4061.米債務上限引き上げ拒否でどうなる?



米国の債務上限引き上げ問題がどうなるか、世界は注視している。
これを検討しよう。   津田より

0.経緯
米議会は2001年以降でみても、10度、上限を引き上げてきた
が、昨秋から与野党の対立が激化し、債務上限引き上げができなく
なった。米財務省は5月中旬に連邦債務(現行14兆3000億ドル
)が上限に達して以来、当面のやりくりでデフォルトを回避してい
る。

当面のやりくりとは、3つの同省証券をすでに停止していることであ
る。それは、州や地方政府のSLGS財務相証券の発行停止、公務
員退職と障害者基金の債権発行の停止、政府証券投資ファンドの再
投資を停止であるが、それだけでは対応できずに、財務省は7月15日
、EFS(為替安定基金)の資金を財務省証券で運用することを停
止した。これで、当面のできる借入はすべてなくなる。

そして、8月2日で、これらのやりくりの特別措置も切れることか
ら、それ以後の財政負担分ができないことになるが、米政府は、8
月2日までに債務上限が引き上げられなかった場合でも、米財務省
は他の債権者に優先して米国債保有者に対して支払いを優先すると
した。

8月2日以降の支払い日程は次の通りで、8月3日に社会保障を受
けている5500万人の米国民に対する支払い(610億ドル)、
8月4日に短期国債の満期(300億ドル)、8月11日に短期国
債の満期(270億ドル)、8月15日に利付き国債の四半期ごと
の利払い日(256億ドル)である。

この内、8月4日、11日の国債償還には対応するが、3日の米国民への
支払いはしないことになる。これで、多くの米国民に影響ができる
ことになる。しかし、15日の利払いは対応が限界であるようだ。

ということで、オバマ大統領も共和党ベルナー下院議長と23日か
ら、債務上限引き上げを最優先にした協議に入るとしたが、共和党
ベルナー下院議長が交渉に応じなかった。

上院民主党リード院内総務が提案する政府債務の法定上限引き上げ
法案については、今後10年間で2・2兆ドルの歳出を削減するこ
とを条件に、引き上げ幅2兆7000億ドルとしているが、財政赤
字規模が約2.2兆ドルにとどまると予算局は分析を示した。

これに対して、下院共和党ベイナー議長案は、2段階に分けて債務
上限を引き上げる。まず債務上限を9000億ドル引き上げた後、
12年2月までに超党派で追加の歳出削減を決め、債務上限をさら
に1・6兆ドル引き上げる内容である。

29日に、このベルナー議長案を下院で可決したが、上院は同日夜
、与党民主党が賛成多数で同法案を審議しないことを決め、否決し
た。事実上、廃案となった。

オバマ米大統領はホワイトハウスで声明を発表し「時間切れが近づ
いている」と与野党に改めて妥協を促した。オバマ政権は、超党派
で財政再建を検討する委員会を設置することや、歳出カット目標の
見直しを、野党に示す妥協案に盛り込む方向だ。30日、引き上げ
期限直前の「最後の調整」が始まった。 

米上院は、与党民主党の上限引き上げ法案の採決31日午後1時(
日本時間8月1日午前2時)以降に行う方向で、上院共和党ろ調整
しているようであるが、それを下院に渡すと、2日ぎりぎりになる。

このような米国政治の動向を反映して、29日のニューヨーク外国為
替市場で円相場が上伸し、一時、約4カ月半ぶりに1ドル=76円台に
突入した。金先物相場は、12月物は前日終値比15.00ドル高の1オン
ス=1631.20ドルで取引を終了し、終値としての過去最高値を更新
した。

また29日のニューヨーク株式市場は、大企業で構成するダウ工業
株平均が6営業日連続で下落した。終値は前日比96.87ドル(
0.79%)安い1万2143.24ドルで、6月27日以来約1
カ月ぶりの安値水準となった。 

しかし、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは
29日、米国の格付け見直しでは、8月2日までに連邦債務上限が
引き上げられなかった場合でも、政府が国債の支払いを優先すると
の予想されるシナリオに基づいて、「トリプルA」格付けが据え置
かれる可能性が高いとした。ムーディーズは、8月2日以降、最初
の利払いが発生する8月15日まではデフォルトは起こらないとの
見方を示した。

米財務省は債務上限の引き上げで合意できない場合、発表予定の四
半期定例入札(クオータリー・リファンディング)を延期または中
止するとした。

また、難航する連邦債務上限引き上げ協議をめぐっては、ブラード
総裁は、米連邦準備理事会(FRB)は米国債を直接購入すること
はできず、デフォルト(債務不履行)回避に向けて介入することは
できないとの考えを示し、「FRBに現在の問題を解決する能力は
ない」と述べた。

このように米国の金融市場が大きく動くことで、米著名投資家のジ
ョージ・ソロス氏(80)が26日、自身が運営するヘッジファン
ドの投資家らに対し、年内に資金を全額返還すると通知した。

1.背景
共和党は、前回の下院選挙でティーパーティを背景にした議員が多
数、当選した。このため、下院で最も影響力のある保守派の1人が
、ティーパーティーの支持を受けるジム・ジョーダン議員である。
ジョーダンはアメリカ国債の格下げが経済に打撃を与えるとは考え
ていない。主張は増税反対と削減対象に社会保障やメディケア(高
齢者医療保険)など公的給付金が含めること。

