3999.沈黙の春?



 座禅をするといろいろな音が入るが、自分の周りに異変が起きて
いるように感じる。それは5月に入ると多くなる羽虫などの虫が少
ないことである。この虫を食べる小鳥も少ないようだ。この季節に
なると、うるさいぐらいウグイスが鳴き、その他多くの鳥たちの鳴
き声を聞くが、その音が少なくなったようである。カラスの数も少
なくなったような印象を受ける。
            津田より

0.はじめに
1962年に出版されたレイチェル・カーソンの「沈黙の春」の放射線
版かと思う日が続いている。反対に、放射線の良い効果で、肩こり
や体の疲れが少なくなったような印象も受けている。皆様はどうで
あろうか?小さなことのようですが、今までの春とはどこか違う何
かを感じている。

とうとう、東京多摩地域まで福島第一原発の放射能の影響を受け始
めたようである。250kmの東京まで徐々に放射性物質が飛んでき
て、それが堆積して、放射線量が増えているのだ。東京の半分が年
間1msv以上と平常時制限以上の放射線量になっている。

この放射線に最初に影響されるのが、小さな虫たちなのだというこ
とを虫がいなくなったことで知る。徐々に大きな虫やそれを捕食す
る鳥たちがいなくなる。これが自然の摂理であり、その摂理を我々
人間も感じるのである。

人間は、食べるものが多種多様で、かつ放射線がない遠い地域の食
品を食べることが出来るので、ある程度の放射線量でも大丈夫なの
である。また、犬やハトたちなど人間の近くにいる動物たちも人間
がえさを与えているので、元気である。

このため、注意しないと自然界の異変に気が付かないことになる。
福島第一原発からの放射性物質が漏れ出しているので、徐々に拡散
していくのはしょうがないが、いつになったらその放射性物質が止
まるのか、ハッキリしない。

1.超法規行動
工程表も現場の吉田所長ができないと宣言しているが、東電本社と
官邸が無理押しに現場の状況より国民を見て決めている。このため
、現場の吉田所長と吉田さんを慕う本社の原子力技術者たちが反抗
して、メルトダウンやメルトスルーも公表し始めている。いかに、
この工程表が出来ないかを国民に現場と技術者たちがアピールし始
めてきた。

官邸の菅さんも現場の吉田さんも東工大というので、性格が違う東
工大卒業生と見えるが、どちらも組織人ではないようである。しか
し、現場の吉田所長と彼を慕う本社原子力技術者たちが真実を明ら
かにしていくと見ている。がんばってほしい。吉田さんと技術者た
ち。技術の前には平等である。事故の復旧という前では、組織的な
ポジションは関係ない。

そして、官邸や東電本社の意向を無視しても海水注入をした吉田所
長にやっと光が当たり始めている。現場は危機マニュアルがあり、
それに基づいて行動をしている。その行動を止めると事態が悪化す
るために、マニュアル化されているのである。それを本社の意向や
官邸の意向で止めることは禁止なはずだし、これを行う本社・官邸
は、危機対応の能力を失っていたことになる。

今回の一連の官邸・菅さんの動きは非常にまずい。原子力災害時の
対応は法律とマニュアルで定められていたが、それを超法規で放棄
して、菅首相が直接指揮を取ると宣言して、原子力安全委員会の権
限を奪い取った。そして、安全委員を官邸に徴集していない。

電話やメールで、詳しい状況も教えずに部分的に安全委員に意見を
聞くために答え方は、一般論になるしかない。その意見を聞いて菅
さんは判断したようであるが、自分が責任を負いたくないので、海
江田さんや細野さんに責任を押し付けることになる。初動ミスが致
命的なのである。超法規で対応して、分からなくなって、意見を聞
くという中途半端な対応が大事故に繋がっている。参与も泥縄式に
増やしている。

まず、対策委員会を東電本社に置いて、政府機関をその組織に入れ
ていない。その後遺症が、情報を集めないのか、隠したのか知らな
いが、どちらにしても情報収集と分析を関係部門の担当者を集めて、
組織的にしなかったことで、漏れやミスが多発している。韓国に連
絡しなかったのは、外務省の対策委員会の組織に入れなかったこと
である。

このため、現在、徐々に情報が各組織から出てきて、過去にさかの
ぼって対応処置が分かり始めている。これはいかに情報収集をしな
かったかの結果を示している。また、情報がないために判断ミスを
多数、犯していることが判明している。

2.原因調査委員会
一番問われているのは、菅首相を含め、保安院や安全委員会が初動
でどういう対応をとったかであり、行政府の問題なのだから立法府
がチェックすべきで、国会に調査・検証委員会を設置することが必
要であったが、内閣府という菅首相のコントロールが効く所に調査
委員会を設置した。

政権に都合が悪い情報を封鎖しようとしたが、G8で国際公約した
福島第一原発での情報開示で、世界は日本政府を信用せずに、IA
EAは即座にウェイトマン調査団を送ってきた。

これは戦前のリットン満州国調査団と同様に、日本政府としては来
てほしくない調査団である。このため、内閣府内に原子力炉の専門
家を含まない事故検証委員会を作り、ごまかす算段をしていたが、
そこで海外では第3者機関のIAEAの調査団を送ってきたのだ。

6月2日までの滞在中、政府当局者や東電関係者などから事情聴取
も重ねるが、その中で官邸と現場の情報すれ違いなどが明らかにな
ってきた。恐らく、報告書には、首相官邸の初動対応の悪さが、事
故悪化を招いたと記されるとみる。

