3934.浜岡原発を存続させる条件とは



福島第一原発事故を教訓とするべきは、浜岡原発で本来なら巨大な
東海地震と巨大津波の発生で、浜岡原発が現在の福島第一原発事故
と同じような事故でこの地域が被害に遭った可能性が高い。
              津田より

0.はじめに
東海地震で浜岡原発の事故が先であった可能性を認識すれば、静岡
県知事は中部電力に浜岡原発の停止を命令しても良いはずが、あろ
うことか停止中の3号機の運転を認めるという暴挙を行うことにし
たようである。あまりにもまずい決定で、怒りを感じる。

川勝平太さんの文明論に大きな共感とその見識に尊敬の念を抱くも
のとしては、川勝さんの知事としての、この決定を残念でならない。

浜岡原発は、福島第一原発と同じBWR(沸騰水型原子炉)であり
、現時点の8mの津波対策しかしていない。ほとんどの施設は海岸
沿いの平地にある。津波が来れば、予備系用石油タンクや真水プー
ルなど福島第一原発と同様に多くの施設が崩壊してしまうことにな
る。

このため、中部電力は福島第一原発事故の対応策として、2〜3年以
内に高さ12m以上の防波壁を作ることと、敷地内の高台に非常用ディ
ーゼル発電機を設置することの対策をするという。なるべく、安い
対策で済まそうという経営的な判断があり、本格的な対策を打つつ
もりがないようである。まだ、「安全神話」を信じて、中部電力の
水野社長も事の重大さを認識していない。

しかし、この2つの対策を打つことで川勝知事は、停止中の3号機
の運転を認めるというが、地元4市の同意も必要となる。この市長
が反対するべきである。明日、東海地震が起これば、自分たちも福
島県双葉町と同様に集団疎開して10年以上その地域に入れないこ
とになることを認識するべきである。

1.福島第一原発の事故原因
福島第一原発は、巨大地震で制御棒が燃料棒の間に差し込まれて、
ウランの核分裂は止まったが、ウランが核分裂して出来た人工放射
性物質(ヨウ素131、セシウム137)が出す崩壊熱があり、停
止後も大量に発熱し続けている。そのため、原子炉が地震で止まっ
ても、崩壊熱を取り除くため、冷却をし続けなければなりません。

今回の場合は、津波で全電源を喪失し、冷却系のポンプが止まり冷
却ができなかったことで、このような大事故になったというが、実
際はどうなのであろうか?

全電源が喪失しても、原子炉内部の蒸気で駆動するため電力を必要
としないポンプを使い蒸気発生器に冷却水を送り込むことができる
が、これも炉内冷却系の予備系の水の温度上昇で45分程度で停止
するという。

この後、徐々に炉内温度は上昇する。炉内冷却系予備水が100度
を越えると冷却水は水に戻らなくなり水蒸発のままになっていく。
水蒸気で炉内圧力が高まり、この圧力が上昇すると炉が壊れてしま
うので、炉内の水蒸気を大気中に逃がした。このため、フィルター
を通したというが、大気中に大量の放射性物質が拡散したのだ。

米仏の当局には東電から放射線量の情報が公開されているが、それ
を見ると、弁を開いた時の放射線量は膨大に増えている。しかし、
日本のマスコミには、この情報は公開されていない。この時、NH
Kの解説員は弁を開いてもフィルターがあり放射能は漏れないから
安心してと放送していた。しかし、弁を開いたら放射線量が大幅に
増えていたのである。

このように炉内の水蒸気を外に出せない。炉内水蒸気を水に戻すた
めに、冷たい真水の補給が重要である。この真水は、海沿いの敷地
内のプールにあったが、それも津波で失っていた。

このため、冷却水として、海水を無理やり炉内に入れたのである。
これは炉内の水蒸気を弁で外部に出すと放射線量が圧倒的に増える
事実を東電と政府が認識したからである。勿論、この時点で米仏の
専門家は、日本政府、東電にこのままにすると、冷却が出来ずに重
大な事態になるので、通常電源の復旧と真水の確保が必要であると、
強く要請していた。これを政府、東電ともに最初は重要視しなかっ
たのだ。

重大なこととは、ウランが再臨界になることだと見ている。ジルコ
ニウム皮膜が溶解して、内部のウランが炉の底に落下して、制御棒
がないので、核分裂反応を始める事態であろうと思う。こうなると
炉内で水蒸気爆発などが起きると米仏専門家は見ていた。

ここで、政府、東電を攻めてもしょうがないが、次に起こるであろ
う東海地震のためには参考になる。

2.浜岡原発を存続させる条件とは
浜岡原発をどうしても残すというなら、福島第一原発事故の分析で
得た教訓を参考にして、本格的な対策を立てることである。

まず、津波の対応策であるが、20M以上の可能性が高いが、これ
は12mまでと不十分である。次に予備電源の確保は重要である。
これは20m程度の高台に準備したようである。次に重要なのは、
冷却用真水の確保である。海水は長期に冷却水として利用できない
ので、今回は真水を米軍から借りることになったが、日本の電力会
社は、このような真水を作れる台船を持っていないし、それを原発
の近くに置いても、津波で流されることになる。

原発の傍に置こうとすると、20M以上の地震でも耐えられる堅牢
な建物を作り、その上にプールを作ることである。配管なども堅牢
性を要求される。それなら、全ての予備系設備を20M以上の堅牢
な建物の上に設置すれば良いことになる。

