3993.シェールガス革命が米外交に影響



米国で開発したシェールガスがいろいろなところに影響し始めてい
る。もちろん、米国のエネルギー政策は大きく変更する方向である
。中東の石油の重要性が減り、米が外交の自由度が増したが、財政
問題で軍事費削減をせざるを得ない。中東から撤退して、アジアに
重点を置くことになる。シェールガス、シェールオイルは世界の政
治を変えるインパクトがある。
              津田より

0.はじめに
シェールガスというのは、頁岩(シェール)層から採取される天然
ガス。従来のガス田ではない場所から生産されることから、非在来
型天然ガス資源と呼ばれる。

アメリカ合衆国では1990年代から新しい天然ガス資源として重要視
されるようになった。また、カナダ、ヨーロッパ、アジア、オース
トラリアの潜在的シェールガス資源も注目され、2020年までに北米
の天然ガス生産量のおよそ半分はシェールガスになると予想する研
究者もいる。

2000年代に入ってから水圧破砕によって坑井に人工的に大きな割れ
目をつくってガスを採取する技術が確立し、更に頁岩層に接してい
る坑井の表面積を最大にするために水平坑井掘削技術という技法で
10,000 フィート (3,000 m)もの長さの横穴を掘ることが可能となっ
た。これらの技術進歩の結果シェールガス生産量が飛躍的に増加し
シェールガスブームが起きた。

このため、米国は2009年、世界最大のガス生産国となり、ガス相場
は下落し、現行のガス価格4.18ドルは原油では1バレル当たり約24
ドルに相当することになる。原油が100ドルであることを考えると
石油の1/4である。

このシェールガス技術である水圧破砕で、シェールオイルという石
油も採掘ができる。この開発も始まっている。その内、石油でも生
産量が米国トップになる可能性がある。というように、シェールガ
ス革命は、石油にも反映されることになる。その中心的な技術が、
水圧破砕である。

米国やカナダが当分、開発の中心になるため、米国・カナダが石油
輸出国のトップになる可能性が高い。ロシアを抜いてLNG生産量
1位になっているが、石油でもLNGと同じように世界的な位置が
変化することになる。これができると、バイオエタノールや海底油
田からの石油は採算が合わなくなるし、石油価格が下落することに
なる。

この頁岩(シェール)層は、日本にはないので、今までどおりにシ
ェールガス・石油も輸入するしかないが、輸入先として米国、カナ
ダ、オーストラリアなど太平洋シーレーン諸国になり、中国海軍増
強での競合やソマリア海やマラッカ海峡の海賊などの問題がないこ
とで、シーレーン防衛が出来安いなど安全保障上の問題が少ないこ
とになる。また、太平洋のシーレーン防衛を日米豪で分担できる。

1.米国の中東政策変更
今までは、石油などエネルギー資源の枯渇が21世紀の大きな問題
であり、そのため米国は自国資源を温存して、中東の石油の安定的
な確保を目指してきた。しかし、自国で今までとは違う資源が利用
できることで、中東の位置づけが変化している。

中東戦略の変更が、この数年を見ると出ている。今までは石油安定
供給を優先して、非民主的な王政独裁体制を容認してきたが、石油
という資源の安定を必要としなくなることで、民衆が求める民主化
を推進できることになる。国が混乱して石油が生産できなくとも、
米国への影響は少ない。

まず、イランでの戦争終結で石油資源を他国に優先して配り、米国
は早期にイランから撤退した。この時点から米国の中東戦略が変更
してきている。その後、アフガニスタンで米国とタリバンとの秘密
交渉が行われて、アルカイダへの援助を停止して、選挙をして政権
に加わることを交渉したが、アルカイダのオサマビンラディンの保
護を中止できないとタリバンはしていた。

このため、アフガンからの撤退は、オサマビンラディンを殺す必要
があった。このため、CIAが行方を捜しパキスタンで捕捉し、殺
害できた。これでアフガンからの撤退もできることになる。

リビアでの紛争にも米国は消極的である。中東からの撤退を視野に
外交を行っているように感じる。その穴をNATO軍に引き継がせ
るようだが、欧州各国軍の装備が米軍に比べて、電子化が遅れてい
ることで、リビアでの介入もモタモタした印象を受ける。

