4086.間違いだらけの普天間基地移設問題



クラス0戦略#1・間違いだらけの普天間基地移設問題 

この議論は、実はまだ続いています。 
話の論点が筋違いな方向へ行っているので、あまり掘り下げたくは
ないのですが。 

まず先にはっきり言いますが、私の主張は、『ほとんどの米軍基地
は無くしても、日米同盟は正常に維持出来る』というものです。 

アメリカという国は、いざという時は敵前100kmにある島に上
陸し、3日で補給拠点を作ってしまう、桁外れの実力を持っていま
す。 

Fさんは、なぜアメリカの立場で物事を判断するのですかね。 
「アメリカ軍にとって必要かどうか」という視点で判断すれば、ど
んなつまらない基地も無くせません。 

『日本の国益にとってプラスかマイナスか』 

まずはそこが重要です。 
アメリカ人は、日本の国益など考慮しません。 
だから、日本人はもっと自分達の国益を大切にしろ。 
そうアドバイスをくれるアメリカ人もいる訳です。 

沖縄にしろ、横田にしろ、「10年以内に50%以上の確率で朝鮮
有事があるなら、(韓国のために)残してやってもいいかな」とい
うレベルです。 
それですら、竹島が帰って来る訳でもないし、日本の基地負担は日
本を直接守るためのものではないので、何のメリットも無いのです。 
中国や韓国など(ロシア、北朝鮮を含めて)、どんな借りにも恩を
感じない国家・民族を相手に、恩を売っても何の得にもならないの
です。 

戦後の日本を守っている(いた)のは、日米同盟であり、兵器とし
ては核の傘だけです。 
沖縄に訓練基地が欲しいなら、それ相応のお金を戴くのが筋です。 
それが出来ないのは、日本の外交がアメリカの支配から独立してい
ない証拠です。訓練など、世界中のどこでも出来ます。 

ドイツの米軍基地は、東西統一をきっかけに劇的に減りました。 
ドイツの政治(外交)やドイツ軍自体がかなりのレベルに成熟して
いるから・・という背景も当然ありますが、同じ敗戦国の一方の日
本は、未だに戦後処理が終っていません。 
それが、憲法(自衛隊)問題であり、米軍基地問題であり、領土問
題であり、『連合国』常任理事国問題である訳です。 

日本の政治家が外交下手なのは、敗戦国としての呪縛から逃れられ
てないのもありますが、損得計算が出来ないのが致命的なんです。
相手が嫌がる事を、どこまで押すのが妥当か判らないので、全く押
さないで相手の善意に期待することしか出来ない訳です。 
高いか安いか判らないで、物を買っていれば、そのうち会社も家計
もパンクします。 
持論ですが、国際的に通用する政治家とは、理系の出身であるべき
と考えます。 
何かを官僚から吹き込まれた時に、それが全体に与える影響がどの
くらいなのか、大雑把にもイメージ出来ないと、事の良否や優先順
位が判断出来ず、結局は官僚の思う通りに動かされる事になります。 

『ちゃんと計算してごらん。』 

これくらいの事でアメリカは日本との同盟を切ったりしませんよ。
そんな事くらいで日米関係が壊れるようなら、とっくの間にアメリ
カは中国に対して強硬な経済制裁をしています。 

基地の削減は、却って(日本からの追い銭も貰えるし)軍事予算の
削減になるので、財政が苦しいアメリカ政府にも追い風になる。 
よって、在日米軍基地の現状維持は、アメリカの総意ではない。 
6対4なら、日本がどうしたいかによって簡単にひっくり返せるの
です。 
『日本はアメリカに協力しなければならない』という考えから、
『アメリカに協力して貰う』という考え方に積極的にシフトしなけ
れば、米軍基地など1つも無くせないでしょう。 

日米同盟にひびが入って困るのは、アメリカの方。 
そう思いませんか。 
日本はもっと強気に出るべきです。 

元米高官が『決断出来ない日本』という著作を(8月19日に)
出版する話に象徴されるように、日本が近隣諸国を始め、世界のあ
らゆる国から馬鹿にされているお粗末さは、堪えがたいものです。
フィリピンでさえ、戦前から伝統のあるクラークフィールド米軍基
地を廃止する「決断」をしたのです。日本がその気になれば、米軍
基地を半分にするくらいの事、出来ない訳がないでしょう。 

