■菅首相への退陣要求書 ?及び「救国政権」についての骨子? ◆退陣理由◆ 3月11日の東日本大震災発生から1ヶ月が経った。 これを初期対応の区切りとして菅首相は勇退すべきである。 退陣理由は、以下の3点である。 (1)初動を含めた対応の誤りで福島第一原発事故拡大の人災を招 いた責任 (2)省庁間の調整や指揮がとれず、震災復旧が停滞している事 (3)原発事故等への情報隠蔽体質による実害と、それにより国際 信用を失っている事 菅首相始め政権各員がこの1ヶ月、震災対応に骨身を削り尽力され た事は認めるべきだ。しかし、色々言い分はあろうが、結果として 電源喪失に続くベントや海水注入の措置が遅れ、原発事故の拡大を 招いたことは菅政権の最終責任と言わざるを得ない。 また、これまで当初「脱官僚」を謳いながら官僚依存に舵を切って 両極端を振幅した菅政権は、結局官僚機構を道具として、或いはシ ンクタンクや有機体として使いこなす事が出来ていなかった。 平時に出来ない事が有事に出来るはずも無く、結果は官僚に怒鳴り 散らすだけで指揮系統が混乱し震災復旧が停滞した。 更に、原発建屋での一回目の水素爆発から発表が5時間後になった 事に象徴される情報隠蔽体質は、外部検証の遮断による適切な対策 の遅れという実害に加え国際信用を失わせた。 問題は、これらの事が現在も進行形で続いており、今後その体質、 思考パターン、能力資質の面で菅政権に改善を期待出来ない点であ る。 ◆菅政権の体質◆ 体質の面では、例えば今年1月に原子力安全・保安院の上部組織の 資源エネルギー庁長官から将来の副社長含みで東京電力の顧問に天 下った石田徹氏について、政府は国会で天下りに当たらないと答弁 している。 単なる天下り容認を超え、原発への監視機能の空洞化を意に介さな いようでは、官僚機構と原発政策を御すのはそもそも不可能だ。 また、例えば政権中枢の枝野官房長官は、記者会見で「原発事故の 事態収拾の見通しは申し上げられる状況ではない」と繰返している が、官僚の答弁や弁護士の法廷弁術としては及第点でも、政治家の 言葉としては言質を取られまいとする責任回避の態度と言わざるを 得ない。 収束の見通しを努力目標としても国民に何らか示すべきであり、ま た外に向かってそれを言うことによって、東電はじめ内部が引き締 まりそれに向けて対応が具体化して行く。 こういった事は、目標達成のための組織管理の要諦のひとつであり 、菅政権が根本的に誤った思考パターンを持ち、資質を欠いている 象徴である。 今後の原発事故の収束と震災復興のため、菅政権は自ら退陣すべき である。 さて、その場合の受け皿をどうするかが次の問題となる。 ◆「救国政権」骨子私案◆ 受け皿としての「救国政権」について、筆者は以下を骨子とすべき と考える。 ●先ず、民主党が全与野党に協議を呼び掛け、民主・自民の二大政 党以外から首班を出す事を決め、閣外協力を含め極力全党参加の下 「救国政権」の枠組みを作る。 (なお、もし民主・自民両党から首班を出さざるを得ない場合は党 籍離脱を条件とする) ●「救国政権」の期限は1年間とする。 ●民主のこれまでの震災対応と原発事故対応、自民の過去の原子力 政策等の問題点の検証は別途委員会を作り、今後の震災復興、原発 事故対応とは切り離して行う。 ●「原発事故担当相」を副首相兼任で任命し、事故処理及び今後の 原子力行政の改革に当たらせる。 ●大規模な「東北復興院」を仙台に設置し、現役政治家以外から選 出した院長の下、政党、地方自治体、経済界、労働界、言論界から の参加及び官僚の割り当てにより、複数省庁にまたがる復興事業を 計画・実施する。 ●「東北復興担当相」を副首相兼任(前述「原発事故担当相」とは 別途)で任命し、「東北復興院」及び内閣、各省庁の調整に当たら せる。 ●震災復興は、東北が復興後食べて行け、かつ日本の全体が浮上す るような先進的なアイデアを民間、海外含め広く募り、特区として 10年程度の優遇措置を与えて実施する。 ●復興資金は、何百年に一度の大惨事であることを考慮し、当面は 「復興国債」の発行を持って当て、少なくとも5年間は増税による 穴埋めを図らない。 ●新政権は、官僚をシンクタンク、実行部隊として使いこなす事を 宣言し、官僚には復興への全面協力を宣誓させる。 ●新政権は、情報のオープンで迅速かつ正確な発信を行う事を国内 外に宣言する。 統一地方選の結果を受け、政局に様々な動きが予想されるが、原発 事故収束、震災復興に向け、原理原則に従い党利党略を超えて各界 および国民一致団結で進む体制が出来る事を望む。 以上 佐藤