3860.民主党平家物語



民主党平家物語                           缶中楽器
フィクションですので、あしからず

第一巻 「鹿ケ谷」の巻

   (舞台の幕上がる。照明なし。暗闇。)
   スポットライト琵琶法師を照らす。舞台中央、座っている琵琶法師。
   (琵琶を弾く琵琶法師。効果音(SE):琵琶の音。)

琵琶法師(ナレーション(NA))「北朝鮮による韓国砲撃という思わぬ出来事は
  野党の仙谷官房長官らへの問責決議案を先送りさせるなど、天の助けとなった。
  柳田法相更迭前に事件が起きなかったことが官邸では惜しまれる程あった。」

     新大納言成親登場。観客席に背を向けている。

琵琶法師(NA)「さて支持率低下に悩む菅内閣倒閣を狙う民主党大物議員に新大納言成親がいた。
  彼は多くの新人議員を先の総選挙で当選させていたが、宿敵ともいえる検察を敵に回し続けた結

果
  世論をも敵にしてしまい髀肉之嘆をかこっていた。」

     観客席に振り向き両手を広げる成親。雄弁のしぐさ。

成親「ああ! 国民の皆さん聞いて欲しい! 尖閣ビデオ流出の不手際で降下した支持率。
  菅内閣をさらに追い詰めるためには! 民主党支持者の皆さん! 
  内政での失点を党内から攻め立てる必要がある。
  砲撃事件でマスコミは外政を書きたて内政を攻めまい。
  今です! マスコミが内政批判を忘れている今こそ党内の反菅内閣勢力を糾合し、
  折を見て話題を提供し、注目を集め、主導権を握り、国民を味方につけるのです! 」

     (暗くなる成親への照明。)

琵琶法師(NA)「新大納言成親の悩みは深かった。重職に返り咲き、政権の中枢へ戻らねば・・・。
  だがその為には後白河院議員の後ろ盾だけでは足りない。
  後白河院議員は平家民主党を与党にするため私財を投じてきた人物であったが、
  今は見識の低さから一兵卒に成り下がり、東大で講演する一羽の山鳩に過ぎない。
  どうしたらよいのか。悩む成親議員はしきりに読経を行わせた。」

     (明るくなる成親への照明。)

新大納言成親「私はどうしても重職に返り咲きたい。
  読経だ! 百人の坊主どもを集めよ! 経典の功徳で神仏神霊を動かすのだ! 
  これらの経典をすぐに唱えさせよ。
  「TPPを慎重に考える大般若経」、
  「食料とエネルギーの自給率向上と成長産業としての環境政策を推進する大般若経」、
  「日本の海運を考える大般若経」、「石油・エネルギー政策研究大般若経」等々、だ! 」

  琵琶法師(NA)「 しかしなかなか菅内閣倒閣は進まない。
  来春の統一地方選挙で自分の選挙手腕が党内で買われるのは間違いない。
  入閣、または代表の席を手に入れるためには業界団体の支持を取り付け、
  政策論議を餌に「落選を恐れる議員たち」を網にかけてもっと多く仲間に引き入れなければいけな

い。
  成親議員の不満は募った。」

   
  (落ちる舞台照明。場面変更。舞台装置を整える黒子たち。)
   
