3852.朝鮮半島情勢は難しい局面



金正男の次のような発言は無視できない。「父が認知症の症状を見
せ始めてから業務をあまりしない」「過去、父が仕事をするときは
すべて、いくら強硬でも、ある種のメッセージがあったが、今はい
ったい何が何だか分からない」(6月6日付『中央サンデー』)と。

 11月23日に発生した韓国・延坪島砲撃事件は決して緻密な計算に
基づく北朝鮮の外交戦術ではない。また、軍強硬派の不満分子が暴
走した結果でもない。蛮行の主犯は、金正日の義弟・張成沢(国防
委員会副委員長)最側近のひとりで、人民軍トップに上り詰めた李
英鎬である。守旧派との長年の権力闘争を勝ち抜き、主導権を握り
かけた張成沢派の暴走だ。この点こそが問題の核心部分である。

このような実情を知って、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領
は27日、「戦争を恐れては決して戦争を防ぐことはできない。ど
のような危険も顧みない固い覚悟があれば、むしろ危険を防ぐこと
ができる」と、今後挑発には強力に対応していく考えをあらためて
示した。

すでに、北朝鮮の金永春・人民武力相は23日、韓国による軍事演
習を衝突開始に向けた挑発行為だと非難し、人民軍は核抑止力を使
った「聖戦」の準備ができていると述べた。

というように、朝鮮半島情勢は難しい局面を向かえている
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韓国大統領:「戦争恐れては防げず」北朝鮮挑発に強い対応
 【ソウル西脇真一】韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は
27日、定例のラジオ演説で北朝鮮の武力挑発について「戦争を恐
れては決して戦争を防ぐことはできない。どのような危険も顧みな
い固い覚悟があれば、むしろ危険を防ぐことができる」と、今後挑
発には強力に対応していく考えをあらためて示した。

 李大統領は「国家的に重要なことが本当に多かった」と今年1年
を総括。3月の海軍哨戒艦沈没事件と11月の延坪島(ヨンピョン
ド)砲撃事件について「北朝鮮は、われわれの忍耐と平和への願い
を誤って判断し、挑発をほしいままにしている。武力挑発には強力
に対応することだけが、むしろ戦争を抑制し平和を保つことができ
るという事実をはっきりと悟った」と述べた。

 さらに、哨戒艦沈没事件では韓国政府が「北朝鮮の魚雷攻撃」と
の調査結果を発表したが、「一部ではイデオロギーや政治的利害に
基づき結果を否定することがあった」と指摘。「北朝鮮は『あ、攻
撃すれば南はこのように分裂するんだな』と考える。強力な軍事的
対応の前にまずは国民的な団結が必要だ」と訴えた。

毎日新聞 2010年12月27日 11時59分
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金正日長男・正男 父の認知症認め「何が何だか分からない」
2010.12.26 10:00

 金正日総書記から三男・正恩氏へ。不安定な権力移行期の今、北
朝鮮に何が起きているのか。不穏な動きを関西大学経済学部教授の
李英和氏が内部情報をもとに解説する。

 * * *
 11月23日に発生した韓国・延坪島砲撃事件は決して緻密な計算に
基づく北朝鮮の外交戦術ではない。また、軍強硬派の不満分子が暴
走した結果でもない。蛮行の主犯は、金正日の義弟・張成沢(国防
委員会副委員長)最側近のひとりで、人民軍トップに上り詰めた李
英鎬である。守旧派との長年の権力闘争を勝ち抜き、主導権を握り
かけた張成沢派の暴走だ。この点こそが問題の核心部分である。

 もちろん、今回の砲撃は金正日の裁可なしにはあり得ない。だが
、心身ともに病魔に侵された金正日がまともな思慮分別をもって署
名したとは思われない。実際、韓国有力紙『中央日報』の日曜版は
、「北京亡命中」の金正男の次のような発言を紹介している。