ということで、本来の共和党支持勢力であるウォール街の希望とは
違う動きになっている。ベルナー下院議長も、基本的なスタンスは
ジム・ジョーダン議員と同様であるが、債務上限の引き上げは必要
と上院共和党マコーネル案のプランBへシフトした。問題を先送り
する案である。

当初、下院共和党全員が、この上院共和党マコーネル案に反対して
いたが、共和党ベルナー下院議長が下院共和党の全員を説得した。
もちろん、下院民主党の多くも賛成した。ジョーダン議員など下院
共和党の一部が反対。

これに対して、米民主党は、高所得者への増税と削減対象として軍
事費が含まれる。共和党は軍事費の削減には反対である。削減対象
が大きく違うし、増税についても違う。米上院民主党と下院共和党
の違いはそれほど大きくないが、しかし、上院は下院案を否決して
いる。

米国社会も、やっとインターネット選挙になり、米国中間層が力を
持ち始めて、社会を根底から変えているようである。財閥・組合な
どが選挙に多くの金を出し、議員候補も金を出してもらい、パーフ
ォーマンスして選挙ができたので、財閥・組合などの影響力が政治
に色濃く出ていたことで、今まではこのようなことはなった。

しかし、徐々に選挙戦が中間層の小額寄付と得票が力を持ち、財閥
・組合の資金力より、多くの金を集めるし、中間層や庶民の怒りを
政治が吸収し始めて、今までのような財閥・組合の自由にならなく
なっている。

日本は昔から財閥の自由にならなかったが、庶民の怒りの結果は民
主党政権で、その結果は見てのとおりである。期待はずれになって
いる。

しかし、米国国債のデフォルトは大きな影響を世界に与えることに
なる。米庶民が世界を壊すことにもなる。

2.デフォルトで
米国債がデフォルトすると、パニック売りを浴び利回りが急上昇す
る。一時的なデフォルトであっても、長期債利回りが現在の水準か
ら0.4―0.5%上昇するとの見方が出ている。

また、米議員がリーマンショック問題で格付け会社を非難したのは
昨年夏のことだが、債務上限引き上げ問題の浮上により、格付け会
社は再び絶大な力を誇示するようになった。米国債の格付けが落ち
るだけで、利回りは上昇することになるからである。

米財務省によると、米国債の5月時点の発行残高約14.3兆ドル
のうち31.5%の約4.5兆ドルを米国外、6.4%の約0.9
兆ドルを日本が保有。約1.2兆ドルは中国で、68%は米国内に
ある。FRBが中国を抜いて、米国債を持っているが、3兆ドル程
度。残りの7兆ドルが米銀行でしょうね。

米ファンドの米国債や他の政府機関債、レポ取引などに対するエク
スポージャーは約1.5兆ドルで、すべてが米国の格下げの影響を
受ける。

この大量な米国債に損が出ると、08年9月のリーマン・ブラザーズ
の倒産以上に株式市場を揺さぶるはずで、まず、米銀行間金利が切
り上がり、米銀行やディーラーがレポ市場で調達する資金のコスト
が高くなる。海外銀行は米銀との取引を停止する可能性もある。米
金融市場は壊滅的な打撃を受け、人件費を払えなくなった企業は、
何百万人もの従業員を解雇せざるをえなくなるはず。国際間取引が
停止になると、貿易等も影響してくる。

保険会社や年金基金、ミューチュアルファンドは、保険金や年金、
償還金の支払いに支障をきたす。米国債保有は、生命保険や損害保
険会社は合わせて2530億ドル。ミューチュアルファンドは
2960億ドル、年金基金は4870億ドル。合わせて1兆ドル。
4.5兆ドルは米銀行や米国民が所有している。

米国ではモーゲージ金利、ビジネスローン金利、他の借り入れコス
トは直接、間接的に米国債利回りと結びついている。 この国債の利
回りが上昇すれば、消費者や企業にとっても借り入れコストの上昇
につながる。と破局的な影響を与えることになる。

米国だけにはとどまらない。日本の3メガバンクが保有する米国債
が、6月末時点で合計7兆1000億円程度ある。金利より円高で
の損ができる可能性が高い。

中国人民銀行の夏斌金融政策委員は25日、ドルの長期的下落リス
クをヘッジするためにも、外貨準備の分散化を加速すべきとの考え
で、米国債からの離脱を図るという。しかし、1.2兆ドルの米国
債に大きな損失を出すことになる。

このように、最高の信用力を誇る米国債のデフォルトは2008年
秋のリーマン・ショックを上回る金融危機を招き、世界同時不況を
再現させる恐れがある。

米国では、このような破綻を想定して、金融規制法「ドッド・フラ
ンク法」で金の売買が規制された。この法律の本音の部分は、米国
経済が破綻した際に、国民がドルを売って金を買う動きを前もって
できないようにしようとするものである。

一番大きいのは、経済が復活したとしても、アメリカの金融部門は
二度と世界における現状の地位を取り戻すことはできないことであ
る。米政府という強力な後ろ盾がなければ、ウォール街の連中は、
もう二度と金融の国際市場で中心的な存在にはなれないだろう。米
国覇権の終焉を、自国民が引くことになる。

さあ、どうなりますか?
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米債務問題、上院動議の投票が延期
2011.7.31 12:47サンケイ

