統的発展モデルを中国は打破すると主張。
「核心的利益」は「国家主権、国家の安全、領土の保全、国家統一
、国家政治制度と社会の安定、経済・社会の持続発展」の六つと定
義した。【北京】

毎日新聞 2011年9月8日 東京朝刊
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比、国際海洋裁への訴え見送り 南沙領有権問題で
'11/9/8中国新聞

 【マニラ共同=三井潔】南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)
諸島をめぐる中国との領有権争いの解決を目指すとして、フィリピ
ンのアキノ大統領が7月に明言していた国際海洋法裁判所への訴え
を同国が当面、見送る方針を決めたことが8日、分かった。フィリ
ピン政府高官が共同通信に明らかにした。

 8月下旬〜9月初めの大統領の訪中で、両国の貿易を倍増させる
などし、経済関係を600億ドル(約4兆6千億円)規模に拡大さ
せることで中国と合意したフィリピンが配慮したとみられる。11月
に開催される米中を含む東アジアサミットなどでの議論を踏まえて
あらためて判断するとしているが、提訴には慎重な姿勢という。

 フィリピン政府高官は、国際海洋裁へ仲裁申し立てか提訴を行う
方針について「問題解決の一つの選択肢にすぎない。今はその時期
ではない」と強調。大統領が7月に「われわれにとって(問題解決
の)唯一の場だ」と言明した当時に比べ、大きくトーンダウンした。

 中国は、フィリピンが国際海洋裁へ訴える方針を示したことに「
問題を複雑化させるだけ」として反発していた。ただ、アキノ大統
領の訪中時には両国が南シナ海問題を焦点にすることはなかった。

 南沙諸島をめぐっては中国やベトナム、フィリピン、マレーシア
、ブルネイ、台湾がそれぞれ全てか一部の領有権を主張している。
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インドとバングラデシュ、国境線画定 領土問題解決へ
2011年9月8日0時12分

 インドのシン首相は6日、バングラデシュの首都ダッカでハシナ
首相と会談し、「飛び地」の交換によって国境線を画定させること
で合意した。長年の懸案だった領土問題が解決に向かうことになる。
インド首相のバングラデシュ訪問は12年ぶりだ。

 インドとしては、バングラデシュなど周辺国で影響力を増す中国
に対して巻き返しをはかる狙いがある。

 インド紙の報道によると、両首相が交換に合意した主な飛び地は
、インドがバングラデシュに持つ111カ所と、バングラデシュが
インドに持つ51カ所の計162カ所。それぞれの飛び地の住民は
いずれかの国籍を選べるという。
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「アジアの2大民主国家」=日印関係強化へ決意−首相
 野田佳彦首相は6日夜、都内で開催されている「日印グローバル
・パートナーシップ・サミット2011」であいさつし「日本とイ
ンドは民主主義、法の支配、市場経済といった普遍的価値を共有し
ている。アジアの二大民主主義国家として、関係を強化していく決
意だ」と述べ、インドとの関係強化に意欲を示した。
 「日印サミット」は、幅広い分野で関係強化を図る「日印グロー
バル・パートナーシップ」締結から10年が経過したのを記念して
開かれ、安倍晋三、鳩山由紀夫両元首相らが共同議長を務めている。
首相は「私の好きな言葉に10年続けば偉大なり、20年続けば恐
るべし、30年続けば歴史になると言う言葉がある」と述べ、日印
関係の重要性を強調した。 (2011/09/06-22:42)
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英国際戦略研、南シナ海で軍事衝突の懸念を指摘 
2011.9.7 00:12 sankei

 【ロンドン=木村正人】英シンクタンク、国際戦略研究所(II
SS)は6日、世界の安全保障情勢を分析した2011年版「戦略
概観」を公表し、中国の軍拡が「平和のため」という説明とは裏腹
に、南シナ海や東シナ海で資源をめぐって近隣諸国との緊張をもた
らしているとの見方を示した。 

 概観は「中国は平和的な勃興を目指すかつての政策とは対照的に
、昨年、領土や海洋権益をめぐって恫喝的な外交や行動を展開し、
国際社会の常識に挑戦するのが日常茶飯事になった」と指摘した。 

