4010.悲観しないで



悲観しないで

皆様へ

ご無沙汰しています。余りメールを見る時間がなく、残念です。今
も出張の車中で書いています。

今の政治、原発、日本の技術の状況がおわかりになり、相当悲観さ
れているようですが、行政の中におり政治に接触し技術をやってき
た者からみるとなんの驚きもありません。

日本の政治の上層部は知っているかぎり、幕末から性状、やり方何
も変わらず日本の為でなく今でいう政局中心です。
今回は、民主党になり、今まで裏でやっていた根回しがないため、
一つの案件をまとめるためにも、繋がり、造反、感情、欲が丸見え
になっただけです。自民党時代は変な話もまとまってから出すので
、一般の人はまともな内容と思ってしまっていただけです。

このような状況でも、今回で言えば震災に遭われた方々、福島原発
現場で作業している方々(所長以下)、消防、警察、自衛隊皆現場
で最高の連携でベストを尽くしています。東京の指示を無視して、
現地の人に少しでも役立つことをやっています。若い自衛隊員も死
体洗浄、検視等を初めてやらされてノイローゼ(PTSD)になってい
ます。日本国民はしっかりしています。原発もIAEAは、事故が起っ
た後の対応はあれしかなかったと報告書に書いています。
日本の技術も大丈夫です。技術の底辺は。但し、原発のように、立
地とか安全性にどれだけ金を掛けるかと言う議論になると、全然公
正な議論は行われて来ませんでした。これからも、この点は日本は
良くなるとは思いません。太平洋戦争も皆負けるということを分か
っていて突っ込んで行ったのですから。
日本人は歴史から学びませんから。

今回で残念だったのは、日本の実態が世界に白日の元に曝され訳で
す。信用が完全に失墜しました。今まで、顔の無い日本と言われて
いましたが、もしかしたら顔はあるのかもしれないと皆善意に思っ
てくれていました。
これを回復するのは相当掛かると思います。

今日午後、内閣不信任案が上程され、否決、可決どちらにしても、
政治空白を生み、震災に遭われたか方々は塗炭の苦しみが更に長く
続くことになると思います。

それでも日本は大丈夫です。国民がしっかりしていますから。まじ
めで、諦めず、粘り腰がありますから。

わたしも、微力ですが、これからも諦めず頑張っていこうと思って
います。

安他
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「悲観しないで」と優しく声をかけてくださり、ありがとうござい
ます。嬉しいです。

これを見て、自分が失望としていることに改めて気づかされました。
日本人て、こんなにバカだったのか・・・というような、がっくり
とした気分です。

そうですか。
そんなに悲観しなくても大丈夫ですか。今回の事態が驚きではない
ということに逆に驚きましたが、安他さんのように、日本の中枢に
長年いらした方の言葉なので、説得力があり、すっと心が和みまし
た。

技術力も大丈夫ですか。私は、最後の頼みの綱のような技術力まで、
ダメになったのかと不安に思いました。

でも、日本人気質、日本的あり方が、強烈に問われていることは事
実ですよね。。。
私たちは、これからどうしたらいいのか、、、気持ちも頭もまとま
りませんが、ともかくお礼を申し上げたかったです。

袖川
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正名論の時代

 また日本の国民の民度の高さ,日本という聖地を生きる庶民の正
直さや前向きさは確かに希望です.それが次の文明を生みだす原動
力になるでしょう.

 袖川さん,悲観する必要はないです.

 ただ一方で現代社会が文明の過渡期であることも間違いないこと
だと思います.今までの考え方・思想の中には有効性を失って通用
しなくなったものも多々あると思います.そういった点で,どのコ
トバを信じたらいいのかという問題は,大きな問題です.

1 孔子と正名論
  紀元前5世紀が哲学の世紀であったのも,地球規模で環境異変があ
ったからではないでしょうか.ギリシャで自然哲学が興隆し,イン
ドで仏教が生まれ,中国で孔子が活躍しました.