 【ワシントン=柿内公輔】米連邦債務の上限引き上げ問題をめぐ
り、米上院は、与党民主党の上限引き上げ法案の採決に向けて31
日未明(日本時間同日午後)に予定していた動議の投票を延期した。
米メディアによると、早くとも31日午後1時(日本時間8月1日
午前2時)以降にずれ込む見通し。投票に共和党が反対しているこ
とを受け、上院民主党が妥協案の調整を進めるためとみられる。
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円、76円台に突入=4カ月半ぶり―NY外為
時事通信 7月30日(土)5時1分配信

 【ニューヨーク時事】29日のニューヨーク外国為替市場で円相場
が上伸し、一時、約4カ月半ぶりに1ドル=76円台に突入した。 
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NY金、最高値更新
時事通信 7月30日(土)5時58分配信

 【ニューヨーク時事】29日のニューヨーク商品取引所(COMEX)の
金先物相場は、4〜6月期の米実質GDP(国内総生産)伸び率が市場予
想を大きく下回ったことを受けてリスク回避の買いが殺到し、急反
発した。12月物は前日終値比15.00ドル高の1オンス=1631.20ドル
で取引を終了し、終値としての過去最高値を更新した。 
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米国:債務上限問題 上院、共和案を否決 妥協目指しギリギリの
協議
 【ワシントン斉藤信宏】米政府の債務上限引き上げ問題をめぐり
、米下院は29日、共和党のベイナー議長が提案した「2段階方式
」の上限引き上げ法案を賛成多数で可決した。しかし、上院は同日
夜、与党民主党が賛成多数で同法案を審議しないことを決め、否決
した。共和党のベイナー議長案は事実上、廃案となった。債務上限
引き上げ期限の8月2日を目前に控え、オバマ米大統領はホワイト
ハウスで声明を発表し「時間切れが近づいている」と与野党に改め
て妥協を促した。

 民主・共和両党とも債務上限引き上げ問題の協議決裂で米国債の
デフォルト(債務不履行)を招く事態は回避したいとしており、今
後も妥協に向けたギリギリの協議が続くものと見られる。

 共和党が多数を占める下院で可決されたベイナー議長案は、2段
階に分けて債務上限を引き上げるのが柱。まず債務上限を9000
億ドル引き上げた後、12年2月までに超党派で追加の歳出削減を
決め、債務上限をさらに1・6兆ドル引き上げる内容。これに対し
て民主党多数の上院では、同党のリード院内総務が今後10年間で
2・2兆ドルの歳出を削減することを条件に、債務上限を一気に
2・7兆ドル引き上げる法案の採決を目指している。

毎日新聞 2011年7月30日 東京夕刊
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米格付け見直し、「トリプルA」据え置きも=ムーディーズ
ロイター 7月30日(土)13時6分配信

 [ニューヨーク 29日 ロイター] 格付け会社ムーディーズ
・インベスターズ・サービスは29日、米国の格付け見直しでは、
「トリプルA」格付けが据え置かれる可能性が高いとの見解を示し
た。

 ただ見通しは「ネガティブ」となる公算が大きいと警告した。こ
れは格下げが差し迫ってはいないものの、中期的にはその可能性が
残っていることを示している。

 ムーディーズはこれに関して、デフォルト(債務不履行)回避期
限とされる8月2日までに連邦債務上限が引き上げられなかった場
合でも、政府が国債の支払いを優先するとの予想されるシナリオに
基づいていると説明した。

 一方でムーディーズは、米国がデフォルトした場合、「迅速に対
処され、投資家が恒久的な損失を全く負わなかった」場合でも、格
下げされる可能性が高いとした。

 ムーディーズは、8月2日以降、最初の利払いが発生する8月15
日まではデフォルトは起こらないとの見方を示した。
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デフォルトを人質に墓穴掘るティーパーティー
2011年07月29日(金)18時22分newsweek
デービッド・ケース

債務上限引き上げに抵抗して米経済に危機をもたらしかねない共和
党強硬派に、ウォール街の怒りが向き始めた

 ウォール街や財界は、米共和党を乗っ取ったティーパティー(草
の根保守派運動)の扇動的な動きにいらだっているだろうか? 連
邦政府の債務上限引き上げに強硬に反対することは保守派、特にテ
ィーパーティーにとって裏目に出るだろうか。それは共和党にとっ
て致命傷にならないか?

 世界の金融エリートが愛読する英経済紙フィナンシャル・タイム
ズを読めば、そうだと思わずにいられない。

 失政の元凶は何か。「ティーパーティーの強硬派だ」と、フィナ
ンシャル・タイムズのステファニー・キルチガエスナーは鋭い分析
をしている。彼女は今の混乱を、ボクシングのリングで2人の男が
「共和党の魂のために戦っている」姿にたとえた。

財界と共和党の間の深い溝
 一方のコーナーに立つのは、下院で最も影響力のある保守派の1
人で、ティーパーティーの支持を受けるジム・ジョーダン議員。彼
は、オバマ政権が国家破綻の可能性をちらつかせて脅し作戦を展開
していると非難する。あらゆる合理的な根拠にもかかわらず、ジョ
ーダンはアメリカ国債の格下げが経済に打撃を与えるとは考えてい
ないようだ。

 ジョーダンは自身が所属する共和党の上層部にもたて突いた。経
済のメルトダウンを避けるために債務上限を引き上げようとするジ
ョン・ベイナー下院議長の打開案に反対し、他の保守派議員の造反
も促している。
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四半期入札、債務協議決裂なら延期や中止も
2011年 07月 30日 08:52 JST

