3991.発送電分離反対に対する反論



田中先生の現状認識が違い過ぎるので、そこから説き起こす必要が
ある。
1つには、料金問題で、世界に比べて倍以上も日本の電力料金が高
い現実を見ずに、送電を分離しても料金が5%しか下落しないとい
う論理がおかしい。

競争になり、電気料金は、今の半分以下になるはずで、そのために
は、自由な売買が保障される全国で送電の一本化が必要なことを否
定的に言っている。

もう1つは送電を9電力会社に任せると、電力会社間の送電は細い
ままで、自然エネルギーの偏在性を解決できないことになる。

たとえば、地熱発電は東北地方が多く、関西・中国地方は適地が少
ない。中小水力となると、中部地方が多く、またもや中国地方が少
ないなど問題がある。風力は北海道が一番適地が多い。このため送
電システムを全国一本化して、電力の融通を自由にしないと自然エ
ネルギーの開発ができないことになる。

ということは送電を今まで通りにするということは、自然エネルギ
ーでの電力供給をするなということに等しい。

また、関東大震災など今後の地震で、東京湾の火力発電所が壊滅状
態になると、停電が長期に続き、そのため、企業が海外に逃げ出す
ことになる。このよの発送電分離かつ送電一本化は重要なことにな
る。送電一本化しておけば、今回も計画停電は無かったのに、この
ことを誤認している。

発電は9電力会社に任すことで、供給責任を一義的に果たす体制に
すればようのであり、自由化との関係を調整することである。

LNGガス発電では、1KW当り6円程度で発電できるが、太陽光発電で
は1KW当り46円、風力でも20円程度になるので、自由化しても
9電力電力会社は絶対有利な位置にある。対応できるのは配電会社
が独自で水力や地熱を行っている場合で、この余剰電力を売る場合
だけである。

というように競争になると、太陽光発電はありえないし、風力も無
理であり、利益面でも心配する必要がない。基本数値がない議論を
観念的に行うことの危険を田中先生の議論に見える。

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発送電分離に関する田中辰雄准教授の見解

(1)原発事故を受け、電力事業の自由化提案が見られます。送電
部門はこれまでどおり公的な独占とし、発電部門を切り離して誰で
も発電できるようにするという提案です。消費者は複数の発電会社
のどこかと契約して電気を購入します。回線はNTTを使いながらISP
は好きなところを選べるとの同じです

(2)発・送電の分離は電力市場に競争市場を入れる事になり、競
争による価格低下が期待できます。欧米で導入例が多く、経済学者
の支持も高いです(たとえばhttp://bit.ly/efosXa)。ただし、市
場に委ねるので電力供給が不安定化しがちで、実際、欧米では大規
模停電が起きています

(3)送発電分離の賛否はここでは問いません。ただ、送発電分離
が、原発問題と計画停電への対策であるかのような登場の仕方をし
ているのはおかしいです、今回の巨大津波は仮に送発電が分離して
いたとしても防げなかったし、計画停電も起きていたでしょう。
原発事故と送・発電分離は関係ありません。

(4)また、送・発電分離したら脱原発になるものでもないです。
たとえば英と米は送発電の分離が進んだ国ですが、米国は原発を維
持し、英にいたっては温暖化対策のために原発新設を計画していま
した。つまり、原発を推進するかどうかは国のエネルギー政策で決
まるので、送・発電分離とは関係ありません。

(5)どの国でも原発をやるかやらぬかは国、したがって最終的に
は国民が決めるものです。これは原発のリスクが高く、一民間企業
ではそのリスクを背負えないからでしょう。

(6)まとめると送・発電分離のメリットは競争による電力価格低
下です。電力価格低下のメリットが大規模停電のデメリットよりも
大きいと国民が思えばやる価値があります。ただし、それはいま我
々の憂鬱の源である「原発事故リスク」と「計画停電の混乱」を解
決してくれる魔法の杖ではないでしょう。

(7)ちなみに送発電分離後の電力価格低下はhttp://bit.ly/eJyW7l
によると5%位のようです(最大で10%くらい)。大規模停電が起こ
ったカリフォルニアでは2006年になっても、総停電時間は日本の10
倍近いというデータがありますhttp://bit.ly/eOVci8

(8)5(〜10)%の電気料金低下なら、いらないから停電をなくし
て欲しいと思うか、それとも少々の停電は気にしないから電気料金が
5(~10)%下がったほうがよいか、で選択すればよい話になります。
いずれにせよ原発問題と震災による計画停電とは関係しない話です。

捕捉を二つ述べます。ひとつめ。送電と発電を分離したとして東電
がはらう補償金はどちらが払うのでしょうか。送電は薄利でもうか
らない商売です。発電会社は成功すれば儲かりますが競争市場なの
で、巨額の補償金があると新規参入者との競争が成立しません。補
償財団でも別途つくるのでしょうか・・。

二つめ、他の電力会社への影響。送・発電分離をすると、原発事故を
起こすと会社は解体されるという前例ができます。原子力損害賠償
法の免責事項は反故になるので、他の電力会社はいますぐ原発を止
めたいと思うでしょう。脱原発のためにはよいシナリオですが、計
画停電が全国に広がるかもしれません。


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