4052.米国債務引き上げ協議の動向



米国の債務引き上げ協議が難航している。オバマ大統領、共和党ベ
ルナー下院議長の交渉が、暗礁に乗り上げている。  Fより

日本の震災後復興計画が遅れている問題に目を奪われている間に、
ユーロ圏では、ギリシャ、ポランド、アイスランドなどで国債のデ
フォルト問題が起き、そして米国でも債務引き上げを認めないと国
債デフォルトになる危機が発生している。

日本経済は、震災と原発の問題で下降しているのに、欧米で危機が
発生しているので、相対的に安定している円が買われる展開になり
、円高を起こしている。このため、企業は電力不足問題、工場再稼
動と円高の3つの問題を抱えることになっている。

ここでは、米国の債務引き上げ問題を見ていくことにする。
現在3つの案があり、その案を全員が固守していることでおかしく
なっている。

【オバマ案】
同案には所謂、「グランド・バーゲン(大掛かりな計画)」とニッ
クネームが付いており、その名が示す通り大上段に構えた根本的財
政改革を目指す案。向こう10年間で4兆ドルの赤字削減を目指す
このプランの中には増税、税制改革、メディケア改革などが含まれ
ている。オバマ大統領の狙いはここで大きく米国の財政をリセット
し、現在進行中の景気テコ入れのための拡張的財政政策を継続する
点にある。

【上院共和党案=ミッチ・マコーネル案=「プランB」】
これはとりあえず差し迫った債務上限の引き上げを最優先する案で
す。当面のデフォルトは回避できるが政府債務圧縮のロードマップ
は示されない。当座の措置として議会が1兆ドル程度の予算削減を
提案するが、それ以上の予算削減の必要に関してはホワイトハウス
に下駄を預ける。問題を先送りする案。

【下院共和党案】
向こう10年間で2.4兆ドルの支出削減を目指すほか将来の支出
のコントロールと均衡財政を盛り込んだ案。この案には増税は含ま
れません。上院から支持される可能性は低い。

財務省は15日、デフォルト回避のためのEFS(為替安定基金)の
資金を財務省証券で運用することを停止し、当面の借入は可能とな
るが、最後の手段である。すでに、州や地方政府のSLGS財務相
証券、公務員退職と障害者基金の債権発行、政府証券投資ファンド
の再投資などを停止している。

8月2日までに債務引き上げが認められないと、国債のデフォルト
になる可能性がある。8月15日に国債の償還があり、その前に国
債を発行しないといけない。

しかし、最終に近い22日のオバマ、ベイナー両氏の協議では、下
院共和党案をベースにして、増税は対象となっていない一方、削減
対象に社会保障やメディケア(高齢者医療保険)など公的給付金が
含まれている。民主党は、公的給付金を削減する場合には増税をセ
ットにする必要があると主張しており、民主党が同案に反発してい
る。

もし仮に、政府と共和党が財政赤字削減案で合意したとしても、一
部共和党議員が債務上限引き上げに反対するとみられるため、共和
党が多数派を占める下院でも債務上限引き上げ承認のためには民主
党の支持が必要になる。しかし、カーニー大統領報道官は、オバマ
、ベイナーの両氏は合意には近づいていないとしていた。大統領は
自身が提示した案を「非常に公平」だったとするが、オバマ大統領
も譲歩できない点がある。

大統領はこれまで、短期的な引き上げには拒否権を行使する考えを
示していたが、時間切れになりつつあることを認め、問題先送りの
マコーネル共和党上院院内総務が提唱しているプランBでの調整に
なるが、この問題を先送りする案については、下院共和党議員全員
が反対である。

さあ、どうなりますか??