馬鹿にされている日本人の考え方は、根本的に改めるべきです。 
近いうち、私が日米同盟の正しい使い方を教えてあげましょう。 

勘助 
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(Fのコメント)
安全保障の考え方を、どういう観点で見るかの議論ですね。私は、
日本一国主義を取らない。仮想敵国を想定して、それに対応して安
全保障を米国や韓国、豪州、ベトナムなど他国との協調関係で考え
る立場です。

その仮想敵国は中国であり、中国との相対的な軍事的な関係で米国
は日本に基地を作り、撤退することもある。日米同盟の基本的な仮
想敵国は、昔から中国の台湾侵攻、北朝鮮の韓国侵攻を阻止するこ
とでしたから、沖縄を中心に基地を設けてきた。

現在は、中国の南シナ海侵攻が一番可能性が高いので、フィリピン
のスピークス空軍・クラーク海軍基地の後継の基地というのはあり
えると見ている。フィリピン海軍は護衛艦1隻しかないために、中
国は南沙諸島のフィリピン領有の島に先に攻め、領有した過去があ
り、フィリピンは非常に危機感を持っている状態です。

それと中国が、DF-21Dという対空母弾道ミサイルを配備し初めて、
沖縄や横須賀が危険な状態になり、空母を含めてオーストラリアへ
の撤退を検討し始めているようだ。海兵隊も中国では有効ではなく
なり、海兵隊自体の存続の議論も出ている。というような状況の変
化が、中国の軍備拡張により、巻き起こっている。

軍事的な観点から安全保障を日米で議論して、感情問題で議論する
ことの無意味さが悟るべきでしょうね。

全ては、仮想敵国の戦略・戦術との相対問題で、日米の軍備配置を
考えることが重要であると思いますよ。
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米軍は東アジア海域とペルシャ湾に介入できなくなる?
――危機にさらされる前方展開基地と空母

アンドリュー・F・クレピネビッチ
戦略・予算評価センター所長
 フォーリン・アフェアーズ リポート 2009年9月号

 アメリカが死活的に重要な利益を有する地域・海域に、伝統的な
作戦概念で戦力を展開させるのが次第に難しくなってきている。事
実、米軍は、東アジア海域とペルシャ湾に次第に立ち入れなくなり
つつある。中国は、沖縄の嘉手納空軍基地、グアム島のアンダーセ
ン空軍基地などの前方展開基地から米軍が自由に作戦行動を取れな
いようにするために、これらの基地をかなりの精度で攻撃できる通
常兵器を装填した弾道ミサイルの大がかりな配備を進めている。東
アジアの海域はゆっくりとだが、それでも着実に米海軍、とくに空
母が立ち入れない海域になりつつある。・・・ワシントンの政策決
定者は今後における真の脅威を軽くみている。このままでは、いず
れ「驚きを禁じ得ない戦略状況」に直面する。冷戦初期に試みられ
た戦略見直しと同様の奥深さとビジョンを持つ、アメリカの世界戦
略に関する包括見直しがいまや必要とされている。

欧米の技術、東洋の戦略

 東アジアでは、さらに侮れない問題が浮上しつつある。中国軍が
、アメリカの東アジア地域への戦力展開能力を枠にはめるような軍
事能力と戦略の整備に力を入れているからだ。こうした路線へと中
国が転じたのは、二度におよぶイラク戦争、1999年のバルカン
戦争(コソボ空爆)での米軍の圧倒的な能力に対して北京が大きな
危機感を抱いたからだ。米軍の精密誘導兵器による爆撃の効果、衛
星システムが戦争で果たした役割に北京は大きなショックを受けた。
米軍の衛星は信頼できるナビゲーションツール、コミュニケーショ
ンツールとして機能し、天気、攻撃目標の正確な情報だけでなく、
(敵の)ミサイル発射に関する正確な警告ももたらした。

 中国側の現在の試みは、1995〜1996年の台湾危機の際の
経験も踏まえている。このとき、米空母U・S・Sニミッツが台湾
海峡に入ったことで、中国は台湾に対する威嚇攻撃(ミサイル発射
訓練)を停止せざるを得なくなった。圧倒的なアメリカの海軍力を
見せつけられた中国は、これを機に米軍の東アジアへのアクセスを
制限する能力を整備することを決意した。

