3948.政治・官僚体制変革へ



3月11日に起きた東日本大震災で、日本の官僚・政治体制が非常
におかしいことが国民の前に明らかになった。諸外国からも「日本
政府は無能である。」と明言されたが、それを否定できない事実と
して認めるしかない状態である。
             津田より

0.はじめに
日本は権力構造の劇的な変化がおきていない。第2次大戦の敗戦で
軍人の地位は戦前に比べて下がったが、その他の官僚構造は明治維
新以来のまま続いた。このため、国の形が世界的な環境の変化や技
術革新についていけなくなっている。

国家の危機時に、的確な決断ができない。この負の側面を今回は、
イヤというほど、日本国民は見せ付けられた。また、その官僚のト
ップでもある首相の指導力がないと、いかに危機対応ができなくな
るかも思い知らされた。

今までの権力構造を変える必要があり、自民党の小泉首相が出て仕
組みを変えようとしたができずに、より過激な民主党政権に国民は
期待したがこうなっている。

しかし、民主党内閣は政治主導ということに拘り、官僚を使うこと
ができず、危機対応ができないことを、この東日本大震災で見せ付
けている。そして、官僚トップの位置にある首相を選べずに、トン
デモナイ人が首相になっても、国民は文句が言えないことになって
いることに気が付く。指導力がなくても政党の都合で首相ができて
しまうことを痛感した。

小泉首相が行ったことは、政策作成に現場の人を審議会に入れて、
現場の意見を反映したために、官僚の利益と相反する政策も実施し
た。しかし、審議会の運営や法案作成は官僚が行うことで、官僚を
使っていたし、官僚からの提言や批判も事務次官経由で内閣に報告
があった。事務次官会議で、省庁間の調整もしていたというように
官僚機構を使って、その上で改革を行っていた。

しかし、民主党政権では、事務次官会議を無くし、官僚からの提言
を聞かないし、省庁間調整の場もなくなった。今回のような危機的
な状況では、いろいろな機関が調整して動く必要があるが、その情
報調整機関がなかったことで、初動が出来ない事態になっていた。

官僚が独自に動くことが出来ないために、首相に了承を求めに行く
と、情報も聞かずに怒り、そのために兵庫淡路大震災で出来た危機
マニュアルの始動も遅れた。「国難の時に、役人はいくらでも仕事
をしたいのに、役所や役人を信用していない」ので動きようがない
と官僚からもクレームが出ている。菅首相の指導力や危機管理能力
に対する危機感がまったくないことが分かる。

見かねて、自民党が県の対策本部と経団連を結び、その調整を経団
連が行って、県と経団連で震災後の復旧を調整してきた。これほど
、政府が動かなかったことはない。動けなかったことはないが民間
企業は、兵庫淡路大震災の記憶があり、企業が独自に動いたことで
ある程度の物資や交通網を確保できたのである。もう1つが早期に
米軍が支援を独自に行い、かつ自衛隊が米軍と合同調整所を作り、
動いたことである。

このように危機的な状況で首相や政府が動かないことが、いかに天
災を人災にするかを見た。この政治改革が必要である。

もう1つが、官僚機構にある。福島第一原発事故では想定外の事態
ということが多すぎる。官僚たちは2年毎に人事異動があり、スペ
シャリストではなく、ジェネラリストとしてと育つことになる。し
かし、技術的に大きく発展している技術を理解できずに、見解を出
すので、状況分析が非常に甘いことになる。

また東電も役所であり、2年毎の移動であり、技術を知らない。
このため、対処が遅れて重大事故になった可能性もある。技術を持
っているのは、東芝やGEの技術者であり、特に1〜3号炉を設計
した技術者が重要であったが、この人を持ってくるまでに時間が掛
かった。

安全基準も、「原発安全神話」で基準が年々、コスト削減から甘く
してきた。「五つの壁があるなんて言ってきた。私も多重防護で絶
対大丈夫と信じてやってきたが、こういう事態になった」。経済産
業省の西山英彦官房審議官は、反省の弁を述べ、これまでの原発の
安全規制に甘さがあったことを認めたが、大事故を起こした後であ
り、これでは国民の生命を守れないと思う。西山さんもTPPの仕事を
直前までしていたから、技術は良く知らないはずである。