これは、今、原子炉、ジーゼル発電機の建物の他に、炉前にある設
備を全て屋上に載せられる面積を持つ20m以上の建物を作ること
である。配管等の堅牢性があるので、炉から離れない距離に必要に
なる。

そして、これは浜岡原発ではなく、日本の原発には全て必要なこと
である。当分、原発がないと、日本の電力事情は持たないというな
ら、津波に対する備えが必要である。

さあ、どうしますか??
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浜岡原発の4月上旬再開、静岡知事が容認

 中部電力の水野明久社長は24日、静岡県庁に川勝知事を訪ね、
非常事態訓練を行うなどの安全対策を講じたうえで、定期検査中の
浜岡原子力発電所(同県御前崎市)の3号機の運転を早ければ4月
上旬に再開するとの方針を説明した。

 川勝知事も「安全対策をしっかりしたうえで決断すれば、尊重し
たい」と述べ、安全措置をとったうえで運転を再開することを認め
る考えを明らかにした。

 会談後、水野社長は「知事の力強い言葉は大変ありがたい。東日
本で計画停電が行われている緊急事態のなかで、3号機を間もなく
立ち上げ、(中電の)管内の電力の安定供給と東日本の応援に全力
を挙げて取り組みたい」と語った。

 3号機の運転を再開するには地元4市の同意も必要となるが、水
野社長は「安全対策を丁寧に説明して理解をいただく。今回は緊急
事態ということもあり、そのことも合わせて説明して理解を得たい
」と述べた。
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浜岡原発、敷地高台に発電機 中電設置へ(3/23 07:45)静岡新聞

 中部電力は22日、東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発(
福島県)の事故を受け、浜岡原発(御前崎市佐倉)の敷地内の高台
に、非常用ディーゼル発電機を設置する方針を明らかにした。津波
の影響を避け、外部電源や原子炉建屋内の発電機が使用できない場
合に、炉心を冷却する系統へ速やかに電源を供給するのが狙い。静
岡市葵区で開かれた県原子力発電所環境安全協議会(会長・川勝平
太知事)で説明した。
 福島第1原発では、地震で外部電源が喪失した上、津波の影響で
非常用ディーゼル発電機などが作動しなかったことが、事故の要因
になったとみられている。中電はこれらの事態を受け、原子炉建屋
内にある非常用ディーゼル発電機とは別に、津波の影響を受けない
敷地内の高台に発電機を置くことを決めた。台数などは今後、検討
する。
 中電はこのほか、定期検査中の浜岡3号機で1週間程度かけて、
配備済みの発電機車などの接続訓練を実施することを協議会に報告
した。
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原発で最も怖い冷却剤喪失事故 (LOCA) が地震直後に発生した可能
性 (元原子炉技術者・田中三彦氏)
日時 2011 年 3 月 27 日 08:31:49 

元バブコック日立の原子炉設計技術者でサイエンスライターの田中
三彦氏が、首相官邸サイトから入手した福島第一原発1号機の圧力・
温度等のデータを解析したところ、タイトルの事故が史上初めて発
生した可能性が高いと推測されました。
このことは原子力安全保安院や東電なども承知していながら隠蔽し
ていた節があります。
その上、最後の頼みの綱であった緊急炉心冷却装置 (ECCS) が、全
電源喪失で機能しなかったという最悪事態です。
同様の疑いのある3号機についても現在解析中とのことです。
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原子炉冷却材喪失事故(LOCA)

原子炉の冷却系の配管などが破損したり、あるいは弁が開いたまま
になったりして、そこから原子炉冷却材が流出する事態を原子炉冷
却材喪失事故(LOCA: Loss of Coolant Accident)という。LOCAが
起こると原子炉は自動的に緊急停止するが、停止後も核燃料の中に
蓄積された核分裂生成物が熱を出し続けるので、炉心が過熱して破
損することを防ぐためには、十分な冷却を維持しなければならない。
このためにはまず、原子炉の中の冷却材を減少しないように維持す
ることが必要である。

万一のLOCAに備え、原子炉には非常用炉心冷却装置(ECCS)と呼ば
れる安全装置が設けられていて、ポンプや窒素ガスで加圧されたタ
ンクなどで構成されている。LOCAが起こって原子炉の中の圧力が下
がると、このECCSが自動的に働いて、タンクなどに貯蔵されている
低温の水を原子炉に注入する仕組みになっている。
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非常用炉心冷却装置(ECCS) 
冷却材に水を使う動力炉では、炉心を冷やす冷却系統の配管が破断
するなどして冷却水が喪失すると、炉心の熱密度が高いため、スク
ラムと呼ばれる制御棒の一斉挿入による原子炉の緊急停止を行なっ
ても、炉心の余熱と放射性物質の崩壊熱による高熱で炉心が破損・
溶解する危険性がある。ECCSは原子炉圧力容器に水を注入すること
で、炉心を冷却し破損を防止する。
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崩壊熱
ウランが核分裂すると核分裂生成物と呼ばれる多種類の放射性物質
が生成されます。ヨウ素131やセシウム137などと呼ばれてい
るもので核分裂生成物の1つです。

セシウム137の場合には「ベータ崩壊」とよばれる「崩壊」の仕
方で、バリウム137に変わり、その時にベータ線とガンマ線を放
出し、発熱します。この熱が崩壊熱です。

崩壊熱は、ウランの核分裂反応とは関係ありません。

電気出力78万4000kWの福島第1−2,3号機の場合、未だに原子炉
の中では6000kW程度の崩壊熱が存在しています。

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