 もちろん、中国の政治・軍事指導者も、アメリカの軍事力に正面
から立ち向かうのが無謀なことは理解している。むしろ中国は奇襲
攻撃を通じて紛争になった場合に先手を取れるように、欧米の技術
と東洋の戦略をうまく組み合わせようとしている。

 中国のアプローチは、米軍のコミュニケーション・ネットワーク
を混乱させるか、破壊し、先制攻撃をかけることで、相手に行動を
起こすことを断念するように仕向けることにある。奇襲攻撃、ある
いは必要なら攻撃するという恫喝策をつうじて、アメリカの軍事行
動のコストを高め、介入を阻止することが狙いだ。

 中国側はこの戦略を支える軍事能力を「殺人者の棍棒=アサシン
ズ・メース」と呼び、「殺人者の棍棒」の兵器と技術によって、「
弱者(中国)が強者(アメリカ)を打倒できるようになる」と繰り
返し表明している。

 中国の目的は、アメリカの軍事専門家が「アクセス遮断・地域介
入阻止」(A2/AD=anti-access/area-denial))と呼ぶ能力を
開発し、配備することにある。中国はアクセス遮断戦力によって、
沖縄の嘉手納空軍基地、グアム島のアンダーセン空軍基地などの前
方展開基地から米軍が作戦行動を取れないようにしたいと考えてお
り、これらの基地をかなりの精度で攻撃できる通常兵器を装填した
弾道ミサイルの大がかりな配備を進めている。

 固体レーザーのような、最近における指向性エネルギー技術の進
化によって、今後10年もすれば、現在よりもはるかに高い効率を持
つミサイル防衛システムを実戦配備できるようになるかもしれない
が、現状では弾道ミサイル防衛には限界がある。多数のミサイルが
撃ち込まれてくれば、防衛システムは圧倒されてしまう。弾道ミサ
イルの配備を進める中国が、アメリカおよびアメリカの東アジアの
同盟国とパートナーに伝えたいメッセージは明らかだ。それは「わ
れわれは、(対中)攻撃の際に米空軍が利用しなければならない前
方展開基地を脅かす手段を持っている」というメッセージに他なら
ない。

 一方で、地域介入阻止能力の目的は、中国沿海はもとより、日本
南東部からグアム島へと至る「第2列島」海域での米海軍の行動の
自由を制約することにある。中国軍は水平線を越えて広範囲をカバ
ーできるレーダーを開発する一方で、無人偵察機の配備もすすめて
いる。それだけではない。米海軍の戦艦その他の位置を特定する偵
察衛星を配備している(中国の衛星情報の精度も次第に高まってい
る)。

 米空母とその戦闘群・護衛艦を追尾・攻撃できる最新鋭の魚雷を
装備した潜水艦、水面近くを高速で飛行するASCMも数多く調達
している(2006年には、米海軍にとっては困惑を禁じ得ないこ
とに、米空母戦闘群がいる海域に、中国の潜水艦が忽然と浮上する
という事件も起きている)。中国は、高速のASCMを装備した爆
撃機、かなり遠距離から米空母を攻撃できる対艦弾道ミサイルの調
達と配備をすすめているし、最新鋭の対艦機雷が沿海地域での米軍
の活動をさらに制約することになるかもしれない。
こうした中国側の試みが何を意味するかははっきりしている。東ア
ジアの海域はゆっくりとだが、それでも着実に米海軍、とくに空母
が立ち入れない海域になりつつある。米軍がこの海域での作戦をう
まく実施するには、搭載する短距離戦闘機の活動範囲へと米空母を
進める必要があるが、そうすると中国軍のA2/ADシステムがカ
バーする海域に入ってしまう。米空軍の短距離爆撃や支援航空機を
受け入れているホスト国の大規模な前方展開基地も(中国の弾道ミ
サイルの配備によって)脅かされつつある。したがって、すべてが
「無駄な資産」と化してしまうおそれがある。

 アメリカがこれらの問題にうまく対処していかなければ、アジア
の軍事バランスは、中国に有利な方向へと大きくシフトしていく。
この場合、中国は(現在の穏やかな外交路線を見直し)地域内の既
存の問題を侵略によってではなくても、強制的に解決しようと試み
るようになるかもしれない。


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