北方領土について 現政権が人気稼ぎで外交交渉を行うバカさには呆れる。ロシア大 統領が強硬姿勢に転じた理由をまったく理解していない。安全保障 政策の変更が理由だ。 ソ連崩壊後、暫くの間は敗戦国として対米迎合政策になっていた。 しかしながら、ロシアの地政学を理解しているプーチンにより事態 は変わった。米国もロシアの戦略変更に対応し東ヨーロッパに戦略 レーダー(対イラン用と言う口実で)の配備を強行しようとしてい る。大国の安全保障の基本は核戦略だ。陸上発射式は迎撃されやす い。従って、潜水艦が重要になる。 ロシアは新型の戦略潜水艦を完成させつつある今、その配置場所は 、ソ連時代と同じオホーツク海になる。その他の海域は米国の対潜 水艦兵器により生き残る可能性が低い。オホーツク海はシベリア大 陸とアリューシャン列島に囲まれた内海となるからだ。北方四島は 、そのアリューシャン列島の鎖の最尖端にある。スターリンがヤル タ協定を無視して占領したのも、米国が同協定で日本領としたのも オホーツク海の内海にした場合、当時の技術で戦略潜水艦を想定し ていなくとも、七つの海を支配した英国の智恵が働いた。 ロシアと中国の首脳会談1ヶ月後にロシアが強硬姿勢に転じたの は、オホーツク海をロシアの内海とする合意が成立したからだ。 以上を前提とするなら、経済とのバーター取引は成立しない。安 全保障は経済より優先するのが国際常識だ。日本の戦略は、オホー ツク海のロシア側の戦略的意味を肯定するか、無効にする意外にな い。肯定する場合は、日米同盟に反することになる。無効にする場 合は、オホーツク海をカバーする軍事衛星(GPS衛星に付加価値を附 ける:原潜は大きな鉄の塊のため監視できる)や対潜水艦巡航ミサ イル開発を計画・実行する。又は、実行する計画が交渉材料になる。 その他に、ロシア・中国の合意には中央アジアへの相互の影響力 行使がある。この部分で揺さぶりをかけることが重要になる。この 地域こそシベリヤ開発以上の戦略地域である。外交交渉とは、実弾 が飛ばない戦争である。沖縄返還は、従属同盟国間でのレアケース で、二度と存在しない。 安全保障を勉強せずに日本の権力者に成ってはならない。 佐藤 俊二