3902.北方領土について



北方領土について 

 現政権が人気稼ぎで外交交渉を行うバカさには呆れる。ロシア大
統領が強硬姿勢に転じた理由をまったく理解していない。安全保障
政策の変更が理由だ。 

 ソ連崩壊後、暫くの間は敗戦国として対米迎合政策になっていた。
しかしながら、ロシアの地政学を理解しているプーチンにより事態
は変わった。米国もロシアの戦略変更に対応し東ヨーロッパに戦略
レーダー(対イラン用と言う口実で)の配備を強行しようとしてい
る。大国の安全保障の基本は核戦略だ。陸上発射式は迎撃されやす
い。従って、潜水艦が重要になる。

ロシアは新型の戦略潜水艦を完成させつつある今、その配置場所は
、ソ連時代と同じオホーツク海になる。その他の海域は米国の対潜
水艦兵器により生き残る可能性が低い。オホーツク海はシベリア大
陸とアリューシャン列島に囲まれた内海となるからだ。北方四島は
、そのアリューシャン列島の鎖の最尖端にある。スターリンがヤル
タ協定を無視して占領したのも、米国が同協定で日本領としたのも
オホーツク海の内海にした場合、当時の技術で戦略潜水艦を想定し
ていなくとも、七つの海を支配した英国の智恵が働いた。 

 ロシアと中国の首脳会談1ヶ月後にロシアが強硬姿勢に転じたの
は、オホーツク海をロシアの内海とする合意が成立したからだ。 
 以上を前提とするなら、経済とのバーター取引は成立しない。安
全保障は経済より優先するのが国際常識だ。日本の戦略は、オホー
ツク海のロシア側の戦略的意味を肯定するか、無効にする意外にな
い。肯定する場合は、日米同盟に反することになる。無効にする場
合は、オホーツク海をカバーする軍事衛星(GPS衛星に付加価値を附
ける:原潜は大きな鉄の塊のため監視できる)や対潜水艦巡航ミサ
イル開発を計画・実行する。又は、実行する計画が交渉材料になる。 

 その他に、ロシア・中国の合意には中央アジアへの相互の影響力
行使がある。この部分で揺さぶりをかけることが重要になる。この
地域こそシベリヤ開発以上の戦略地域である。外交交渉とは、実弾
が飛ばない戦争である。沖縄返還は、従属同盟国間でのレアケース
で、二度と存在しない。 

 安全保障を勉強せずに日本の権力者に成ってはならない。 

佐藤 俊二 





コラム目次に戻る
トップページに戻る