 中でも緊張が増す南シナ海や東シナ海の状況について、「中国の
外交・安保政策は衣の下に鎧(よろい)を隠しているのと同じ」と
いう近隣諸国の不安を紹介。IISSのアジア太平洋担当、ハック
スリー氏は記者会見で、「南シナ海で軍事衝突が起きる恐れを排除
できない」との懸念を示した。 
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「ベトナムが最も厄介」 南シナ海問題で中国紙 
2011年09月06日chosunonline

 中国紙が、南シナ海で領有権紛争を繰り広げている国のうち、も
っとも厄介な相手はベトナムだとする記事を掲載した。ベトナムは
兵力だけで見れば、中国にとって脅威とは言えないが、団結力が強
く、粘り強いために相手にするのは容易でないとの見方だ。 

 5日付北京晩報は、南シナ海で中国と領有権を争うベトナム、フィ
リピン、インドネシア、マレーシアについて、軍事力と戦略を中心
に競争力を評価した結果、ベトナムに最も高い点数を与えた。 

 ベトナムは今年6月、南シナ海上で大規模な実弾射撃演習を行った
ほか、1979年の中越戦争以来32年ぶりの徴兵令を出すなど、南シナ
海の紛争当事国でも最も積極的な動きを見せている。同紙はベトナ
ムについて、海兵隊を中心に上陸作戦、防衛演習がしっかりと行わ
れており、ベトナムが紛争地域を占領すれば、中国の反撃は容易で
はないと分析した。 

 ベトナム海軍の兵力は4万‐5万人で、軍艦100隻余りはいずれも小
型であり、ミサイルではなく大砲で武装しているものが多い。海軍
兵力25万人に空母まで保有する中国の海軍力とは比較にならないほ
ど劣勢だ。しかし、ベトナムは最近、ロシアから潜水艦を導入し、
戦力を拡充している。南シナ海問題で米国など他国と共同戦線を張
っていることも、ベトナムの戦略として目を引く。 

 一方、兵力が3万人余りのフィリピン、1万人余りのマレーシアは
、全体的な戦力がベトナムに比べ劣ると評価された。 
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中国、大型漁業監視船を投入…西沙諸島周辺海域

 【北京=大木聖馬】新華社通信によると、中国農業省南シナ海区
漁政当局は2日、排水量400トン級の大型漁業監視船が近く広東
省広州の基地を出航し、西沙諸島周辺海域に常駐すると明らかにし
た。

 中国は同海域でベトナムなどと領有権を争っており、実効支配を
強化する動きとみられる。

 中国は同海域で、排水量100トン以下の監視船2隻で巡視活動
を行っていたが、「漁業管理や主権を守る任務は日増しに多くなっ
ており、2隻では対応できない」として投入を決めたという。

(2011年9月2日18時55分 読売新聞)
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神浦 元彰
韓国が黄海の入り口にある済州島に、米空母2隻が接岸でき、イー
ジス艦20隻が同時に係留できる新海軍基地を建設中(2014年
完成予定)。これに対し、韓国の野党は「国家権力の横暴」という
論理で反対運動を激化させている。黄海の出入りを統制できる地政
学上の要衝に中国や北朝鮮の危機感は強い。
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中国「A2AD戦略」VS.米国「ASB戦略」
2011年01月08日01時35分BLOGOS
山田衆三

外洋進出を目論む中国は、「アジア地図で見る中国の海洋戦略」で
も指摘したとおり、アジアにある3つの大海、東シナ海・南シナ海
・インド洋の覇権を握ろうと虎視眈々と狙っています。特に東シナ
海は、中国にとって西太平洋への出口となりますが、米国の後ろ盾
を持つ日本列島が巨大な障害物となっており、中国からすれば跳梁
跋扈する妨げ、日本からすれば侵略行為に対する抑止力といえるで
しょう。
 
 中国は、軍事上の概念である「国防圏」に位置づけている日本列
島から沖縄など南西諸島、台湾、フィリピン、マレーシアを繋ぐ“
第一列島線”と、伊豆諸島から小笠原諸島、サイパン、グアム、パ
プアニューギニアを繋ぐ“第二列島線”の阻害要因を取り除くため
、中国共産党人民解放軍に属する陸海空軍の近代化を念頭に最新ハ
イテク兵器など軍備増強を図っています。「A2AD(Anti-Access
 Area Denial)戦略」を企て、在日米軍司令部が置かれている横田
(東京都)をはじめ三沢(青森県)、厚木・座間・横須賀(神奈川
県)、岩国(山口県)、佐世保(長崎県)、嘉手納・普天間(沖縄
県)の主要基地への接近を阻止(Anti-Access)して在日米軍の前方
展開戦力を一時的に麻痺させ、潜水艦等で米国海軍の太平洋艦隊(
司令部:ハワイ)指揮下にある第七艦隊が東シナ海や西太平洋の領
域で自由に遊弋することを一定期間拒否(Area Denial)することを
目指す戦力を保持するための作戦を入念に練っています。A2AD
戦略を完遂した後は、中国が誇る局地戦短期能力で日本を個別に殲
滅する策謀です。
 