  料亭『鹿ケ谷』。

琵琶法師(NA)「ここは赤坂の高級料亭『鹿ケ谷』。」

     成親、俊寛登場。

俊寛「良くいらしゃいました。成親先生。」
成親「俊寛、来ておったのか。後白河院先生は着いておるのか?」
俊寛「それはもう上機嫌で。成親先生の美人秘書がお目当てのようですが。」
成親「ふん。いい気なものだ。」
俊寛「成親先生は虫の居所がよくないのですかな。政界再編では剛腕といわれるお方も
  中国の美人局に嵌っておいでかな。」
成親「余計なおしゃべりはよせ、俊寛。この成親の胸の奥を察することが出来ないのか。」
俊寛「分かっておりますとも。打倒・菅内閣。菅直人、仙谷由人、前原誠司らの失脚、
  重職・政権中枢からの一掃こそ我らが悲願。」
成親「しっ! マスコミが嗅ぎ付けたらどうする。話は中へ入ってからだ。」
俊寛「なあに。仙谷に腹を切らせ、先生は衆院政治倫理審査会ですばやく禊ぎ。
  ストーリーは見えていますとも。岡田幹事長を緩衝材に前原蜂も蜜をもって誘う。
  菅・仙谷・成親様のどなたが食虫植物なのか。国民は楽しみにしておりますぞ。」
成親「面白がっているのは野党の議員共であろうが。」
俊寛「はっはっは。仰る通りですな。」
成親「ふむ。」
俊寛「それでは『公明党と連立』の間へどうぞ。」
成親「今はその時期ではない。」
俊寛「『みんなの党との連立』の間へどうぞ。」
成親「廊下が入り組んでいる。後白河院先生はどこでお待ちなのだ?」
俊寛「『国民新党・新党日本・社民党吸収合併』の間でお待ちです。」
成親「そうか。さっそく伺うとしようか。だがな俊寛、後白河院先生を
  『とりあえず党内抗争』の間へお連れするのだ。巧く口説いてな。」
俊寛「『北辰会ごと新党結成で民主党離脱』の間も開いておりますが?」
成親「新進党をまた作って民主党を吸収合併しろとでも言うのか?
  それより派閥抗争の妙技が今はものを言う時。用意した駒もあることだしな。
  党外の”鱒”と”渡りに舟”。遠交近攻は派閥闘争の極意というもの。」
俊寛「鱒? 渡りに舟?」
成親「コードネームだ。鱒は喰ったら終わりの鱒添え定食。使い捨ての駒。
  欲しいのは補佐役鯉の洗い。冷や飯を食った男。役職与えれば忠臣となろう。
  渡りに舟は新党さきがけ二番煎じ。二匹目の泥鰌を狙う欲深の集い。
  新党「北辰」結成オプション、首尾は上々。腸鍋釣って、転じて政界割った鍋となる。」
俊寛「かしこまりました。成親先生。女将にそれとなくお連れするよう、指示しましょう。」
成親「まさかとは思うが女将は中国のエージェントではあるまいな?」
俊寛「まさか。女中たちの身元を公安にでもさぐらせますか。」
成親「情報流出が心配だ。先日の流出も全容が分かっておらん。」
俊寛「ははは。冗談ですよ。今日の会合はウィキリークスもご存知あるまいて。
  さあ、成親先生。『とりあえず党内抗争』の間へご案内致しましょう。こちらです。」


     料亭『鹿ケ谷』・『とりあえず党内抗争』の間。
     成親・俊寛・後白河院・浄憲法印・西光法師登場。

成親「さあ、さあ。後白河院先生、よくいらしゃいました。どうぞ上座へお座り下さい。」
後白河院「いやいや、雌伏の英雄たる貴方こそ上座にお座りなさい。
  来年の地方選挙に向けて余念がないともっぱらの噂。どんな人材を集めているのですかな?
  公明党と折り合いのつけられる創価学会会員ですかな?
  それとも「みんなの党」のみんなに「トロイの木馬になれ」と誘ったとか?
  国民新党・新党日本・民社党・新党改革を分割占領、解体、吸収合併するなら
  この私の腹案をじっくり開陳いたしますぞ。」
俊寛「ありもしない腹案などいささか食傷気味ですな。」
浄憲「院に無礼な!」
成親「黙らぬか、俊寛。院をすかして弟君をも抱きこみ、兄弟そろって母親から
  政治資金を引き出すこの成親の遠大な計略。お前は私と院の間を引き裂くつもりなのか!?」
俊寛「口が過ぎました。申し訳ございませぬ。」
後白河院「私の弟が何ですと?」
成親「弟君の標語<正義>よりも院の<友愛>の方がはるかに人の心をうちますなぁ。
  さすがは総理経験者でいらっしゃる。」
後白河院「いやあ〜、はっはっはっ。」
俊寛「まるで馬か鹿のようなお方よ。あきれて開いた口がふさがらぬ。」
浄憲「重ね重ね無礼な! 人間の価値は詰る所、金・地位・権力。院は名家出身の富豪ぞ。」
西光「ははは。紙幣同様薄っぺら。」
俊寛「お追従ご苦労なことよ。」
浄憲「院は紙幣どころか金塊のような重厚なお方ぞ。
  沖縄問題では針のむしろ、火達磨となるのを承知で訪沖したであろうが。
  人生体験としてどれほどつらく、苦しかったことか。まさに英雄的御忍耐。
  拙者まことに感服致し申した。それにひきかえ福島瑞穂ときたら・・・なんて自分勝手な。
  党首としてもそうだが閣僚としても身勝手だった。イイカッコしいなら誰でも出来る。
  仕方がないとはいえ沖縄県民がもっと肩をかしてくれていたら・・・
  今後、首相を勤める者は沖縄を鬼門として本気ではようかかわるまい。
  だが院は首相として感じなされて涙の退陣を・・・。」
西光「自業自得ではないのかな。それとも、よっぽど側近に人を得なかったのか。」
成親「止めぬか! 将棋では歩も裏返せば金と成る。要は馬鹿と鋏は使いよう。」
西光「プププッ。一兵卒の金蔓・・・ね。そして今度は弟を・・・。クックックッ。ようやりますなぁ。」
浄憲「新党では院には重鎮になって頂く。」
西光「邪魔者は祭り上げるに限る。」
俊寛「弟君は取って置きの首相候補として新党内で飼い殺し。鱒添え定食食い荒らし。
  <友愛><正義>は金蔓で、鱒添え定食<公正>看板役。宴終われば生ごみポイ。
  かつての都知事戦で暴露済み、鱒添え定食経綸なし。」

