4079.米軍衰退でアジアに緊張



米国の財政赤字縮小のために、国防費が大きく削減されることが、
ほぼ共和党、民主党の合意である。その意味を見ておく必要がある。
            Fより

米国の外交問題に非常に大きな影響力を持つCFR(外交問題評議
会、Council on Foreign Relations)の機関紙FAにとうとう、米
軍が縮小されたときどうなるかを論じ始めた。これは米軍衰退を真
剣に日本も見ておかないと、世界情勢は難しくなる。特にアジア情
勢は、困難が予想される。

日本もアジアも今まで米国という存在があることで、平和が保たれ
たが、これに挑戦する中国が出てきたことで、今非常に心配な状態
が生まれようとしている。

リチャード・ベッツ氏は、軍事的なコミットメント、能力、資源、
戦略をバランスのとれたものにしなければならない。予算を削減し
なければならないのなら、バランスをとるためにコミットメントを
引き下げるしかないという。

今まで、台湾への中国侵攻は、米国が防御する暗黙のコミットメン
トが存在したが、どうもこれも怪しくなる。そのような状態になる
と、中国は、それを試すためにいろいろな侵攻的な事態を引き起こ
す可能性がある。それは沖縄の嘉手納基地なども無縁ではない。

このごろ、中国艦船が、沖縄列島を越えて太平洋に出てくるのも、
それを見据えた作戦である可能性がある。

レスリー・ゲルブ氏は、戦争から経済にシフトするしかないとして
いるが、中国の脅威が現実の問題としてある東南アジアでは、それ
でも緊急の課題である。そして、空母が現実的に就航したことで、
中国がいつ強硬な手段でくるか非常に心配な段階にある。

奥山さんも、ジョセフ・ナイまで「オフショア・バランシング」と
いい始めたというし、オフショア・バランシングとは、「ユーラシ
ア大陸のバランス・オブ・パワーの安定のためには、一時的には介
入するが、あまり出過ぎるな」であり、基本的には太平洋でパワー
バランスをとることであるから、孤立主義と間違えるような政策で
ある。

「オフショア・バランシング」で米国はイラクからもアフガンから
も撤退して、今後中東への軍事介入は基本的にはなくなると見たほ
うがよい。

A・フリードバーグ氏は、中国の目的は、東アジアにおける支配的
なパワーとしてのアメリカに取って代わり、おそらくは、アメリカ
を東アジア地域から締め出すことにあるという。

奥山さんは、中国がアメリカに代わって世界覇権を獲得したら、単
に中国が「警察」になるだけであるが、そうはならないという。中
国は警察になる気はない。そうすると、無極化、つまり「仁義なき
戦い」となる。

中国は、手ごわいヤクザの集団になり、これに対応するために、他
のヤクザ集団はてを結ぶ必要がある。下手すると白人(露加米北欧)
vs.非白人(中のみ)という可能性も出てくる。

ということで、日本も武器を持ち、他の国と中国の野望を封鎖する
ために、手を取ることが必要になっている。1930年代から戦争
に突入する1940年代へと世界は変化して行く事を覚悟する必要
がある。第3次世界大戦へと歴史は進んでいくことになる。

年金問題で予算が不足しているというが、安全保障もできないと意
味がない。戦略を描けない日本は、歴史的な岐路に立たされること
になる。将来も見通しを持って、政治をしないと難しい時代になっ
てきたと見るがどうであろうか?

さあ、どうなりますか??
==============================
紛争介入戦略の終わり 
――予算削減に即した対外コミットメントの見直しを 
リチャード・ベッツ
米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー
 フォーリン・アフェアーズ リポート 2011年9月号掲載予定

おそらく国防予算に大なたが振るわれるのは避けられないだろう。
原則的に、軍事的なコミットメント、能力、資源、戦略をバランス
のとれたものにしなければならない。予算を削減しなければならな
いのなら、バランスをとるためにコミットメントを引き下げるしか
ない。

アメリカは常設軍を持っていなかった第二次世界大戦前の状況へ回
帰していくべきだろう。われわれの訓練、研究・開発、機構構造、
メンテナンスを重視し、状況が変わり、世界情勢が悪化した場合に
は、迅速な戦力増強のベースになるこれらの軍事インフラを用いて
戦力を組織していくやり方に切り替えていくべきだ。

特に、高度な先端技術を用いた戦闘機、戦艦、大規模な兵器システ
ムの導入には慎重でなければならない。われわれの軍事技術領域に
おける優位を可能な限り維持するために、研究・開発は続けるべき
だが、国際情勢が悪化し、すぐれた兵器が必要になるまでは、そう
した先端兵器を大規模に配備すべきではない。
==============================
アジアの米軍基地再編と沖縄
―― 普天間移設問題に関する米議会の立場
ジム・ウェッブ
米上院外交委員会東アジア・太平洋小委員会
委員長、元米海軍省長官
 フォーリン・アフェアーズ リポート 2011年8月号

