4044.米国も低成長へ



米国も経済復興に苦しんでいる。その様子を見る。Fより

米国はリーマンショックから立ち直ったというが、失業率は依然と
して9.4%と高い水準にある。このため、財政出動で、景気の浮
揚をしたいが、財政出動のために米国債の発行が必要になる。
しかし、債務上限引き上げを巡る共和党・民主党の協議で抜本的な
財政赤字削減交渉をしている。

増税での財政赤字削減を共和党は拒否しているので、財政支出削減
しかない。このため、財政出動ができる状況ではない。そして、削
減額として、10年で2兆ドル(約160兆円)程度の赤字削減を
軸に協議を進めているが、増税を考える民主党に対して、共和党が
反対しているために、財政支出削減を大幅な行う必要がある。
その削減の対象として、軍事費があるのだ。

よって、軍事費の大幅な削減が待ったなしの状態になっている。
この軍事費を大幅に減らすには、イラクやアフガンに駐留している
米軍を削減することである。このため、アフガニスタン駐留米軍を
1万人も撤退させることにして、最初の部隊となる650人が13
日、東部パルワン州にあるバグラム米軍基地を後にして本土に向か
った。

イラクでも完全撤退の方向である。今までは正規軍がテロ活動やゲ
リラに対応していたが、今後は特殊部隊を重視した「秘密作戦」を
多用する方向にいく。これの方が、費用が少なくて済む。

軍事費より、社会保障費を大幅に削減する方向である共和党は、不
十分としている。それに対して民主党は社会保障費の減額を認めな
い立場であり、両方の主張がかみ合わない状態である。両党ともに
2012年大統領選挙があり、主張を譲ることができない。

しかし、共和党と民主党の調整ができないで、8月上旬までに債務
上限引き上げができないと、米国債のデフォルトになる可能性もあ
り、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、
米国債の短期的な見通し(クレジット・ウオッチ)を「安定的」か
ら「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。調整が難航して危ない
と見ているようだ。

また、5月の米貿易赤字は、前月比15.1%増の502億2700
万ドル(約4兆円)で、2008年10月以来2年7か月ぶりの高
水準となった。米国経済への黄色信号が点っている。

このような状況で、FRBの金融政策が最後の米国の支えであり、
市場は、米国経済が足踏み状態で失業率も9%であり、景気の浮揚
のため、6月末に終えたQE2の代わりに、QE3が始まることを
期待した。

しかし、バーナンキ議長は「現時点ではさらなる措置を取る準備は
していない」と述べ、近々でのQE3がないことを明確にしたのだ。

ドルの緩和は、世界にインフレ、特に新興国のインフレを加速して
しまう。この新興国の商品が値上がりすると、米国の市場でもイン
フレが進むことになる。

このように、日本の2000年代と同様な低成長が当分、続くよう
だし、明確な政策の方向を打ち出せないようになっている。

日本のバブル崩壊は、大きな教訓を世界に与えたが、日本の政策を
批判していた米国も同様な事態になり、同様な苦しみを味わってい
るようである。米国の失われた20年が始まったようである。

さあ、どうなりますか??
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FRB議長、追加の金融緩和策「準備せず」

 【ワシントン=岡田章裕】米連邦準備制度理事会(FRB)のバ
ーナンキ議長は14日、上院銀行住宅都市委員会で行った金融政策
報告で、追加の金融緩和策について「現時点ではさらなる措置を取
る準備はしていない」と述べた。


 議長は前日の議会証言で景気低迷が続けば追加緩和に踏み切る可
能性を示唆したが、市場に広がった早期緩和への期待を沈静化する
ため、軌道修正を図ったとみられる。

 議長は「最も伝えたいのは『現状は深刻だ』ということだ。FR
Bは責務を果たすため(追加緩和策が)必要となった時に備えてい
る」と述べ、慎重に検討する姿勢を示した。また、現状の景気減速
が鮮明となり追加緩和に踏み切った昨年と比べ、「現状(の景気)
はより複雑で、近い将来の見通しも不透明だ」と指摘し、景気動向
を慎重に見極めたうえで政策判断する考えを強調した。

