4097.日本システムから退出する企業と個人



円高で、日本から海外に流出している企業や貯蓄を海外に移す個人
など日本システムの不全な状態から逃げ出している。この実態を検
討しよう。  Fより

バーナンキFRB議長の講演がジャクソンホールで行われ、FRB
は追加的な金融刺激に使うことができる一連の手段を有し、9月の
会合を2日間(9月20日─21日)に延長し、これらの手段およ
び経済・金融動向について協議すると演説したことで、NYダウの
上昇した。

QE3の可能性を示唆したことからそうなる。米国は、明確なドル
安の金融緩和政策をFRBは打っている。QE2では、300兆円
という巨額なドルをばら撒いている。しかし、米政府は財政赤字縮
小であり、FRBの金融緩和策1本やりになっている。

このため、ドルは相対的に下落して、石油・金などの価格が上昇し
ている。このため、次期米大統領選挙の共和党候補指名を目指すロ
ムニー前マサチューセッツ州知事は22日、FRBのQE3を実施
すればインフレの上昇を引き起こすリスクがあるとして、反対の意
向を表明した。

また、米信託・保管銀行大手のバンク・オブ・ニューヨーク・メロン
(BNYメロン)が、預金の大量流入を阻止するために手数料とい
う形でマイナス金利を設定したが、これは預金を阻止して、通貨上
昇の抑制になる可能性が高い。この方法は、1970年代末にはスイス
の中央銀行が資本流入に伴うスイス・フラン上昇を阻止するため、
マイナス金利を導入したこともある。このごろのスイスフラン上昇
阻止にもこの方法を使うように検討している。

このように、通貨安・上昇阻止の方法は、金融政策、為替介入のほ
かにマイナス金利という手もある。

対して、日本は財政維持と日銀の腰の引けた、批判を浴びないよう
にするための金融緩和策だけである。金融緩和策して、QE1、2
の時期に50兆円であり、これでは金融緩和として、米FRBの
QE2に比べても少ない。この前にQE1があり、ここでも同様な
量のドルのバラ撒きをしている。

前日銀副総裁の武藤・大和総研理も、協調介入はしてくれなかった
が、単独介入は認められていると為替介入と、金融政策をもう少し
活用できないかという視点が必要だと金融緩和政策を勧めている。

また、長期国債の保有残高を日銀券(お札)の発行残高以下にとど
める日銀法の見直しを求めている。

しかし、円高でも日本政府が動かないので、いまや日本人は、日本
のシステムからの「退出」路線を選ぶほうが政府の政策を変えよう
と試みるよりも好ましいと確信しているようだ。とFAまで述べて
いる。

いまや日本の歴史上はじめて、個人や企業は、直面する経済問題を
自分で解決できるだけの富と自由を手にしている。個人や企業が自
己利益から見て完全に合理的な解決策を現に実施していることが、
国全体の経済問題・国債問題をますます深刻にしていると。

問題が解決できないと、日本国債の格付けを上から3番目の「Aa
2」から4番目の「Aa3」に1段階引き下げ、これを受けて、
24日に1000億ドル規模の基金創設などを柱とする緊急円高対
策をまとめ、与謝野経産相は、29日に円高対策の検討リストを発
表するというが、次期政権へ送ることになる。

しかし、円高を止める根本的な手段はとられないために、中小企業
経営者の多くが、近い将来、この国から加工業はなくなるのではな
いかと言っている。70円台半ばの「超円高」が定着すれば、日本
の輸出企業の採算は成り立たない。

やっと、日本銀行も追加の金融緩和の本格協議に入る。9月6〜7
日の定例の金融政策決定会合を待たずに臨時の会合を開き、前倒し
で追加緩和などに踏み切ることも検討するというが、まだ開いてい
ない。