何年もかけてまとめた外交合意を変更するには、具体的な代替策が
必要になる。そこで、私とレビン上院議員が(普天間の移設問題に
)介入した。われわれはグアム、沖縄、東京で、米軍及び相手国・
現地の関係者から意見を聞いた。その後、まとめた提言では、普天
間の海兵航空隊機能を嘉手納空軍基地に移して統合すれば、手詰ま
り状況を打開し、よりタイムリーにコスト面でもより効率的に問題
に対応できると指摘した。われわれは嘉手納空軍基地の規模の削減
も提言したが、この点は日本のメディアではほとんど報道されなか
ったようだ。嘉手納基地から削減される戦力を、日本における他の
空軍基地、現状では機能の半分も使用されていないグアムのアンダ
ーソン空軍基地に移すこともできる。(ジム・ウェッブ)
==============================
地政学の中枢は軍事から経済へ
――経済の時代の新安全保障戦略を 
レスリー・ゲルブ	
 米外交問題評議会名誉会長
 フォーリン・アフェアーズ2011年1月号

主要国は経済を成長させるために、これまでになくお互いを必要と
しており、伝統的な軍事的、戦略的ライバル関係が紛争へとエスカ
レートしていくのがもっとも厄介だと考えている。多くの指導者が
もっとも気にかけているのは、貿易、投資、市場アクセス、為替で
あり、富裕層をさらに豊かにし、その他の社会層により良い生活を
提供することだ。

新興国の多くにとっても、経済成長は、国内の反体制派を抑え込む
ためのもっとも強力な手段だ。アメリカも「いまや地政学の中枢が
(軍事ではなく)経済であること」を認識したアプローチへと移行
する必要がある。この意味で、アメリカは、利益と価値を共有する
ヨーロッパや日本と21世紀型の連帯を組織し、この連帯に他の多く
の諸国を参加させていく必要がある。現在のアメリカのパワーは「
アメリカの助けがなければ自国の問題を解決できないと考え、共通
の目的を達成するにはアメリカの利益にも配慮しなければならない
と考える」諸国に依存している。
==============================
ツイッターからの議論
masa:ジョセフ・ナイまで「オフショア・バランシング」に賛同す
るようなことを言い始めた。彼の場合は「アイゼンハワーを見習え
」的な言い方だけど。
FAJ:中国の目的は、東アジアにおける支配的なパワーとしてのアメ
リカに取って代わり、おそらくは、アメリカを東アジア地域から締
め出すことにある。(A・フリードバーグ)「中国の真意は何か」
フォーリン・アフェアーズ・リポート8月号
masa:でしょうなぁ。恐怖感が強いわけで。RT"@Inabaku: でも地域
の大国同士がアメリカを抜きにして話し合いの場を持つ事は無視で
きないし許す気もない>「オフショア・バランシング」"
masa:ジョセフ・ナイの「ソフトパワー」で勘違いしちゃいけない
のは、それが広まる環境の前提としてあるのが「アメリカのハード
パワーをベースにした国際的に安定した安全保障の秩序がある」と
いうもの。これを知らずにやみくもに「ソフトパワー」という概念
だけ論じてる人が多いような気がする。
masa:ナイが日本のソフトパワーを絶賛するときも、「アメリカと
いうハードパワーが支えている世界秩序の中で日本はソフトパワー
を発揮できるのだよ、フッフッフッ」と思っているとかいないとか。
いや、実際そういう前提なんですが。
masa:下手すると白人(露加米北欧)vs.非白人(中のみ)という可能性
も?RT"@Inabaku: 中と露+米の対立フラグですかw シベリア鉄道で
繋がったロシア極東の経済・交通網を分断してから"
masa:誤解を承知でいえば、アメリカは警察、それ以外の国家は暴
力団組織、アルカイダは年少を出入りするチンピラ、というのもひ
とつの捉え方。
masa:アメリカは基本的にすべての国を小馬鹿にしてます(笑RT 
@Inabaku「ソフトパワー」とは、ブレジンスキーの「ひよわな花・
日本」を日本人にも受け入れやすく言い替えただけ……?"
masa:問題はこれから警察が人員カットを始めそうなところ。そう
するとその穴を埋めようとしてヤクザがシマ争いを始める。これが
「多極化」。
masa:中国がアメリカに代わって世界覇権を獲得したら、単に中国
が「警察」になるだけ。
masa:無極化、つまり「仁義なき戦い」RT"@s_do_i: 「多極化」っ
てつまるところ「無極化」にすぎないRT ヤクザがシマ争いを始め
る。これが「多極化」。"
GG:だから僕はみんなに深作欣二の「仁義なき戦い」を観ろと言っ
てるんですよ。スカした「ゴッドファーザー」より百倍タメになる。 
masa:もし中国が「警察」になったら、日本はどうする?ヤクザにな
るのか、それとも「警備員」を続けるのか。
masa:「アジア人同士ケンカせず」という標語を推進している人々
がいるが、これはそもそも国家がヤクザであるということを都合よ
く忘れようとしている言葉かと。
YS:たとえ「目ン玉つながりのお巡りさん」でも、いないよりはいる
方が何かと便利とみんなが思い始める。単純だから扱いやすいが
その理由。問題は「立つんだ目ン玉つながりのお巡りさん」コール
に応えられるかだな。
masa:誰も「警察」をやらなくなったら、それこそ「仁義なき戦い
」の無極化状態に。


コラム目次に戻る
トップページに戻る