また、水産庁増殖推進部研究指導課は「魚は海水や餌から摂取した
放射性物質をえらや尿で排出し続けるため、体内の濃度は周囲の海
水の濃度と比例する。このため、一時的に体内の濃度が上がっても
長期的には蓄積されず、海水がきれいになれば元に戻ることが分か
っている」と生物濃縮を否定した見解を述べていた。

これに対して、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)
は放射性物質が魚介類の体内で濃縮される可能性も指摘した。

このように生物学の基礎を知らない日本の役所を世界がバカにする
ことはしょうがないが、日本国民の生命・財産はこのような国家機
構で守れるのであろうか??

1.国家権力はどこに
 日本の国家権力とは法案を作ることである。この法案を作るのは
官僚である。官僚が反対した法案はできない。議員立法という道は
あるが、日本の議員に他の法制度との整合性を取った法を作る能力
はない。官僚が強いのは、法律の整合性を律儀に追い求めることで
、官僚の身分を保証されていることである。この保証なしには仕事
が出来ない。

国民の大きな方向性を勘案して、その上に政治家の意見を聞き、か
つ大学の先生を使い政策方針を作り、その後に法案を作る。法案を
作るのは省や課ごとであり、分散している。

このため、この官僚を束ねるのが内閣の役割になっているが、そう
には見えない。現時点は内閣だけでは法案が出来ずに官僚に頼るこ
とが必要であるが、その官僚を使わないことで、法案も出来ない。

このため、民主党政権になって、法案数が少ないことと、迅速に法
案が出てこない。

残念ながら、首相の指導力がないと、何も動かなくなるようである。

首相を国民が選べないので、首相の指導力を国民は判断できない状
態になっている。この弊害を除去するには、首相公選を促進するこ
とであろうと見る。

2.日本の役割分担を見直すこと
今までは、国家を背負うのは官僚で、自分のことだけをやればいい
民間と、役割を分担していたが、日本の国家全体が危機的な状態で
このままにすると衰退するこの時期、そのような役割分担をしてい
る場合ではない。日本国凋落は、全企業、全国民に大きな痛みと苦
悩を与えるためで、役人も企業人と同じセンスが必要になっている
し、逆に、企業人も国家が前提で企業は成り立っているので関係な
いとはいかない。

このように、民間と官庁の連携が必要になっている。企業家として
も通用する官僚を育てる必要があるし、企業人も日本全体を見る官
僚になることが必要である。この方法は、官僚が2年程度の時期、
官僚生活の間に数回、民間企業に出向して、実地経験することがい
いと思う。反対に、民間企業の会社員が政府機関に出向して、国家
的観点で仕事をして、その感覚を着けることがいいのではないか。

官僚が民間会社で技術者たちと仕事して、民間会社の有能な技術者
を知っていて、今回のような福島第一原発事故のようなことが起き
ないように、安全保安院にその有能な技術者をスカウトすることが
必要であるし、このような技術官庁では、スペシャリストとしての
技術者を育て、企業との交流を通じて技術を育てる必要がある。

技術的な育成では大学とも連携が必要になり、ここでも交流の必要
が出てくるはずである。産学官の3者間交流をして、お互いの理解
が必要になっている。

このようなことは、米国では当たり前であり、天下りではなく、回
転ドアといっている。

3.民間人のアイデア
 米国大統領が任命する政治的民間人を目指し、民間人がアイデア
を考えつくと、それを大統領に売り込むのだ。この後、任命される
と直ぐに、民間人はそのアイデア政策を実行することになる。

 このため、前政権とはまるで違うことになるが、このクリントン
時代の最初10年は米国国内景気を上げ、貧富の差が拡大したデメ
リットはあるが、インタネット社会という世界モデルを作り上げ、
今後の人類に大きな貢献をしたのだ。