 在日米軍は、「ASB(AirSea Battle)戦略」で中国のA2AD
戦略に対抗します。米国は、日本列島をアジアの「パワー・プロジ
ェクション・プラットフォーム(戦力投射のための根拠地)」と位
置づけており、中国にとっては、日本列島が不沈空母の如く映る訳
です。米国国防総省は、米国のシンクタンクCSBA(Center for 
Strategic and Budgetary Assessments=戦略予算評価センター)が
報告書“AirSea Battle:A Point of Departure Operational Concept”
で構想を提起したASB戦略によって空軍と海軍を組み合わせた統
合作戦を検討しています。日本列島でのパワー・プロジェクション
能力を向上させると同時に、中国の準中距離弾道ミサイルDF−21
による在日米軍基地攻撃の射程圏外である太平洋上から迎撃ミサイ
ルを発射する戦闘態勢(Air Battle)を整え、中国側に一定の打撃
を与えてから西経160度のハワイ〜東経17度の喜望峰(アフリ
カ大陸最南端)を掌握する第七艦隊が東シナ海や西太平洋に進軍し
て本格的な戦闘態勢(Sea Battle)に突入することを想定していま
す。
 
 これまで米国の圧倒的な存在感によって中国の軍事的脅威を封じ
込めてきました。しかし近年は、米国がイラクに続きアフガニスタ
ンでも戦争の泥沼に嵌っており、アジアに割ける兵力が弱まりつつ
あります。米国の疲労は、アジアに「力の空白」を生むこととなり
かねず、空白を埋めようと中国が台頭してくる可能性も一段と高ま
ります。その場合に日本は、否応なく中国と対峙せざるを得ず、米
国のASB戦略を如何にサポート(相互防衛)できるかが鍵となる
でしょう。防衛戦略上の要衝である沖縄県・普天間問題で迷走を続
ける民主党政権は、日米同盟を前提とした日米関係が良好であって
こその日中関係であることを肝に銘じるべきではないでしょうか。
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中国の「接近阻止・領域拒否」戦略と米中衝突 
2010年08月07日 22:05海国防衛ジャーナル

中国は「Anti-Access(接近阻止)/Area-Denial(領域拒否):A2AD
」という海洋戦略を掲げています。遠方から来る敵を防衛線内に入
れさせず(接近阻止)、防衛線を突破されてもその内側で敵に自由
な行動を許さない(領域拒否)というコンセプトです。中国がこの
A2AD戦略を進めるにつれて、周辺国や国際社会との摩擦も次第に大
きくなってきています。

◆ 着々と進むA2AD戦略
中国人民解放軍第2砲兵部隊が、広東省・韶関市に新設されたミサ
イル基地に配属されました(サウスチャイナ・モーニング・ポスト
)。配属されたのは第2砲兵の96166部隊で、これに伴って配備され
る2つのミサイルが紹介されています。ひとつは、準中距離弾道ミ
サイルDF-21C(東風21)で、ベトナムの地上目標の大部分、さらに
はフィリピンのスービック湾などを攻撃し得る能力を持ちます。

もうひとつは、陸上発射型巡航ミサイルCJ-10(長剣10)で、台湾や
香港のメディアではアメリカの空母艦隊群を狙うものとして開発さ
れたと言われています。性能については両ミサイルとも未知数の部
分が多いようなのですが、どちらのミサイルも射程が2,000kmほどで
あることから、台湾はもちろんのこと、日本と係争を抱える東シナ
海、そして東南アジア諸国(ベトナム、フィリピン、インドネシア
、マレーシア、そしてブルネイなど)と領有を争っている南シナ海
をほぼ射程に収めています。

アメリカのシンクタンク「Project 2049 Institute」によると、さ
らに海南島の三亜基地へもまもなく同様のミサイル部隊を配属する
予定とのことです。海南島は、2008年4月にJDW誌において地下潜水
艦基地の存在が公表されましたが(米軍当局はその存在を2002年に
は把握していたようですが)、同誌によれば、この基地は潜水艦だ
けでなく人民解放海軍の空母基地としても使用されるようで、A2AD
戦略の重要拠点の一つとなっています。