2.イスラエルとの関係見直し
中東の制圧が必要なくなったので、イスラエルへの姿勢も変化して
いる。イスラエルは、秘密裏にカタフェ大佐のリビアなど支援して
きたことが知られている。このように中東における米国の裏からの
利益保護者という立場でいたが、今後、中東での民主化の妨げとい
う位置になってきたことで、米国はイスラエルを優遇しなくなる。

オバマ大統領は、イスラエル・パレスチナ和平交渉について「(イ
スラエルがヨルダン川西岸を占領する第3次中東戦争以前の)1967
年の境界線に基づき双方の境界を定めるべきだ」と主張、イスラエ
ルに領土面での譲歩を求めた。イスラエルは反発しているが、中東
の緊張要因となってきたパレスチナ問題の決着が「これまで以上に
緊急を要する」と米国は主張している。

現在、ヨルダン川西岸には約120カ所の入植地に約30万人が暮
らしており、ネタニヤフ政権は入植地を手放すつもりはない。しか
し、イスラエルは年間相当の援助を米国から受けている。この援助
も米国の財政面から出来なくなり、自立を余儀なくされる。

中東諸国の民主化で、徐々にイスラム教の政党が力を持ち、国内的
な問題から対外的な問題に視野が拡大されるときには、大きな障害
が待ち受けているように感じる。エジプトとの友好関係は、ムスリ
ム同胞団が政権を取ると、難しくなる。トルコとの友好関係もガザ
への支援団の船をイスラエル軍が襲撃したことで、頓挫している。

非民主化勢力がいたことで、イスラエルは外敵から身を守れたが、
今後は、そういうわけにはいかなくなる。非常に厳しい状況になる
ような気がするがどうであろうか?

3.米国は中国との関係を重視
米国の財政危機から軍事費を削減する方法である。10年間で1兆ド
ル削減するという。このため、空母艦隊の数も減らすことが決まっ
ているし、陸軍の兵員も減らすことになる。空軍は、有人機から無
人機に置き換えている。ステルス性能が高い高価な戦闘機をあまり
作らないことのようである。

このように軍事費を削減していくので、世界の警官をできなくなり、
アフリカ、中東地域はNATO軍が任務して、アジア、アメリカが
米軍の範囲になるようだ。このため、太平洋とインド洋に大西洋・
地中海にある米艦隊を持ってくるようである。

中国の海軍装備の充実化していることに、中国の利権とその意図を
明らかにして、中国の意図に逆らうことをしないようにする方向で
米中はG2を目指しているようである。中国は自国通貨の元を国際
通貨化する方向で拡大しているが、ドルペッグは国内問題で止める
事が出来ない。

そして、値上がりし過ぎた不動産価格の暴落が起きる可能性が高ま
っている。中国は不良資産問題を抱えることになるが、この時、対
外の敵を作り、国内の不満を逸らす中国の政治指導者が出ると、こ
れは大変なことになると見る。

4.日本は
日本も鎌倉時代、江戸時代と同様に、中国とは付かず離れずの関係
で、このために米豪や印越と仲良くすることである。中国の利権を
犯さないで、自国の利益を守ることである。逆に中国に取り込まれ
ることがないように気をつける必要がある。

さあ、どうなりますか??


参考資料
http://matome.naver.jp/odai/2130509524403652501
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英蘭シェル:米国産シェールガス、ディーゼル油など液体燃料に転
換も 

 5月19日(ブルームバーグ):欧州2位の石油会社、英蘭系ロイヤ
ル・ダッチ・シェルによると、カタールで同社が190億ドル(約1兆
5600億円)を投じて開発している技術により、米国のシェール(頁
岩層)から抽出した潤沢な天然ガスをディーゼル油やジェット燃料
に転換可能なことが証明できる可能性がある。 

  シェルは、カタールで世界最大のGTL(ガス・ツー・リキッ
ド)のプラントを完成させつつある。シェル米国部門のマービン・
オーダム社長はロンドンでインタビューに応じ、資本コストが削減
できれば、その技術を規模を小さくして米国で利用できる可能性が
あると述べた。この技術では、触媒を利用して天然ガスをジェット
燃料やディーゼル油などの液体燃料に転換する。 