 [ニューヨーク 29日 ロイター] 米財務省は、議会が8月
2日までに連邦債務上限の引き上げで合意できない場合、来週発表
予定の四半期定例入札(クオータリー・リファンディング)を延期
または中止する可能性がある。

 財務省高官は29日、プライマリーディーラー(米政府証券公認
ディーラー)20社の代表と会合し、債務上限協議が決裂した場合
の四半期定例入札への対応について協議した。

 関係筋によると、入札の規模縮小や延期のほか、中止して償還を
迎える国債の借り換えのため出納管理証券(キャッシュ・マネジメ
ント・ビル)を発行するなどの選択肢が協議された。

 出席者は、入札の規模縮小や中止よりも延期の方が好ましいとの
見方でおおむね一致したという。
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経済減速・円高、復興の足かせ 米国債デフォルト懸念 衝撃、リ
ーマン以上
2011.7.30 05:00サンケイビズ

 米国の連邦債務上限引き上げ問題が緊迫度を強めている。与野党
の協議が難航し、8月2日までに上限を引き上げないと米国債がデ
フォルト(債務不履行)に陥る懸念が現実味を増しているためだ。
最高の信用力を誇る米国債のデフォルトは2008年秋のリーマン
・ショックを上回る金融危機を招き、世界同時不況を再現させる恐
れがある。そうなれば、東日本大震災からの復興を目指す日本経済
の足を引っ張るのは確実だ。

 「米国債のデフォルトは世界の金融市場でパニックを引き起こす
可能性がある」。第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミスト
はこう危ぶむ。

8月2日に切れることから、同日までに債務上限を引き上げないと
、国債が発行できず、償還や利払い資金が調達できなくなり、デフ
ォルトに陥る恐れがある。

一方で米財務省は27日の声明で「8月2日以降、米国が負うすべ
ての債務を履行できなくなるか、保証できなくなる」と警告を発し
ている。

 仮にデフォルトという最悪のシナリオに直面した場合、日本経済
はどんな影響を受けるか。

 信州大の真壁昭夫教授は「リーマン・ショックよりもはるかに大
きい世界的な金融・経済危機の直撃を受けかねない」と警戒する。

 米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)やム
ーディーズは米国債を「トリプルA」という最上級の格付けをして
いる。米財務省によると、米国債の5月時点の発行残高約14.3
兆ドルのうち31.5%の約4.5兆ドルを米国外、6.4%の約
0.9兆ドルを日本が保有。米国債は各国の外貨準備や民間金融機
関の資金の最も安心できる運用先となっている。

 デフォルトが現実となれば、米国債の信用は失墜して価格は暴落
。金融機関は多額の損失計上を余儀なくされる。その結果、「日本
を含む世界の金融市場、特に銀行間取引市場で信用収縮が起きる」
(真壁氏)との懸念は強い。資金の目詰まりは実体経済にも悪影響
を及ぼすのは確実だ。

 為替市場でも米国の信用力低下で基軸通貨としてのドルの地位が
大きく揺らぎ、円高・ドル安に拍車がかかる恐れがある。

 外需に依存する日本経済にとって世界経済の減速と円高は「ダブ
ルパンチ」だ。震災で打撃を受けたサプライチェーン(供給網)の
復旧が進み、生産・輸出も上向いてきているが、米国債のデフォル
トが日本経済の回復軌道を腰折れさせる可能性もある。(本田誠)
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米追加緩和への壁高い、経済は下期加速へ=アトランタ連銀総裁
2011年 07月 30日 05:46 JST

[ワシントン 29日 ロイター]難航する連邦債務上限引き上げ
協議をめぐっては、ブラード総裁は、米連邦準備理事会(FRB)
は米国債を直接購入することはできず、デフォルト(債務不履行)
回避に向けて介入することはできないとの考えを示した。

 ブラード総裁は債務協議をめぐる混乱が「一般的な危機を招いた
場合には、FRBは2008、2009年に実施したように、流動
性を提供するなどの対応を行うことが可能」としたものの、「FRB
に現在の問題を解決する能力はない」と述べた。
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米GDP:1.3%増 景気減速、鮮明に−−4〜6月期
 【ワシントン斉藤信宏】米商務省が29日発表した11年4〜6
月期の米国内総生産(GDP)の実質成長率(季節調整済み・速報
値)は、年率換算で前期(11年1〜3月期)比1・3%にとどま
った。市場予想平均(1・7%)を下回り、同時に発表された03
年以降の年次改定で、11年1〜3月期の成長率も従来の1・9%
から0・4%に大幅に下方修正された。2四半期連続で成長率が2
%を下回り、米景気の減速を裏付けた。

 4〜6月期は、GDPの約7割を占める個人消費が0・1%増と
前期(2・1%増)から増加幅が大幅に縮小した。特に震災に伴う
サプライチェーン(部品供給網)寸断の影響で生産停止が相次いだ
自動車などの耐久財は4・4%減と、09年10〜12月期(4・8
%減)以来のマイナスに落ち込んだ。