     手を叩いて女将を呼ぶ成親。

成親「女将! 例の酒と料理を! 急いでな」
女将「はい。ただいま。」
西光「さて。今日は何をご馳走して頂けるのですかな。」
成親「北海道の海の幸。鍋には貝も鯛もいれますぞ。」
浄憲「北海道の海の幸とおっしゃいませんでしたかな? 鯛ですと?
  おおかた台湾産でしょう。貝はともかく。」
西光「拙僧、生臭きものは口に出来ませぬ。が、般若湯に合う刺身など所望しますぞ。」
成親「心配召さるな、法師殿。今宵の鍋の具は"喰えぬ者"ばかり。戒律を守るには最適最適。」

     配膳する女中たち。

女中たち「どうぞ。お召し上がりくださいませ。」
浄憲「な、何だっ! ? この料理は?」
西光「鍋が煮詰まっている。とても喰えたもんじゃない。しかも食い荒らされた跡があるとは・・・」
浄憲「うぬぬっ。我らを愚弄するつもりか! これ、女将を呼べっ! 今すぐ!!」
成親「まあ、まあ。」
浄憲「『まあ、まあ』ではござらぬ。貴殿は一体どういうつもりでこのような料理を出された。
  悪戯にも程がある。院にも失礼ではないかっ!」
俊寛「やれやれ。政局の旨味も分からぬ無粋なお方よ。」
浄憲「何ですと?」
俊寛「コラムニスト、時事評論家が中国、北朝鮮問題など外政に目を奪われている今こそ
  内政、政局に注力致すべき時。菅内閣を破砕するには適切な亀裂に打撃を与えなければならぬ