(2011年7月15日10時48分 読売新聞)
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アフガン駐留米軍の撤退始まる 650人、数日中に帰還
2011年7月14日23時17分

 アフガニスタン駐留米軍の最初の撤退部隊となる650人が13
日、東部パルワン州にあるバグラム米軍基地で、任務を米本土から
新たに派兵された別の部隊に引き継いだ。AP通信が報じた。基地
の報道担当によると、数日中に米本国に帰還するという。

 今回撤退するのは、昨年11月に派兵されたパルワン州担当の部
隊。交代する部隊は500人で駐留米軍が150人減ることになる。
当面はこうした部隊の交代を繰り返して人員を減らしていくと見ら
れる。
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S&P、米国債の短期見通しを「弱含み」に引き下げ
2011年7月15日10時21分

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は14
日、米国債の短期的な見通し(クレジット・ウオッチ)を「安定的
」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げたと発表した。「今後
90日以内に少なくとも2分の1の確率で格下げする」と警告して
いる。

 S&Pは今年4月、財政赤字と巨額の債務を問題視して、最上位
の「AAA(トリプルA)」に格付けしている米国債の長期的な見
通しを引き下げた。「今後2年以内に、少なくとも3分の1の確率
で格下げする可能性がある」としていた。

 しかしその後も「政治家の議論はさらにもつれただけだった」と
指摘。「膨らむ債務問題について信頼できる解決策にたどりつけな
ければ、1段階かそれ以上、格下げするだろう」としている。
(山川一基)
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FRB議長、追加金融緩和を示唆 米景気回復遅れ受け
2011年7月14日1時47分

 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は13日、米
国の景気回復が緩慢な状態が続いて失業率が下がらず、物価上昇率
も下がる可能性があると言及。そうした事態になれば、追加的な金
融緩和を行う用意があると示唆した。 

 半年に一度の米議会証言で述べた。「金融政策の調整が適切とな
る事態になれば、対応する用意がある」と表明。景気がさらに減速
した場合、証券の追加購入に踏み切る、ゼロ金利などの長期の継続
についてはその期間も明示する、といった策がありうるとした。 

 FRBは、昨年11月から国債6千億ドル分の購入を通じて、景
気を刺激する「量的緩和第2弾(QE2)」を実施。6月末で、こ
の追加緩和を終了した。バーナンキ議長は6月の会見では、再び追
加緩和に踏み切ることに消極的な姿勢を示していた。 
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米貿易赤字15%増

 【ワシントン=岡田章裕】米商務省が12日発表した5月の米貿
易赤字は、前月比15.1%増の502億2700万ドル(約4兆
円)で、2008年10月以来2年7か月ぶりの高水準となった。

 原油価格の高騰で輸入が2.6%増の2250億8700万ドル
と増えた。輸出は0.5%減の1748億6000万ドルだった。

(2011年7月13日 読売新聞)
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米財政赤字削減、2兆ドル軸に協議 政権側が野党に譲歩
2011年7月13日5時0分

 米国の債務上限引き上げを巡る抜本的な財政赤字削減交渉で11
日、米オバマ政権と与野党が、10年で2兆ドル(約160兆円)
程度の赤字削減を軸に協議を進めていることが、わかった。米政府
高官ら複数の関係者が朝日新聞の取材に明らかにした。米高官は
11日夜、「(2兆ドル近辺が)妥協が得られる可能性が高そうだ
」と語った。 

 オバマ米大統領は、これまで10年で約4兆ドル(約320兆円
)削減を目指していた。しかし、共和党のベイナー下院議長が、「
より小さな対策に焦点を合わせることが最善の手法だ」として協調
姿勢を後退。このため、オバマ政権は、これまでバイデン副大統領
と共和党指導部が積み上げてきた削減額を軸とする方向へ、軌道修
正した形だ。 

 オバマ氏と米議会側は11日午後にも協議したが、合意には達し
なかった。 
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米国防長官がイラク訪問 年末の完全撤退など協議
2011年7月11日12時3分

 パネッタ米国防長官は10日、就任後初めてイラクを訪問した。
マリキ首相ら政権首脳と会談し、今年末に予定する駐留米軍の完全
撤退などを話し合う。米政府は来年以降も1万人程度を駐留させる
意向と報じられており、イラク政府の対応が注目されている。 