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米下院議長が債務引き上げ協議離脱、交渉は継続へ
2011年 07月 23日 08:34 JST

 [ワシントン 22日 ロイター] オバマ米大統領は22日、
共和党のベイナー下院議長が連邦債務上限引き上げに向けた交渉の
場から退いたとして、議長を激しく批判した。

 大統領は自身が提示した案を「非常に公平」だったとして、ベイ
ナー議長が交渉の場を離れる理由は理解し難いと述べた。

 その上で、23日にホワイトハウスに議会指導部らを召集し、交
渉を続ける方針を示した。

 大統領はベイナー議長のほか、民主党のリード上院院内総務、共
和党のマコネル上院院内総務、民主党のペロシ下院院内総務を召集
し、米東部時間23日午前11時(日本時間24日午前零時)から
ホワイトハウスで会合を開く予定。

 大統領はこれら議会指導者は「どうやってデフォルト(債務不履
行)を回避するのか、私に説明しなければならない」とした。

 また、大統領は、米国がデフォルト(債務不履行)に陥ることは
ないと確信しているとも述べた。
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米財政赤字、10年3兆ドル削減で調整 政権と与野党
2011年7月22日15時0分

 米債務上限引き上げを巡る論議で、米オバマ政権と与野党が、財
政赤字を10年で最大3兆ドル(約236兆円)削減する方向で調
整に入ったことが21日、わかった。米政府高官が朝日新聞の取材
に明らかにした。ただ合意に至らない場合に備え、緊急避難的に債
務上限を引き上げる方策の可能性も依然残しているという。 

 オバマ米大統領は10年で3兆〜4兆ドル程度を削減する「大規
模対策」を中心に、野党・共和党側との協議を続けており、大統領
や超党派上院議員の提案を踏まえて、「現在は、最大で3兆ドルの
(財政赤字削減につながる)案で協議している」(米政府高官)と
いう。高官は、今後2〜3日で方向性が見えてくるとの見方を示し
た。別のオバマ政権高官は、大統領が大規模な対策を追求している
とした上で、交渉内容は依然として流動的との見方を示した。 
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【中証視点】米国債、長期的にはリスク、外貨運用の多元化を=中国
2011/07/22(金) 13:27サーチナ

  <中国証券報>多くの専門家は、「米国債のデフォルト(債務
不履行)リスクが現実化する可能性は当面ほぼないと見られるが、
中国関連部門は、長期的な投資リスクに目を向ける必要がある」と
指摘している。

  中国外国為替管理局が20日に発表した「外貨準備高に関するQ
&A」は、中国の外貨準備の質を決定づける要因として、安全、流
動的、価値増加などの原則に基づく運営管理を挙げ、中でも「安全
」を最優先事項とすべきだと改めて強調した。また、「多元化」が
、外貨準備における主要運営原則のひとつである考え方も、重ねて
打ち出された。専門家は、「中国は、外貨投資の多元化プロセスを
加速し、外貨準備管理体制の調整を急ぎ、『民間による外貨使用』
の重要性を認識すべきだ」と提言している。

◆米国債のデフォルトリスクには、長期的な注意が必要
  米財務省の最新統計データによると、今年5月末の時点で、中国
が保有する米国債は1兆1598億ドル、4月末に比べ73億ドル買い増し
した。米国債の最大保有国である中国にとって、4月、5月と2カ月続
けての買い増しとなったが、それまでの5カ月間は続けて計304億ド
ルを売り越した。

  中国人民銀行(中央銀行)貨幣政策委員会委員を務める国務院
発展研究センター金融研究所の夏斌所長は、「現状から見て、米国
債の法定上限引上げは必至だ。また、短期的に見て、米国債が当面
デフォルトに陥る可能性はほぼ皆無だが、長期的スパンで見ると、
ドルはすでに下落軌道に入っている」と指摘した。