「父が認知症の症状を見せ始めてから業務をあまりしない」「過去
、父が仕事をするときはすべて、いくら強硬でも、ある種のメッセ
ージがあったが、今はいったい何が何だか分からない」(6月6日付
『中央サンデー』)

 ここに事態の複雑さと問題の深刻さが潜む。金正日の判断能力と
統率力が減退し、他方で「後継者」の金正恩はまだ使い物にならな
い。この不安定な権力移行期に、張成沢が持ち前の剛腕に物を言わ
せて強引な人事を断行してきた。だが、張成沢一派は、アキレス腱
の軍部で猛烈な反発に直面している。抗争の行方によっては金正恩
が握る「核のボタン」が標的にされかねない。
 
 今回の蛮行が内部要因、それも人民軍内部の人事抗争によるもの
なら、局外者が解決を模索するのは困難きわまりない。ましてや、
中国の勧めに応じ、対話や支援に乗り出したからといって、打開で
きる性質のものではない。
 私見では、有効な手段は2つしかない。中国はとうの昔に賞味期
限の切れた「6者協議」の再開提案を持ち歩くのではなく、北朝鮮と
の軍事同盟(中朝友好協力相互援助条約)を即刻破棄することであ
る。これで事態の沈静効果がなければ、残された手段はひとつであ
る。
 
 北朝鮮は米韓合同軍事演習に対して「狂犬に棍棒を」と絶叫調で
警告を発している。これをそっくりそのまま北朝鮮に返すことであ
る。
 
※SAPIO2011年1月6日号
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北朝鮮が「聖戦の準備」表明、意識される半島有事リスク
2010年 12月 24日 13:52 JST

[ロンドン 23日 ロイター] 北朝鮮が核抑止力を使った「聖
戦」の準備ができていると表明したことについて、政治アナリスト
や市場関係者らは、単に北朝鮮流の「レトリック」として概して深
刻には受け止めなさそうだ。しかし、朝鮮半島有事のリスクは、明
らかに世界中の投資家に意識され始めている。
 北朝鮮の金永春・人民武力相は23日、韓国による軍事演習を衝
突開始に向けた挑発行為だと非難し、人民軍は核抑止力を使った「
聖戦」の準備ができていると述べた。

 韓国と日本の金融市場は、度重なる北朝鮮の脅しに慣れており、
さほど右往左往することなくやり過ごす傾向にある。朝鮮半島有事
の可能性は極めて低いと認識され、そのリスクは資産価格にすでに
織り込まれていることも背景にある。一方、日韓以外の世界の投資
家は、朝鮮戦争のリスクをより本気で懸念し始めた。

 元英外交官で野村インターナショナル(ロンドン)の政治アナリ
スト、アラステア・ニュートン氏は「レトリックとしては過去に聞
いたことがある類のものだ。しかし、朝鮮半島が過去数十年で最も
危険な状況にあることに疑いの余地はない」と語っている。

 今年3月に韓国海軍哨戒艦沈没事件が発生して以降、先月には韓
国の延坪島に北朝鮮が砲撃するなど、両国間の緊張は着実に高まっ
ている。韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は23日、北朝鮮
が再び攻撃した場合には、韓国軍は「容赦ない報復攻撃」を開始す
べきだと述べた。

 戦争に突入する可能性は低いというのが大方の見方である一方、
朝鮮半島情勢については、米バンク・オブ・ニューヨーク・メロン
やロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)、スウェーデンのS
EBなど、世界の大手銀が顧客向けリポートで言及している。

 韓国軍は23日に南北非武装地帯付近などで大規模な軍事演習を
実施したが、それに対する報復攻撃を北朝鮮側は示唆しておらず、
状況はひとまず落ち着いたかに見える。

 しかし、朝鮮半島情勢は簡単に一段と悪化し得る。北朝鮮が再び
何らかの攻撃を仕掛けた場合、韓国政府には報復を求める国内の政
治的圧力が一段と強まることになるからだ。



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