 この米国に比べて、日本は官僚がこの役割を担うが、残念ながら
民間のアイデアにはかなわないし、技術者ではないので、危機的な
状況での判断ができない。やはり、民間人がアイデアを売り込み、
首相が民間人の何人かを省の局長・課長クラスにできるようにしな
いと、政治の活力が出ないように思う。民間人と官僚をアイデアで
競わせることである。

民間人を官僚機能に組み込み、逆に官僚を民間企業に送り込むこと
が必要である。

4.官僚を育てる
官僚を全体的な視野に立たすのであれば、シンクタンクなどに出向
させて視点を変えさせ、シンクタンクの身分で参与や政務官にして
しまう。政権サイドに立ってもらい、省庁間調整をしてもらう必要
がある。

そして、偉くして省に戻し、国家全体としての戦略を考える人材に
育てる必要がある。省庁を渡り歩く人が偉くなるという仕組みが必
要である。最後には政治家にして国家全体に役立つことである。こ
のような政治家と官僚を近づけることが国家戦略を考える場合には
必要だ。

内閣人事局ができたのであるから、官製のシンクタンクを作り、そ
こで面白い発想をする人物を見出して、やらせる場を作ることであ
る。民主党政権も優秀な官僚を見出し、使うことが必要である。

官僚機構の変革も必要であるということである。首相公選に成れば
、民間人を官僚機構に送り込むことも同時に法案化して、米国のよ
うな柔軟な政治・行政ができることで、技術と政策が一致した政治
が可能になると見る。

さあ、どうなりますか??

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官僚、首相の指導力に不満「信用されてない」

 東日本大震災から1か月を機に、読売新聞は中央省庁幹部を対象
に政府の対応に関する聞き取り調査を行った。

 調査結果からは、菅首相の指導力や危機管理能力に対する危機感
が霞が関を覆っていることが浮き彫りとなった。

 「国難の時に、役人はいくらでも仕事をしたいのに、役所や役人
を信用していない」。消費者庁幹部は、内閣官房参与ら民間スタッ
フに意見を求め、官僚への不信感を隠さない首相への不満を口にし
た。「こういう時に『小泉(純一郎元首相)待望論』が出る。この
人になら命を預けてもいい、と思って仕事がしたい」と悔しがる幹
部もいた。

 一方、首相が東京電力に乗り込んで同社幹部らをどなった件につ
いては「あのまま東電や経済産業省にやらせていたらどうなったか
分からない」と評価する声もあった。

(2011年4月10日03時08分 読売新聞)
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官邸機能せず「開かずの扉」のその奥は…
2011.4.10 00:29サンケイ

 首相官邸に「開かずの扉」がある。5階の首相・菅直人の執務室
。3月11日の東日本大震災発生後しばらくは早朝から深夜まで怒
号が響いていたが、震災から1カ月を迎える最近はトンと静かにな
った。中の様子はどうなっているのか。

官僚の足遠のく

「やっと精神的な安定期に入った」「気力がうせているのではない
か」−。そんな臆測が乱れ飛ぶ。各国外交官も政府関係者に「首相
は本当に大丈夫なのか」と真顔で問い合わせてくるという。

 なぜ扉が開かないのか。理由は一つ。よほどの緊急時でない限り
、誰もノックしようとしないからだ。官僚であろうが、政務三役で
あろうが、誰かれかまわず怒鳴り散らす。ある官僚は東京電力福島
第1原子力発電所の事故の最新状況の報告に入ったところ、菅から
頭ごなしにこう言われた。

 「そんな話は聞いていないぞ!」

 日本の官僚は「首相がすでに知っている話を報告したら恥だ」と
教育されてきた。マスコミに政策をスクープされることを嫌う最大
の理由はここにある。ところが菅には通用しない。