 釈尊も八正道を説き,コトバを正しく使うこと,正しいことを思
うことなどを教えました.(どうして西洋思想にはそのような伝統が
ないのか,不思議です)

 孔子は,詩には邪な思いがないからと詩や音楽を重んじたほか,
弟子に言葉を正しく使うことを教えました.有史以来,多くの思想
家が認識や言葉にこだわってきましたが,孔子の認識論・正名論は
,言葉上だけの知識を戒め,コトバと意味との正確な結びつきを重
要視したものです.

 論語・為政第二で弟子の子路に「知る」とは何かを教えるくだり
があります.

「之を知るを之を知ると為し,知らざるを知らずと為す.これ知る
なり」

 正名論は論語・子路第十三で論じられています.

「かりに先生が衛の国君を補佐する立場に立たれたとしたら,まず
何から手を着けられますか」
 子路の質問を受けて,孔子は答えた.
「名と実を一致させたいね」
「まだるっこい話ですね.もっと差し迫った対策をうかがっている
のに」
「あさはかだな,おまえは.君子なら君子らしく,よく考えてから
口をきくものだ.いいかね,名と実が一致していなければ,ことば
が通じ合わなくなるではないか.そうすれば社会は成り立たない.
ことばが通じ合うという前提があればこそ,道徳は確立され,法律
も規制力を発揮できるのだ.道徳が混乱し,法律が有名無実になっ
たとしたら,その国の人民はどうやって生きていけばいい? 為政
者が名と実を一致させれば,それによって共通の言語が成り立つ.
そうすればすべての発言は当然,実行の責任を負うことができる.
君子にはそれほど言語問題は大切なのだよ」(久米旺生訳・徳間書店版)

2 コトバを正しくしなければならない理由
 このところ荒川修作の『意味のメカニズム』を読んでいますが,
我々が学習するというのは,脳内にコトバを自動的に処理する論理
回路を作り出すことではないかと思います.パブロフの犬の実験で
,特定の刺激とその後に起こる現象を結びつけるのと同じです.学
習をすると,現実を目にしなくても,記号を処理することによって
行動に移れます.

 我々の脳がコトバを論理的に処理するというのは,あらかじめ脳
内に方程式ができていて,そこに自動的にコトバを代入して,その
演算結果にしたがって行動するということ.

 たとえは変かもしれませんが,オレオレ詐欺の場合,息子なり孫
が風邪をひいているということで声が違うことをいったん受け入れ
ると,その後やすやすと言いなりになってお金を振り込んでしまう
のも,自動的に演算して行動するからだと思います.

 大事なことは,脳はコトバが正しいか正しくないか,現実か現実
でないかの区別ができないことです.脳は受け入れたコトバをすべ
て正しいものとして扱うようにできている.だから「仮想現実感覚
」というものが生まれるのです.

 コトバを受け入れるかどうかは,コトバの問題ではなく,誰が話
したか,誰の紹介かといったところで決まります.

 政治家や東京電力社員やマスコミ人や我々一人一人が,コトバを
どのように正しく使っていくか.これが最重要ではないでしょうか
.精一杯正しいコトバを紡ごうとするところから,次の文明が生ま
れてくるように思います.

得丸
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連日、失礼します。これで最後とします。

「正しい」言葉とは何か・・・と思ってしまいますが。。。

ここ数日の不信任案&否決をめぐる
政治家および、それを伝えるマスコミの言語の
あまりの醜さに、鈴木先生の説く「日本語教」への信頼も
ゆらぎかけますが、悲観論は、、、やめますね。。。

袖川
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袖川さん

お仕事上テレビを見ないわけにはいかないのかもしれませんが、
たぶんテレビの見すぎではないでしょうか。

私は木曜日の昼時にテレビで管総理が退陣を表明したところを
見たきり、あとはまったく見ていません。

テレビは、家族が見ているドラマか、放送大学の番組をたまに
見る程度にしてます。

そもそもマスコミというものは期待できないということはすで
に証明されているわけで、新聞も読まなければいいと思います。

そのほうが心穏やかです。海外に生活しているというくらいの
つもりで、報道(「情報」ではない)に接すれば、汚染されず
にすみます。

余計なことかもしれませんが、あえてひと言申し上げます。

得丸


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