また、Defense Newsによると、韶関には対艦弾道ミサイル(ASBM)
DF-21Dを配備する基地も建設中であることが明らかにされています。
DF-21Dの射程(1,500km〜2,000km)があれば、スプラトリー(南沙
)諸島の70%にわたるエリアをカバーできます。

なお、このDF-21Dは、「空母キラー」と呼ばれるもので、今年3月
、米上下両院軍事委員会でウィラード太平洋軍司令官が、「中国は
対艦弾道ミサイルのテスト段階に近づいている」と証言しています
(ワシントンタイムズ)。ただし、ASBMに関しては、いまだに実現
した国が無く、また中国の水上移動目標探知・追尾能力が十分でな
い点を指摘して「脅威とするほどのものではない」という見方が多
いようです。

実際、米軍の場合、イージス・ミサイル防衛艦が護衛についていれ
ばASBMへの対処は可能です。それに、ASBMが「実験段階にある」か
らといって「実用的である」ということと同義ではありません。

かつてのソ連もASBMの開発計画を進めていましたが、結局は中止し
てしまいました。巡航ミサイルを用いた対艦攻撃の方が有効だった
からです。もっとも、中国のASBMが仮に配備までこぎつけるとなる
と、実用的である・ないという議論はさておき、イージス・ミサイ
ル防衛艦を持たない中国の周辺国海軍にとっては脅威とうつるかも
しれません。

なにしろ、周辺国の海軍にとって「中国のASBMは有効である」と想
定した行動計画を立てなければならない、ということが煩わしいも
のですし、その煩わしさがひいては中国の抑止力となります。
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米軍の対中作戦新戦略「統合エアシーバトル構想」
2010-11-28 12:10:06中国人民日報

2010年2月、米国防省のロバート・ゲイツ長官は新たな『4年ごとの
国防政策見直し(QDR)』を発表し、「エアシーバトル(空海戦闘)」とい
う統合作戦の新構想を正式に認めた。「統合エアシーバトル構想」は
、既に、現在及び将来における米軍の整備、作戦運用の中心となっ
ている。

◆主要な戦場は西太平洋海域
「統合エアシーバトル構想」は、米国が西太平洋海域における最高位
の軍事行動として描く統合作戦モデルである。中国にとっては、西
太平洋海域は中国の国際戦略展開の最前方かつ中心をなすエリアで
、中国の利益はこのエリアに集中している。米国にとっては、過去
60年以上の間、米国は西太平洋海域で極めて重要な政治面、経済面
、安全面での利益を有すると、歴代政府が一貫して公に主張してい
る。

米軍は次のように考えている。広大な西太平洋海域で一旦衝突が起
きれば、中国軍は大規模な先制攻撃を実施し、西太平洋海域の米軍
は重大な損失を被る。米の空海軍部隊は西太平洋海域に進入不能と
なり、米軍の作戦エリアへの進入が遅れれば、米国の主要同盟国(日
本、韓国)及び友好国の安全確保や台湾への防衛協力という目的が有
効に果たせなくなる。

このような理由及び判断により、米国の軍事ブレーンや軍指導層は
、「統合エアシーバトル構想」を発展させ、米軍の西太平洋海域への
軍事力の輸送能力を維持することが必須だと提議している。

第一に、西太平洋海域の軍事拠点整備の更なる強化。2009年、米国
は巨費を投じてグアムの空軍基地の拡張、及び、海軍施設の整備を
行い、米軍の主要な最前方作戦基地とした。

第二に、グアムの空海軍の常駐兵力の増強。米海軍はグアムに一個
空母打撃群の配置を計画し、既に攻撃型原子力潜水艦を15隻にまで
増やした。米空軍は爆撃機6機、F15E戦闘機48機、無人偵察機「グロ
ーバルホーク」3機、空中給油機12機、及び、最新型のステルス戦闘
機F/A-22ラプターを増備する。

第三に、西太平洋海域の空海合同軍事演習の強化。米軍は最新鋭の
原子力空母ジョージ・ワシントン号を横須賀の海軍基地に配備し、
いつでも同盟国、友好国との東シナ海、黄海、南シナ海における空
海合同演習に参加できるようにして、中国の軍事力を威嚇、牽制す
る考えである。