 官僚の訪問は絶えた。4月に入り、官僚が首相執務室を訪ねたの
は7日まででわずか8組。ある官僚は吐き捨てるように言った。

 「民主党政権であろうと大連立であろうと何でもいい。とにかく
首相だけは代わってほしい。もう官邸を見るのも嫌だ…」

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原発の五つの壁が破れた、と反省 経産省の西山審議官

 「五つの壁があるなんて言ってきた。私も多重防護で絶対大丈夫
と信じてやってきたが、こういう事態になった」。経済産業省の西
山英彦官房審議官(原子力安全・保安院担当)は9日午前の記者会
見で反省の弁を述べ、これまでの原発の安全規制に甘さがあったこ
とを認めた。

 東京電力福島第1原発では多重防護が破れて放射性物質が周辺に
拡散、事故が一向に収束できない状態が続いている。西山審議官は
「国民の不安が高まっている。すべてのことについて、安全の方向
に、早急に手を打つ必要がある」と自らに言い聞かせるように話し
た。

 発言のきっかけとなったのは、7日深夜の余震で、東北電力東通
原発の非常用ディーゼル発電機がすべて使えなくなったこと。西山
審議官は「東通で起こったことを考えると、これまでの対応は十分
でなかった」とした。保安院は9日、原発が停止中でも2台以上の
非常用ディーゼル発電機を確保するよう、電力各社などに求めた。

2011/04/09 12:54 【共同通信
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震災対策、幻の「枢密院」構想 亀井氏提案、首相難色
2011年4月9日9時2分

 東日本大震災の復興対策について、与野党の党首らが首相に助言
する「非常事態対策院」構想が検討されていたことがわかった。事
実上の大連立構想で、菅直人首相にも伝えられたが、首相は乗らず
、幻に終わった。 

 構想を練ったのは、亀井静香・国民新党代表、村上正邦・元自民
党参院議員会長、民主党の小沢一郎元代表の側近である平野貞夫・
元参院議員の3人。明治憲法下、天皇の最高諮問機関として伊藤博
文らで構成した「枢密院」が構想の基本にある。 

 対策院は与野党の党首が同意したうえで国会決議で設置。政府、
政党、地方自治体、経済界、労働界、言論界の代表者でつくり、原
発事故対応や復興の基本方針、具体的な政策立案を行う。政府は提
案を丸のみすることを想定。「緊急事態であり、首相は代えられな
い」として菅首相の続投を前提にしている。 

 亀井、村上両氏は3月下旬、仙谷由人官房副長官と会談。仙谷氏
は理解を示し、首相に提案することでまとまった。村上氏は福山哲
郎官房副長官とも会い、検討を促した。 

 関係者によると、首相は仙谷氏の提案に「自民党が賛成するだろ
うか」と難色を示したという。発案した3人のうちの1人は「原発
対策や復興対応を自ら主導したい首相は、対策院に権限を奪われる
ことを嫌ったんだろう」とみる。亀井氏は今月2日、首相と会って
直接説いたが、前向きな返事はなかった。 
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参院議長「このままなら首相に退陣要求」 震災対応批判
2011年4月7日20時2分

. 西岡武夫参院議長は7日の記者会見で、東日本大震災や福島第一
原発の事故への菅政権の対応について、「いくつ会議を作れば気が
済むのか。責任逃れとしか見えない」と厳しく批判。「改めない場
合は、菅内閣が今の状態で国政を担当するのは許されない。アクシ
ョンを起こす」と述べ、政権運営を見直さない場合は、菅直人首相
に退陣を迫る考えを示した。 
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首相「一に亀井さん、二に私、三に仙谷さん」って?
2011年4月6日21時0分

 国民新党の亀井静香代表は6日の記者会見で、菅直人首相と2日
に会談した際、「自分から大連立を働きかけたり、呼びかけたりし
たことはない」と説明されたことを明らかにした。 

 亀井氏が民主党と自民党との大連立に反対の考えを伝えると、首
相がそう答えたという。首相は「役人をうまく使えるのは一に亀井
さん、二に私、三に仙谷(由人官房副長官)さんかな」とも語った
という。 
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平成23年4月6日
東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に
関する電気通信事業者関係団体に対する要請