産経新聞社が主要企業115社に実施したアンケートでは、円高を
放置した民主党政権を評価すると回答したのは、ゼロ%であった。

何もしないことが民主党政権との評価になっている。企業も個人も
民主党に期待せずに、日本から脱出するしかないと思い始めている
ようだ。

あしたは、もう少し、詳細に見よう。

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バーナンキ米FRB議長のジャクソンホール会合での講演要旨
2011年 08月 27日 01:04 JST

[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 26日 ロイター] 
バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は26日、米ワイオミ
ング州のジャクソンホールで講演を行った。発言内容は以下の通り。

<経済成長、インフレ見通し>
 上半期の経済成長が連邦公開市場委員会(FOMC)の予想より
もかなり緩やかで、一時的な要因では景気の弱さのごく一部しか説
明できないことを最近のデータは示唆している。このため、FOM
Cは今後数四半期の成長ペースの見通しを引き下げた。ただ、緩や
かな回復は続き、徐々に強さを増すと予想している。

 商品(コモディティー)価格やその他の重要な物価が穏やかにな
り、長期のインフレ期待が引き続き安定する中、インフレ率は今後
数四半期で、FRBの二重の責務に合致すると大半のFOMCメン
バーが考える2%程度またはそれを下回る水準に落ち着くと予想し
ている。

<先のFOMCでの政策決定の意味>
 FOMCは、低水準の資源活用や抑制された中期インフレ見通し
などの経済状況により、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目
標を少なくとも2013年半ばまで異例の低水準に維持することが
正当化される可能性が高いとの認識を示した。これはつまり、FO
MCとして最も可能性が高いと判断する資源活用や中期インフレの
シナリオにおいて、FF金利の誘導目標が少なくとも今後2年にわ
たり現在の低水準に据え置かれるということだ。

 <FRBが有するその他の手段>
 将来のガイダンスを調整することに加え、FRBは追加的な金融
刺激に使うことができる一連の手段を有している。われわれは8月
の会合で、これらの手段の相対的な利点とコストについて協議した。
われわれはさらに徹底的に議論するために、9月の会合日程を当初
の1日から2日間(9月20日─21日)に延長し、これらの手段
および経済・金融動向を含むその他の関連問題について引き続き協議
する。

 FOMCはこれからも入手するデータに基づき経済見通しを判断
する。また物価安定の上で一段と力強い景気回復を促進するために
適切な手段を講じる用意がある。
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インタビュー:円高対策で金融政策に工夫余地=武藤・大和総研理
事長
2011年 08月 26日 19:05 JST

[東京 26日 ロイター] 財務事務次官と日銀副総裁を務めた
武藤敏郎・大和総研理事長は26日、ロイターのインタビューに応
じ、現在の円高は日本のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)
に基づいておらず、さらに円高が進行すれば「断固たる介入が正当
化される」と述べた。

 円高の一因である日米金利差の縮小を食い止めるため、日銀には
資産買い入れ基金の拡大や、リスク性資産への傾斜、資産の年限長
期化による長期金利引き下げなど、金融政策面でさまざまな工夫の
余地がある、と強調した。

 ──円高の要因は。
 「現在の円高の原因が、日本経済のファンダメンタルズが強いこ
とによるものでないのは明らか。もっぱらマーケットでグローバル
な資金が相対的に安全な資産を求める投資行動から来る円高で、オ
ーバーシュートするリスクがかなり高い。このような場合は断固た
る介入が正統化される。前回の介入は単独介入になったが、欧米が
単独介入を非難することは全くないと思う。協調介入はしてくれな
かったが、単独介入は認められている」

 ──考えられる対応策は。
 「介入でいったん押し戻すことには成功したが、介入の効果は一
時的なものにとどまる。介入で円安に誘導していくことはできない。
対応策のひとつは金融政策。今、内外金利差が円高とパラレルに動
くという事実があるので、内外金利差の縮小を食い止める必要があ
る。日米の金利差は縮小しており、FRBが2013年半ばまで緩
和する時間軸を設定したので、簡単に米国の金利が上昇するとは考
えられない。日本の金利はゼロバウンドにあるので非常に厳しい状
態。残された手段は量的緩和」