毎日新聞 2011年7月30日 東京朝刊
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米債務上限が引き上げられない場合、債券保有者への支払いを優先
2011年 7月 29日 19:46 JST 
WSJ
 米国議会が8月2日までに債務上限を引き上げられなかった場合、
財務省は他の債権者に優先して米国債保有者に対して支払いを行う
可能性が高いことを、関係筋が明らかにした。 
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NewsBrief】金融危機で叩かれた格付け会社、一転して絶大な力示す
2011年 7月 29日 16:46 JST 
WSJ
 格付け会社を取り巻く環境がわずか1年の間に大きく変わった。
住宅ローン担保証券に関して過度に楽観的だったとして、米議員が
格付け会社を非難したのは昨年夏のことだ。米上院常設調査小委員
会は同年、金融危機に関する報告書で、過大評価された格付けが金
融危機を招く一因になった、と結論付けた。 

 その後、欧州の債務問題と米国の債務上限引き上げ問題の浮上に
より、格付け会社は再び絶大な力を誇示するようになった。27日に
公開された電子メールやそのほかのメモから、米財務省当局者が3月
下旬以降、スタンダード&プアーズ(S&P)の米国債格付け担当
者と定期的に連絡を取っていたことが明らかになった。
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6月末で7兆円規模=3メガバンクの米国債保有額
 三菱UFJフィナンシャル・グループなど日本の3メガバンクが
保有する米国債が、6月末時点で合計7兆1000億円程度に達す
ることが29日、明らかになった。米議会では、連邦債務の上限引
き上げに向けた与野党交渉が行き詰まっており、米国債は格下げや
信用力低下に伴う価格下落が懸念されている。
 保有額の内訳は、三菱UFJが約3兆7000億円、みずほフィ
ナンシャルグループ(傘下行合算)が約2兆円、三井住友銀行が
1兆4000億円弱。米国債が大幅に下落すれば、多額の損失が生
じる可能性もある。(2011/07/29-19:16)
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中国は外貨準備の運用分散化を継続、透明性向上へ
2011年 07月 28日 14:05 JST

 [北京 28日 ロイター] 中国国家外為管理局(SAFE)
は28日、3兆2000億ドル規模の外貨準備について、運用先を
引き続き分散する方針を示した。

 さらに、資本流出の経路を拡大し、資本勘定における人民元の交
換性を段階的に高める考えを示した。

 一般からの質問への回答として出した声明で明らかにした。

 声明は「われわれは、引き続き準備資産の配分を分散化し、市場
環境に応じて保有状況の最適化を進めていく」と表明。

 中国の外貨準備は第2・四半期に1528億ドル増加したが、そ
のような急速な積み上がりはインフレの直接的要因でないとの見解
を示し、流入した資本は、銀行の預金準備率引き上げやオペ(公開
市場操作)など、すでにさまざまな手段で中国人民銀行(中央銀行
)が不胎化していると指摘した。

 声明は「大規模な外貨準備や国際収支の長期的な黒字を追求して
はいない」とし、債務返済能力を維持してリスクを解消し、金融の
安全性を確保するためには、十分な外貨準備を持つことが必要と述
べた。

 その一方で、長期的目標として、経済構造を調整し、経済モデル
を変えて、資本流入が「根本的に」緩和する必要があるとの認識も
示した。

 中国人民銀行の夏斌金融政策委員は25日、ドルの長期的下落リ
スクをヘッジするためにも、外貨準備の分散化を加速すべきとの考
えを示した。

 SAFEは、外貨準備投資の透明性向上を約束したものの、中国
の外貨準備の構成変更で利益をあげようともくろんでいる海外投機
筋に過剰な情報を与えることを警戒する姿勢も示した。
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MMFの大半がデフォルトに備え流動性確保、一部はポジション変
更せず
2011年 07月 28日 14:56 JST

 [ボストン 27日 ロイター] 米国の大手マネー・マーケッ
ト・ファンド(MMF)は、米国の格下げに備えるとともに、民主
党と共和党の債務交渉が来週までに合意に至らず、投資家が資金引
き揚げに動いた場合に備え、現金と流動性の高い証券の保有を増や
している。

 ただ、全てのMMFがこのような動きを見せているわけではなく
、バンガード・グループなど一部大手は現金などの流動性ポジショ
ンを変更しておらず、対応が分かれている。

 これらのファンドの米国債や他の政府機関債、レポ取引などに対
するエクスポージャーは約1兆3000億ドルで、すべてが米国の
格下げの影響を受ける可能性がある。

 ファンド業界の幹部はインタビューで、依然として債務交渉が妥
結すると予想していると答えた。ただ、多くのファンドが8月2日
の期限までに交渉がまとまらなかった場合でも投資家への償還や解
約に応じやすいように資産配分を調整している。 

 フィデリティ・インベストメンツ傘下で191億ドルを運用する
ファンド「トレジャリー・オブリゲーションズ」の加重平均満期は
現在34日で、6月半ば時点の41日から短期化した。

 幹部のデボラ・カニンガム氏はこの変更について、資金流出懸念
ではなく短期債の低金利が要因と説明。顧客の投資家がポジション
を解消することが必要になれば、応じるつもりだが、それが必要に
なるとは想定していない、と語った。

 米国最大のMMFであるJPモルガン・チェース傘下のプライム
・マネー・マーケット・ファンド(運用額1230億ドル)の広報
担当者によると、同ファンドは最近、満期を短縮し、流動性を強化
した。資産の30%以上はオーバーナイトで運用している。同広報
担当者は、欧州債務問題と米連邦債務上限引き上げ交渉をめぐる市
場の懸念と不透明感が続いているためにファンドは対応した、と説
明した。