 総務省は、本日、電気通信事業者関係団体に対し、東日本大震災
に係るインターネット上の流言飛語について、各団体所属の電気通
信事業者等が表現の自由に配慮しつつ適切に対応するよう、周知及
び必要な措置を講じることを要請しました。

 本日、「被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチー
ム」において、「被災地等における安全・安心の確保対策」が決定
されました。

 同対策においては、東日本大震災後、地震等に関する不確かな情
報等、国民の不安をいたずらにあおる流言飛語が、電子掲示板への
書き込み等により流布している状況に鑑み、インターネット上の流
言飛語について関係省庁が連携し、サイト管理者等に対して、法令
や公序良俗に反する情報の自主的な削除を含め、適切な対応をとる
ことを要請し、正確な情報が利用者に提供されるよう努めることと
されています。

 同対策を踏まえ、総務省では、社団法人電気通信事業者協会、社
団法人テレコムサービス協会、社団法人日本インターネットプロバ
イダー協会及び社団法人日本ケーブルテレビ連盟に対して、東日本
大震災に係るインターネット上の流言飛語について、各団体所属の
電気通信事業者等が表現の自由に配慮しつつ適切に対応するよう、
周知及び必要な措置を講じることを要請しました。
==============================
放射性物質、海底に沈殿の恐れ 魚介類で濃縮も 仏研究所
2011.4.6 09:57サンケイ

 フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は6日までに
、福島第1原発から流出する高濃度の放射性物質を含む水などが海
洋に与える影響予測を発表した。微粒子の形で海底に沈殿する放射
性物質の危険性を指摘し、長期の監視が必要と警告。放射性物質が
魚介類の体内で濃縮される可能性も指摘した。

 特にセシウム134は数年、セシウム137は約30年にわたっ
て海中にとどまるとして「沈殿が疑われる日本の海岸地域では、長
期にわたる調査が必要だ」と指摘した。(共同)
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水産庁、検査強化 「魚の体内で濃縮せぬ」の見解再検討
2011年4月5日12時23分
     
 福島第一原発から約70キロ南にある茨城県北茨城市沖で採った
イカナゴ(コウナゴ)から高濃度の放射性ヨウ素が検出されたこと
を受け、水産庁は5日、水産物の放射性物質検査を強化することを
決めた。茨城県のほか、千葉、神奈川両県と東京都で、品目を広げ
て5日から1日おきに調べる。 

 放射性物質の影響をより受けやすいとされるワカメなどの海藻は
、漁期ではないことから当面見送り、魚介類を優先して調べる。同
庁は「茨城県沖では現在、漁業は実施されていない」としている。

 水産庁は「放射性物質は魚介類の体内では濃縮されない」として
きた。しかし高濃度で検出されたことから、専門家に再度分析を依
頼することも決めた。魚介類についてヨウ素の基準がないため、鹿
野道彦農林水産相は5日、食品安全委員会に設定を求める考えを示
した。 
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汚染水、重複した影響は不透明 高度に濃縮せずと水産庁
 
 緊急的にやむを得ない措置として、福島第1原発から比較的低濃
度の放射性物質を含む汚染水が海に放出された。専門家は「希釈さ
れて薄まる」としており、水産庁も海産物には高度に濃縮しないと
しているが、近海にはこれまでにも高濃度の放射性物質が漏れ出し
ていて、これらと重なった場合の影響は不透明だ。

 海産物への影響について、水産庁増殖推進部研究指導課は「魚は
海水や餌から摂取した放射性物質をえらや尿で排出し続けるため、
体内の濃度は周囲の海水の濃度と比例する。このため、一時的に体
内の濃度が上がっても長期的には蓄積されず、海水がきれいになれ
ば元に戻ることが分かっている」という。魚の体内で放射性セシウ
ムは数十倍、放射性ヨウ素は10倍程度になるが、水銀や農薬の
DDTのように、食物連鎖で数百倍から数万倍のレベルで高度に濃
縮されることはないとしている。
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日本政府の「メディアを通じた執政能力」