 ──金融政策で何が可能か。
 「金融政策に負荷がかかっているのは日本だけではなく、米国で
も同様。金融政策をもう少し活用できないかという視点が必要だと
思う。もはや限界、という姿勢を見せるのは市場に失望を与える。
日銀は8月の金融政策決定会合で資産買い入れ基金を10兆円拡大
したとおり、まだ政策対応の余地がある。金額だけでなく、中身に
ついても対応余地がある。リスク性資産により傾斜するとか、保有
資産の長期化で長期金利に直接影響を及ぼし、ポートフォリオ・リ
バランスによる長期金利への働きかけで日米金利差に影響を与える
ことはできると思う」

 ──復興財源をめぐり日銀に国債引き受けを求める声が政界など
にある。
 「国債引き受けは論外。かえって信認を失う。しかし、市場から
の国債買いオペレーションを拡充することは可能。長期国債の保有
残高を日銀券(お札)の発行残高以下にとどめる日銀券ルールは、
長期的にはそれでよいが、少しでも上回ってはいけないというのは
いかがなものか。何年かでならしてその範囲に入っていればよいの
ではないか」

 「民主党の代表戦候補者で、全面的に復興税を否定する方はいな
いのではないか。風邪をひいているのに水浴びしては肺炎になると
いうことで、(増税は)時期を見計らおうということではないか」

 「万が一財政規律を軽んじる対応をすると、今すぐでなくても債
券安、国債金利高という市場のアタックを受ける恐れがかなりある」

(ロイターニュース 竹本能文、木原麗花;編集 山川薫) 
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日本システムから退出する企業と個人
(2001年)
レオナード・J・ショッパ
バージニア大学准教授(論文発表当時)
 フォーリン・アフェアーズ リポート アンソロジーvol.32

いまや日本人は、日本のシステムからの「退出」路線を選ぶほうが
、政府の政策を変えようと試みるよりも好ましいと確信しているよ
うだ。運命共同体的な日本企業も二分され、競争力のある企業は自
分だけのボートを保有するようになり、その結果、競争力のない企
業が救済措置を求めて日本政府へ影響力を行使することにも異を唱
えなくなった。日本の銀行や政府が、形ばかりの再建案と引き換え
に、いまも債務まみれのゾンビ企業への新規融資や公共事業を提供
するなか、競争力のある日本企業、老後を心配する市民、若い女性
たちはこれまでの日本のシステムから退出しつつある。

 いまや日本の歴史上はじめて、個人や企業は、直面する経済問題
を自分で解決できるだけの富と自由を手にしている。個人や企業が
自己利益から見て完全に合理的な解決策を現に実施していることが
、国全体の経済問題をますます深刻にしている。かつては、日本の
個人や企業は独自に経済問題に対応できるほど豊かではなかった。
その結果、個人も企業も国による集団的努力のなかに身を置くとい
うやり方に依存してきた。政府へのこうした依存構図ゆえに、日本
の市民は自分たちの声に政府が耳を傾けるように働きかけ、賢明な
政策をとるように、つまり、債務を増やさず、非効率を生むような
経済介入を行わないように求めてきた。

 大きな自由と富を利用できるようになった市民は、問題への対処
を政府に強く求めるよりも、この国が直面する問題から逃れようと
している。いまや日本人は、自らの運命を自分で切り開くためにシ
ステムからの「退出」路線を選ぶほうが、政治運動によって政府の
政策を変えようと試みるよりも好ましいと確信しているようだ。

 しかし残念なことに、このトレンドが国レベルでの経済問題をさ
らに深刻にし、一方で政府は少子化とそれに伴う労働人口の減少と
いう環境下で、膨大な規模に達している赤字を均衡に持ち込むとい
う遠大な目標に取り組みつつ、デフレスパイラルから抜け出そうと
格闘している。
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与謝野氏、29日に円高対策の検討リスト発表 為替介入には慎重
姿勢
2011.8.26 10:58サンケイ