  国務院発展研究センター金融研究所総合研究室の陳道富主任に
よると、米国債がデフォルトに陥る可能性は、当面ほぼ皆無という。
その理由として、米国債が大々的にデフォルに陥った場合、それま
でに講じられた経済刺激策がことごとく水泡に帰し、さらには一連
の「リスク」を誘発することになるからだ。マクロ経済へのダメー
ジ、金融市場の大幅変動、果てはグローバル金融市場の安全にも脅
威をもたらし得る。長い目で見て、米国債のデフォルトリスクは、
中国が決して眼をそらしてはならない問題だ。今すぐにデフォルト
が現実のものとなれば、米国にとってその代償は大きい。しかし、
将来的には、米国が一方的に債務帳消しなどに踏み切る可能性は排
除できない。
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規模な財政赤字削減でぎりぎりの交渉―米大統領と下院議長
ウォール・ストリート・ジャーナル 7月22日(金)9時45分配信

 米債務上限引き上げの前提となる財政赤字削減をめぐる政府と共
和党との交渉で、オバマ大統領とベイナー下院議長(共和)が大規
模な財政赤字削減案に焦点を絞ってぎりぎりの話し合いを行ってい
ることが明らかになった。関係筋が21日、ホワイトハウスが民主党
指導部に伝えた報告として語った。

 同案では、今後10年間で約3兆ドル(約230兆円)の歳出削減を、
また2012年末までに税制改革を実施して10年間でほぼ1兆ドルの歳入
増を図ることになっている。カーニー大統領報道官によれば、オバ
マ、ベイナーの両氏は合意には近づいていないが、大統領は引き続
きできる限り大規模な赤字削減合意を目指している。

 議会筋によれば、オバマ、ベイナー両氏の話し合いでは増税は対
象となっていない一方、削減対象に社会保障やメディケア(高齢者
医療保険)など公的給付金が含まれている。民主党は、公的給付金
を削減する場合には増税をセットにする必要があると主張しており
、民主党が同案に反発する可能性がある。

 政府と共和党が財政赤字削減案で合意したとしても、一部共和党
議員が債務上限引き上げに反対するとみられるため、共和党が多数
派を占める下院でも債務上限引き上げ承認のためには民主党の支持
が必要になる見込みだ。

 一方、ほぼ90人の下院共和党議員は、マコネル共和党上院院内総
務が提唱している財政赤字削減を伴わない債務上限引き上げ案につ
いて反対の署名を行っている。
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米大統領が短期の債務引き上げ容認へ、包括案は上院超党派案が軸
2011年 07月 21日 10:55 JST

 [ワシントン 20日 ロイター] オバマ米大統領は、財政赤
字削減に向け議会が包括的に合意するが時間を要する場合、数日間
の連邦債務上限引き上げ措置を受け入れる方針だ。

 大統領はこれまで、短期的な引き上げには拒否権を行使する考え
を示していたが、時間切れになりつつあることを認め、「数日間」
の引き上げを受け入れる構え。

 上院の超党派グループが19日、新たな赤字削減案を示したこと
で、包括合意への期待が高まっている。政府は法制化作業を考える
と22日を合意への期限としていたが、これまでにまとまる可能性
が低くなっている。

 起草した一人である民主党のコンラッド議員は20日、当初削減
額は債務上限引き上げ法案に盛り込むことも可能と指摘。また下院
共和党の支持を得るために、当初額は引き上げられる可能性もある。
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米財政赤字、4兆ドル削減案が台頭 政権高官明かす
2011年7月20日15時2分

 米債務上限引き上げを巡るオバマ政権と与野党の交渉で、今後10
年で4兆ドル(約317兆円)程度を削減する案に議論の中心が移
ったことが19日わかった。複数のオバマ政権高官が朝日新聞の取
材に明らかにした。合意できない場合に備え、大統領権限で上限を
引き上げる緊急避難的対策も並行して準備されている。 

 オバマ大統領は14日、米議会側に(1)3兆〜4兆ドルの財政
赤字削減を念頭に置いた「最大限の対策」(2)2兆ドル程度の削
減を目指す中規模対策(3)債務上限だけの引き上げでの合意の3
案を提示。また、議会側では、大統領権限での債務上限引き上げを
認める緊急対策も検討されており、計4案が先週来議論されていた。 
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米国の債務上限引き上げ問題が土壇場までもつれこんでいる理由
2011年07月16日07時58分BLOGOS
広瀬隆雄