 MMFは資金の大半を現金あるいは1週間以内に現金化可能な証
券として保有している。調査会社アイマネーネットによると、特に
国債などを中心に投資するMMFにこれらの資産が占める割合は現
在70%で、7月1日時点の65%、6月3日時点の62%から上
昇した。

 バンガード傘下のプライム・マネー・マーケット・ファンド
VMMXX.O(運用額1120億ドル)のマネジャー、デービッド・グロ
ッケ氏は27日のインタビューで、米国がデフォルト(債務不履行
)に陥るとは想定していないと述べた上で、同ファンドのポートフ
ォリオで国債への投資配分を増やしていると明らかにした。同ファ
ンドの加重平均満期は58日で、2010年から同水準を保っている。
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国債保有者への利払いを優先へ、米政府の緊急対応策−当局者 

7月28日(ブルームバーグ):米議会が債務上限の引き上げで合意に
達しなかった場合、財務省は国債保有者への利払いを優先する方針
だ。発表がまだ行われていないとして匿名を条件に政府当局者1人
が明らかにした。 
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米FRB、債務協議期限切れに備え金融機関向け指針
2011年 07月 29日 09:13 JST

 [ワシントン 28日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB
)は、米連邦債務上限が引き上げられず、金融市場が混乱した場合
の対応策に関する指針を近く銀行に示す計画。

 FRBのバーバラ・ハーゲンボー報道官は28日、「財務省と運
営策の策定に取り組んできた。議会の情勢がより明確になり、財務
省が具体的な運営策をまとめれば、さらなる指針を金融機関に提供
できる見込みだ」と語った。

 米財務省は、8月2日までに議会が連邦債務の上限を引き上げな
かった場合、新たな借り入れができなくなるとしており、米国債の
デフォルト(債務不履行)懸念が高まっているが、債務上限引き上
げに向けた与野党協議は28日、依然としてこう着状態が続いてい
る。
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民主案も赤字削減が不足=米デフォルト回避、予断許さず−議会予
算局
 【ワシントン時事】米議会予算局(CBO)は27日、上院民主
党が提案する政府債務の法定上限引き上げ法案について、10年間
の財政赤字削減規模が約2兆2000億ドルにとどまるとの分析を
示した。債務上限の引き上げ幅2兆7000億ドルを下回る。民主
党では最終案には一段の赤字削減が盛り込まれるとしているが、米
国のデフォルト(債務不履行)危機回避に必要な上限引き上げの期
限が来週に迫る中、先行きは依然予断を許さない情勢だ。

 CBOは前日、債務上限を2段階に分けて引き上げる下院共和党
の法案についても、赤字削減額が引き上げ幅を下回るとの判断を下
した。米メディアによると、共和党は同法案の練り直しに着手し、
当初27日に予定していた採決も28日に先送りした。今後、上下
両院がそれぞれの法案を可決しても、両院間の調整で一本化を試み
るのか不透明だ。(2011/07/28-00:39)
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ソロス氏、ヘッジファンド運営引退 米の規制強化理由にジョージ
・ソロス氏
2011年7月27日11時10分 

 米著名投資家のジョージ・ソロス氏(80)が26日、自身が運
営するヘッジファンドの投資家らに対し、年内に資金を全額返還す
ると通知したことがわかった。米金融規制強化が理由としており、
ヘッジファンドの運営者としての40年の経歴を終わらせる見通し
だ。 

 朝日新聞が入手した投資家宛ての書簡によると、ソロス氏のファ
ンドは今後、自身と家族の資金運用に専念し、家族外から招いた投
資責任者は退職する。運用額は現在255億ドル(約2兆円)で、
そのうち外部の資金は約10億ドル。残りがソロス家の資金という。 

 書簡では、判断の理由として米証券取引委員会(SEC)の新規
制に言及した。一定規模のファンドは2012年までにSECへの
登録が義務づけられ、投資家や取引情報の開示に加え、SECの監
査も受ける。家族運営の場合だけがその例外になっている。 
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米の赤字削減協議が決裂 大統領が会見 
2011年7月23日12時59分

 オバマ米大統領は22日夕、緊急会見し、大幅な財政赤字削減を
巡る共和党との協議が決裂したと発表した。大統領は23日から、
米国が債務不履行(デフォルト)に陥るのを防ぐため、債務上限引
き上げを最優先にした協議に入る。ただ、大規模な赤字削減が困難
になり、米国債が格下げされる可能性が出てきた。 

 オバマ大統領は22日の会見で、交渉相手だった野党・共和党の
ベイナー下院議長から「交渉から撤退するという電話を受けた」と
語った。大統領は「なぜベイナー下院議長が交渉から立ち去ったの
か理解に苦しむ」と発言。大統領は23日午前、与野党幹部をホワ
イトハウスに集め、緊急対策を協議する。 
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金の売買停止は米国債デフォルトへの布石? 
2011年07月18日 18時10分ゆかしメディア 

 米国では金融規制法「ドッド・フランク法」で金の売買が規制さ
れるが、週明けでどのような影響があるのか。それは単なる金先物
相場の価格の範囲に収まるのか、米国経済の破たんを予告するため
のものなのか?