 与謝野馨経済財政担当相は26日の閣議後会見で、歴史的水準が
続く円高に対して、政府が講じるべき対策の「検討リスト」を29
日に開かれる「経済情勢に関する検討会合」で提示することを明ら
かにした。具体的な予算措置や法改正などは新内閣に委ねる。

 リストには、円高の直撃を受ける産業界に向けた金融支援や雇用
対策、さらに円高のメリットを生かした資源開発などの推進を打ち
出す見通し。2011年度第3次補正予算案などに盛り込むよう新
内閣に求める。追加の為替介入については「武器として持っている
必要はあるが、そうしょっちゅう使える武器ではない」と慎重な見
方を示した。
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政府が緊急円高対策発表、1000億ドルの基金創設
2011年 08月 24日 15:46 JST

 [東京 24日 ロイター] 政府は24日、外国為替市場で長
期化する円高への対応策として、1000億ドル規模の基金創設な
どを柱とする緊急円高対策をまとめた。

 過去最大規模に積み上がった外為特会のドル資金を民間資金が海
外へ向かう「呼び水」とすることで、円相場の安定と、資源獲得な
ど円高メリットの活用を同時に狙う。為替トレーダーが保有する主
要通貨の持ち高報告を初めて義務化し、投機の監視にも大きく踏み
込んだ。

 政府がまとめた「円高対応緊急パッケージ」は、外為特会で保有
するドルを基金として、国際協力銀行(JBIC)を経由して活用
する仕組み。政府がリスクマネーの供給や政策融資に乗り出すこと
で、日本企業による海外企業の買収や資源・エネルギーの確保を後
押しし、市中や民間に滞留する円資金の外貨転換を促す。期間は1
年間の時限措置。
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ムーディーズ、日本国債を1段階格下げ 「Aa3」に
2011年8月24日11時4分

 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは24日
、日本国債の格付けを上から3番目の「Aa2」から4番目の「A
a3」に1段階引き下げると発表した。東日本大震災で政府支出の
増加が見込まれるなか、財政赤字削減の具体策が見えないと指摘。
債務返済の可能性が低下したと判断した。 

 ムーディーズによる格下げは、2002年5月以来9年ぶりにな
る。「Aa3」は中国や台湾と同じで、先進国ではイタリアを下回
る最低ランクになる。 

 格下げの理由についてムーディーズは、震災による支出増のほか
「原発事故で経済成長が弱まり、赤字削減目標の達成を一層困難に
している」と説明している。政府による税と社会保障制度の改革案
も「詳細に欠ける」としており、消費税の引き上げ時期を「2010
年代半ばまで」とするにとどめていることなどが影響したとみられ
る。
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共和党ロムニー氏が追加刺激策に反対、「インフレリスクに」
2011年 08月 23日 09:34 JST

 [ボストン 22日 ロイター] 次期米大統領選挙の共和党候
補指名を目指すロムニー前マサチューセッツ州知事は22日、米連
邦準備理事会(FRB)が追加の景気刺激策を実施すればインフレ
の上昇を引き起こすリスクがあるとして、反対の意向を表明した。

 金融市場は、FRBのバーナンキ議長が26日に米ワイオミング
州ジャクソンホールで行う講演で、新たな景気刺激策に言及するの
ではと注目している。もっとも、大規模な追加措置の実施は考えに
くい。

 ロムニー氏はフォックスニュースに対し「さらなる量的緩和(Q
E3)は、経済が抱える問題への解ではないし、インフレにつなが
りかねない。正しい行動ではない」と述べた。
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とどめ刺された・壊滅だ…超円高に町工場悲鳴
2011年8月21日19時12分 読売新聞

 「こんな状態が続くなら、国内の製造業は壊滅だ」。

 ニューヨーク外国為替市場で一時1ドル=75円95銭という史
上最高値まで達した超円高。東日本大震災後の不況にあえぐ中での
追い打ちに、「ものづくり」で東海地方の経済を下支えしてきた町
工場からも悲鳴が上がった。外国人から人気を集めていた観光地も
、客足の減少に不安を隠せないでいる。