 1日に長官に就任したパネッタ氏は、最初の訪問先だったアフガ
ニスタンで、イラクでの米軍駐留継続について「イラク側から正式
な要請があれば検討する」と述べた。イラクで隣国イラン系の武装
勢力の活動が活発になっていることに懸念を表明。治安を担う国防
相や内相の任命を急ぐようイラク政府に求める考えも示した。
(ワシントン=望月洋嗣) 
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米失業率 9・2%に悪化
2011年7月9日 東京新聞朝刊

 【ワシントン=共同】米労働省が八日発表した六月の雇用統計(
速報、季節調整済み)によると、米失業率は9・2%で前月から
0・1ポイント悪化した。悪化は三カ月連続で、9・4%だった昨
年十二月以来、六カ月ぶりの高い水準に後退した。

 景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数は前月比一万八
千人増の伸びにとどまり、九万人程度としていた市場予想を大きく
下回った。増加幅は二万九千人減だった昨年九月以降、最も低い水
準。四、五月ともに下方修正された。

 特に、これまで回復をけん引してきた民間雇用は五万七千人増。
昨年五月以来の低水準で、雇用改善の目安となる十万人増を二カ月
連続で下回った。ガソリン価格の高止まりで個人消費が抑制。生産
活動も足踏みし民間企業が引き続き採用に慎重な姿勢を示した。
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米国:対テロ戦略転換 特殊部隊を重視 「秘密作戦」の様相に
 【ワシントン白戸圭一】オバマ米政権が29日発表した新しい「
テロとの戦いに関する国家戦略」は、多数のテロ組織・国家との対
決を想定したブッシュ前政権の方針と決別し、国際テロ組織アルカ
イダの打倒に狙いを絞り込んだ。イラクとアフガニスタンで大規模
部隊撤収の道筋を付けた政権は、特殊部隊による少数精鋭型の作戦
を重視する構えだ。米国の戦争はこれまで以上に国民の目の届きに
くい「秘密作戦」の様相を帯び、暗殺や無人攻撃機による殺害が加
速する懸念がある。

 29日のホワイトハウスでのオバマ大統領の記者会見。アルカイ
ダのメンバーを発見した際の身柄の取り扱いを問われた大統領は「
逮捕と起訴が原則」との認識を示しつつも「最優先事項は(アルカ
イダのメンバーが)米国への攻撃を実行できないよう確実を期すこ
とだ」と述べ、状況に応じて殺害も構わないとの考えを示した。

 アフガン、パキスタンなどでアルカイダ掃討作戦に投入されるの
は、米中央情報局(CIA)や陸、海、空、海兵隊の4軍の特殊部
隊。活動はほとんど情報開示されない。

 特殊部隊よるウサマ・ビンラディン容疑者殺害では、政権は当初
「銃撃戦になったので射殺した」と説明したが、その後に「容疑者
は丸腰だった」と訂正。発言者によっても説明が違い、殺害から約
2カ月経過した今も真相は不明だ。政権は詳細を明らかにせず、無
抵抗の容疑者を射殺した疑念が消えない。

 オバマ大統領は就任後にイラクからの米軍撤収に踏み切り、アフ
ガン駐留部隊は7月から撤収を始める。だが、通常部隊の縮小・撤
収傾向とは対照的に、特殊部隊の規模と予算はブッシュ前政権時代
に比べて拡大傾向だ。米軍特殊工作司令部のオルソン司令官の昨年
3月の米下院軍事委員会での証言によると、前政権時代に60カ国
だった特殊部隊員の配備国はオバマ政権になって75カ国に増え、
約1万2000人が海外展開しているという。

 米議会調査局の今年3月の報告では、01会計年度(00年10
月〜01年9月)に21億ドル(約1680億円)だった特殊部隊
関連予算は、11会計年度には4・7倍の98億ドル(約7840
億円)まで増えた。特殊部隊員は毎年3〜5%のペースで増え続け
、総計6万人に達する。オバマ政権は12会計年度で関連予算を
105億ドル(約8400億円)に増額する方針だ。

毎日新聞 2011年7月1日 東京朝刊


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