今週も米国の債務上限引き上げに関する合意が無いまま週末を迎え
ました。8月2日までに債務上限の引き上げがなければ米国はデフ
ォルトに陥ります。

そこで今日はなぜモタモタしているのかを説明したいと思います。

先ず債務上限引き上げ案については現在、3つの案が存在します。

【オバマ案】
同案には所謂、「グランド・バーゲン(大掛かりな計画)」とニッ
クネームが付いており、その名が示す通り大上段に構えた根本的財
政改革を目指す案です。向こう10年間で4兆ドルの赤字削減を目
指すこのプランの中には増税、税制改革、メディケア改革などが含
まれています。オバマ大統領の狙いはここで大きく米国の財政をリ
セットすることで現在進行中の景気テコ入れのための拡張的財政政
策を継続する点にあります。

【上院共和党案=ミッチ・マコーネル案=「プランB」】
これはとりあえず差し迫った債務上限の引き上げを最優先する案で
す。当面のデフォルトは回避できますが政府債務圧縮のロードマッ
プは示されていません。当座の措置として議会が1兆ドル程度の予
算削減を提案しますが、それ以上の予算削減の必要に関してはホワ
イトハウスに下駄を預けます。「缶蹴り」のように問題を先送りす
る案であると言うことも出来るでしょう。

【下院共和党案】
向こう10年間で2.4兆ドルの支出削減(Cut)を目指すほか将来
の支出のコントロール(Cap)と均衡財政(Balance)を盛り込んだ
プランです。このため「Cut, Cap & Balance Plan」と呼ばれていま
す。この案には増税は含まれていません。来週火曜日に投票に付さ
れます。仮に下院で可決しても上院から支持される可能性は低いです。

以上の3つの案はいずれも大きな隔たりがあり現状では歩み寄りは
難しいです。

デフォルトすると大変なことになってしまうことを重々承知しなが
ら、なぜ三者はそれぞれの立場に固執しているのでしょうか?

それは債務上限の引き上げをギリギリまで延ばし、それに抵抗する
ことで当事者はそれぞれの支持層から拍手喝采を受けることが出来
るからです。「自分は最後まで抵抗した」と有権者にアピールした
いわけです。

共和党は「絶対に増税はさせないぞ」というスタンスをアピールし
ていますし、民主党は「お金持ちや大企業からもっと税金を取ろう
」ということをアピールしているわけです。

現時点ではたっぷり時間が残されているので話し合いがまとまる可
能性が強いです。

しかしS&Pなどが警鐘を発している通り、若し何らかの拍子で債
務上限引き上げの合意に至れなかった場合は金融市場の混乱もあり
うるでしょう。
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米国がデフォルト回避に最後の手、後の策はなし /media.yucasee 
2011年07月16日 19時05分
 
米国の法定債務上限(14兆2940億ドル)に到達する期限が8月2日に
迫っている問題で、財務省は15日、デフォルト回避のため、EFS
(Exchange Stabilization Fund 為替安定基金)の資金を財務省証
券で運用することを停止した。これで、当面の借入は可能となる。

発表によると、ジェフリー・ゴールドスタイン金融担当次官は「国
家を維持するために利用可能な措置の最後の再投資を停止する。国
の債務のデフォルトを防ぐために、議会は債務の上限を上げる必要
がある」とした。

この緊急措置によって、財務省証券の発行残高が230億ドル目減りす
ることになり、その分だけ新たな借り入れが可能になるという。
野党の共和党は、政府が安易な増税に走ることを危惧して反対して
おり、話し合いは平行線をたどったまま。最悪は、米国経済がデフ
ォルトということにもなりかねない。
米国はすでに5月中に債務残高がリミットに到達しており、財務省は
すでに3つの同省証券を停止している。EFSは言わば最後の緊急手
段となる。

1 州や地方政府のSLGS財務相証券の発行停止
2 公務員退職と障害者基金の債権発行の停止
3 政府証券投資ファンドの再投資を停止


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