。
  それこそ前原誠司(平成21年)。そして馬淵澄夫(現)。
北海道・貝・鯛・食い荒らし。北海道解体・食い荒らし。」
西光「ぬ! 知る人ぞ知る、国交省の裏切り。まさしく喰えぬ。」
成親「北海道局廃止・一括交付金見直し・・・まさに虎視眈々。」
俊寛「役人共め、なかなかやりますな。」
後白河院「国交省大臣はどう思っているのですかな。」
成親「マスコミの関心も沖縄ばかりのようだ。」
(例 mainichi.jp/area/okinawa/news/20110101rky00m010004000c.html)
西光「国交省大臣の目を盗んでいるか否かはともかく国民を裏切っているとは申せまいがの。」
俊寛「なぜです。」
西光「道民にはつらい話になるのかの。
  予算を地域別に分配するよりプロジェクトに応じて配分する方が効率的なのは当たり前じゃろ?
  それに予算総額が増えずとも自由に組み換えできる枠が増えれば都合が良いのも当然の話。」
浄憲「都合が良いのは省益にとってですかな。国民ではなくて。」
西光「無闇に話を矮小化するものではない。
  財源がないのは政府にとっても省庁にとっても共通の難問だ。
  特に民主党は政権交代したいばかりに大風呂敷を広げ過ぎた。分かっている者は分かっていた。
  マニフェストは夜警国家宣言にせねばならんのじゃ。今後はな。」
俊寛「ふんっ! 選挙対策に派手に財政出動するべきではありませんかな?
  旧大蔵省はノーパンしゃぶしゃぶ。財務省は国債じゃぶじゃぶ。」
浄憲「冗談じゃない。格下げされたらどうする。」
俊寛「金利を上げて売ったら良いでしょう。」
浄憲「国内総生産という限界がある。
  その成長率を上回る金利を付けて募集し続けたら財政が破綻する。本当に狼が来るぞ。」
俊寛「すると我々も構造改革?」
西光「おいおい。俊寛殿・・・。」
浄憲「構造改革なるものは経済政策ではなかった。
  国力縮小均衡を政局的にやり過ごす為の政策だった。
  これは公然の秘密だとは思うが小泉政権があっても無くても、
  自民党政権だろうと民主党政権だろうと失われた10年、20年は失われるしかなかった。
  何しろ・・・少子高齢化、人口減少だ。だが一人当たりの所得を増やせといっても至難の業。」
成親「選挙戦術としては圧力団体への叩頭三拝・戸別訪問・辻立ちのどぶ板徹底、
  農業・漁業従事者への個別補償・戸別所得補償制度連呼と、考えてはいるのですが、
  どうにも財源が難しい。」
西光「漁業への所得補償は効きそうですな。中国が尖閣で強行だったのが追い風になる。
  さぞ生活が心配でしょう。漁業関係者はね。」
俊寛「ふふ、心配でなくとも煽るんでしょうが。記者クラブを潰さなくて良かった。
  あの飼い犬どもにはせいぜい働いてもらうということで。」
西光「せめて猟犬扱いしてやってはいかがかな。特ダネを狙っているのだから。」
後白河院「皿に盛られた餌を食べる犬が猟犬ねぇ。」
成親「ともかくも党内闘争に勝ったら景気対策だ。米国の大統領選にピークを持っていく。
  この方針なら日米で一致出来る。首脳会談には私が出たいのはもちろんだが
  政局次第では”大臣の椅子”で空中分解させた『たちあがれ日本』の残党を使うなり、
  前原を担ぎ出し梯子をはずすなり。とにかく、とにかく景気回復で長期政権だ。」
俊寛「兎に角を生やす特効薬はありませんかなぁ〜〜。」
浄憲「特効薬などいらない。リフレが正解だと分かっているじゃないか。
  結局は日銀が長期国債をとにかく買うことだ。買い切る程にね。」
西光「ミスターマーケットが驚く程に?」
後白河院「兎に角が生える位に・・・ですな?」
俊寛「旧大蔵省はノーパンしゃぶしゃぶ。第一次産業は所得補償でホクホク。
  日銀はマネーをじゃぶじゃぶ。」
後白河院「構造改革は駄目なんですかな? 聞こえは良いと思いますがな。」
俊寛「踊らにゃ損、損、とでもエコノミストに吹き込まれたのですかな。
  新産業待望? 企業淘汰? デフレは優良企業も旧態依然の企業も選別しませんでしたな。
  それが不景気と申すもの。」
西光「自ずと企業戦略は限られましたな。”比較優位”と”相対価格”。」
成親「中国製品、価格破壊、ユニクロ・・・」
西光「国家経済はデフレでも個別企業なら”比較優位”の旨味を享受出来る。
  外国製品でね。国家経済はデフレで疲弊しても個別企業は相対価格を武器に勝負出来る。」
後白河院「しかし新産業育成で景気対策を、という声も多いですぞ。福祉、医療、技術革新・・・。」
俊寛「話になりませんな。」
西光「産業連関表を見ろ、とでも言いたいですなぁ。
  福祉産業等でどうして必要な有効需要が生み出せると思うのか?」
浄憲「貨幣的問題がどうして横道に逸れるんでしょうな。産業政策はデフレ対策にならない。
  よって景気対策ではない。規制緩和うんぬんもやはり王道ではない。」
後白河院「ですが長期国債はそうそう大量に日銀が買っていいものでしょうかな。
  財政のモラルはどうなります。日銀の、国債購入の裏付けとなる資産は大丈夫ですかな?」
俊寛「ははは、モラルですって!? 院はそのようなこと申せるお人ですかな?」
浄憲「院に無礼な!」
西光「贈与税も時効で還付されておりますぞ。」
成親「”時効”ですかぁ・・・羨ましいですなぁ。私も検察相手にうんざりしているもので。」
俊寛「そうですな。デフレ対策にも時効がある位ですからな。」
西光「経済政策に時効がある?」
俊寛「実質金利を上げる。期待インフレ率の長期目標の維持。難しいことですよ。
  長期継続の経済政策がある一方で,政局、政治情勢は短期にぶれる。
  内閣支持率が落ちて尻に火がつけば政府は猛然と日銀に圧力をかけ始める。
  いくら長期的と言っても日が経てば自分が言い出したことも忘れかねない。
  当初の見通しや方針など脇にどけて『もっと緩和だ、いや引き締めだ』と来るのが政治家の性。」
西光「つまり正解は分かっていても肝心の実行者がいない。経済政策プロモーターが必要だ。
  恐らくは首相直属の立場と副首相に次ぐ権限を持ったプロモーターが。」
浄憲「出来るもんか。」
西光「だが必要だ。出来ねば日本に明日はない。」
俊寛「竹***のような男にね。」
浄憲「カメレオンに任せるというのか? この国難に?」
西光「我慢強さは重要な資質でしょう。政界の荒波に立ち向かうとなれば。」
俊寛「石の上にも三年。動かざること山の如し。」
浄憲「出来るもんか。」

