3968.日本の空洞化後の戦略は



「3967.企業分散を国際戦略で」でトヨタを中心とした自動車会社
の素材・部品を含めた日本の最強な製造業を海外展開する方向であ
るとコラムにした。この空洞化後の日本戦略を検討する。
                津田より

0.はじめに
パナソニックも最先端リチウム電池工場を中国に移管していくとい
う。自動車だけではなく、AV・家電も海外に工場をシフトする方
向になっている。中国人などアジアからの研修生が帰国して成り立
たない繊維、衣料系の工場などはカンボジアやラオスへ移転する方
向で一斉に行動を開始している。

この一番の原因は、日本国内での地震が頻発するという予想が出て
いるためで、たとえば、東日本大震災で起きた地殻変動の影響で、
首都圏の地盤に力が加わり、地震が起きやすいと東京大地震研究所
が発表している。M7クラスというのは、関東大震災クラスという
ので、東京・横浜などは大被害を蒙ることになるし、東海地震は3
連動になり、より大きな地域で大震災を起こすと言われている。

このように東日本大震災だけではなく、日本全体が地震を想定する
必要にある状況で、企業は電力の不足で関東から関西・九州などの
国内移転しても、数年後には大災害に遭う確率がある。この想定を
すると、同じ投資をするなら、地震がない海外に移転することが一
番経営効率が高いとなる。

このため、国内に拘っていた中小企業までが、海外移転を志向して
いる。大量な工場移転で、日本は今よりも製造業の雇用人口が減っ
て、サービス産業の雇用が増えていくことになる。この海外移転で
日本人の30%程度の人が海外と日本の二重生活になると見るが、
人口の70%程度である定年後の老人が残り、若者ではニートやサ
ービス産業での非正規社員が増えることになる。

この日本に残る人たちはどう生活するべきかを考える必要がある。
海外で勤めると、年金資金は諸外国政府の税金になり、日本の税金
にはならない。日本人正社員は金持ちであるが海外生活で日本政府
には、税金を納めないことになる。日本に取り残される日本人は、
大中企業の正社員ではない人たちで、非正規社員や海外展開できな
い小企業従業員であり、給与水準は低いことになる。

ということで、日本空洞化では年金資金が枯渇する問題がある。税
金も少なくなる。今のような社会福祉もできないことになる。日本
企業が海外投資して稼いだ利益を日本に還元するかというと、日本
に投資先がないので海外へ逃げるだけで、日本には資金は来ない。

このため、企業からの納税も少なく、金持ち日本人は海外にいると
いう構図になる。消費税なども低賃金な日本在住日本人からしか取
れないので、日本は今より確実に貧乏な国になる。社会福祉などの
レベルも落とさないと、国家財政が持たないことになる。このよう
なトータルな議論がないことに危機感を感じる。

もう1つが、海外でも先進国ではない諸国では、年金制度がない国
が多い。このような国では日本が日本人のために年金サービスを提
供していくことも考える必要がある。それは年金資金を確保するこ
とにもなる政策である。

1.日本の戦略を考えよう
今、輸出の80%が自動車とAVの部品や素材であるが、この部分
が海外生産でなくなり、日本は定常的な貿易赤字国でかつ、経常収
支赤字になる。この上に国債増発で、日本の世界的な経済的地位
は大幅に低下する。この結果、円安になることで、石油、LNGガ
スなどの輸入物の値段が上がることになる。

150円/ドル程度になると、国際価格が高騰している木材も農産
物もエネルギーも、日本国内で生産したほうが安くなるし、その品
目の輸出が可能になる。

ということで、日本国内では資源生産に戻ることになる。木材の輸
出や木材から取れるリグニン、それを加工したリクパルなどの木材
関連産業は大きな日本の収入源に育てることである。日本の木材は
、海外木材に負けて、ほとんど切り出されていない。このため、大
量の木材資源が現時点で日本に蓄積されている。

石油成分と同様な藻の生産も、非常に有望な産業候補である。エネ
ルギー産業では、北海道大学が手がけているススキでバイオエタノ
ールという手もある。

日本海サイドのメタンハイドレードも有望な資源であるが、PCな
どの電源として燃料電池が使われないとあまり使い道がない可能性
がある。このため、小型機器駆動の燃料電池の商品化が待たれる。

新しい日本は、資源大国として復活することになる。この資源国家
としての日本の中には太陽光発電、マイクロ水力発電、風力発電の
事業に関わる人たちも必要になる。

それと、最先端技術と呼ばれているものの多くは、日本の職人たち
が支えている。専門化すればするほど、かゆいところに手が届く職
人の知恵と技が必要となって、本当の職人芸は暗黙知の伝承でしか
伝わらない。この部分は外国では絶対に無理である。伝統工芸の刀
や漆だけではなく、ミクロンオーダの精度を出す加工技術の多くが
職人の暗黙知での伝承であり、この部分は日本に残ることになる。

2.日本人の生活秩序
今回の震災でビックリしたのが、諸外国のメディアが日本人の秩序
正しい行動や助け合って生きる人たちを大絶賛していたことである。
全員が、その場でできる最大限の行動をしていたことに、感激する
し、それが日本人であると思う。