 愛知県刈谷市の工場地帯に社屋を構え、自動車部品などの金属バ
ネ製造・加工を手がける柴田スプリング製作所。「円高の影響で輸
出型企業の下請け仕事がなくなれば、『生きる糧』を奪われたも同
じ」。2代目社長、柴田直幸さん(49)は、反転の糸口すら見え
ない円相場に、これまでにはない悲壮感を抱えている。

 父から会社を継いで30年。針金細工を新たに始めるなどし、
18人の社員と切り盛りしてきた。しかし、リーマン・ショックで
一時、売り上げが50%以下に。「預金や保険を崩し、1人のクビ
も切らずに何とか乗り越えた」と思ったら震災が発生、3〜5月は
計1600万円の赤字を出した。

 どんな状況でもあきらめずにやってきたが、「今度ばかりは自分
の力でどうにかできると思えない」。一経営者として、超円高が続
くなら、自動車産業に限らず、大企業が生産拠点を海外に移すのは
必然だと思うからだ。

 「慈善事業じゃあるまいし、自ら大損をしてまで仕事をくれる企
業などあるはずがない。近い将来、この国から加工業はなくなるの
ではないか」。柴田さんはため息をついた。
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日銀、追加緩和を本格協議へ 臨時会合も検討
2011年8月21日3時2分

 円相場が戦後初の1ドル=75円台まで進んだのを受けて、日本
銀行は追加の金融緩和の本格協議に入る。週明け22日以降もさら
に円高や株安が続けば、9月6〜7日の定例の金融政策決定会合を
待たずに臨時の会合を開き、前倒しで追加緩和などに踏み切ること
も検討する。

 70円台半ばの「超円高」が定着すれば、日本の輸出企業の採算
は悪化。東日本大震災からの復興を進めつつある日本経済に打撃を
与えかねないからだ。日銀関係者は20日、「常に緊張感を持って
金融市場の動向を注視していく。手をこまぬいているつもりはない
」と語った。政府も「円売りドル買い」の為替介入を検討しており
、介入と追加緩和で、円高の進行を阻止する構えだ。

 円は投資家の不意を突く形で、ニューヨーク市場の19日午前(
日本時間同日深夜)、一時1ドル=75円95銭をつけて戦後最高
値を突破した。その後76円台に戻ったものの、22日以降の取引
でドル売り円買いが勢いづく可能性は残る。機敏な対応が必要にな
るため、日銀は9月の定例会合を待たずに、臨時会合を開くことも
視野に入れて追加緩和を検討する見通しだ。
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【主要企業アンケート】民主党「評価」ゼロ 産業空洞化の恐れ8割
2011.8.19 22:15サンケイBIZ

 産経新聞社が主要企業115社に実施したアンケートで、円高や
電力不足によって、工場などの海外移転が加速する産業空洞化の恐
れが「ある」と回答した企業が8割を超えた。業績の圧迫材料とし
ては、5割超の企業が歴史的な高値にある「円高」を挙げ、国内で
の事業継続が厳しさを増している実態が浮かび上がった。一方、民
主党政権を「評価する」とした企業は1社もなく、政策への不満が
明確になった。
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マイナス金利
2011年 8月 15日  15:32 JST
WSJ
 BNYメロンのように金融機関が大量の資金流入を阻止するため
、預金に手数料を導入する、つまりマイナス金利を導入したのはこ
れが初めてではない。1970年代末にはスイスの中央銀行が資本流入
に伴うスイス・フラン上昇を阻止するため、マイナス金利を導入し
た。

 銀行に預金という形でお金を貸せば、普通は金利分が上乗せされ
、貸した額を上回るお金が返ってくることが期待できる。
マイナス金利とは、この逆で金利分が差し引かれ、貸した額を下回
るお金しか戻ってこない状態だ。借り手側から見ると、借りた総額
より少ないお金を返すだけで事足りる金利だ。