     缶詰を持ってくる女中たち。缶切りも添えて引き下がる。

後白河院「何ですかな? この大量の缶詰は。」
西光「高級料亭の座敷・・・で缶詰?」
浄憲「うぬぬっ・・・我らを馬鹿にするにも程がある! これっ、女将を呼べ! 今すぐ!」
俊寛「まあ、まあ。」
浄憲「『まあ、まあ』ではござらぬ! 貴殿は一体どうゆうつもりで・・・」
俊寛「まあ、まあ。」
浄憲「キーッ! 『まあ、まあ』ではござらぬ! もう、この浄憲、帰らせて頂くわ。」
後白河院「まあ、まあ。浄憲殿。成親殿がせっかく設けてくれた宴会ぞ。」
浄憲「院まで『まあ、まあ』とおしゃるかっ!」
俊寛「『まあ、まあ』。落ち着いて。"菅"でも切って鬱憤を晴らしなされ。」
浄憲「キーッ! 菅め! あやつのせいで赤坂まで来てこんな無粋なもてなしを受けるとは!」
俊寛「缶切り切り。菅キリキリ舞。仙谷との隙間に癇、錐、霧。」
西光「仲が悪いそうですな。あの二人。まあ、攻めやすい二人ですよ。
  首相ですか? 国家戦略室から財務大臣になったときのはしゃぎようといったらなかった。
  お里が知れましたな。長官の思考回路もなんだかもう・・・。"暴力装置"でしたっけ?」
成親「『普通の国』にせねばならぬ・・・」
俊寛「まったくもって仰る通り。奴らのレベルときたら・・・」
成親「いや、そういうことじゃない。私は党利党略の為に生きてるわけじゃない。
  政局じゃなくて天下国家だよ。この宴席で交わしたかったのは。」
俊寛「まったくもって仰る通りで。」
浄憲「このお追従者め!  ・・・で、成親殿。貴殿どう思われた。例えば尖閣事件で
  日本は『普通の国』でしたかな?」
成親「保安組織のレベルでコトが運ばれたのは国際常識にかなっていた。
  軍、つまり自衛隊が出るべしという声もあったが。」
俊寛「自衛隊を軍隊というと桜井よしこが噛み付きますぞ。
  普通の軍隊ではない、憲法など特異な制約が多すぎる、戦争に備えなければ戦争になると・・・」
西光「その前に福島瑞穂に噛み付かれそうですな。戦争に備えると戦争になると・・・」
俊寛「社民党はその内空中分解するから放っておいても良いでしょう。
  社会党・社民党的護憲派・反日日本人らの時代は終わった。
  沖縄問題で自分勝手に行動した福島党首。要するに党利党略。
  閣僚の責に耐えられる人物ではなかったことが暴露された。」
成親「放っておく訳にはいかない。国外情勢は風雲急を告げているのではないか。」
後白河院「ほほう。風雲急を。」
西光「どういうことですかな。女性達に噛み付かれぬ様、聞いておきたい。」
成親「もちろんここで"在日米軍は第7艦隊だけで良い"などと世迷言は言わないので安心して欲しい

