3865.マグロの完全養殖



近畿大学水産研究所で完全養殖マグロはできた。完全養
殖とは、養殖施設内で人工孵化(ふか)した親から生ま
れたマグロのこと。これに対し、天然の幼魚を捕らえて
きて生け簀(いけす)で育てたマグロを「畜養マグロ」
と呼ぶ。稚魚を天然から獲るばかりだと、資源は減る一
方。そこで、畜養ものから卵をとって再生産に結び付け
ようと考えて実現したのが、完全養殖マグロだ。

この完全養殖を1970年に研究着手して、実に32年とい
う長い研究で、2002年6月に成功した。実現に32年もの歳
月を要したのは、クロマグロがデリケートな魚であり、
かつ、生態もよく知られていなかったためだ。実現の鍵
は、クロマグロを徹底して観察したことにある。

稚魚は特に皮膚が弱く、手でつかんだだけで死んでしま
い、繊細で、車のヘッドライトや船のエンジン音、水の
濁りですぐパニックに陥り、イケスの網に衝突する。

タイやハマチは平気なのにである。しかし生物には適応
性があると信じてマグロの完全養殖して、2002年6月に成
功した。ニュースは、関係者を驚かせた。これは画期的
な成果であり養殖研究における中核をなす技術となった
ことから、以後の継続研究が文部科学省の21世紀COEプロ
グラムに採択された。

養殖事業は、大変リスクの高い事業であり、ある一定の
規模を確保すると同時に、技術的課題をクリアにしない
と収益が上がる構造にならないから研究への補助金がつ
いたようだ。また、将来を見越して、マルハニチロなど
水産大手の企業が参入して、近大の養殖方式で生産を開
始した。

クロマグロ漁業規制が強化されて、天然マグロの幼魚を
捕まえられなくなるのに、間に合ったようである。これ
で日本が、世界へのマグロ輸出国になる日が近い。


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