 なぜ、このような異常な事態が起きるのか。

 その背景には、現在の米国や日本のように政策金利が実質的にゼ
ロで、市場に大量の資金が供給される超金融緩和状態がある。

 上の例文は今月5日、米信託・保管銀行大手のバンク・オブ・ニュ
ーヨーク・メロン(BNYメロン)が、預金の大量流入を阻止するた
めに手数料という形でマイナス金利を設定したというニュース記事
から引用したものだ。BNYメロンは企業や投資会社、金融機関の
余剰資金を預かり、決済などに当てる保管業務が中心の銀行。

 そのBNYメロンに企業や金融機関が手数料をまるまる損しても
お金を預けなくてはならない理由が「超カネ余り」だ。米連邦準備
理事会(FRB)がこれまでの量的緩和策で米国債購入などによっ
て供給した資金量は2.6兆ドル(約200兆円)に上る。ところが、世
界的に経済は減速気味で投資会社や金融機関は集まった資金の運用
先を探すのに四苦八苦の状況が続いている。

 特に7月に入ってからは、ギリシャの新規支援決定までの紆余曲折
から欧州債務危機がスペイン、イタリア、ひいてはフランスまで飛
び火するのではとの懸念が強まり、これら欧州の国債や社債に投資
し続けて損失を被るより、マイナス金利でBNYメロンに預けてお
いた方が「得」との計算になり預金が大量流入したわけだ。

 また、この記事では米国の財務省短期証券(TB)1カ月物の利回
りがゼロを下回れば、BNYメロンはさらに追加手数料を徴収する
としていた。実際、同日の市場取引で利回りがゼロを下回ったこと
を伝えている。このTBのマイナス金利への転落も同様の理由で、
欧州国債など他の投資で大損するより、資産としては安全なTBを
額面価格より高い金額を払って購入するマイナス金利投資でも、こ
ちらの方がましという計算だ。

 BNYメロンへ預ける側のロジックは「大損より小損」だが、預
かる側のBNYメロンはなぜマイナス金利の手数料を取らねばなら
なかったのか。実は、預金を受け入れるには、その保護のため連邦
預金保険公社(FDIC)に保険料の支払いが必要な上、資産であ
る預金が膨らめば自己資本増強をせまられ、そのコストがかさむた
めだ。

 ところで、日本では前回のゼロ金利、超金融緩和期だった2003年
に、別の形のマイナス金利が発生している。銀行間で資金を融通し
合う短期金融市場で欧州系外銀が日本のメガバンクにマイナス0.01
%で融資したのだ。

 このからくりは、当時の日本の不良債権処理の遅れによる金融シ
ステム不安も絡んでいる。やはり国内の経済停滞と超低金利で、海
外での営業比率が増えた日本企業の資金ニーズに応えるため、邦銀
はドルをはじめとする大量の外貨が必要となっていた。その調達に
は通貨スワップが使われたが、金融システムに不安のあった邦銀は
多額のプレミアム(上乗せ交換手数料)を払わなければならなかっ
た。

 このため、この欧州外銀は事実上マイナス0.08%の金利で円を調
達できたため、マイナス0.01%の金利で貸しても利益が出る仕組み
だったのだ。これら外銀は日本銀行の当座預金口座に準備預金(金
利はゼロ)として預けておけば、より大きな利ざやが稼げたはずと
の疑問を持つ向きがあるかもしれないが、リスク管理ために日銀の
準備預金にも上限を自ら設けていたため、外銀はほかでの運用をせ
ざるを得なかった。

 さてFRBは9日の公開市場委員会(FOMC)で実質ゼロ金利政
策を最低2年間続けることを表明した。日本でも金融の一段の緩和策
が予想される。日銀は4日の決定会合で、さまざまな金融資産を購入
する資金額を10兆円増額し50兆円としたが、日本でも今度はどんな
形になるかは別にしてマイナス金利が出てくる可能性がある。

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