 欧州の財政破たん懸念が意識されていることで、NY商品取引所
の金先物相場は連騰で、1オンス=1590.1ドルと史上最高値となった。
足元は買い支えの要因があり、安心かに見える。

 その一方で、個人の売買が禁止されるために、価格上昇の要因が
消えるのではないか、という見方もできる。

 ただ、もっと恐いことは、この法律の本音の部分。米国経済が破
綻した際に、国民がドルを売って金を買う動きを前もってできない
ようにしようとするものだからだ。

 ちなみに、いくつか例外もある。その一つに、世帯年収で約2400
万円以上ある家庭は免除されている。
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米国がデフォルト回避に最後の手、後の策はなし /media.yucasee 
2011年07月16日 19時05分
 
米国の法定債務上限(14兆2940億ドル)に到達する期限が8月2日に
迫っている問題で、財務省は15日、デフォルト回避のため、EFS
(Exchange Stabilization Fund 為替安定基金)の資金を財務省証
券で運用することを停止した。これで、当面の借入は可能となる。

発表によると、ジェフリー・ゴールドスタイン金融担当次官は「国
家を維持するために利用可能な措置の最後の再投資を停止する。国
の債務のデフォルトを防ぐために、議会は債務の上限を上げる必要
がある」とした。

この緊急措置によって、財務省証券の発行残高が230億ドル目減りす
ることになり、その分だけ新たな借り入れが可能になるという。
野党の共和党は、政府が安易な増税に走ることを危惧して反対して
おり、話し合いは平行線をたどったまま。最悪は、米国経済がデフ
ォルトということにもなりかねない。
米国はすでに5月中に債務残高がリミットに到達しており、財務省は
すでに3つの同省証券を停止している。EFSは言わば最後の緊急手
段となる。

1 州や地方政府のSLGS財務相証券の発行停止
2 公務員退職と障害者基金の債権発行の停止
3 政府証券投資ファンドの再投資を停止

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アメリカをデフォルトに追い込む共和党の狙い
2011年06月22日(水)16時24分ニューズウィーク
デービッド・ケース

政府の債務上限引き上げの条件に社会保障費の大幅削減を求める瀬
戸際政策は、リーマン・ショック以上の危機を招きかねない

 左派寄りのシンクタンク、経済政策研究センターの創設者でエコ
ノミストのディーン・ベイカーの話には、耳を傾ける価値がある。
何しろ彼は、低所得者向け住宅ローン「サブプライム」のバブル崩
壊を予測していた数少ない一人。彼よりずっと高額の報酬を得てい
たウォール街のプロたちが焦げ付き間近のサブプライムローンにカ
ネをつぎ込み、巨額のボーナスをせしめていた頃、ベイカーはサブ
プライムローンが危機的な状態に陥ると力強く予言していた。

 そのベイカーが今、アメリカにさらなる危機が迫っていると警告
している。

 オバマ政権は、連邦政府の債務上限を8月2日までに引き上げな
ければ、政府がデフォルト(債務不履行)状態に陥る恐れがあると
して、債務上限引き上げの容認を議会に求めている。だが共和党は
強硬に反対し、引き上げ幅と同程度の大規模な歳出削減を行わない
限り、提案には応じないと主張。ベイカーに言わせれば、共和党の
この「瀬戸際政策」は、アメリカ経済はもちろん、共和党の重要な支
持基盤であるウォール街にも甚大な打撃をもたらす愚策だ。

金融界で数百万人が解雇される
「債務上限の引き上げができなければ経済にとってマイナスなのは
間違いない」と、ベイカーは書いている。さらに、米政府のデフォ
ルトは「08年9月のリーマン・ブラザーズの倒産以上に株式市場を
揺さぶるだろう」として、先の経済危機以上に深刻な危機が訪れる
と予測。金融市場は壊滅的な打撃を受け、人件費を払えなくなった
企業は「何百万人もの従業員を解雇」せざるをえなくなると指摘し
ている。

 驚くべきことに、共和党はまさにそんな大混乱を望んでいるよう
だ。彼らが思い描くのは、国家財政のデフォルトによって、メディ
ケア(高齢者医療保険制度)やメディケイド(低所得者医療保険制
度)といった社会保障コストの大幅削減をオバマ政権が受け入れざ
るをえなくなるというシナリオだ。

 だがベイカーによれば、デフォルトが起きた場合の真の犠牲者は
ウォール街だ。「国家がデフォルトに陥れば米国債の価値が下がり
、ほぼすべての大手金融機関が破綻する」と、ベイカーは言う。そ
して、その痛みは長きに渡って続く。

「経済が復活したとしても、アメリカの金融部門は二度と世界にお
ける現状の地位を取り戻すことはできない。米政府という強力な後
ろ盾がなければ、ウォール街の連中はもう二度と金融の国際市場で
中心的な存在にはなれないだろう」 

(GlobalPost.com特約)
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■米国債デフォルトの場合、世界的な金融危機の再来も
2011年06月08日

 [ニューヨーク 8日 ロイター] 市場では米国のデフォルト
(債務不履行)に対する懸念が広がっている。たとえ一時的であっ
てもデフォルトを起こせば米国に対する信頼感が損なわれ、世界的
な金融危機の再来を招きかねないためだ。

 市場関係者は、実際にデフォルトとなる可能性はゼロに等しいと
みているが、米政府が8月2日までに連邦債務上限を14兆3000
億ドルから引き上げることができなければ、米国債の利払いや元本
の返済ができなくなる。