。」
西光「国防をどう思われる。」
成親「戦略には時代の趨勢に合わせたアレンジも必須だが骨格というべきものがある。
  日本の場合は対ロシア防衛だ。中国の興隆で南方の島嶼防衛が注目を集めているが。
  北海道にロシア軍を上陸・侵入させない。これは基本だ。」
西光「分かりませんぞ。ロシア軍が果たして北海道経由で本土・首都東京への侵攻を企てるかどうか。
  迂回して新潟の阿賀野川・信濃川辺りに上陸した方が首都を直撃し易いでしょう。
  上越新幹線・関越自動車道を南下すれば良いのだから。
  佐渡島を押さえ、柏崎原発を占拠し、新潟空港へ弾薬・兵員のピストン空輸。
  日本国民は銃刀法で無防備だから軽装備の部隊でも抵抗を排除して広範囲に容易に
  人質に出来る。阪神淡路大震災の教訓では地方知事は自衛隊の出動要請を渋るから
  新潟県知事を拘束したら県民の命を楯に自衛隊増援を拒否させる。
  そうですな、テレビを活用することになりますか。日本政府が無視して自衛隊を集結させたら
  柏崎もただでは済ませない。」
浄憲「しかし重装備の部隊を送るとなると補給線・連絡線が長過ぎやしないか。
  やはり北海道上陸が本筋だろう。」
西光「しかし日本の最も長い日に"カレーに来ると思ったらノルマンディーに来た"では困る。」
浄憲「わざわざ仮想敵国に最善手を取らせることはあるまい。北海道上陸抑止こそやはり基本。」
西光「相手がアルデンヌを抜けてきたら大変なことになりますぞ。柔軟に考えねば。」
浄憲「フランスの醜態は参謀本部の無能が原因だ。シュリーフェン計画再演を盲信していたからね。
  結果が大勝利だったからマンシュタイン、グーデリアンを褒めたくなるのは当たり前だが
  フランス軍の編成の古さ、士気の低さがドイツの勝因だろう。本当にあんな博打が必要だったのか

、
  再考するべきだろう。」
俊寛「日本の真珠湾奇襲と同じだ。成功したから戦史に燦然と輝くが・・・。」
  (戦術・作戦としては成功したが、戦略的には失敗した。
  "騙まし討ち"は米国国民の士気を決定的に高めた。)
成親「山本長官としては心痛の末出した結論だろう。私もその心境には胸が痛む。」
俊寛「桶狭間・鵯越・川中島を併せ行った。」
成親「まさしく悲劇の将だが、井上成美中将の『新軍備計画』を知って言い知れぬ悲しみを覚えた。」
浄憲「分かります。卓見ですからな。救国の回答、正解が当時もうそこにあった。
  上司への意見具申としてね。」
成親「あの敗戦は何だったのかと・・・。」
西光「戦史に学ぶというなら、北海道重点配備というマジノ線は無駄になりませんかな。どうです。」
成親「陸上自衛隊が、ロシアに占領された北海道へ敵前逆上陸作戦を出来るか、
  という能力の問題だが。」(無い、といわれる。)
俊寛「具体的シナリオの検討や模擬演習でもないので答えようがないとも見受けられますが。」
西光「海上自衛隊・航空自衛隊の活躍をどう仮定するかによりますな。
  北海道逆上陸作戦と本土への主力呼び戻しとどちらが浮上するのかは。」
浄憲「対北朝鮮ではどうですかな。」
成親「正規軍の対峙については米韓支援で良い。湾岸・イラク両戦争と異なり後方支援が正解だ。
  米韓軍支援に関してはAWACS、イージス艦の活用。また、港湾・空港の提供。
  これはガイドラインがある。国内にミサイル・特殊部隊による被害が出たら被害者に
  "沈痛の面持ちで"適切な補償をすると言明する。
  額は"被害が明らかになってから"とコメントするに留めて検討する。
  在日朝鮮人関連施設・住宅・人物はミニパト・覆面・交番自転車巡回強化で監視・警備し、
  町内会との打ち合わせによる治安強化も合わせて行う。
  消防を始め、電気・ガス会社に対しては緊急車両台数の確保を要請しておく。
  医療関係では細菌戦・化学戦が問題だが、動植物の緊急"移動禁止"、"処分(と後回しの補償)"、
  マスクの配布、アルコールによる車両の殺菌消毒
  (出来ればガソリンスタンドに大量のメチルアルコールを用意したい。現実には限られた検問で
  消毒するしかないかもしれない)。感染拡大を防ぐための取材制限。
  メディアは不満を言うだろうが、仕方がない。北朝鮮が核恫喝または使用したら
  "日本政府は米軍の核による反撃を道義的に支持する"と明言すること。
  文面は慌てて作るより前もって準備しておいた方が良い。首相や閣僚は
  ミサイル着弾・テロ多発・難民押し寄せに備えてメディア露出のリハーサルをしておく。
  秘書は議員が言うべきこと言うべきでないことをメモにして議員に念を押すこと。
  党重役もたとえオフレコでも余計なことは言ってはいけない。
  法整備については特別措置法で対処する。見識ある議員は今から特別措置法を書き出しておけ