  シェールガス開発により米国は2009年、世界最大のガス生産国
となり、ガス相場は下落した。現行のガス価格4.18ドルは原油では
1バレル当たり約24ドルに相当する。ニューヨークの原油相場は100
ドル近辺で推移している。 

  ライファイゼン・バンク(ウィーン)のアナリスト、ハネス・
ローカー氏は、原油輸入への依存軽減に向け「大量のシェールガス
資源を発見したことは米国にとって重要だ」と指摘。生産各社はこ
の価格水準から利益を得る方法を模索すると予想されるため「この
ような低水準のガス価格が続けば続くほど、さらに何かが起きるだ
ろう」との見方を示す。 

  オーダム氏によると、米国の生産会社は原油とガスの価格差か
ら利益を得る方法を検討している。同氏は、短期的には圧縮ガスや
液化ガスが輸送用燃料としてより重要な役割を果たす可能性が高い
と指摘。北米からの液化天然ガス(LNG)輸出については、政治
的障害がある米国よりカナダから行わる可能性が高いとの見方を示
した。 
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オバマ米大統領:中東新政策 「アラブの春」反米化懸念

 【ワシントン海保真人、エルサレム花岡洋二】オバマ米大統領は
19日の演説でイスラエル・パレスチナ和平交渉について「(イス
ラエルがヨルダン川西岸を占領する第3次中東戦争以前の)1967
年の境界線に基づき双方の境界を定めるべきだ」と主張、イスラエ
ルに領土面での譲歩を求めた。中東の民主化要求運動「アラブの春
」で和平交渉の仲介役だったエジプトのムバラク大統領が退場する
中、同盟関係にあるイスラエルに気兼ねしてパレスチナ和平問題で
手をこまねいていては、アラブ民衆の反米感情を強めかねないとの
判断があったとみられる。オバマ大統領は20日、イスラエルのネ
タニヤフ首相と会談したが、首相は反発しており、交渉再開への道
のりは厳しい。

 「イスラエルとアラブの紛争は中東に影を投げかけてきた」。オ
バマ大統領はアラブ諸国が民主化で「過去の重荷から脱却している
」時期だからこそ、中東の緊張要因となってきたパレスチナ問題の
決着が「これまで以上に緊急を要する」と主張した。

 打開策として突き付けたのは、イスラエルがヨルダン川西岸、ガ
ザ地区などを占領した第3次中東戦争以前の境界までの撤退だ。パ
レスチナ自治政府は「67年境界」をイスラエルとの将来的な国境
に想定しており、パレスチナ側の主張を取り込んだ提案と言える。

 イスラエルは「占領地」へのユダヤ人の入植(移住)政策を進め
てきた。ガザ地区からは05年に入植者が引き揚げたが、依然、ヨ
ルダン川西岸には約120カ所の入植地に約30万人が暮らしてお
り、ネタニヤフ政権は入植地を手放すつもりはない。

 オバマ大統領がこのタイミングで、イスラエルに強く出た背景に
は「アラブの春」後の中東情勢の激変がある。パレスチナ和平の仲
介役と期待されながら、イスラエルから譲歩を引き出せなかったム
バラク政権が反政府デモで崩壊。パレスチナ自治区にも反イスラエ
ルデモの形で民衆蜂起が波及し、新たな不安定要因となっている。

 オバマ大統領は今春、ムバラク大統領に見切りをつけ、中東民主
化支援へかじを切った。演説で、民主化で政権が交代したチュニジ
アとエジプトへの経済支援を約束したのは、「民主国家」のひとり
立ちを手助けする狙いがある。目指すのは中東の早期安定だ。

 パレスチナ和平交渉の停滞にアラブ世論は「米国を後ろ盾とする
イスラエルによる入植地拡大が原因」と不満を募らせており、各国
に広がる民主化のうねりはいつ何時、反米に向かうか分からない。
主要調査機関の世論調査では、アラブ・イスラム諸国における反米
感情は根強い。

 オバマ大統領は就任以来、中東和平達成の理念は説いてもイスラ
エルへの配慮から具体的な指針を示せずにいたが、今回、アラブ諸
国が賛同する「67年境界」を持ち出した。一方、パレスチナには
9月の国連総会で国家承認決議の採択を求めないよう戒め、双方に
歩み寄りを促した。
毎日新聞 2011年5月21日 東京朝刊



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