 大災害の下でも日本社会は混乱せず、市民にパニックも起きなか
った。これら全てはレベルの高い日本メディアの功績が大きいと考
えられているが、その背後にある政府のコントロールも指摘するに
値する。(文:呉懐中・中国社会科学院日本研究所研究員。人民日
報系の国際情報紙「環球時報」より)

 西側諸国のメディアは非常に大きな自由度と権力を持つと従来考
えられてきた。だが、社会コントロールシステムにおいては明らか
に政府がメディアより上に立っていることは、紛れもない事実だ。
行政権力はメディアに対してコントロール・管理権を持つ。また、
メディアや報道の自由に対するコントロール、調節、誘導を進んで
放棄する政府は世界のどの国にもない。

 日本政府も例外ではない。日本政府は震災において、ハードなコ
ントロールとソフトなコントロールによってメディアへの管理を成
し遂げた。前者は主に法的手段、後者は主に行政または広報手段に
よる。西側では前者の持つ意味は大きくはない。基準は緩やかで、
処理も「標準作業」だ。だが後者はその運用技術が往々にしてコン
トロールの成否に直接関わってくる。日本政府は主にメディアへの
間接的誘導と直接的指導を組み合わせてきた。

 間接的誘導とは主に、政府が報道発表の主要ルートや要所を掌握
し、正確な情報を自ら速やかに発表することを指す。これは(1)
内閣が全般的な情報を最初に発表。重大な通達や情報は枝野幸男官
房長官が一元的に管理する(2)政府各部門が各々の管轄する情報
を発表する(3)各地方自治体が速やかに記者会見やブリーフィン
グを開く----の3層構成だ。

 問題の説明において最も力を持つのは、枝野氏の発表する政府の
指導的意見だ。3月11日の地震発生から今日まで、枝野氏は1日平均
3回以上の記者会見やブリーフィングを開いているが、その中でメデ
ィアの責任や倫理の問題に何度も言及している。地震翌日の会見で
は「メディアに告げる書」式の訓戒まで発表した。「報道機関の関
係者は政府の広告や確かな取材に基づいてニュースを報じ、国民に
正確な情報を提供しなければならない。根拠のない情報に惑わされ
てはならない」というものだ。枝野氏はまた「事実を捏造し、誤っ
た情報を広めるメール、チェーンメールが多数出回っている。政府
はすでにこうした動きを把握している。こうしたことは避けてもら
いたい」と厳しい口調で述べた。枝野氏は突発事態の中で、こうし
た政府の声をいち早く伝えることで、効果的に世論を誘導し、デマ
を減らし、国民の知る権利を保障すると同時に、災害対策における
政府権力の信頼性や権威も高めた。この結果、今回の災害において
日本人のより多くはやはり政府を信じる道を選んだ。

 日本政府はメディアへの直接的な指導や管理にも注意を払ってい
る。これには取材車両に救援車両と同様の通行権や給油権を認める
といったプラスの誘導もあれば、震災後の記者会見で枝野氏が被災
者から距離を置くよう公然とメディアに要求したようなマイナスの
制限もある。被災地の各級行政機関は、被災者を尊重するためと称
して、敏感なエリアでの記者の取材を制限することもできる。

 日本メディアは重大な災害や事件があるたびに「自粛」を行うの
が通例となっている。日本政府のこうした力強い誘導や戒めの下で
、メディアが「自粛」を考えないのは困難だということが見てとれ
る。日本のさまざまなメディア、特にネット上の発言を観察すれば
わかることだ。全般的に言って、一部の外国メディアが原子力災害
や原発建設の悪弊について一面の過熱報道をし、チェルノブイリや
ガン、白血病といった敏感な言葉を多用し、日本政府に疑念を呈し
たり菅直人政権を攻撃する論調にも事欠かない時に、日本メディア
の報道や言葉遣いは相対的に平静で寛容なものだった。敏感な語彙
の多くはブロックされたようだ。(編集NA)

 「人民網日本語版」2011年3月24日


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