。
  日本国憲法は特別措置法で改憲せよ。これは湾岸・イラク両戦争の、
  日本の得た最大の教訓である。」
浄憲「中国に対しては?」
成親「尖閣・南沙では中国の伸張を何としても妨害する。
  海保・海自・空自に死傷者が出てもだ。実は尖閣事件で中国が武力行使してくれば
  日本にとって好都合だった。中国軍に日本人が殺されていれば世論はさぞ沸騰したことだろう。
  もう歴史問題だとか、南京で云々と言ったところで今現在の生命財産が脅かされたとなれば
  聞く耳もたぬ。対中国ODAも内政の財源に振り向けられる。歴史問題は一挙に解決だ。
  両国の新たな憎悪のサイクルでね。」
西光「中国は次の覇権国だという見方もありますぞ。巷では。」
成親「2014年以降でしょうからね。中国衰退は。どう早くても。
  だが中国は余りに傲慢で自己中心的だ。
  中国人は民度が低くどうにも"覇権国国民"は荷が重い。
  他国を省みないレアメタル禁輸、知的所有権は守らない、
  軍事・ビジネスでも国際ルール・慣習を踏みにじる。
  外国の非人道的政府と手を結ぶは、国内で人身売買を許したり少数民族から家を奪ったり。
  こんな国が覇権国になってたまるか。」
俊寛「日本一国でどうするもないでしょう。米国も衰退して行くし。
  まあ、米国も後100年200年は単一国家でいられるか。
  いつかカナダ・北米同盟と南米・メキシコ同盟にでも分かれてしまうかも。」
成親「ま、EUよりは長持ちしそうだ。あの連邦は。ともかくも中国海軍は日米で抑えることは
  充分可能だ。ウイグル・チベット独立応援と民主化歓迎で中国を連邦制へ追い詰めることだ。
  長い道だが。」
西光「まるでシルクロードですな。遥かな道。」
成親「幸い中国は長い歴史を持つ国だが高度な文明国という訳ではない。
  明以降西欧に抗しえない
  文明水準だ(と判明したと見て良い)。スケールメリットだけが残った。
  今後外国資本流入・外資系企業進出で国際的慣習・慣例・ルールが中国に広がっていく。
  海外旅行をすれば冷戦後も共産主義を掲げる敗残思想・体制の国が自分の国。
  中国は哲学・文化で西欧の風下に立つ。東西文明主役交代なんて起きない。
  中国人は欧米化の波を被るだろう。そして問え。鄭和は新大陸を発見したか? 
  ファラデー・マックスウェル・ニュートン・ライプニッツがどこにいた。
  西欧列強の地球分割・植民地化を前に何をした。艦砲射撃に魔除にと
  便器をかざしただけじゃないか。何もしなかった中国人や何も出来なかった朝鮮人は
  何故顔を隠せず歩ける? 韓国併合は成功だったのか。併合されずに韓国は自力で
  近代化出来ただろうか。日露戦争戦勝で朝鮮半島はロシア領朝鮮自治区にならずに済んだ。
  中国はロシア領"清帝国"自治区にならずに済んだのではないか。
  中国・韓国は日露戦争の戦費を今からでも負担するべきかもしれない・・・と。」
俊寛「そういえば中国人48人が大阪で生活保護を大量申請した事件がありましたな、最近。
  貧困ビジネスだか何打か知らないが、何てやつらだ。
  最近人種差別は必要悪ではないかと思えてなりません。中国人が何かやらかす度にね。
  何て汚らわしいやつらだ。福祉制度を悪用するだなんて!」
浄憲「そうカッカしなさんな。俊寛殿。拙者、コンビニなどで先日買い物を致したが
  留学生ですかな? とっても感じが良くて好青年でしたぞ。中華料理店で昼食もとり申したときも
  料理も絶品で応対も丁寧でしたぞ。ダークビジネスを憎むべきで人種差別がどうこうとは
  不見識の極み。」
後白河院「お店で会ったのは台湾人ではありませんかな。」
西光「拙僧、AKB48なら何でも認めますぞ。あの水着写真ときたら・・・」
俊寛「オヤオヤ、法師様は下半身のアレは道鏡以上とお見受けしますよ。」
後白河院「不思議なことに韓国系の名札を付けた女性はツンツンして尖がった応対だ。
  向こうの女性はあれが自然体なのかな?」
浄憲「院の美形にツンデレなのでしょう。きっと。」
後白河院「いや〜〜、そうか、そうか。なるほど。」
俊寛「あっはっは。そんな馬鹿な話が。」
成親「ゴホン。」
俊寛「あ、いや、失礼。」
西光「中国がパキスタン・イランを通って黒海・カスピ海方面の資源略奪に乗り出したらどうします?」
成親「NATO次第だが、イランでの迎撃は不利なのでイラク・トルコが防衛線になる。
  ペルシア湾は日本の生命線だし、米国を中心とした同盟軍の集結に適している。
  中国が遠征して来てくれれば有難い。日本としても台湾沖で原子力空母大海戦でもあったら
  大迷惑だからね。中東なら朝鮮戦争の様に中国軍も在イラン人民義勇軍を名乗るかもしれない。
  朝鮮戦争は米中戦争だが、また長い休戦が再びペルシア湾から始まることになろう。
  日米同盟は一つの結末を待っている。ロン-ヤスの『日本を不沈空母にする』、
  クウェートの感謝リストに漏れた日本、アーミテージの『ショー・ザ・フラッグ』。つまり・・・」
後白河院「共同で武力行使、ですな? 日本は『普通の同盟国』になる。」
浄憲「ペルシア湾に陸上兵力を送らずに済めば良いが。イージス艦で済むか。
  リンク16を今度は日本側が言い立てて。中国と戦火を交えるのは感心しない。隣国ですからな。」
西光「中国よりロシアが先でしょう。ロシアにとっての方が切実な地域のはず。
  トルコをEU・NATO側に引き寄せておきたいですなぁ。そうでないとグルジア・アルメニアで
  ロシアに栓をする意味が無くなりやっかいだ。」
後白河院「そうですなぁ。」
成親「米国も米国だ。いつまでイラン侵攻の夢を見るつもりなのか。
  イラン・アフガニスタンで挟み撃ちにする構想だったのだろうが・・・」
俊寛「せっかく9.11を自作自演したのに。しっかりイラク利権を握っておいた方が良い。」
西光「ビデオ分析を始めとしてあれ程ボロが出るとは思わなかったのでしょう。
  CIA、ペンタゴンの立案者は。あるいはよっぽど杜撰で性急な立案作業だったのか。
  第7ビルがテレビ報道後に倒壊したり。ありゃあなんです?」
俊寛「米国TV局のニュース番組はタイムマシンなのでしょう。それとも未来を透視する水晶玉かな。」
後白河院「きっと怒られたでしょうね?」
俊寛「もう消されていますよ、多分。」