第四に、アジア太平洋地域における基地建設の強化。既に、米軍は
マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナムなどの東
南アジア諸国及びオーストラリアで新たな基地の建設、及び、イン
ドの軍事基地の借用を計画し、西太平洋海域における危機対応力の
向上を目指している。

◆主要な攻撃目標は中国の「最後の切り札」

米軍の「統合エアシーバトル構想」の重点は、中国軍が「最後の切り札
」とする三つの武器・装備への攻撃に集中している。

第一は、中国の衛星及び作戦ネットワークの情報システムを撹乱し
、攻撃し、中国軍の指揮コントロールシステムや攻撃能力を崩壊さ
せ、麻痺させ、弱めることにより、自国の空海軍に制空権、制海権
を奪取させて主導権を握ること。

第二に、中国のミサイルシステムへの防御と攻撃に空母機動部隊の
機動性を組み合わせて、中国の防空の弱点に切り込み、中国内陸の
ミサイル基地などの戦略の中心に対して全縦深打撃を実施する。

第三に、中国海軍の潜水艦を攻撃し、各種の潜水艦探知システムや
水中無人機を運用して中国の潜水艦活動に関する情報を探り、その
情報を空海軍の空中対潜部隊に伝え、中国の潜水艦に対して非対称
攻撃を実施する。

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年11月28日
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米大物軍略家、視線は中印に 地図で読む地政学 
2010/10/21 12:01nikkei

 中央にどっかりと中国とインドが鎮座している。その周りを取り
囲むようにユーラシア大陸や朝鮮半島、日本など他のアジア諸国が
並ぶ。 

 2006年春に米国防総省の「奥の院」を訪れたとき、こんな風変わ
りな地図が飾られているのを見た。 

 その部屋の主はアンドリュー・マーシャル相対評価局長。当時、
84歳だったので、今や90歳近い。なお現役ばりばりの伝説的な軍略
家である。 

 マーシャル氏の任務は米国の国益にかかわる世界の動きを分析し
、超長期の安全保障戦略を練ることだ。ほとんどメディアに登場せ
ず、その活動は機密のベールに包まれている。 

 それでも、中国とインドを中心に描いたこの部屋の特殊地図をな
がめると、マーシャル氏の思考が見えてくる。つまり、米国の長期
戦略を左右する大きな要因は欧州でも中東でもなく、中印の行方に
あるというわけだ。 

 当時、国際情勢の展望をマーシャル氏にたずねると、中国をめぐ
る「不確実性」が最大の変数のひとつになると指摘した。必ずしも
中国の軍事増強だけを指しているわけではない。 

 「中国は一人っ子政策で高齢化が急速に進み、男女の人口比率も
かなり不均衡だ。水資源の問題も抱えている」。マーシャル氏はこ
う語ると、「中国内がどうなるか判然としないのだ」とつぶやいた
まま、押し黙ってしまった。 

 中国内部の安定が揺らげば、対外政策も強硬に傾きかねない。米
国はそう懸念しているようにも思える。 

 その一方で、インドへの警戒感は薄く、むしろ戦略的な協力相手
になると期待しているふうもある。「インドは我々と多くの価値観
を共有しているからね」。マーシャル氏のこの一言からその理由が
読み取れる。(編集委員 秋田浩之)
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 ハワイから西は中国、東は米で? 中国軍幹部が提案(ASAHI)
2008年03月12日18時58分

 「空母を開発するから、太平洋のハワイから東部を米国がとり、
西部を中国がとるというのはどうか」――。米太平洋軍のキーティ
ング司令官は11日の上院軍事委員会で、中国軍幹部からこんな「
提案」があったことを明らかにした。キーティング氏は「冗談とは
いえ、中国軍の戦略的考え方を示唆している」と語った。 

 米中は軍事交流に取り組んでいるが、キーティング氏は「ビール
をちょっと一杯という感じでは全くない」と言及。中国軍幹部に「
電話番号を聞いても教えてもらえない」として、日本や韓国との緊
密な協力関係にはほど遠いとも語った。 

 中台衝突の可能性については「非常に低い」とする一方、「中国
は65隻の潜水艦を保有しており、米軍が太平洋に展開する潜水艦
の2.5倍近い」と中国の軍事力強化に懸念を表明。また、米中の
軍事ホットラインが2カ月以内に開設されるとの見通しも示した。 


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