 米国債は世界の債券市場のベンチマークとなっているため、そう
なれば全世界の国債のみならず、株式や他のリスク資産全体に売り
が広がる可能性がある。

 米財務省は5月中旬に連邦債務が上限に達して以来、当面のやり
くりでデフォルトを回避しているが、米議会では与野党の対立が続
いており、予断を許さない情勢となっている。

 米国が万が一デフォルトに陥った場合に予想される影響を以下に
まとめた。

 <米国債市場>
 米国債はパニック売りを浴び、利回りが急上昇する可能性がある。

 主要3格付け機関は、国債の元利返済ができなければ「テクニカ
ルな」デフォルトとみなすとして、さらなる元利返済の遅れが生じ
た場合には米国の格付けを「AAA」から引き下げることを検討す
る考えを示した。 

プルデンシャル・フィクスト・インカムの最高投資責任者、ロバー
ト・ティップ氏は、一時的なデフォルトであっても、長期債利回り
が現在の水準から0.4―0.5%上昇するとの見方を示した。

 <マネーマーケットファンド>
 一部のアナリストは、デフォルトを受けて米国債価格が下落した
場合、投資家がマネーマーケットファンドから資金を引き出し、株
価が1ドルを割り込む可能性があると懸念している。

 リーマン・ブラザーズが破たんした直後の2008年9月に、リ
ザーブ・プライマリー・ファンドで同じことが起きた。その際、フ
ァンドの動きは世界的に凍結状態となった。

 米連邦準備理事会(FRB)のデータによると、マネーマーケッ
トファンドは2010年末時点で、短期債を中心に3350億ドル
の米国債を保有している。

 <政府機関の閉鎖>
 米政府が新たな債券発行ができなくなれば、連邦政府機関が閉鎖
される可能性がある。その結果、政府職員が自宅待機を強いられる
ほか、債権者や請負業者への支払いや支援金の支払いが不可能にな
る。前回政府機関が閉鎖されたのは1995年だった。

 債務が上限に到達する8月2日以降の支払い日程は次の通り。
 *8月3日:社会保障を受けている5500万人の米国民に対す
       る支払い(610億ドル)
 *8月4日:短期国債の満期(300億ドル)
 *8月11日:短期国債の満期(270億ドル)
 *8月15日:利付き国債の四半期ごとの利払い日(256億ドル)

 <外国中央銀行>
 米国の多額の債務に対する懸念から、中国人民銀行をはじめとす
る外国の中央銀行は米国債の購入ペースを落としている。

 アナリストは、デフォルトになれば外国中銀が米国債を売却する
のではないかと懸念している。

 3月末時点で、外国人による米国債保有額は4兆4800億ドル
。そのうち70%を外国の中央銀行が保有している。

 米財務省のデータによると、2010年9月から2011年3月
までの間、外国人による米国債購入額は1カ月を除いて毎月減少し
ている。その一因は、ドル安に対する懸念から、外国中銀がドルに
偏重したポートフォリオの分散を進めているためとみられている。

 中国による米国債保有額は3月末時点で1兆1000億ドルに達
し、外国勢としては1位。2位は日本の9080億ドルだった。

 一方、FRBは国債買い入れプログラムの結果、保有額が
1兆5000億ドルに達している。

 <レポレート>
 デフォルトが起きれば、銀行やディーラーがレポ市場で調達する
資金のコストが高くなる可能性がある。彼らは投資やトレーディン
グを行うために調達する翌日物金の担保として、米国債を活用して
いる。

 米国債の信用力が低下すれば、投資家はレポ市場を通じて銀行や
証券会社に米国債を担保として貸し出す資金の金利を引き上げる可
能性がある。

 昨年末時点で、商業銀行は2990億ドル、ブローカー/ディー
ラーは950億ドルの米国債を保有している。

 8日時点の翌日物レポレートは平均0.05%程度だが、デフォ
ルトになれば金利が急上昇し、銀行にとって短期資金の調達コスト
が上昇する可能性がある。

 ニューヨーク連銀のデータによると、2011年5月10日時点
で、米国のレポ市場の規模は1兆6000億ドル。そのうち約30
%が米国債を担保としている。

 <保険会社/年金基金/ミューチュアルファンド>
 保険会社や年金基金、ミューチュアルファンドは、保険金や年金
、償還金の支払いに支障をきたす恐れがある。

 彼らは安全な資産と考えて米国債を保有しているため、支払いや
償還のために資金調達する必要性が生じれば、簡単に売却する可能
性がある。

 2010年終盤時点で、生命保険や損害保険会社による米国債保
有額は合わせて2530億ドルだった。ミューチュアルファンドは
2960億ドル、年金基金は4870億ドルの米国債を保有してい
た。

 <モーゲージや消費者ローン金利>
 米国ではモーゲージ金利、ビジネスローン金利、他の借り入れコ
ストは直接、間接的に米国債利回りと結びついている。 

 そのため、連邦政府のローンコストが上昇すれば、消費者や企業
にとっても借り入れコストの上昇につながる。

 ローン金利が上昇すれば、低迷している住宅市場や住宅価格をさ
らに悪化させる要因となるほか、国内総生産(GDP)の3分の2
を占める消費支出の落ち込みを招きかねない。

 米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)のデータによると、
30年物の固定モーゲージ金利は6月2日に終えた週に4.55%
に低下した。昨年12月時点では4.71%だった。

 米国債利回りが上昇すれば、30年物のモーゲージ金利は2010
年4月以来初めて5%台に乗せる可能性がある。


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