このようなことが記載されると、国際的な場での日本の信用は地に
落ちるはずである。超法規的な行動が、いかに悪い結果を引き起こ
すかが分かると思う。

3.菅首相の欠点
菅首相は、組織的に人を動かしたことがないようである。リーダの
心得を大組織にいると、かならず訓練させて、課長級・部長級と昇
進するごとにその訓練内容が高度化するし、その中で数値に基づく
判断など経営的な数値判断能力と情報収集や危機時対応などを訓練
される。

菅首相の今回の行動を見ると、全然、そのリーダーとなる教育がさ
れていないことが明確であった。このような人を国の指導者にして
はいけないと思う。周りの事務局も大変である。人が菅さんのため
という感覚で付いていけないようだ。人徳がないために、いろいろ
な部門・官僚から菅政権の不満が聞こえてくる理由である。

4.今後の政権
首相になる候補者はそれなりの訓練をしてから首相になってほしい
と思う。このように市民運動からのリーダはありえないとなると、
保守派からリーダをだすことだ。

若手の保守政治家から次の首相を出すしかない。それも民主党とか
自民党とかより、政治家個人の能力や個性による候補者を選ぶ必要
があるようだ。

その観点は、リアリストであるかどうかだ。理想主義者は、現実の
政治を取らせると、方針がなく、妥協して方向性がなくなる。現実
主義者はどうすれば、現実に受け入れられるが、しかし、あるべき
姿に近づけるかを常に考えて政策を打つために、方向性を失わない。

ガジガジの保守政治家は、何も変えようとせずに、惰性だけの政治
になり、この日本の危機には、対応できない。原子力推進は難しい
ことを肌で感じることが出来ない政治家であり、そのような政治家
に日本の将来を期待できないし、またリベラルな原子力即時全廃の
政治家は現実的な電力不足を見ないことで、現実解にならない。

どうか、早く政治を安定させて、保守だが、日本危機に対応する改
革を行う政権を誕生させたいものである。

さあ、どうなりますか?

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東日本大震災:福島第1原発事故 事故検証委員に作家の柳田氏ら

 枝野幸男官房長官は27日の記者会見で、福島第1原発事故の原
因究明を行う政府の「事故調査・検証委員会」の委員として、作家
の柳田邦男氏ら9人を起用すると発表した。「計画的避難区域」に
一部地域が指定された福島県川俣町の古川道郎町長も参加。委員長
に内定している畑村洋太郎東大名誉教授を含め委員は計10人とな
る。検証委の事務局長は小川新二最高検検事。

 畑村、柳田、古川の3氏以外の7委員は次の通り。(敬称略)

 尾池和夫・前京大学長▽柿沼志津子・放射線医学総合研究所放射
線防護研究センターチームリーダー▽高須幸雄・前国連大使▽高野
利雄・元名古屋高検検事長▽田中康郎・元札幌高裁長官▽林陽子弁
護士▽吉岡斉・九州大副学長【影山哲也】

毎日新聞 2011年5月28日 東京朝刊
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IAEAが菅にトドメ刺す 初動のマズさ“隠蔽”暴き出せ!
2011.05.27ZAKZAK

 東京電力福島第1原発事故の原因解明などを行う国際原子力機関
(IAEA)の調査団が、第1原発などを調べている。6月2日ま
での滞在中、政府当局者や東電関係者などから事情聴取も重ねる。
一方、日本独自の事故調査・検証委員会には立ち位置に疑念が浮上
している。今回の事故では、菅直人政権の初動対応が問題視されて
いるが、原子力の専門家らは「隠された真実」を暴き出すことがで
きるのか。

 「ここで何が起きたのかという情報を収集する。世界としても教
訓を学ぶ観点から非常に重要な機会だ」

 ウェイトマン団長は来日直後、こう語った。

 IAEAは、原子力の平和利用を促進し、軍事転用されないため
の保障措置の実施をする国際機関。旧ソ連のチェルノブイリ事故
(1986年)でも詳細な報告書をまとめ、日本でも東海村臨界事
故(99年)や新潟県中越沖地震(2007年)によるトラブルが
多発した東電柏崎刈羽原発に調査団を派遣し、高い評価を得ている。

 今回の調査は、各国から集まった専門家約20人があたる。調査
結果は、6月20日からIAEA本部で開かれる閣僚級会合で報告
されるが、「もし、報告書に『首相官邸の初動対応の悪さが、事故
悪化を招いた』などと記されれば、菅政権は国際社会から厳しい目
で見られる」(民主党中堅)

 こうしたなか、日本独自の事故調査・検証委員会に疑念が浮上し
た。

 自民党の塩崎恭久元官房長官は16日の衆院予算委員会で「事故
調査は国際的責任。今回、一番問われているのは、菅首相を含め、
保安院や安全委員会が初動でどういう対応をとったか。行政府の問
題なのだから立法府がチェックすべきだ」と、国会に調査・検証委
員会を設置するよう求めた。

 これに対し、菅首相は「(調査・検証)委員会は、(1)現政権
を含む、原子力行政から独立した存在(2)国民や国際社会に対す
る公開性(3)技術分野や制度、組織、法制も検証する包括性とい
う、3つの原則を持ちたい」と答弁していたのだが、24日に設置
が決まった事故調査・検証委員会は、なぜか国会ではなく、行政府
の内閣官房に設けられることになっていた。

 政治評論家の小林吉弥氏は「菅首相は、事故調査・検証委員会を
自分のコントロール下に置いたことになる。16日の予算委員会か
ら24日までに海水注入中断問題が発覚し、猛批判を浴びていた。
『やはり、初動対応などでやましいことがあるのか?』と疑念を持
たれかねない。IAEAの調査と独自調査にズレがあれば、菅首相
は窮地に陥る。トドメを刺されるのでは」と語っている。


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