日本で秩序を守られるのは、東洋的感性の「一体感」であるが、戦
前までの封建的な組織では、上意下達で一体化していた。この感覚
が残るのがお役所であるが、その上意下達を現代日本人は拒否して
いる。

このため、戦後の日本の民主化で封建組織が半分融け、命令系統が
失われたが、一体感を演出する民主的組織運営方法をどうしたらよ
いのかよく分からなかった。

しかし、今回、ツイッターなどを見ていて分かったことは、その必
要な物は感性を働かせた個人の情報であり、それを利用して行動し
、その行動情報を流すことで、次の行動を促していたことである。

各企業など命令系統がハッキリしている所はそれで動き、その命令
系統がない個人はボランティアとして働くことで全体的に統制が取
れた動きを作っていた。ツイッターはその情報交換として、非常に
有意義なツールであると見た。

また、時代遅れな日本政府内部の組織を作り変える必要も分かった
と思う。保安院は技術力も判断力もない集団で、東電を監視できな
いし、責任も負う能力がない権力だけを行使する組織であることが
見えた。政府の封建組織が、現代の技術社会にはマッチしていない
ことが判明している。

日本政府を近代化する必要があると見るがどうであろうか?

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パナソニック リチウムイオン電池生産を中国に移管
2011.4.23 12:22サンケイ

 パナソニックが、携帯電話やパソコンなどに使われるリチウムイ
オン電池の主力生産拠点を、国内から中国に移転することが23日
、明らかになった。平成27年をめどに、リチウムイオン電池の生
産比率を日本、中国でそれぞれ5割となるよう生産体制を再編する。
コスト削減を進め、価格下落が続く電池事業の競争力を確保するの
が狙い。

 同社は、今月1日に完全子会社化した三洋電機の中国・蘇州工場
(江蘇省)の隣接地に、工場を新設。三洋の北京工場も設備を増強
する。貝塚工場(大阪府貝塚市)と洲本工場(兵庫県洲本市)の生
産設備をそれぞれ蘇州、北京に移すことを検討している。
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テイクオフ[社会]NNA
2011年4月22日
「10年、20年という歳月をかけて養われた職人が作り出す製品。そ
う簡単に生産能力や技術を中国に移管することはできない。いや、
今後もコア技術は日本に残すだろう」と、内視鏡を製造する大手光
学メーカーの責任者は話す。

東日本大地震を受け、日本国内の産業が海外移転を加速するのでは
ないか。そうなれば、国内の産業はさらに空洞化し、復興にかける
日本経済に長期的な打撃になるかもしれない。そう懸念する声も聞
く。

ただ、最先端技術と呼ばれているものの多くは、日本の職人たちが
支えている。専門化すればするほど、かゆいところに手が届く職人
の知恵と技が必要となってくるのだという。サプライヤーを他の工
場に切り替えられない大きな理由のひとつでもあり、震災が日本の
技術力をもう一度認識するきっかけともなっているのは確かのよう
だ。(吉) 
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4─6月は貿易赤字の可能性、夏場までの生産体制回復が至上命題
2011年04月20日(水)15時01分

 [東京 20日 ロイター] 東日本大震災の影響で、日本経済の
けん引役とされる輸出に大きな影響を与えていることが3月貿易統
計で明らかとなった。生産停止を背景に輸出数量は前年比で減少に
転じ、これまでの2ケタ増のトレンドが大きく悪化した。

 サプライチェーン(供給体制)の本格回復は6、7月以降と見込
まれる一方、原油高や復興需要の資材輸入などで、貿易収支は4─
6月に赤字に陥る可能性が高い。夏場以降に供給力が回復する見通
しがメーンシナリオとされているが、回復が遅れれば需要が逃げ、
輸出も元のトレンドに復帰できなくなることが危ぐされる。供給力
の早期回復に向けた官民の取り組みが求められる。
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首都圏地盤に力、南関東のM7級誘発も…東大研
読売新聞 4月22日(金)22時11分配信

 東日本大震災で起きた地殻変動の影響で、首都圏の地盤に力が加
わり、地震が起きやすい状態になっているとの解析結果を、東京大
地震研究所のグループが22日、発表した。

 解析結果は、大震災後に発生した地震の分布ともほぼ一致してい
る。同研究所では、国の地震調査委員会が今後30年間に70%の
確率で起きると予測しているマグニチュード7級の南関東の地震が
誘発される可能性があるとして、注意を呼びかけている。

 同研究所の石辺岳男・特任研究員らは、首都圏で過去24年間に
起きた約3万の地震で破壊された領域が、大震災でどのような影響
を受けたかを解析。地震が起きやすくなる力が働く領域は
約1万7000で、起きにくくなる領域の約7000よりも多いこ
とが分かった。震源が30キロよりも浅い地震は静岡県東部から神
奈川県西部で、30キロよりも深い地震は茨城県南西部、東京湾北
部で起きやすくなっていることが判明した。 

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