     缶ビールを配膳する女中達。

俊寛「まあ、まあ。」
浄憲「まだ何も言ってはおらん!」
後白河院「"菅"ビールですか。何だか"菅"には食傷気味ですな。」
俊寛「院、良い肴の腹案はございませんかな。」
後白河院「軍事学の知見、国家権力の源泉は軍隊。さすれば日本国・日本国憲法の
  成立維持から見て日本政府の国家権力の源泉は自衛隊・在日米軍・核の傘・日米同盟。
  つまり日本は半主権国家。日本にとって戦略でも超大国米国には戦域。
  せいぜい米国の『普通の属国』となるよう努めて行こうではありませんか。井の中の蛙としてね。」
浄憲「あ〜〜はっはっ。コップの中の政争、ご苦労なことよ。
  だが裏切りにはよくよく注意なされよ。寝首を掻かれぬ様にな。あ〜〜はっはっ。」

     突然血相を変えて立ち上がる成親。
     浄憲に掴みかかろうとしてネクタイがビール缶に触れる。倒れるビール缶。

俊寛「"菅"が倒れた! "菅"が倒れた!」
後白河院「どうしたのだ。成親殿。」
俊寛「何しろ"菅"がいっぱいですからな。すっかり"菅"ビールに酔われたかな。」
成親「い、院はこの私を愚弄なされるのかっ!?」
後白河院「機嫌を直せ。成親殿。これ、女中ども、茶番をせぬか!」
西光「さあ、さらに"菅"ビールでも飲まれよ。さあ、さあ。」

琵琶法師(NA)「民主党平家物語『鹿ヶ谷の巻』これにて終わり。」

     (閉幕)



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